【おすすめ助成金レビュー】人材開発支援助成金(特定訓練コース)

man
「おすすめの助成金ってどれ?」
「どんなメリットがあるのか?」
「どうやって申請・取得するの?」

助成金はお得であることは理解していても、その内容を把握することは簡単ではありません。今回は、数ある助成金の中でも、おすすめできる助成金の内容を徹底解説します。

人材開発支援助成金(特定訓練コース)の概要

人材開発支援助成金(特定訓練コース)の概要

人材開発支援助成金とは?

人材開発支援助成金は、労働者の職業生活設計の全期間を通じて段階的かつ体系的な職業能力開発を効果的に促進するため、事業主等が雇用する労働者に対して職務に関連した専門的な知識及び技能の習得をさせるための職業訓練などを計画に沿って実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成する制度のこと

を言います。

人材開発支援助成金は何をしたら助成されるのか?

有期契約労働者等に以下の訓練を行った場合に助成されます。

  1. 一般職業訓練(Off-JT)(育児休業中訓練、中長期的キャリア形成訓練を含む)
  2. 有期実習型訓練(「ジョブ・カード」を活用したOff-JTとOJTを組み合わせた3~6か月の職業訓練)
  3. 中小企業等担い手育成訓練(業界団体を活用したOff-JTTとOJTを組み合わせた最大3年の職業訓練)

Off-JTとは

生産ラインまたは就労の場における通常の生産活動と区別して業務の遂行の過程外で行われる(事業内または事業外の)職業訓練のこと

OJTとは

適格な指導者の指導の下、事業主が行う業務の遂行の過程内における実務を通じた実践的な技能およびこれに関する知識の習得に係る職業訓練のこと

有期契約労働者とは?

期間の定めのある労働契約を締結する労働者(短時間労働者および派遣労働者のうち、期間の定めのある労働契約を締結する労働者を含む)をいいます。

つまり、

契約期間が決まっている労働者に対して、研修などの職業訓練を行った場合に助成金が支払われる仕組み

となっています。

人材開発支援助成金は、誰に助成されるのか?

人材開発支援助成金は、誰に助成されるのか?

有期契約労働者

もしくは

  • 雇用保険に未加入者
  • 雇用契約書を交わしていない方

※雇用保険や雇用契約書が未整備な場合は対象となります。

人材開発支援助成金を利用できる条件

  • 上記の対象者がいること
  • 雇用保険・労災保険に加入すること
  • OJT研修に関しては、研修者が社内記録を残すこと

人材開発支援助成金は、いくら助成されるのか?

人材開発支援助成金は、いくら助成されるのか?

Off-JT分の支給額

賃金助成

  • 中小企業(生産性の向上なし):1人1時間当たり760円
  • 中小企業(生産性の向上あり):1人1時間当たり960円
  • 大企業(生産性の向上なし):1人1時間当たり475円
  • 大企業(生産性の向上あり):1人1時間当たり600円

※1人当たりの助成時間数は1,200時間を限度

中小企業事業主の範囲
  • 小売業(飲食店を含む):資本金 5,000万円以下または従業員数50人以下
  • サービス業:資本金 5,000万円以下または従業員数100人以下
  • 卸売業:資本金 1億円以下または従業員数100人以下
  • その他の業種:資本金 3億円以下または従業員数300人以下
生産性要件
  • 助成金の支給申請等を行う直近の会計年度における「生産性」が
    • その3年度前に比べて6%以上伸びていること
    • その3年度前に比べて1%以上(6%未満)伸びていること、かつ金融機関から一定の「事業性評価」を得ていること
  • 生産性 = ( 営業利益+人件費+減価償却費+動産・不動産賃借料+租税公課) / 雇用保険被保険者数

経費助成

1人当たり Off-JTの訓練時間数に応じた額

【一般職業訓練(育児休業中訓練)、有期実習型訓練】

※中小企業等担い手育成訓練は対象外

  • 100時間未満:10万円(7万円)
  • 100時間以上200時間未満:20万円(15万円)
  • 200時間以上:30万円(20万円)
【中長期的キャリア形成訓練】
  • 100時間未満:15万円(10万円)
  • 100時間以上200時間未満:30万円(20万円)
  • 200時間以上:50万円(30万円)
【中長期的キャリア形成訓練】(有期実習型訓練後に正規雇用等に転換された場合)
  • 100時間未満:15万円(10万円)
  • 100時間以上200時間未満:30万円(20万円)
  • 200時間以上:50万円(30万円)

