人材開発支援助成金の7コースと助成率|経費45%〜75%、計画届は訓練開始の6か月前から1か月前まで

人材開発支援助成金の主な訓練区分ごとの経費助成率を横棒で並べたアイキャッチ

人材開発支援助成金は、従業員に職務に関連した訓練を受けさせた事業主に、訓練経費と訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。令和8年度は7コースあり、コースによって経費の助成率が45%から75%まで開きます。訓練を始めてから申し込む制度ではなく、計画を先に出す制度なので、手続きの順番を間違えると受け取れません。厚生労働省が公開している令和8年4月8日版のリーフレットと制度ページの記載から、どのコースで何%が出るのか、いつ何を出すのかを組み立てます。

先に押さえる4点

経費助成率がいちばん高いのは有期実習型訓練の75%と事業展開等リスキリング支援コースの75%(いずれも中小企業)。人材育成訓練でも、対象が有期契約労働者等なら70%です。正規雇用労働者等への訓練は45%で、同じ制度でも対象者によって倍近く違います。

計画届の提出期限は訓練開始日の6か月前から1か月前まで(人材育成支援コース)。訓練が始まってからでは受け付けられません。支給申請は訓練終了日の翌日から2か月以内です。

人への投資促進コースは、リーフレットに令和4〜8年度の期間限定助成と明記されています。恒久的なコースとして計画に組み込む前に、年度の区切りを確認しておく必要があります。

厚生労働省は制度ページで「『訓練経費』は無料になりません」と注意喚起しています。訓練費用の返金やクーポンを受け取ると全額負担していないとみなされ、助成金を受給できません。

人材開発支援助成金とは、訓練経費と訓練中の賃金を後から助成する制度

厚生労働省は、人材開発支援助成金を「事業主等が雇用する労働者に対して、職務に関連した専門的な知識及び技能を習得させるための職業訓練等を計画に沿って実施した場合等に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成する制度」と説明しています。「計画に沿って実施した場合等に」という部分が要で、計画を出さずに実施した訓練は対象になりません。

支給対象は、雇用保険適用事業所の事業主と、雇用保険被保険者である労働者です。雇用保険に入っていない役員だけの訓練や、雇用保険に加入していない働き方の人への訓練は外れます。

資金の性格としては後払いの立替えです。訓練費用は先に全額を支払い、支給申請と審査を経てから助成分が入ります。訓練経費が丸ごと国から出るわけではなく、経費のうち助成率の分だけが戻る設計です。返済不要資金全体の位置づけは補助金・助成金を探すで整理しています。

厚生労働省の人材開発支援助成金のページで、コース一覧と不正受給・訓練経費についての注意喚起が表示されている画面キャプチャ
厚生労働省「人材開発支援助成金」のページ。電子申請の入口が4コース分並び、その下に不正受給の公表と「『訓練経費』は無料になりません」の注意喚起が置かれている。

令和8年度の7コースと、それぞれが助成する訓練

制度ページには「人材開発支援助成金には以下の7コースがあります」と書かれ、次の7つが並んでいます。

表1 人材開発支援助成金の7コース(厚生労働省の制度ページの記載を整理)
コース 助成の対象になる訓練 電子申請
人材育成支援コース 職務に関連した知識・技能を習得させる訓練、厚生労働大臣の認定を受けたOJT付き訓練、非正規雇用労働者を対象とした正社員化を目指す訓練 あり
教育訓練休暇等付与コース 有給教育訓練等制度を導入し、労働者が当該休暇を取得して訓練を受けた場合 あり
人への投資促進コース デジタル人材・高度人材を育成する訓練、労働者が自発的に行う訓練、定額制訓練(サブスクリプション型)等 あり
事業展開等リスキリング支援コース 新規事業の立ち上げなどの事業展開等に伴い、新たな分野で必要となる知識及び技能を習得させる訓練 あり
建設労働者認定訓練コース 認定職業訓練または指導員訓練のうち建設関連の訓練、建設労働者に有給で認定訓練を受講させた場合の賃金の一部 制度ページ内の別ページで案内
建設労働者技能実習コース 雇用する建設労働者に技能向上のための実習を有給で受講させた場合 制度ページ内の別ページで案内
障害者職業能力開発コース 障害者の職業に必要な能力を開発、向上させるための教育訓練を継続的に実施する施設の設置・運営 制度ページ内の別ページで案内

