雇用関係助成金は、厚生労働省の一覧ページで13の分類に整理されています。分類ごとにコースがあり、全部を合わせると100を超えるコース数になります。全体を眺めてから選ぼうとすると必ず途中で止まるので、この記事では「自社がいま何をしようとしているか」から入り、金額の単位・上限・窓口・期限という同じ軸で並べ直します。掲載しているのは令和8年度に新規の取組で申請できるものに限り、廃止されて経過措置中のコースは分けて示します。
非正規雇用の人の処遇を上げるならキャリアアップ助成金、訓練を実施するなら人材開発支援助成金、育児・介護の制度を整えるなら両立支援等助成金、仕事が減って休業するなら雇用調整助成金、就職困難者を採用するなら特定求職者雇用開発助成金。この5つで多くの場面が埋まります。
1人あたりの金額がいちばん大きいのは特定求職者雇用開発助成金の240万円(重度障害者等・中小企業・短時間労働者以外、3年6期)。1件あたりでは両立支援等助成金の業務代替手当が最大240万円です。
金額より先に効くのは期限と枠です。計画の提出期限は助成金ごとに違い、人数の上限が別に設定されているものもあります。
コースの要件を満たしても、共通要領の不支給要件に当たると支給されません。労働保険料の未納がその代表です。
掲載の基準と、この記事で扱わないもの
先に範囲を示します。掲載しているのは、厚生労働省「雇用関係助成金一覧」に現行の制度として掲載され、かつ令和8年度に新規の取組で申請できるものです。次のものは本文の比較表から外し、別の節でまとめています。
図1 この記事で扱う範囲と、外したもの
扱うもの
厚生労働省「雇用関係助成金一覧」に掲載され、令和8年度に新規の取組で申請できる助成金。金額・要件は公式ページと令和8年度版リーフレットの記載に限ります。
経過措置中のもの
「廃止済みで経過措置中の助成金一覧」に載っているコースは、比較表から外して別節で扱います。
労働条件等関係助成金
働き方改革推進支援助成金などの労働条件等関係助成金は所管が分かれるため、本記事の比較には含めていません。
障害者雇用納付金制度の助成金
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が支給業務を行うため、窓口が異なります。
金額や要件は制度の改定で変わります。本記事は令和8年10月1日時点で厚生労働省が公開していた内容をもとにしており、申請の前には必ず各助成金の公式ページで最新の支給要領を確認してください。
雇用関係助成金の13分類
厚生労働省「雇用関係助成金一覧」の並びをそのまま示します。番号は同ページの見出し番号です。
| 番号 | 助成金 | 一覧に書かれている対象 |
|---|---|---|
| 1 | 雇用調整助成金 | 休業、教育訓練や出向を通じて従業員の雇用を維持する |
| 2 | 産業雇用安定助成金 | 在籍型出向、生産性向上に資する取組に必要な人材の雇入れ、能登半島地震に伴う雇用の確保(3コース) |
| 3 | 早期再就職支援助成金 | 再就職支援の委託、離職者の早期雇入れと賃金5%以上上昇、中途採用の拡大、東京圏からの移住者の雇入れ |
| 4 | 特定求職者雇用開発助成金 | 就職困難者、発達障害者・難治性疾患患者、中高年層、生活保護受給者等、成長分野等の人材を雇い入れる(5コース) |
| 5 | トライアル雇用助成金 | 職業経験の不足などから就職が困難な求職者、障害者、建設業の若年者・女性を試行的に雇い入れる |
| 6 | 地域雇用開発助成金 | 雇用情勢が特に厳しい地域や沖縄県内で事業所の設置整備をして雇い入れる |
| 7 | 人材確保等支援助成金 | 雇用管理制度・雇用環境整備、中小企業団体、建設キャリアアップシステム、外国人労働者、テレワークなど(7コース) |
| 8 | 通年雇用助成金 | 季節労働者を通年雇用する |
| 9 | 65歳超雇用推進助成金 | 65歳以上への定年引上げ等、高年齢者の雇用管理制度整備、高年齢の有期契約労働者の無期雇用転換 |
| 10 | キャリアアップ助成金 | 有期雇用労働者等の正社員化と処遇改善 |
| 11 | 仕事と家庭の両立支援関係等の助成金(両立支援等助成金) | 男性の育休取得、介護離職防止、育児休業等支援、育休中等業務代替、柔軟な働き方、不妊治療及び女性の健康課題対応 |
| 12 | 人材開発関係の助成金(人材開発支援助成金) | 職務に関連した訓練、教育訓練休暇、デジタル人材育成、事業展開等リスキリング、建設労働者向け訓練 |
| 13 | 障害者雇用納付金制度の助成金 | 作業施設・福祉施設の設置、介助者の配置、ジョブコーチ、通勤対策など(支給は高齢・障害・求職者雇用支援機構) |

目的から入る。やりたいことで絞る
13分類を頭から読むより、自社がやろうとしていることから引くほうが速く着きます。