※事業主が負担した実費が上記を下回る場合は実費を限度
※育児休業中訓練は経費助成のみ

()内は大企業

OJT分の支給額

賃金助成

  • 中小企業(生産性の向上なし):1人1時間当たり760円
  • 中小企業(生産性の向上あり):1人1時間当たり960円
  • 大企業(生産性の向上なし):1人1時間当たり475円
  • 大企業(生産性の向上あり):1人1時間当たり600円

※1人当たりの助成時間数は680時間を限度
中小企業担い手育成訓練は1020時間
訓練計画届に記載される資格等を取得できない場合は680時間

man
「結局、いくらもらえるのか?全然わからないんだけど・・・」
teacher
事例を挙げて計算してみます。

中小企業が6人の契約社員を雇用している場合

Off-JT「一般職業訓練」(外部のセミナー等)に

15日間 × 7時間 = 合計105時間(6か月間で)

参加させる

賃金助成

中小企業(生産性の向上なし):1人1時間当たり760円

760円 × 105時間 × 6人 = 47万8800円

経費助成

100時間以上200時間未満:20万円

6人 × 20万円 = 120万円の助成金

OJT(社内で職業訓練をする)

中小企業(生産性の向上なし):1人1時間当たり760円
※1人当たりの助成時間数は680時間が限度

760円 × 680時間(6か月間で) × 6人 = 310万800円

合計:477万9600円の助成金

※1年度1事業所当たりの支給限度額は1,000万円

という計算になります。

さらにこの研修後に正社員として雇用する場合は

キャリアアップ助成金(正社員化コース)が利用できます。

キャリアアップ助成金(正社員化コース)

有期 → 正規

  • 中小企業(生産性の向上なし):1人1時間当たり57万円
  • 中小企業(生産性の向上あり):1人1時間当たり72万円
  • 大企業(生産性の向上なし):1人1時間当たり42万7500円
  • 大企業(生産性の向上あり):1人1時間当たり54万円

