計画が認可されれば終わり、と考えると見落とす規定があります。認可の確定後も計画は取り消され得るし、取り消されれば減った債務は元に戻ります。保証人の責任や時効の扱いにも条文があります。手続が閉じたあとに何が残るのかを、条文で確かめます。
条文で押さえる5点
- 民事再生の終結は、監督委員が選任されている場合認可決定の確定から3年を経過したときにも決定される(民事再生法188条2項)。
- 再生計画は認可決定の確定後でも取り消されることがある。履行を怠った場合の申立ては、評価額の10分の1以上の権利を有する再生債権者に限られる(189条)。
- 履行完了前に破産手続開始または新たな再生手続開始の決定がされると、変更された再生債権は原状に復する(190条)。
- 特別清算の協定は、保証人その他共に債務を負担する者に対して有する権利に影響を及ぼさない(会社法571条2項)。
- 特別清算開始の命令があると、協定債権の時効は登記の日から2か月を経過する日まで完成しない(会社法515条3項)。
終わり方の条文は手続ごとに別にある
民事再生は188条、会社更生は234条、特別清算は573条と574条、破産は216条などに終わり方の定めがあります。それぞれ「終結」「終了」「廃止」と用語が違い、要件も違います。同じ「終わった」でも、その後に残るものが変わります。

民事再生は3年という区切りで終わる
民事再生法188条1項は、認可決定が確定したときに監督委員または管財人が選任されていない場合、裁判所が再生手続終結の決定をしなければならないとしています。
第2項は監督委員が選任されている場合です。再生計画が遂行されたとき、または認可決定の確定後3年を経過したときに、再生債務者もしくは監督委員の申立てまたは職権で終結の決定をしなければなりません。第3項は管財人が選任されている場合で、遂行されたとき、または遂行されることが確実であると認めるに至ったときです。
第4項により、終結の決定があったときは監督命令と管理命令が効力を失います。3年という数字は計画の返済期間ではなく、手続を閉じる側の区切りである点に注意が要ります。債務の期限は155条3項により原則10年以内です。
遂行を確実にするための担保を命じられる
186条1項は、認可決定が確定したときに再生債務者等が速やかに計画を遂行しなければならないとし、第2項で監督委員が選任されているときはその監督委員が遂行を監督するとしています。
第3項には担保の規定があります。裁判所は遂行を確実にするため必要と認めるときに、再生債務者等や、再生のために債務を負担しもしくは担保を提供する者に対し、相当な担保を立てるべきことを命ずることができます。対象は次の3者です。
担保を立てさせる相手(民事再生法186条3項)
再生計画の定めまたはこの法律の規定によって認められた権利を有する者。
異議等のある再生債権で、その確定手続が終了していないものを有する者。
別除権の行使によって弁済を受けることができない債権の部分が確定していない再生債権を有する者。
認可されたあとも、裁判所の関与が終わるわけではないということです。
認可が確定しても取り消されることがある
民事再生法189条1項は、認可決定が確定した場合でも、次の事由があるときは再生債権者の申立てにより再生計画取消しの決定をすることができると定めています。
| 号 | 事由 | 申立ての制限 |
|---|---|---|
| 1号 | 再生計画が不正の方法により成立したこと | 即時抗告で主張したとき、知りながら主張しなかったとき、事由を知った時から1か月、認可決定の確定から2年を経過したときは申し立てられない(2項) |
| 2号 | 再生債務者等が再生計画の履行を怠ったこと | 裁判所が評価した権利総額の10分の1以上の権利を有し、履行期限が到来した権利の全部または一部の履行を受けていない再生債権者に限る(3項) |
| 3号 | 41条1項・42条1項に違反し、または54条2項の監督委員の同意を得ずに行為をしたこと | 制限の定めなし |
2号の申立権が10分の1以上という持分で絞られている点は、小口の債権者だけでは取消しを求められないことを意味します。第4項により、取消しの決定をしたときは裁判書を申立人と再生債務者等に送達し、主文と理由の要旨を公告しなければなりません。
3号には期間の制限も持分の制限もない。
許可や同意を省いた行為は、無効になるだけでなく、計画そのものを失う理由になります。2号のような10分の1という縛りが3号には書かれていません。
取り消されると債務は元に戻る
190条は「再生計画の履行完了前に、再生債務者について破産手続開始の決定又は新たな再生手続開始の決定がされた場合には、再生計画によって変更された再生債権は、原状に復する」と定めています。
ただし書きにより、再生債権者が再生計画によって得た権利には影響を及ぼしません。減額された債務が元の額に戻る一方で、計画に基づいて既に得たものは覆らない、という線引きです。民事再生の全体像は民事再生とはで整理しています。
会社更生の終了事由は5つに整理されている
会社更生法234条は、更生手続が次のいずれかが生じた時に終了すると定めています。
