銀行融資で担保を差し出す場合や不動産担保ローンで担保を設定するなど、資金調達で不動産担保を利用するケースというのは少なくありません。今回は不動産担保の「抵当権」と「根抵当権」の違いについて解説します。
「抵当権」とは
民法 369条1項
抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する
簡単に言うと
借金の担保として、抵当権を設定した不動産(建物・土地)がある場合、他の債権者(銀行など)に優先して、貸したお金の回収ができる権利のことです。
債務者が債務不履行になった場合には不動産(建物・土地)は競売で売却されますが、抵当権があれば、競売の売却額を元に抵当権の金額分優先して返済が受けられるのです。
担保を差し出す側にとってみれば
抵当権を設定される = 返済できなければ不動産は自分のものではなくなる
ということを意味します。
また、競売は流通価格より安く売却されてしまうため、債務不履行で競売になって抵当権が消滅したとしても、借りている額に届かなければ借金が残るケースもあります。
「抵当権」と「根抵当権」の違い
「抵当権」
特定の融資に対する担保
1億の融資に対する担保の場合
毎月100万円の返済をすれば、1年後の融資残高は8800万円に減少します。
「抵当権」の担保している金額も同じように8800万円に減少します。
特定の融資に対する担保ですので、融資残高と同じように減少していくのが「抵当権」です。
「根抵当権」
極度額の範囲内でのその銀行からのすべての融資に対する担保
1億の融資に対する担保の場合
毎月100万円の返済をすれば、1年後の融資残高は8800万円に減少します。
しかし、「根抵当権」の担保している金額は「枠」という考え方になるので1億のままなのです。
前述した例の場合、8800万円まで融資残高が減ったので、企業が銀行に+1200万円分の追加融資を依頼してOKがでた場合に、個別の抵当権設定をすることなく、前回の「根抵当権」の担保が生きている状態となるのです。
「根抵当権」のメリット
- 融資の度に抵当権の設定登記をする必要がない。
- 銀行としては常に「枠(極度額)」を抑えることができるので、他の銀行などが入る余地を減らせる。
「根抵当権」のデメリット
- 一度抵当権をつけると銀行がなかなか外してくれない。
- 次からの融資も強制的に有担保になってしまう。
- 借入額よりも大きい極度額設定になるとその分諸費用が増える。
- 新しい不動産担保ローンなどを利用しようとしても審査に落ちる可能性がある
銀行融資と「根抵当権」
- 銀行融資では「根抵当権」を利用することが多い
- 借入額の1.2倍の極度額を設定することが多い
- 他の金融機関(銀行やノンバンク)からの追加の借入がしにくくなる
という特徴があります。
「根抵当権」は担保の限度額が減らないので、通常は2番抵当でも、3番抵当でも、融資できるという不動産担保ローンであっても、「根抵当権」が1番手にあると審査に通らないということが起こりうるのです。
しかし、競合他社の参入余地を残さないからこそ、銀行にとっては「根抵当権」を設定することを重視し、「根抵当権」ありきで融資することが少なくないのです。そのため、なかなか「根抵当権」は外してくれないのです。
まとめ
「抵当権」と「根抵当権」は、どちらも抵当権なのですが、使い方には大きな違いがあります。この違いだけで追加の融資が受けられるかどうかも変わってきてしまうので、不動産担保をつけて資金調達をする場合は「抵当権がどちらになるのか?」必ずチェックしておきましょう。
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