少人数私募債は社債の一種ですが、中小企業も資金調達で活用しやすい社債と言えます。今回は少人数私募債による資金調達について解説します。
社債とは
企業が投資家から資金を調達する際に発行する有価証券のこと
を言います。
社債の特徴は
- 株式会社などが発行する
- 不特定多数の個人投資家や機関投資家から資金調達する
- 3年~10年の償却期間が設定されている
- 多額の資金調達が可能
というものです。
例えば
5年満期の利率2.0%の額面金額100万円の債券を98万円で購入した場合
- 年率2.0%の利息収入 毎年2万円 × 5年分
- 債権の購入価格98万円と満期日に受け取れる償還金(額面金額)100万円の差額 2万円
計12万円分、投資家が利益が出ることになります。
実際の社債を見ても
ソフトバンクグループ株式会社 第48回無担保社債(社債間限定同順位特約付)
- 利回り:2.13%(税引前)1.697%(税引後)
- 発行価格:額面100円につき100円
と定期預金や国債と比較して、かなり高い利回りになっていることがわかります。
また発行する企業にとっても、年率2.0%程度で資金調達ができるのであれば、銀行融資と比較しても低コストでの資金調達ができることになります。
社債は中小企業が利用するにはハードルが高い
前述したソフトバンクのように社債を公募するためには、証券会社に委託して投資家を募集する必要があります。
- 財務省への通知書
- 有価証券届出書
- 目論見書
を作成し、提出しなければなりません。
また、証券会社へ支払う手数料も数千万円という高額な手数料が発生するのです。
不特定多数の一般投資家を対象に投資を募る社債を「公募債」といいますが、「公募債」は高額な資金調達ができるものの、その分、手間やコストが莫大にかかってしまうデメリットがあるのです。
結果、上場企業などの中堅・大手企業しか利用できないのです。
そこで、登場するのが特定少数の投資家を対象にした「私募債」です。
少人数私募債(しょうにんずうしぼさい)とは
少人数の縁故者や取引先を対象として発行する社債のこと
を言います。前述した「公募債」と比較して、手続きが簡素であり、少額のコストで利用できる社債となっているため、中小企業でも導入しやすい資金調達方法となっているのです。
少人数私募債の特徴
引受人は49人(49社)まで
社債の1口の最低金額が発行金額の50分の1よりも大きい必要があります。ということは必然的に49人以下でないとダメということを意味します。引受人は個人または会社なので個人と会社を合算して49人までに発行できる債権なのです。
50人(50社)を超えてしまうと金融商品取引法上の募集行為となってしまい、有価証券届出書を提出しなければならなくなってしまうのです。この枠は6か月単位で判断されます。
この条件は継続的にクリアしなければならないものですので、引受後も不特定多数の投資家に譲渡されないようにしなければなりません。定款に譲渡制限を付すこともできます。
中小企業の関係者に発行される債権
少人数私募債はあくまでも中小企業の関係者である必要があります。
定義が明確に決まっているわけではありませんが
- 取締役
- 役員
- 社員
- 取引先
- 知人
- 親族
などと考えられています。少人数私募債が「縁故債」と呼ばれるのもこれが理由になっています。
ただし、取引先といっても、金融機関(銀行や証券会社)は除外する必要があります。金融のプロが入ると金融商品取引法上の募集行為になってしまうからです。
金融機関(銀行や証券会社)で働いている個人は引受人になっても問題ありません。
発行できる法人
- 株式会社
- 取締役会を設置していない株式会社
- 特例有限会社
- 合資会社
- 合名会社
- 合同会社
などが少人数私募債を発行することができます。
まとめ
少人数私募債とは
少人数の縁故者や取引先を対象として発行する社債のこと
で社債の一種ではあるものの、少人数向けで手数料や目論見書などの提出の必要がなく、中小企業でも活用しやすい社債になっています。
引受人さえ集められれば、低金利での資金調達も可能になるため、中小企業の有望な資金調達方法として検討すべきものでもあるのです。
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