特別清算とは|清算株式会社が協定で債務を整理する手続き。可決は出席者の過半数と議決権総額の3分の2以上

特別清算の申立てから開始命令、協定の申出、可決・認可、破産への移行までを一本の線で並べたアイキャッチ

特別清算は、すでに解散して清算中の株式会社が、裁判所の監督のもとで債権者との協定をまとめて清算を終わらせる手続きです。民事再生法や会社更生法のような単独の法律はなく、根拠は会社法の第二編第九章第二節にあります。会社をたたむ側の手続きでありながら、協定という形で債権者の多数決が登場するのが特徴です。条文で順に確かめます。

条文に書かれている枠組み

  • 対象は清算株式会社。開始の原因は、清算の遂行に著しい支障を来すべき事情があること、または債務超過の疑いがあることの2つ(会社法510条)。
  • 申立てができるのは債権者・清算人・監査役・株主の4者。債務超過の疑いがあるときは清算人が申し立てなければならない(511条)。
  • 開始命令があると、清算株式会社は協定債権者に対し債権額の割合に応じて弁済しなければならない(537条1項)。
  • 協定の可決には、出席した議決権者の過半数と、議決権の総額の3分の2以上の同意の両方が要る(567条1項)。
  • 協定の見込みがない、実行の見込みがない、債権者の一般の利益に反すると認めるときは、裁判所が職権で破産手続開始の決定をしなければならない(574条1項)。

入口は「清算株式会社」であること

510条は「裁判所は、清算株式会社に次に掲げる事由があると認めるときは、第五百十四条の規定に基づき、申立てにより、当該清算株式会社に対し特別清算の開始を命ずる」と定めています。主語になっているのは清算株式会社です。解散して清算手続に入っている株式会社でなければ、この条文の対象になりません。

事由は2つです。1号が清算の遂行に著しい支障を来すべき事情があること、2号が債務超過(清算株式会社の財産がその債務を完済するのに足りない状態)の疑いがあることです。2号は「疑い」で足り、債務超過が確定していることまでは求めていません。

e-Gov法令検索の公式画面。会社法の法令名と編・章の目次が表示されている
e-Gov法令検索の会社法。特別清算は第二編第九章第二節に置かれ、単独の法律にはなっていない(2026年10月21日に表示)。

申し立てられる人と、申し立てる義務がある人

511条1項は「債権者、清算人、監査役又は株主は、特別清算開始の申立てをすることができる」としています。民事再生や会社更生のように債権額や議決権の割合による足切りがありません。

注目すべきは第2項です。「清算株式会社に債務超過の疑いがあるときは、清算人は、特別清算開始の申立てをしなければならない」。権限ではなく義務として書かれています。

特別清算開始の申立て(会社法511条)
立場 条文の書き方 持分や債権額の要件
債権者 申立てをすることができる(1項) 定めなし
清算人 債務超過の疑いがあるときは申立てをしなければならない(2項) 定めなし
監査役 申立てをすることができる(1項) 定めなし
株主 申立てをすることができる(1項) 定めなし

開始命令が出ない4つの場合

514条は、開始の原因となる事由があると認めるときは、次のいずれかに該当する場合を除き特別清算開始の命令をすると定めています。

特別清算開始の命令がされない場合(会社法514条)
号 内容
1号 特別清算の手続の費用の予納がないとき
2号 特別清算によっても清算を結了する見込みがないことが明らかであるとき
3号 特別清算によることが債権者の一般の利益に反することが明らかであるとき
4号 不当な目的で申立てがされたとき、その他申立てが誠実にされたものでないとき

2号の表現が「清算を結了する見込み」である点に、この手続きの性格が出ています。事業を続けることではなく、清算を終えられるかどうかが問われます。

開始命令で止まるものと、時効の扱い

515条1項は、開始命令があったときに破産手続開始の申立て、清算株式会社の財産に対する強制執行・仮差押え・仮処分・外国租税滞納処分、財産開示手続、第三者からの情報取得手続の申立てができなくなり、既にされているものは中止すると定めています。ただし書きにより、一般の先取特権その他一般の優先権がある債権に基づくものは除かれます。

第2項は、開始命令が確定したときに、中止した手続または処分は特別清算の手続の関係においてその効力を失うとしています。

第3項には時効の定めがあります。開始命令があったときは、協定債権について特別清算開始の取消しの登記または特別清算終結の登記の日から2か月を経過する日までの間、時効は完成しません。