6人 × 57万円 = 342万円の助成金

合計:819万9600円の助成金

人材開発支援助成金(特定訓練コース)を利用するメリット

人材開発支援助成金(特定訓練コース)を利用するメリット

メリットその1.実質的な研修量に対して助成金額が大きい

前述した試算例の場合

  • Off-JT:105時間(7時間×15日間)
  • OJT:680時間

→ 1人あたり79万6000円の助成金

がもらえる形になります。

Off-JTの間は、外部のセミナーを受ける必要があるので、社員の労働時間は拘束されてしまいますが・・・

OJTは、社内での研修ですので、実務的な作業をさせて構わないので、実質的な拘束は発生しません。

つまり、たった15日間研修に行かせるだけで、1人あたり79万6000円の助成金がもらえるのです。
teacher

給与が30万円の社員だとすれば、セミナー費を除けば約2カ月分の給与を15日間の研修で担保できることになります。

15日間研修に行かせるだけで、2カ月は無料で社員を雇用できるイメージと言っていいでしょう。

メリットその2.正社員雇用すればさらに助成金が増える

有期契約から正社員契約へ転換すると「キャリアアップ助成金(正社員化コース)」が使えるので

中小企業(生産性の向上なし):1人1時間当たり57万円

の助成金がプラスされます。

teacher

経営者にとってみれば、正社員雇用はリスクもあります。

しかし、6カ月間の十分な試用期間があり、研修もしたうえでの正社員雇用であれば、いきなり正社員雇用をするよりは、リスクが軽減できるはずです。

メリットその3.社員のモチベーションの向上につながる

外部研修を受ける社員にとってみれば、このような裏のからくりはわかりませんから・・・

man
「会社が自分のためにお金を払って、外部の研修をセッティングしてくれている。その分がんばらなければ。」
「社員教育に力を入れてくれる良い会社なんだな。」

と、モチベーションの向上につなげることが可能です。

メリットその4.外部のセミナーで社員のスキルの向上と社内の既存社員の教育コストの削減が見込める

上記の試算では「一般職業訓練」のケースで試算しています。

一般職業訓練には

  • ビジネスマナー
  • マネージメント
  • プレゼンテーション
  • コミュニケーション

→ 全般的ビジネス力

  • Word
  • Excel
  • Powerpoint

→ PCソフトなどの事務的なスキル

  • 営業スキル
  • マーケティング
  • クレーム対応

→ 実務的なスキル

などの基礎的な研修が多いため、一から、既存の社員が時間を取って、基礎を教える必要がなくなります。

teacher

実務的な教育に既存社員が時間を取られるのはまだしも、基礎的な教育に既存社員が時間を取られることになると、既存社員の生産性も落ちますし、既存社員の不満も高くなってしまいます。

大企業であれば、人事部が基礎教育も徹底する余裕がありますが、社員数が少ない中小企業の場合は、外部のセミナーに委託した方が効率的なのです。

人材開発支援助成金(特定訓練コース)を利用するデメリット

人材開発支援助成金(特定訓練コース)を利用するデメリット

デメリットその1.助成金が入ってくるのは研修が終わってから

助成金は、すべて同じですが、先にもらえるものではありません。

  1. 計画承認
  2. 訓練実行
  3. 支給申請
  4. 支給

という流れになります。

従業員に対する給与支払いは、先に発生する

のに対して

助成金の支給は、後から発生する

ことになります。

資金繰りが厳しい企業の場合は、資金繰りの悪化につながりかねないというデメリットがあります。

デメリットその2.Off-JTの間は、社員がいない状態に

Off-JTというのは、外部の研修のことですので、前述した例で言えば

「7時間 × 15日間」研修に行かせる

ということになります。

当然、その期間は「自社の仕事はできない」ことを意味しています。

即戦力として社員を雇用したのに、すぐに自社の仕事をさせられないというデメリットが出てきます。

6か月間以内に15日間の研修をすれば良いので、まとめる必要はありませんが、大抵の企業ではセミナーをバラバラに受けるのは非効率になるので、連続して研修を受ける方が多い様です。

デメリットその3.外部の研修費用が発生する

Off-JTは、外部の研修・セミナーへの参加を意味するので、セミナー会社に対する費用が発生します。

助成金額の方が研修費用よりも大きいのですが、この費用分も、先払いになってしまうのです。

デメリットその4.申請の仕方がわかりにくい

助成金というのは「非常にわかりにくい説明」しか書いてありません。

man
申請書をどう書けば良いのか?
どのような内容なら、OJTとして認められるのか?
どの外部研修を受ければ良いのか?
・・・

など、わからないことが多々あるのです。

はじめて助成金を取得を希望する方は

  • 助成金取得専門のサポート会社
  • 助成金取得専門の外部セミナー運営会社

に依頼するのが無難です。

人材開発支援助成金(特定訓練コース)の助成金取得までの流れ

人材開発支援助成金(特定訓練コース)の助成金取得までの流れ

一般職業訓練の場合

1.訓練計画届の作成・提出

訓練計画届を作成し、管轄労働局長の確認を受けます。(訓練開始日から起算して1か月前までに提出)

訓練計画届
訓練計画届
  • 事業所の名称
  • 事業所の所在地
  • 雇用保険適用事業所番号
  • 労働保険番号
  • 事業所の名称
  • 企業の主たる事業
  • 産業分類
  • 企業の資本の額又は出資の総額
  • 企業全体の常時雇用する労働者数
  • 企業規模(大企業・中小企業)
  • 特定分野認定実習併用職業訓練(企業連携型・事業主団体等連携型訓練)
  • 東日本大震災復興対策による特例措置利用の有無
  • 職業能力開発推進者名
  • 年間職業能力開発計画期間
  • 事業内職業能力開発計画の策定の有無
  • 事業内職業能力開発計画・年間職業能力開発計画の周知確認欄
  • 届出に関する担当者
  • ジョブカードセンターへ次の書類の写しを送付する