| 号 | 事由 |
|---|---|
| 1号 | 更生手続開始の申立てを棄却する決定の確定 |
| 2号 | 44条1項の即時抗告があった場合における、更生手続開始の決定を取り消す決定の確定 |
| 3号 | 更生計画不認可の決定の確定 |
| 4号 | 更生手続廃止の決定の確定 |
| 5号 | 更生手続終結の決定 |
1号から3号までは、開始の段階または認可の段階で終わる場合です。5つのうち、計画が動いたうえで閉じるのは5号だけという整理になります。会社更生の全体像は会社更生とはで確認できます。
特別清算は終結か、破産への移行かで分かれる
会社法573条は、特別清算開始後に特別清算が結了したとき、または特別清算の必要がなくなったときに、清算人・監査役・債権者・株主・調査委員の申立てにより特別清算終結の決定をすると定めています。
574条は破産への移行です。1項は協定の見込みがないとき、協定の実行の見込みがないとき、特別清算によることが債権者の一般の利益に反するときに、破産手続開始の原因となる事実があると認めれば、裁判所が職権で破産手続開始の決定をしなければならないとしています。
2項は協定が否決されたとき、協定の不認可の決定が確定したときで、こちらはすることができるという書き方です。義務と裁量が条文で書き分けられています。特別清算の全体像は特別清算とはで整理しています。
協定は保証人には及ばない
会社法571条1項は「協定は、清算株式会社及びすべての協定債権者のために、かつ、それらの者に対して効力を有する」としています。賛成しなかった協定債権者も拘束されるということです。
一方、第2項には及ばない範囲が明示されています。協定は、次の3つに影響を及ぼしません。
協定が影響を及ぼさないもの(会社法571条2項)
522条2項に規定する債権者が有する、同項に規定する担保権。
協定債権者が、清算株式会社の保証人その他清算株式会社と共に債務を負担する者に対して有する権利。
清算株式会社以外の者が協定債権者のために提供した担保。
第3項により、権利が変更されるのは協定の認可の決定が確定したときです。可決の時点ではありません。
時効には2か月の猶予がある
会社法515条3項は、特別清算開始の命令があったときに、協定債権について938条1項2号または3号に規定する特別清算開始の取消しの登記または特別清算終結の登記の日から2か月を経過する日までの間は、時効は完成しないと定めています。
手続が閉じた瞬間に時効が走り出すのではなく、登記の日を起点に2か月の幅が置かれているということです。
計画が組めない債権が条文で指定されている
どの手続きでも、計画や協定で触れられない債権があります。手続が閉じたあとも額が変わらないまま残るため、見通しを立てる段階で外しておく必要があります。
| 条文 | 対象 | 条文の書き方 |
|---|---|---|
| 民事再生法155条4項 | 再生手続開始前の罰金等 | 減免その他権利に影響を及ぼす定めをすることができない |
| 会社更生法168条7項 | 更生手続開始前の罰金等(142条2号) | 減免の定めその他権利に影響を及ぼす定めをすることができない |
| 民事再生法155条5項 | 開始前の共助対象外国租税の請求権 | 定めを置く場合は徴収の権限を有する者の意見を聴かなければならない |
| 会社更生法168条4項 | 租税等の請求権と開始前の罰金等 | 権利の順位による公正かつ衡平な差を設ける規定を適用しない |
罰金等は2つの法律が同じ扱いを置いています。計画で手を付けられない以上、手続を経ても額は動きません。
租税は止まる期間が決まっている
会社更生法50条2項は、開始決定の日から1年間は更生会社の財産に対する国税滞納処分ができず、既にされているものは中止すると定めています。1年経過前に計画が認可されることなく手続が終了したとき、または計画が認可されたときは、その時までです。
第3項により、裁判所は必要と認めるときにこの期間を伸長できますが、あらかじめ徴収の権限を有する者の同意を得なければなりません。第4項は、徴収の権限を有する者がこの同意をすることができると定めています。
破産では扱いが違います。破産法148条1項3号は、開始前の原因に基づく租税等の請求権のうち、開始当時まだ納期限が到来していないもの、または納期限から1年を経過していないものを財団債権としています。配当の対象ではなく、手続の中から支払われる枠に入るということです。
税と罰金は、どの手続きでも別の扱いを受ける。
止まる期間が決まっているもの、財団債権になるもの、計画で触れられないもの。条文がそれぞれ個別に定めているため、まとめて「債務」として見積もると見通しがずれます。
個人の免責には及ばない請求権がある
破産法253条1項は、免責許可の決定が確定したときに、破産者は破産手続による配当を除き破産債権について責任を免れるとしたうえで、例外を列挙しています。免責は個人の破産者についての制度です。
| 号 | 請求権 |
|---|---|
| 1号 | 租税等の請求権 |
| 2号 | 破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権 |