| やろうとしていること | 見る助成金 | 金額の目安(中小企業) |
|---|---|---|
| 契約社員・パートを正社員にする | キャリアアップ助成金(正社員化コース) | 1人40万〜80万円+加算 |
| 非正規の基本給を上げる | キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース) | 1人4万〜7万円+加算20万円×2 |
| 賞与や退職金の制度を作る | キャリアアップ助成金(賞与・退職金制度導入コース) | 1事業所40万円 |
| 社員に外部研修を受けさせる | 人材開発支援助成金(人材育成支援コース) | 経費の45〜75%+賃金助成800円/時間 |
| 新規事業やDXのための訓練をする | 人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース) | 経費の75%+設備投資加算50% |
| 男性社員に育休を取らせる | 両立支援等助成金(出生時両立支援コース) | 1人目20万円、取得率上昇で60万円 |
| 育休取得者の業務を代わる人に手当を出す | 両立支援等助成金(育休中等業務代替支援コース) | 手当支給額の4分の3(最大240万円) |
| 介護休業を取りやすくする | 両立支援等助成金(介護離職防止支援コース) | 1人40万円ほか |
| 仕事が減って休業させる | 雇用調整助成金 | 休業手当の3分の2(日額上限9,110円) |
| 高年齢者や障害者を採用する | 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース) | 1人60万〜240万円 |
横断比較① 金額の単位・窓口・電子申請
同じ「助成金」でも、1人あたりで積み上がるものと1事業所で頭打ちのものがあります。窓口も一律ではありません。
| 助成金 | 金額の単位 | 1人・1件あたりの上限(中小企業) | 窓口 | ポータルでの電子申請 |
|---|---|---|---|---|
| キャリアアップ助成金 | コースにより1人当たり/1事業所当たり | 正社員化コース 80万円(40万円×2期) | 都道府県労働局・ハローワーク | あり |
| 人材開発支援助成金 | 経費は率、賃金は1人1時間 | 経費助成限度額 1訓練15万〜50万円、1事業所1年度1,000万円 | 都道府県労働局 | あり |
| 両立支援等助成金 | コースにより1人当たり/1事業主当たり | 育休中等業務代替支援コース 業務代替手当 最大240万円 | 都道府県労働局雇用環境・均等部(室) | あり |
| 雇用調整助成金 | 休業手当負担額×助成率 | 日額上限 1人1日9,110円 | 都道府県労働局・ハローワーク | あり |
| 特定求職者雇用開発助成金 | 1人当たり | 重度障害者等 240万円(40万円×6期) | 都道府県労働局・ハローワーク | 別サイトで受付 |
両立支援等助成金だけ窓口が雇用環境・均等部(室)です。他の助成金と同じつもりでハローワークに行くと、担当が違います。
図2 1人・1件あたりの上限額の比較(中小企業、公式資料の記載)
横断比較② いつ何を出すか
金額よりも申込みの順番で落ちる人が多いところです。計画の提出期限と支給申請の起点を並べます。
| 助成金 | 事前に出すもの | その期限 | 支給申請の起点 |
|---|---|---|---|
| キャリアアップ助成金 | キャリアアップ計画(労働組合等の意見を聴いて作成) | 各コースの実施日の前日まで | 取組後6か月分の賃金を支払った日の翌日から2か月以内 |
| 人材開発支援助成金(人材育成支援コース) | 職業訓練実施計画届、対象労働者一覧など | 訓練開始日の6か月前から1か月前までの間 | 訓練終了日の翌日から2か月以内 |
| 両立支援等助成金 | コースにより支援プランの作成・実施、方針の社内周知など | 取組の前(コースごとに条件が異なる) | コースごとに定められた申請期間 |
| 雇用調整助成金 | 労使協定に基づく休業等の計画 | 休業等の実施前 | 判定基礎期間ごとに申請 |
| 特定求職者雇用開発助成金 | 求人の提出(紹介を受けるため) | 雇入れの前(紹介を受ける前) | 各支給対象期の末日の翌日から2か月以内 |
令和8年度版のパンフレットは支給申請期間の原則を「各助成金の支給要領に定める日の翌日から起算して2か月以内です。(郵送の場合は、支給申請期間内に到達していることが必要です。)」と書いています。2か月という長さは共通でも、その「定める日」が助成金ごとに違うということです。期限の詳細は雇用関係助成金の申請の流れと期限で整理しています。
中小企業事業主の範囲は業種で違う
比較表の金額はほとんどが「中小企業」の欄です。ここでいう中小企業事業主の範囲は、令和8年度版のパンフレットに業種別で示されています。