7コース目の障害者職業能力開発コースには注記があります。「人材開発支援助成金(障害者職業能力開発コース)は令和6年4月から独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が支給業務を行う障害者雇用納付金制度に基づく助成金へ移管します」。窓口が労働局ではなくなっている点は、申請先を調べるときに効いてきます。

人材育成支援コースの4つの訓練、入口は10時間以上のOFF-JT

使う機会がいちばん多いのが人材育成支援コースです。令和8年4月8日版のリーフレットは、支給対象になる訓練を4つに分けています。

図1 人材育成支援コースで助成対象になる4つの訓練

① 人材育成訓練

10時間以上のOFF-JTによる訓練。もっとも汎用的で、外部研修の受講がここに入ります。

② 認定実習併用職業訓練

新卒者等のために実施するOJTとOFF-JTを組み合わせた訓練。厚生労働大臣の認定が要ります。

③ 有期実習型訓練

有期契約労働者等の正社員転換等を目的として実施するOJTとOFF-JTを組み合わせた訓練。

④ 中高年齢者実習型訓練

45歳以上の労働者を対象として実施するOJTとOFF-JTを組み合わせた訓練。令和8年4月8日に新設されました。

④の中高年齢者実習型訓練は、制度ページのお知らせに「人材開発支援助成金(人材育成支援コース)改正:中高年齢者実習型訓練を新設しました」(掲載日 令和8年4月8日)として載っています。45歳以上を対象にしたOJT付き訓練の枠が新しく立ったということで、古い解説記事にはこの区分がありません。

人材育成支援コースの助成率は45%から75%、対象者で倍近く違う

金額の決まり方は、経費助成率、賃金助成額、OJT実施助成額の3本立てです。リーフレットの表を、そのまま並べます。括弧内は中小企業事業主以外(大企業)の数値です。

表2 人材育成支援コースの助成率・助成額(令和8年4月8日版リーフレット。括弧内は中小企業事業主以外)
支給対象となる訓練 経費助成率(通常分) 賃金要件・資格等手当要件を満たす場合 賃金助成額(1人1時間当たり) OJT実施助成額(1人1コース当たり)
① 人材育成訓練(正規雇用労働者等) 45%(30%) +15%(+15%) 800円(400円)
+200円(+100円)
−
① 人材育成訓練(有期契約労働者等) 70% +15% −
② 認定実習併用職業訓練 45%(30%) +15%(+15%) 20万円(11万円)/+5万円(+3万円)
③ 有期実習型訓練 75% +25% 10万円(9万円)/+3万円(+3万円)
④ 中高年齢者実習型訓練 60%(45%) +15%(+15%) 10万円(9万円)/+3万円(+3万円)

同じ人材育成訓練でも、正規雇用労働者等が45%、有期契約労働者等が70%です。非正規雇用の人の訓練を厚くする設計になっています。有期実習型訓練の75%はさらに高く、賃金要件等を満たすと+25%の加算が付きます。

賃金助成には注記があり、「e-ラーニング、通信制による訓練は経費助成のみです。賃金助成は対象外です」と書かれています。オンライン完結の研修を選ぶと、経費の助成は受けられても訓練時間分の賃金助成は付きません。時間数の多い訓練ほど、この差は大きくなります。

厚生労働省の人材育成支援コースのご案内リーフレットで、支給対象と助成率・助成限度額の表が示されている画面キャプチャ
厚生労働省「令和8年度版 人材育成支援コースのご案内(令和8年4月8日版)」。4つの訓練区分ごとの経費助成率、賃金助成額、OJT実施助成額が1枚に収まっている(資料番号LL080408開企05)。

賃金要件・資格等手当要件を満たすと助成率が上がる

表の「+15%」「+25%」が付く条件は、リーフレットの注記に書かれています。1つは、訓練修了後に行う訓練受講者に係る賃金改定後の賃金を比較して5%以上上昇している場合。もう1つは、資格等手当の支払を就業規則等に規定した上で、訓練修了後に訓練受講者に対して当該手当を支払い、かつ、当該手当の支払い前後の賃金を比較して3%以上上昇している場合です。いずれかを満たすと助成率等が加算されます。

制度ページにも「賃上げ、資格手当等の支払いにより賃金を上昇させた事業所は助成額が割増されます」という案内が置かれ、事業主向けQ&Aが用意されています。訓練を実施するだけでなく、訓練後の処遇まで含めて設計すると助成率が変わる、という読み方になります。処遇改善そのものを狙うならキャリアアップ助成金の賃金規定等改定コースが別建てであります。