「協定債権」はここで定義されている

515条3項の括弧書きが、この手続きの中心概念を定義しています。協定債権とは、清算株式会社の債権者の債権のうち、次の3つを除いたものです。

協定債権から除かれるもの(会社法515条3項)

1

一般の先取特権その他一般の優先権がある債権。

2

特別清算の手続のために清算株式会社に対して生じた債権。

3

特別清算の手続に関する清算株式会社に対する費用請求権。

この区分が、後に出てくる弁済の制限や協定の可決要件にそのまま効いてきます。どの債権が協定債権に当たるかで、議決権の母数も弁済の順序も変わります。

弁済は債権額の割合に応じて行う

537条1項は「特別清算開始の命令があった場合には、清算株式会社は、協定債権者に対して、その債権額の割合に応じて弁済をしなければならない」と定めています。早い者勝ちにならないよう、按分が原則として明示されています。

第2項が例外です。裁判所の許可を得て、少額の協定債権、清算株式会社の財産につき存する担保権によって担保される協定債権、その他これを弁済しても他の債権者を害するおそれがない協定債権について、債権額の割合を超えて弁済できます。

按分の原則は、開始命令と同時に効き始める。

協定ができあがるのを待つ仕組みではありません。開始命令の後は、協定債権への弁済がすでに割合に縛られます。どの債権が協定債権に当たるかを早い段階で整理しておかないと、支払いの可否を判断できません。

清算株式会社の行為には許可か同意が要る

535条1項は、開始命令があった場合に清算株式会社が一定の行為をするには裁判所の許可を得なければならないとしています。ただし書きにより、527条1項の規定で監督委員が選任されているときはこれに代わる監督委員の同意が必要です。

許可または監督委員の同意が必要な行為(会社法535条1項)
号 行為
1号 財産の処分(536条1項各号に掲げる行為を除く)
2号 借財
3号 訴えの提起
4号 和解または仲裁合意
5号 権利の放棄
6号 その他裁判所の指定する行為

第2項に例外があります。1号から5号までの行為については、最高裁判所規則で定める額以下の価額を有するものに関するとき、または裁判所が許可を要しないものとしたものに関するときは、許可が要りません。第3項により、許可またはこれに代わる同意を得ずにした行為は無効ですが、善意の第三者には対抗できません。

事業の譲渡には例外なく許可が要る

536条1項は、開始命令があった場合に清算株式会社が次の行為をするには裁判所の許可を得なければならないとしています。535条2項のような金額による例外は置かれていません。

裁判所の許可が必要な譲渡(会社法536条1項)
号 対象
1号 事業の全部の譲渡
2号 事業の重要な一部の譲渡(譲り渡す資産の帳簿価額が総資産額の5分の1を超えないものを除く)
3号 子会社の株式または持分の譲渡(帳簿価額が総資産額の5分の1を超え、かつ効力発生日に議決権の総数の過半数を有しないこととなる場合)

第3項により、会社法第二編第七章(事業の譲渡等)の規定は、467条1項5号を除いて特別清算の場合には適用されません。通常の事業譲渡で求められる株主総会の特別決議の手続きとは、別の経路に置き換わっているということです。

監督委員と調査委員は役割が違う

527条1項は、裁判所が1人または2人以上の監督委員を選任し、535条1項の許可に代わる同意をする権限を付与することができると定めています。第2項により法人も監督委員になれます。許可の窓口を裁判所から監督委員に置き換えるのが、この選任の効果です。

調査委員は別です。522条1項は、特別清算開始後に財産の状況を考慮して必要があると認めるときに、調査委員による調査を命ずる処分(調査命令)ができるとしています。申立てができる債権者は知れている債権者の債権の総額の10分の1以上に当たる債権を有する者、株主は議決権の100分の3以上を6か月前から引き続き有する者などです。

調査の対象は6つ挙げられており、1号が特別清算開始に至った事情、2号が清算株式会社の業務及び財産の状況、5号が役員等責任査定決定をする必要があるかどうかです。第3項により、公開会社でない清算株式会社では「6か月前から引き続き有する」の部分が「有する」に読み替えられます。

財産を動かせなくする保全処分がある

540条1項は、開始命令があった場合に清算の監督上必要があると認めるときは、債権者・清算人・監査役・株主の申立てまたは職権で、清算株式会社の財産に関し処分禁止の仮処分その他の必要な保全処分を命じられると定めています。