| 業種 | 資本金の額・出資の総額 | 常時雇用する労働者の数 |
|---|---|---|
| 小売業(飲食店を含む) | 5,000万円以下 | 50人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| その他の業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
資本金と労働者数は「または」の関係で、どちらかを満たせば中小企業事業主です。医療法人など資本金・出資金を有していない事業主については、常時雇用する労働者の数で判定するとされています。また、一部の助成金では範囲が異なるとも注記されています。飲食店が小売業に含まれる点は見落としやすいところです。

キャリアアップ助成金|非正規雇用の正社員化と処遇改善
キャリアアップ助成金
実施主体:厚生労働省/窓口:都道府県労働局・ハローワーク/令和8年度は6コース
正社員化コース 80万円賃金規定等改定 1人4万〜7万円賃金規定等共通化 60万円賞与・退職金導入 40万円
有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者といった非正規雇用の労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化、処遇改善の取組を実施した事業主に助成する制度です。令和8年4月8日版のリーフレットに載っているのは、正社員化支援2コースと処遇改善支援4コースの計6コースです。
向く場面:有期雇用の人を正社員にする、非正規の基本給を3%以上上げる、賞与や退職金の制度を新しく作る。
注意点:金額は重点支援対象者に当たるかで倍変わります。キャリアアップ計画を各コースの実施日の前日までに出す必要があり、取組を先に始めると間に合いません。
人材開発支援助成金|訓練経費と訓練中の賃金の一部
人材開発支援助成金
実施主体:厚生労働省/窓口:都道府県労働局/令和8年度は7コース
経費助成 45〜75%賃金助成 1人1時間800〜1,000円限度額 15万〜50万円1事業所1年度1,000万円
雇用する労働者に職務に関連した専門的な知識及び技能を習得させるための職業訓練等を計画に沿って実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成する制度です。人材育成支援コース、教育訓練休暇等付与コース、人への投資促進コース、事業展開等リスキリング支援コースなど7コースがあります。
向く場面:外部研修を受けさせる、OJTとOFF-JTを組み合わせた訓練を行う、DXや新規事業に向けた訓練を実施する。
注意点:計画届の提出は訓練開始日の6か月前から1か月前までで、早すぎても遅すぎても外れます。e-ラーニングと通信制の訓練には賃金助成が付きません。人への投資促進コースは令和4〜8年度の期間限定助成です。
両立支援等助成金|育児・介護と仕事の両立の取組
両立支援等助成金
実施主体:厚生労働省/窓口:都道府県労働局雇用環境・均等部(室)/2026年度は6コース
業務代替手当 最大240万円育休取得率の上昇 60万円介護休業 40万円育休取得時+復帰時 30万円+30万円
仕事と育児・介護等を両立できる職場環境づくりのために取組を行った事業主に支給されます。出生時両立支援、介護離職防止支援、育児休業等支援、育休中等業務代替支援、柔軟な働き方選択制度等支援、不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援の6コースです。
向く場面:男性社員の育休取得を進める、介護休業の制度を整える、育休取得者の業務を代わる社員に手当を出す。
注意点:人数の枠がコースごとに違います(育児休業等支援コースは1事業主2人まで、育休中等業務代替支援コースは3種別合わせて1年度10人まで)。要件の中心は方針の社内周知、面談、支援プランの作成です。
雇用調整助成金|休業・教育訓練・出向で雇用を維持する
雇用調整助成金
実施主体:厚生労働省/窓口:都道府県労働局・ハローワーク/コース区分なし
助成率 中小3分の2日額上限 9,110円教育訓練加算 1,200円1年100日・3年150日
景気の変動、産業構造の変化その他の経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、一時的な雇用調整(休業、教育訓練または出向)を実施して従業員の雇用を維持した場合に助成されます。他の助成金と違い、制度を作ったことではなく仕事が減っている事実が入口です。
向く場面:売上や生産量が前年同期比10%以上落ち、解雇せず休業や教育訓練でしのぐ。
注意点:休業手当を先に支払ってからの申請です。累計支給日数が30日を超えると、教育訓練の実施率で助成率が変わります(実施率10分の1未満なら中小企業で2分の1)。