経費助成には限度額がある。訓練時間で15万〜50万円、1事業所1年度1,000万円

助成率だけを見て予算を組むと、限度額で頭打ちになります。人材育成支援コースの限度額は、受講者1人1訓練あたりで訓練時間に応じて決まり、さらに1事業所1年度あたりの上限があります。

表3 人材育成支援コースの経費助成限度額(令和8年4月8日版リーフレット)
訓練時間 中小企業 大企業
10時間以上100時間未満 15万円 10万円
100時間以上200時間未満 30万円 20万円
200時間以上 50万円 30万円
1事業所1年度あたりの助成限度額 1,000万円

賃金助成にも上限があり、リーフレットは「賃金助成限度額(1人1訓練あたり)は、1,200時間。専門実践教育訓練については1,600時間」としています。回数の制限もあり、「訓練受講回数は労働者1人につき、1年度で3回まで(有期実習型訓練については同一の事業主が同一の労働者に対して1回まで)」と書かれています。同じ人に何度も受けさせる使い方はできません。

図2 訓練時間が長いほど経費助成の限度額が上がる(人材育成支援コース、リーフレットの数値)

10時間以上100時間未満(中小企業)

15万円

100時間以上200時間未満(中小企業)

30万円

200時間以上(中小企業)

50万円

10時間以上100時間未満(大企業)

10万円

200時間以上(大企業)

30万円

人への投資促進コースは令和4〜8年度の期間限定、5つのメニューがある

人への投資促進コースのリーフレットには、他のコースにない断り書きがあります。「企業における労働者の人材育成を強力に支援するため、国民の皆さまからのご提案をもとに、令和4〜8年度の期間限定助成として『人への投資促進コース』による助成を行っています」。恒久的な制度ではない点は、複数年の育成計画を立てるときに効いてきます。

メニューは5つで、定額制訓練(サブスクリプション型の研修サービスによる訓練の実施)、高度デジタル人材訓練/成長分野等人材訓練(高度デジタル人材等の育成のための訓練の実施)、情報技術分野認定実習併用職業訓練(IT分野未経験者の即戦力化のための訓練の実施)、自発的職業能力開発訓練(労働者が自発的に受講した訓練費用を負担)、長期教育訓練休暇等制度(働きながら訓練を受講するための休暇制度等を導入)です。

表4 人への投資促進コースの主なメニューと助成率(令和8年4月8日版リーフレット)
メニュー 対象の訓練 経費助成率(中小/大) 賃金助成額(中小/大)
定額制訓練 サブスクリプション型の研修サービス 60%/45%(+15%) −
高度デジタル人材訓練・成長分野等人材訓練 ITスキル標準・DX推進スキル標準レベル3・4となる訓練等 75%/60% 1,000円/500円
高度デジタル人材訓練・成長分野等人材訓練 海外も含む大学院での訓練 75% 国内大学院の場合 1,000円
自発的職業能力開発訓練 労働者の自発的な訓練費用を事業主が負担した訓練 45%(+15%) −
情報技術分野認定実習併用職業訓練 IT分野未経験者の即戦力化のための訓練 60%/45%(+15%) 800円/400円(+200円/+100円)

このコースについても、制度ページのお知らせに「人材開発支援助成金(人への投資促進コース)改正:新規採用助成・職務代行助成を追加しました」(掲載日 令和8年4月8日)と載っています。訓練そのものへの助成に加えて、訓練中の人員を補う側への助成が足されたという構成です。

事業展開等リスキリング支援コースは経費75%、設備投資加算50%が新設された

新規事業やDXに向けた訓練を対象にするのが事業展開等リスキリング支援コースです。助成率は中小企業で経費75%、賃金助成が1人1時間1,000円、大企業で経費60%、賃金助成500円。令和8年4月8日に設備投資加算が新設され、中小企業は1コースの一の導入費用あたり50%が加算されます。

表5 事業展開等リスキリング支援コースの助成率と経費助成限度額(令和8年4月8日版リーフレット)
企業規模 経費助成 賃金助成(1人1時間) 設備投資加算 10時間以上100時間未満 100時間以上200時間未満 200時間以上
中小企業 75% 1,000円 50% 30万円 40万円 50万円
大企業 60% 500円 − 20万円 25万円 30万円