第2項により、この保全処分は開始の申立てがあった時から決定があるまでの間にもできます。申立てを却下する決定に対して890条5項の即時抗告がされたときも同じです。開始命令を待たずに財産を固定できるということです。

第3項には弁済禁止の保全処分の効果が書かれています。裁判所が弁済その他の債務を消滅させる行為を禁止する保全処分を命じた場合、債権者は特別清算の関係においてはその保全処分に反してされた弁済等の効力を主張できません。ただし、債権者がその行為の当時、保全処分がされたことを知っていたときに限られます。

役員の責任も手続の中で査定できる

542条1項は、清算の監督上必要があると認めるときに、清算株式会社の申立てまたは職権で、発起人、設立時取締役、設立時監査役、423条1項に規定する役員等または清算人(対象役員等)の責任に基づく損害賠償請求権について、その財産に対する保全処分ができると定めています。第2項により、申立てから決定までの間にも緊急の必要があればできます。

545条1項は、必要があると認めるときに、清算株式会社の申立てまたは職権で役員等責任査定決定ができるとしています。第3項により、この申立てまたは職権開始の決定があったときは、時効の完成猶予および更新に関して裁判上の請求があったものとみなされます。

役員等の責任に関する処分(会社法542条・545条)
条文 できること 申立ての主体
542条1項 対象役員等の財産に対する保全処分 清算株式会社の申立てまたは職権
542条2項 開始の申立てから決定までの間の保全処分(緊急の必要があるとき) 清算株式会社の申立てまたは職権
545条1項 損害賠償請求権の査定の裁判(役員等責任査定決定) 清算株式会社の申立てまたは職権
545条4項 査定決定の手続は、特別清算が終了したときに終了する(決定があった後のものを除く) —

協定は誰に効き、何に効かないか

571条1項は「協定は、清算株式会社及びすべての協定債権者のために、かつ、それらの者に対して効力を有する」と定めています。賛成しなかった協定債権者も拘束されるという意味です。

効かないものも明示されています。第2項により、協定は522条2項に規定する担保権、協定債権者が清算株式会社の保証人その他清算株式会社と共に債務を負担する者に対して有する権利、清算株式会社以外の者が協定債権者のために提供した担保に影響を及ぼしません。

第3項は「協定の認可の決定が確定したときは、協定債権者の権利は、協定の定めに従い、変更される」としています。変更の効力は可決の時点ではなく、認可の決定が確定した時点です。

保証人の責任は協定では消えない。

571条2項は、保証人その他共に債務を負担する者に対する権利に影響を及ぼさないと明記しています。会社側の債務が協定で減っても、保証した人の負担がその分だけ軽くなるとは条文に書かれていません。

協定の申出と、定めなければならない条項

563条は「清算株式会社は、債権者集会に対し、協定の申出をすることができる」と定めています。申し出る主体は清算株式会社です。

564条1項は、協定においては協定債権者の権利(522条2項に規定する担保権を除く)の全部または一部の変更に関する条項を定めなければならないとしています。第2項により、その条項では債務の減免、期限の猶予その他の権利の変更の一般的基準を定めなければなりません。

565条は平等原則です。「協定による権利の変更の内容は、協定債権者の間では平等でなければならない」としたうえで、不利益を受ける協定債権者の同意がある場合、少額の協定債権について別段の定めをしても衡平を害しない場合などを例外としています。

可決に必要な2つの同意

567条1項は、554条1項の規定にかかわらず、債権者集会において協定を可決するには次に掲げる同意のいずれもがなければならないとしています。

協定の可決の要件(会社法567条1項)
号 必要な同意
1号 出席した議決権者の過半数の同意
2号 議決権者の議決権の総額の3分の2以上の議決権を有する者の同意

金額側の基準が3分の2以上である点が、民事再生の2分の1以上より重い設定です。第2項により、554条2項の規定は1号の適用について準用されます。

協定が認可されない4つの場合

569条1項は、認可の申立てがあった場合には次項の場合を除き協定の認可の決定をするとしています。第2項が不認可の事由です。

協定の不認可の決定(会社法569条2項)
号 内容
1号 特別清算の手続または協定が法律の規定に違反し、かつ、その不備を補正することができないとき(手続の違反の程度が軽微なときを除く)
2号 協定が遂行される見込みがないとき
3号 協定が不正の方法によって成立するに至ったとき
4号 協定が債権者の一般の利益に反するとき