特定求職者雇用開発助成金|就職困難者を紹介で雇い入れる
特定求職者雇用開発助成金
実施主体:厚生労働省/窓口:都道府県労働局・ハローワーク/5コース
高年齢者・母子家庭の母等 60万円身体・知的障害者 120万円重度障害者等 240万円短時間労働者 40万・80万円
高年齢者や障害者等の就職困難者をハローワーク等の紹介により、継続して雇用する労働者として雇い入れる事業主に助成されます。金額は大きいものの、支給対象期ごとに2回から6回に分けて支払われます。
向く場面:ハローワークや届出済みの職業紹介事業者の紹介で、就職困難者を継続雇用の前提で採用する。
注意点:紹介の経路が入口の要件です。令和8年5月1日以降の紹介については、高年齢者(60歳以上)に紹介日の個別支援要件が加わりました。令和8年4月以降の申請分は賃金台帳の提出が確認できない場合に不支給です。
5つ以外にも、条件が合えば使える助成金がある
中心の5つに当たらない場合でも、状況が合致すれば使える助成金があります。厚生労働省の一覧に書かれている対象をそのまま並べます。金額や要件は各助成金の公式ページで確認してください。
| 助成金・コース | 一覧に書かれている対象 | 当てはまりやすい場面 |
|---|---|---|
| トライアル雇用助成金(一般トライアルコース) | 職業経験の不足などから就職が困難な求職者を試行的に雇い入れる | いきなり継続雇用を前提にできないが、試行から入りたい |
| 65歳超雇用推進助成金(65歳超継続雇用促進コース) | 65歳以上への定年引上げ等を実施する | 定年の引上げや継続雇用制度の見直しを検討している |
| 65歳超雇用推進助成金(高年齢者無期雇用転換コース) | 高年齢の有期契約労働者を無期雇用に転換する | 高年齢の契約社員を無期に切り替える |
| 人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース) | 雇用管理制度(賃金規定制度、諸手当等制度、人事評価制度、職場活性化制度、健康づくり制度)や業務負担軽減機器等の導入を通じて、従業員の職場定着を支援する | 離職率の改善を目的に制度や機器を入れる |
| 人材確保等支援助成金(テレワークコース) | 適正な労務管理下における良質なテレワークの導入・実施を通じて従業員の離職率の低下を図る | テレワークを制度として導入する |
| 人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース) | 外国人特有の事情に配慮した就労環境の整備(就業規則等の多言語化など)を通じて、外国人労働者の職場定着を図る | 外国人労働者の受け入れ体制を整える |
| 産業雇用安定助成金(スキルアップ支援コース) | 労働者のスキルアップを在籍型出向により行い、出向から復帰した際の賃金を出向前と比較して5%以上上昇させる | 他社への在籍型出向で人材を育てる |
| 地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース) | 雇用情勢が特に厳しい地域で、事業所の設置整備をして従業員を雇い入れる | 対象地域で事業所を新設・増設する |
| 通年雇用助成金 | 季節労働者を通年雇用する | 季節性の強い業種で通年雇用に切り替える |
この表のうち、地域雇用開発助成金と通年雇用助成金は地域が限定されます。人材確保等支援助成金の建設分野のコースや、トライアル雇用助成金の若年・女性建設労働者トライアルコースのように、業種で限定されるものもあります。自社が対象地域・対象業種に入るかどうかは、金額を調べる前に確認したほうが早く終わります。
また、トライアル雇用助成金には特定求職者雇用開発助成金との接続があります。特定求職者雇用開発助成金のパンフレットには、トライアル雇用助成金を活用して雇い入れた対象者(母子家庭の母等、父子家庭の父、中国残留邦人等永住帰国者及び障害者)をトライアル雇用終了後も引き続き継続して雇用する場合、本助成金の一部を受給できる場合があると書かれています。試行から継続雇用へつなぐ設計が、制度の側にも用意されているということです。
廃止されたコースが検索に残っている
助成金の名前で検索すると、すでに廃止されたコースの解説が上位に出てきます。厚生労働省は「廃止済みで経過措置中の助成金一覧」を公開しており、最近廃止されたものだけでも次のとおりです。
| 廃止日 | コース |
|---|---|
| 令和8年3月31日 | キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)/特定求職者雇用開発助成金(成長分野等人材確保・育成コース)/早期再就職支援等助成金(UIJターンコース) |