| 3号 | 故意または重大な過失により加えた、人の生命または身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権 |
| 4号 | 夫婦間の協力扶助、婚姻から生ずる費用の分担、子の監護、扶養の各義務に係る請求権など |
破産の全体像は破産手続とはで整理しています。
4つの手続きの「終わったあと」を並べる
| 項目 | 民事再生 | 会社更生 | 特別清算 |
|---|---|---|---|
| 終わりの条文 | 188条(終結の決定) | 234条(5つの終了事由) | 573条(終結)・574条(破産へ) |
| 時間による区切り | 監督委員がいる場合、認可確定から3年(188条2項) | 条文に時間の定めなし | 条文に時間の定めなし |
| 認可・成立後の取消し | 189条により取消しの決定がある | 本記事では条文を確認していない | 本記事では条文を確認していない |
| 取り消されたときの債権 | 原状に復する(190条) | 本記事では条文を確認していない | 本記事では条文を確認していない |
| 保証人への影響 | 本記事では条文を確認していない | 本記事では条文を確認していない | 影響を及ぼさない(会社法571条2項) |
| 時効 | 本記事では条文を確認していない | 本記事では条文を確認していない | 登記の日から2か月を経過する日まで完成しない(会社法515条3項) |
この記事で確認できなかったこと
比較表に「確認していない」と書いた欄があります。民事再生・会社更生・破産における保証人の扱い、会社更生と特別清算の計画・協定の取消しに関する条文、民事再生と会社更生における時効の扱いは、この実行の時点でe-Gov法令検索が403を返しており、条文そのものを取得できなかったため扱っていません。推測で埋めることはしていません。
また、終結や廃止に伴う登記の手続き、税務上の取扱い、代表者個人の保証債務の整理についても扱っていません。個別の判断は弁護士、税理士に相談してください。
よくある質問
認可されれば手続は終わりますか
民事再生法188条1項は、監督委員または管財人が選任されている場合を除き、認可決定の確定により終結の決定をしなければならないと定めています。選任されている場合は2項・3項の要件によります。
3年という期間は何の期間ですか
188条2項は、監督委員が選任されている場合に、認可決定の確定後3年を経過したときに終結の決定をしなければならないと定めています。債務の期限の上限は155条3項により原則10年以内で、別の規定です。
履行が遅れたら誰でも取消しを求められますか
189条3項により、裁判所が評価した権利総額の10分の1以上に当たる権利を有し、履行期限が到来した権利の全部または一部の履行を受けていない再生債権者に限られます。
取り消されたら債務は元に戻りますか
190条本文は、履行完了前に破産手続開始または新たな再生手続開始の決定がされた場合に、変更された再生債権は原状に復すると定めています。ただし書きにより、再生債権者が計画によって得た権利には影響しません。
特別清算の協定で保証人の責任も減りますか
会社法571条2項は、協定が保証人その他共に債務を負担する者に対して有する権利に影響を及ぼさないと定めています。
特別清算が終わると時効はすぐ進みますか
会社法515条3項により、協定債権については特別清算開始の取消しの登記または特別清算終結の登記の日から2か月を経過する日までの間、時効は完成しません。
終わり方まで含めた5手続きの対比は債務整理・事業再生の5手続きを条文で比較、そこに至るまでの選択肢は会社の債務を整理する方法の一覧で扱っています。
出典
- e-Gov法令検索「民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)」第155条・第186条・第188条・第189条・第190条 — 開始前の罰金等に減免等の定めができないことと共助対象外国租税についての意見聴取、 計画の遂行と担保を立てるべき命令の対象3者、終結の決定と認可確定後3年という区切り、取消しの3つの事由と10分の1以上という申立ての制限、取消し後に再生債権が原状に復すること
- e-Gov法令検索「会社更生法(平成十四年法律第百五十四号)」第50条・第168条・第234条 — 国税滞納処分が1年間できないことと期間の伸長に要する同意、罰金等に減免の定めができないこと、更生手続が終了する5つの事由
- e-Gov法令検索「会社法(平成十七年法律第八十六号)」第515条・第571条・第573条・第574条 — 協定債権の時効が登記の日から2か月を経過する日まで完成しないこと、協定の効力範囲と保証人等への不影響、特別清算終結の決定、破産手続開始の決定における義務と裁量の書き分け
- e-Gov法令検索「破産法(平成十六年法律第七十五号)」第148条・第253条 — 開始前の租税等の請求権が財団債権となる範囲と納期限から1年という線引き、免責許可の決定の効力と、その効力が及ばない請求権