4号の「債権者の一般の利益に反するとき」は、514条3号の開始命令の段階にも、574条の破産への移行にも同じ表現で現れます。手続きのどの段階でも同じ物差しが当てられるということです。

終わり方は2通りある

573条は、特別清算開始後に特別清算が結了したとき、または特別清算の必要がなくなったときに、清算人・監査役・債権者・株主・調査委員の申立てにより、裁判所が特別清算終結の決定をすると定めています。

もう1つが破産への移行です。574条1項は、特別清算開始後、次の場合に清算株式会社に破産手続開始の原因となる事実があると認めるときは、裁判所が職権で、破産法に従い破産手続開始の決定をしなければならないとしています。

破産手続開始の決定(会社法574条)

1項1号

協定の見込みがないとき。決定を「しなければならない」。

1項2号

協定の実行の見込みがないとき。決定を「しなければならない」。

1項3号

特別清算によることが債権者の一般の利益に反するとき。決定を「しなければならない」。

2項1号

協定が否決されたとき。決定を「することができる」。

2項2号

協定の不認可の決定が確定したとき。決定を「することができる」。

1項は義務、2項は裁量と書き分けられています。否決や不認可がただちに破産に直結するとは条文に書かれていません。

3つの手続きを条文で並べる

同じく裁判所が関わる手続きでも、目的も可決要件も違います。

特別清算・民事再生・会社更生の対比
項目 特別清算 民事再生 会社更生
根拠 会社法510条以下 民事再生法 会社更生法
対象 清算株式会社 債務者(民事再生法21条1項) 株式会社(会社更生法17条1項)
向かう先 清算の結了(会社法514条2号) 事業または経済生活の再生(民事再生法1条) 事業の継続を内容とする計画(会社更生法41条1項3号)
頭数の要件 出席した議決権者の過半数(567条1項1号) 議決権者の過半数(民事再生法172条の3第1号) 定めなし(権利の種類ごとに金額で判定)
金額の要件 議決権の総額の3分の2以上(567条1項2号) 議決権の総額の2分の1以上(民事再生法172条の3第2号) 更生債権は2分の1超、更生担保権は3分の2〜10分の9(会社更生法196条5項)
申立義務 債務超過の疑いがあるとき清算人に義務(511条2項) 定めなし 定めなし

手続きごとの詳細は民事再生とはと会社更生とはで個別に整理しています。

この記事で扱っていないこと

確認したのは会社法の条文です。予納金の額、債権者集会の招集の実務、終結までに要する期間は、事件ごと・裁判所ごとに決まるもので、今回は一次情報で確認していないため書いていません。

また、協定によらずに個別の和解で処理する方式、役員等責任査定決定の詳細、清算所得に関する税務の取扱いについても、この記事では触れていません。税務の判断は税理士に確認してください。

よくある質問

まだ解散していない会社でも使えますか

510条は「清算株式会社に次に掲げる事由があると認めるとき」と定めており、対象は清算株式会社です。

債権者が少額でも申し立てられますか

511条1項は債権者・清算人・監査役・株主が申立てをすることができるとしており、債権額による要件は置かれていません。ただし522条1項の調査命令の申立てには、知れている債権者の債権の総額の10分の1以上という要件があります。

清算人が申立てをしないことはできますか

511条2項は、債務超過の疑いがあるときは清算人が申立てを「しなければならない」と定めています。

特定の債権者に先に払えますか

537条1項により、協定債権者には債権額の割合に応じて弁済します。少額の協定債権や担保権で担保される協定債権など、他の債権者を害するおそれがないものについては、裁判所の許可を得て割合を超えて弁済できます(2項)。

協定が否決されたら必ず破産になりますか

574条2項1号は、協定が否決されたときに破産手続開始の決定を「することができる」と定めています。1項の3つの場合は「しなければならない」と書き分けられています。

可決に必要な割合はどれくらいですか

567条1項により、出席した議決権者の過半数と、議決権の総額の3分の2以上の議決権を有する者の同意の両方が必要です。

再建型を含む5つの手続きの一覧は債務整理・事業再生の5手続きを条文で比較、清算に入る前に検討できる打ち手は会社の債務を整理する方法の一覧で扱っています。

出典