| 令和7年3月31日 | 特定求職者雇用開発助成金(就職氷河期世代安定雇用実現コース)/人材確保等支援助成金(人事評価改善等助成コース)/人材確保等支援助成金(建設キャリアアップシステム等普及促進コース)/高年齢労働者処遇改善促進助成金/両立支援等助成金(不妊治療両立支援コース) |
| 令和6年3月31日 | 人材確保等支援助成金(介護福祉機器助成コース)/キャリアアップ助成金(短時間労働者労働時間延長コース)/人材開発支援助成金(障害者職業能力開発コース) |
| 令和5年3月31日 | 人材開発支援助成金(特定訓練コース・一般訓練コース・特別育成訓練コース)/両立支援等助成金(新型コロナウイルス感染症小学校休業等対応コース) |
「年収の壁」対応でよく紹介される社会保険適用時処遇改善コースは、令和8年3月31日に廃止されています。これからの取組で狙う先は短時間労働者労働時間延長支援コースです。同じ名前でも、キャリアアップ助成金の短時間労働者労働時間延長コース(令和6年3月31日廃止)とは別の制度なので、記事を読むときは年度を見る必要があります。

公式サイトの中にも古いページが残っている
古い情報は他社の記事だけの問題ではありません。厚生労働省のサイトにも「雇用・労働分野の助成金のご案内[詳細版]」というページがあり、右上に「令和元年7月1日現在」と表示されています。そこに並ぶコース構成は、いまの一覧ページとは違います。
たとえば、この詳細版ページのキャリアアップ助成金には健康診断制度コースや諸手当制度共通化コース、選択的適用拡大導入時処遇改善コースが載っていますが、いずれも現行の一覧にはありません。労働移動支援助成金や中途採用等支援助成金という名称も、現在は早期再就職支援等助成金に整理されています。
公式ドメインのページであっても、日付を確認してから読む必要があるということです。本記事が各節で資料の版(令和8年4月8日版など)を明示しているのは、この取り違えを避けるためです。

どの助成金でも共通して満たす条件がある
コースの要件を満たしても、共通の条件で止まります。令和8年度版のパンフレットは、受給対象となる事業主を3つに整理しています。
図3 受給対象となる事業主(令和8年度版パンフレットの記載)
- 雇用保険適用事業所の事業主 支給申請日及び支給決定日の時点で雇用保険被保険者が存在する事業所の事業主であること。
- 期間内に申請を行う事業主 原則として、各助成金の支給要領に定める日の翌日から起算して2か月以内です。
- 支給のための審査に協力する事業主 審査に必要な書類を整備・保管する、都道府県労働局やハローワーク等から書類の提出を求められたら応じる、実地調査に応じる、という具体例が挙げられています。
これに加えて共通要領には不支給要件が並んでおり、労働保険料の未納や役員等一覧の未提出は、コース側の要件と無関係に不支給につながります。詳しくは雇用関係助成金の共通要領を確認してください。書類の作成を外部に任せていた場合の責任については雇用関係助成金の不正受給で扱っています。
使うときに失敗しやすい条件
助成金を資金計画に入れるときに外しやすい点
・後払いです。人件費や訓練費を先に支払い、要件を満たしてから申請し、審査を経て入金されます。入金を当てにして支出を決めると、間の期間で資金が細ります。
・金額表がそのまま出るとは限りません。特定求職者雇用開発助成金は支給対象期に支払った賃金額が上限、人材開発支援助成金は助成率で計算した額より経費助成限度額が先に効きます。
・併給調整があります。複数の助成金を同時に狙う場合、厚生労働省は併給調整早見ツールでの確認と、申請前の労働局への相談を案内しています。
・制度の改定が年度途中にも入ります。支給要領と申請様式は版が分かれるため、申請の直前に公式ページを開き直してください。
資金繰りの組み立て方は資金繰り改善の具体策100、補助金との性格の違いは補助金・助成金を探すで扱っています。
よくある質問
- 助成金と補助金の違いは何ですか。
- 雇用関係助成金は通年で受け付けられ、要件を満たしていることを書類で示せるかどうかが判定の中心です。公募期間が区切られ採択で選ばれる補助金とは、この点が違います。ただし要件を満たせば自動的に出るわけではなく、労働局の審査を経ます。
- 複数の助成金を同時に申請できますか。
- 厚生労働省は、複数の助成金の支給申請にあたって併給調整がかかる場合があるとして「併給調整早見ツール」での確認を案内し、個別の申請ではこれによらない場合があるため申請前に管轄の労働局へ相談するよう求めています。
- 飲食店は中小企業事業主に当たりますか。
- 令和8年度版のパンフレットでは、小売業(飲食店を含む)の範囲を資本金の額・出資の総額5,000万円以下、または常時雇用する労働者の数50人以下としています。
- 両立支援等助成金の申請先もハローワークですか。
- 両立支援等助成金の問い合わせ先・申請先は都道府県労働局雇用環境・均等部(室)です。他の雇用関係助成金と担当部署が異なります。