2.訓練の実施

訓練計画届に基づき訓練を実施します。

※訓練計画届の提出日から6か月以内に訓練を開始することが必要です。
※訓練計画届の内容などを変更する場合は、「計画変更届」を提出する必要があります。

3.訓練の終了・支給申請

職業訓練計画実施期間の終了した日の翌日から2か月以内に支給申請書を管轄労働局へ提出してください。

4.支給決定

人材開発支援助成金(特定訓練コース)を受けられるかどうか?の注意点

次のいずれかに該当する事業主は、この助成金を受給できません。

  • 不正受給をしてから3年以内に申請をした事業主(または、申請日後、支給決定日までの間に不正受給をした事業主)
  • 支給申請した年度の前年度より前の年度の労働保険料を納入していない事業主
  • 給申請日の前日から過去1年間に、労働関係法令の違反を行った事業主
  • 性風俗関連営業、接待を伴う飲食等営業、またはこれらの営業の一部を受託する営業を行う事業主
  • 暴力団と関わりのある事業主
  • 支給申請日、または支給決定日の時点で倒産している事業主
  • 助成金の不正受給が発覚した場合に行われる事業主名等の公表について、同意していない事業主

会社都合による解雇があった場合

会社都合による解雇があった場合は、解雇日より6か月間は計画書を提出できません。

まとめ

人材開発支援助成金(特定訓練コース)は

有期契約の社員に対して

  • 外部研修
  • 社内研修

を行うことで、助成金を受けられるものです。

メリット

  1. その1.実質的な研修量に対して助成金額が大きい
  2. その2.正社員雇用すればさらに助成金が増える
  3. その3.社員のモチベーションの向上につながる
  4. その4.外部のセミナーで社員のスキルの向上と社内の既存社員の教育コストの削減が見込める

デメリット

  1. その1.助成金が入ってくるのは研修が終わってから
  2. その2.Off-JTの間は、社員がいない状態に
  3. その3.外部の研修費用が発生する
  4. その4.申請の仕方がわかりにくい

と、メリットデメリットがありますが、比較的受給しやすい助成金であり、助成金額も大きいので上手く活用すれば、十分に費用対効果が高い仕組みとなっています。

おすすめできる助成金と言っていいでしょう。

注目の資金調達方法

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ビジネスローンは、以前は銀行ビジネスローンが主流でしたが、銀行は貸し倒れの増加に伴いビジネスローンの提供に対してかなり消極的になっています。現時点ではビジネスローンは、大手消費者金融が提供するローンサービスであり、銀行融資よりも、「審査が甘い」「即日融資が可能」という点で中小企業の経営者に重宝される資金調達方法となっています。金利が高いなどのデメリットもあるため、短期の資金繰りを乗り切るための選択肢として考えましょう。

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ファクタリングは、売掛債権を譲渡することで早期に資金化する資金調達方法のことを言います。ファクタリングの場合は、審査対象が資金が必要な会社ではなく、売掛先になります。そのため、銀行融資やビジネスローンよりも、売掛先の信用力が高ければ審査に通りやすいメリットがあります。その上、ファクタリングは「債権の譲渡」でしかないため「借入」として決算書に掲載されないので、今後の銀行取引にもマイナスの影響がありません。

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不動産担保ローンは、文字通り、土地、マンション、ビル、店舗、工場、戸建てなどの不動産を担保に資金を調達する資金調達方法のことを言います。無担保のビジネスローンと比較すると担保がある分、「高額な借り入れが可能」「数十年単位の長期間の借り入れが可能」「審査が通りやすい」というメリットがあります。ただし、返済できなければ担保である不動産を失ってしまうというデメリットもあるので注意が必要です。

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資金調達のコンサルティング、資金調達のサポート事業を行っています。銀行融資から、担保融資、ビジネスローン、不動産担保ローン、ファクタリングまで、様々な資金調達方法を紹介し、資金繰りの改善をお手伝いしています。実際に私が経営している会社でも、様々な方法で資金調達を実現させました。