対象になる訓練には条件があります。訓練時間数が10時間以上であること、OFF-JT(企業の事業活動と区別して行われる訓練)であること、そして職務に関連した訓練で、事業展開に伴う新分野の知識・技能、企業内のDX化やグリーン・カーボンニュートラル化に関連する知識・技能、人事及び人材育成に関する計画に基づき今後従事することが予定される職務に必要な知識・技能のいずれかであることです。

手続きも他のコースより1枚多くなります。リーフレットには「本コースでは、事業展開などの内容を記載した『事業展開等実施計画』(様式第1-3号)を職業訓練実施計画届と併せて提出する必要があります」と書かれています。さらに、人事及び人材育成に関する計画を根拠にする場合は、あらかじめ認定経営革新等支援機関の確認を受ける必要があります。「事業展開」は訓練開始日から起算して3年以内に実施する予定のものまたは6か月以内に実施したものであること、という時期の条件も付きます。

リーフレットには活用例も載っています。ドローン測量プロフェッショナル育成コースを訓練時間30時間(7.5時間×4日間)、訓練経費30万円/1人で3人が受講し、測量用ドローン80万円を導入した場合、経費助成67.5万円(30万円×75%×3人)、賃金助成9万円(30時間×1,000円×3人)、設備投資加算40万円(80万円×50%)という計算例です。設備投資加算の限度額は支給対象労働者1人につき15万円、10人以上の場合は労働者数にかかわらず150万円で、1事業所が1年度に受給できる助成額は1億円とされています。

厚生労働省の事業展開等リスキリング支援コースのご案内リーフレットで、助成率と活用例が示されている画面キャプチャ
厚生労働省「令和8年度版 事業展開等リスキリング支援コースのご案内(令和8年4月8日版)」。助成率・限度額と、ドローン測量の訓練を例にした試算が載っている(資料番号LL080408開企07)。

主要3コースを並べて、どれで申請するかを決める

同じ訓練が複数のコースの条件に当たることがあります。助成率と限度額を並べると、狙う先が見えます。

表6 主要3コースの比較(中小企業、10時間以上100時間未満の訓練を想定)
比べる軸 人材育成支援コース(人材育成訓練・正規雇用労働者等) 人への投資促進コース(高度デジタル人材訓練) 事業展開等リスキリング支援コース
経費助成率 45% 75% 75%
賃金助成(1人1時間) 800円 1,000円 1,000円
経費助成限度額 15万円 リーフレットのメニュー別の記載による 30万円
設備投資加算 − − 導入費用の50%
追加で必要な書類 職業訓練実施計画届、対象労働者一覧など メニューごとの様式 事業展開等実施計画(様式第1-3号)
期間の区切り 記載なし 令和4〜8年度の期間限定 記載なし

助成率だけで見ると人への投資促進コースと事業展開等リスキリング支援コースが有利ですが、前者は期間限定、後者は事業展開等実施計画という追加書類が要ります。訓練内容がどちらの枠にも当たらなければ、人材育成支援コースの45%が実質の基準線になります。

手続きの順番。計画届は訓練開始日の6か月前から1か月前まで

人材育成支援コースのリーフレットは、受給までの手続きを段階で示しています。訓練の前にやることが2段階あるのが特徴です。

図3 人材育成支援コースの手続きの流れ(令和8年4月8日版リーフレットの記載)

  1. 職業能力開発推進者の選任、事業内職業能力開発計画の策定・労働者への周知 全訓練区分に共通する前提です。
  2. 訓練区分ごとの前提 認定実習併用職業訓練は、訓練開始日の30日前までに実践型人材養成システム実施計画を提出し、厚生労働大臣の認定を受けます。有期実習型訓練は、受講者がジョブ・カードを作成し、事業主が作成した訓練カリキュラムに基づきキャリアコンサルタント等による面接を受けて、訓練の必要性の有無について確認を受けます。
  3. Step1 計画提出 所定の様式に基づき職業訓練実施計画を作成し、訓練開始日の6か月前から1か月前までの間に管轄労働局に提出します。主な提出書類は職業訓練実施計画届(様式第1-1号)、対象労働者一覧(様式第3-1号)など。添付書類は訓練内容を確認できるカリキュラムなどです。
  4. Step2 訓練実施 職業訓練実施計画に基づき訓練を実施し、支給申請までに、訓練にかかった経費全額を支払います。
  5. Step3 支給申請 訓練終了日の翌日から2か月以内に、必要書類を管轄労働局に申請します。有期実習型訓練の場合は、支給申請日までに正社員転換が必要です。