- すでに廃止されたコースは、いま申請できますか。
- 「廃止済みで経過措置中の助成金一覧」に掲載されているのは、経過措置期間中のものです。新規の取組で申請できるかどうかは各コースのページで確認してください。社会保険適用時処遇改善コースは令和8年3月末までに取組を行った事業主が対象と注記されています。
- この記事の金額はいつ時点のものですか。
- 令和8年10月1日に厚生労働省の公式ページおよび令和8年度版リーフレット・パンフレットに掲載されていた内容です。各節で参照した資料の版を明示しています。
まとめ
雇用関係助成金は13分類あり、実務で当たるのは主に5つです。非正規の処遇ならキャリアアップ助成金、訓練なら人材開発支援助成金、育児・介護なら両立支援等助成金、休業なら雇用調整助成金、就職困難者の採用なら特定求職者雇用開発助成金。金額の上限は特定求職者雇用開発助成金の240万円と両立支援等助成金の業務代替手当240万円が並びます。
選ぶ順番は、やろうとしていることから引き、金額ではなく期限と枠を先に見ることです。計画の提出期限は助成金ごとに違い、支給申請の2か月という長さは共通でも起点が違います。中小企業事業主の範囲も業種で分かれます。
そして、コースの要件を満たしても共通要領の不支給要件に当たれば支給されません。労働保険料の納付状況と役員等一覧は、コースを決める前に確認しておいてください。個別の適用可否は、管轄の都道府県労働局またはハローワーク、両立支援等助成金については雇用環境・均等部(室)にご相談ください。
助成金という資金調達方法そのもの(財源・法的根拠・探し方・受け取れない条件)は助成金とはで通しで整理しています。
参照した一次情報
- 厚生労働省「雇用関係助成金一覧」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/index_00057.html(13分類の構成と、各助成金・各コースの対象の1行説明)
- 厚生労働省「令和8年度 雇用・労働分野の助成金のご案内(簡略版)」(資料番号PL080401保01、内容は令和8年4月8日時点)https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000758206.pdf(受給対象となる事業主の3条件、審査への協力の具体例、支給申請期間の原則、中小企業事業主等の範囲)
- 厚生労働省「廃止済みで経過措置中の助成金一覧」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/haishi.html(廃止日つきのコース一覧)
- 厚生労働省「雇用・労働分野の助成金のご案内[詳細版]」https://www.mhlw.go.jp/general/seido/josei/kyufukin/koyouantei.html(令和元年7月1日現在と表示されており、現行の一覧とコース構成が異なることの確認)
- 厚生労働省「キャリアアップ助成金」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/jigyounushi/career.html
- 厚生労働省「人材開発支援助成金」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html
- 厚生労働省「両立支援等助成金のご案内」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/shokuba_kosodate/ryouritsu01/
- 厚生労働省「雇用調整助成金」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07_20200515.html
- 厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/tokutei_konnan.html
- 厚生労働省「雇用関係助成金の申請にあたって」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/index_00018.html(共通要領、併給調整早見ツール、郵送申請)
掲載した金額・要件・期限は2026年10月1日に厚生労働省の公式ページおよび令和8年度版のリーフレット・パンフレットに掲載されていた内容です。掲載の順序は厚生労働省の一覧ページの並びと、想定される利用場面に基づくもので、広告等の対価によるものではありません。制度は年度途中にも改定され、支給要領と申請様式は版が分かれます。受給を保証するものではなく、適用の可否は管轄の都道府県労働局等の判断によります。個別の労務・会計の判断については社会保険労務士等の専門家にご相談ください。