「訓練開始日の6か月前から1か月前までの間」という窓は、早すぎても遅すぎても外れます。研修会社から日程を提示されてから動き始めると、1か月前の期限に間に合わないことがあります。逆に半年以上先の計画を先に出すこともできません。

支給申請時の主な提出書類は、支給申請書、賃金助成の内訳等助成額を算定した書類、OFF-JT実施状況報告書(様式第8-1号)。添付書類は訓練期間中の労働条件がわかるもの(雇用契約書の写しなど)、事業主が訓練費用を負担したことを確認できる振込通知書など、出勤簿、タイムカード、賃金台帳の写しなどです。振込通知書が求められる点は、後述の「経費全額を事業主が負担しているか」の確認につながっています。

人材育成支援コースのご案内リーフレット2ページ目で、手続きの流れと提出書類が段階ごとに示されている画面キャプチャ
同リーフレットの手続きページ。Step1の計画提出からStep3の支給申請まで、各段階の提出書類が並んでいる。

様式は改定される。提出時点の様式を使う

制度ページには、様式についての注意が繰り返し出ています。「支給申請書などの書類は、職業訓練実施計画届または制度導入・適用計画届提出時の様式をお使いください」というのが原則です。ところが例外もあり、令和7年4月1日以降に提出した計画届について令和8年8月3日以降に支給申請を行う場合、様式第8-3号(eラーニング訓練実施結果報告書)は令和8年8月3日改正様式を使うよう案内されています。

さらに、令和8年5月14日付けの支給要領改正により、訓練計画届の提出時期を問わず、令和8年5月14日時点で支給申請が行われていないもの、または支給申請は行われているが支給決定・不支給決定がされていないものについては、「受講料等の価格設定に関する疎明書(様式第28号)」の提出が必要になりました。すでに支給申請を行っている事業主には、対象となる場合に管轄の労働局から追加提出の案内があるとされています。

訓練の計画から支給までは半年から1年かかることがあり、その間に様式や要領が変わります。手元に保存した書式をそのまま使い回さず、申請の直前に制度ページを開き直す運用にしておくほうが安全です。

「訓練経費は無料になりません」という厚生労働省の注意喚起

制度ページの上部には、赤い見出しで2つの注意喚起が置かれています。1つは「不正受給した事業主は公表されます!」、もう1つは「『訓練経費』は無料になりません」です。後者のリーフレットには、人材開発支援助成金は企業が支払った訓練経費の一部を助成する制度であり、この助成金を利用して訓練経費が無料になったり、利益を得たりすることは制度上できない、と書かれています。

リーフレットが挙げている危険サイン

・「無料で訓練が受けられます」という勧誘。助成金を受けるには、事業主が訓練経費を全額負担することが必要条件です。

・訓練経費の返金、クーポン、サービスの提供などを受け取ると、全額負担していないとみなされ、助成金は受給できません。

支給申請の添付書類に振込通知書が入っているのは、この点を確認するためです。研修会社が実質的に費用を還元する形を取っていると、書類の上では全額を払っていても要件を満たしません。厚生労働省は雇用関係助成金のページでも、委託事業者を名乗って助成対象の診断や受給額の無料査定を持ちかける勧誘について、厚生労働省は関与していないとして注意を呼びかけています。

不正受給は公表される。共通のペナルティも重い

雇用関係助成金に共通するペナルティは、不正に受給した助成金の全額返還に加えて、不正受給日の翌日からの延滞金と、不正受給した額の2割に相当する額の納付です。さらに不正受給決定日から5年間、不正受給を行った以外の助成金を含めて雇用関係助成金を受給できなくなり、全額返納されていない場合はこの期間が延長されます。公表基準に該当する場合は、事業主名及び代表者名などが公表されます。

人材開発支援助成金では、制度ページに「不正受給した事業主は公表されます!」というリーフレットが別途掲げられており、自主申告についての案内も載っています。訓練の実態と書類が合っていない状態を放置せず、気づいた時点で管轄の労働局に相談する流れが示されています。

キャリアアップ助成金との組み合わせと、併給調整

有期実習型訓練は、有期契約労働者等の正社員転換等を目的とした訓練です。訓練を終えて正社員化する流れは、キャリアアップ助成金の正社員化コースとつながります。実際、キャリアアップ助成金の重点支援対象者の定義には「人材開発支援助成金の特定の訓練修了者」が含まれており、訓練から正社員化へ進んだ場合に助成額が高い側に入る設計になっています。

ただし、複数の助成金を申請する場合は併給調整がかかることがあります。厚生労働省は「雇用関係助成金の併給調整早見ツール」で確認するよう案内し、このツールは基本的な併給の可否を示したものであるため、個別の申請ではこれによらない場合があるとして、申請前に管轄の労働局へ相談するよう求めています。訓練と正社員化をひとつづきで設計するなら、計画届を出す前に相談しておくのが順番です。

資金繰りの目線。経費は先に全額、助成は後から一部

この助成金を資金計画に入れるときに外せないのが、支出と入金の順番です。Step2の時点で、訓練にかかった経費は全額を支払い終えている必要があります。入るのはStep3の支給申請と審査を経たあとで、しかも経費の45%から75%です。

訓練経費30万円の研修を3人に受けさせた場合、支出は90万円。中小企業の人材育成訓練(正規雇用労働者等)で45%なら助成は40万5,000円ですが、10時間以上100時間未満の訓練であれば限度額15万円が1人1訓練あたりに掛かります。助成率で計算した額が限度額を超えていれば、限度額のほうが効きます。率だけで見積もると入金額を大きく見誤ります。

資金繰り表の作り方は資金繰り改善の具体策100で扱っています。助成金全般の性格は助成金とは?申請条件・申請から受給までの流れもあわせて確認してください。

よくある質問

訓練を始めてしまってから計画届を出しても間に合いますか。
人材育成支援コースのリーフレットは、必要書類を訓練開始日の6か月前から1か月前までの間に管轄労働局に提出するとしています。開始後の提出は想定されていません。
e-ラーニングだけの研修でも助成を受けられますか。
リーフレットの注記では、e-ラーニング、通信制による訓練は経費助成のみで、賃金助成は対象外とされています。経費助成の対象にはなりますが、訓練時間分の賃金助成は付きません。
同じ社員に何度も訓練を受けさせて申請できますか。
人材育成支援コースの注記では、訓練受講回数は労働者1人につき1年度で3回までとされ、有期実習型訓練については同一の事業主が同一の労働者に対して1回までとされています。
研修会社から「実質無料で受けられる」と提案されました。
厚生労働省は制度ページで「『訓練経費』は無料になりません」として注意喚起しています。助成金を受けるには事業主が訓練経費を全額負担することが必要条件で、返金やクーポン、サービスの提供などを受け取ると全額負担していないとみなされ、受給できないとされています。
人への投資促進コースは来年度以降も使えますか。
リーフレットには令和4〜8年度の期間限定助成と書かれています。年度をまたぐ育成計画に組み込む場合は、その時点の制度ページで取り扱いを確認してください。
障害者職業能力開発コースの申請先はどこですか。
制度ページには、令和6年4月から独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が支給業務を行う障害者雇用納付金制度に基づく助成金へ移管する旨が記載されています。

まとめ

人材開発支援助成金は7コース。経費助成率は、人材育成訓練の正規雇用労働者等で45%、有期契約労働者等で70%、有期実習型訓練で75%、事業展開等リスキリング支援コースで75%(いずれも中小企業)です。賃金助成は1人1時間800円から1,000円ですが、e-ラーニングと通信制には付きません。

限度額は率より先に効きます。人材育成支援コースの経費助成限度額は訓練時間に応じて15万円から50万円、1事業所1年度あたり1,000万円。率で計算した額が限度額を超えていれば、限度額が受け取れる上限です。

手続きは、職業能力開発推進者の選任と事業内職業能力開発計画の策定が前提にあり、計画届は訓練開始日の6か月前から1か月前まで、支給申請は訓練終了日の翌日から2か月以内。様式と支給要領は年度途中にも改定されるため、申請の直前に制度ページを開き直してください。個別の適用可否は、管轄の都道府県労働局にご確認ください。

訓練以外の助成金も含めて選び直したい場合は雇用関係助成金13分類の比較に一覧があります。制度の仕組みそのものは助成金とはで整理しています。

参照した一次情報

助成率・限度額・提出期限は2026年9月30日に厚生労働省の公式ページおよび令和8年4月8日版リーフレットに掲載されていた内容です。支給要領と申請様式は年度途中にも改定されており、適用される内容は計画届の提出時期や取組を行った日によって変わります。受給を保証するものではなく、適用の可否は管轄の都道府県労働局の判断によります。個別の労務・会計の判断については社会保険労務士等の専門家にご相談ください。