ベンチャキャピタル(VC)から資金調達する際、ベンチャー企業が求められることは二つあります。一つはベンチャーキャピタル(VC)が投資検討するための資料(事業計画や資本政策等)を作成して提出すること。そしてもう一つがベンチャーキャピタル(VC)との面談です。
資料は事前に準備することも、専門家に相談することもできますが、面談はその場の対応だけで評価されてしまうため不安が大きいという声はよく聞かれます。
ベンチャーキャピタル(VC)との面談とは?
コロナウィルスの影響により外出自粛要請が出ていた期間、多くのベンチャーキャピタル(VC)はリモートワークをしており、出社していませんでした(一般の会社よりもリモートワークを行っていた期間ははるかに長かったです)。
投資候補先である会社への往訪も控えていましたので、面談は直接対面してではなく、Zoom等のオンラインツールを使って行われていました。
しかし、Zoom等の面談だけで投資が決まったケースはほぼありません。
出典:goo辞書
面談とは面会して直接話をすることです。
ベンチャーキャピタル(VC)にとっての面談とは、まさに辞書の定義通り、直接会って話をすること、なのです。
面談の目的
ベンチャー企業への投資は、ベンチャー企業のビジネスモデルや、事業を行うマーケットなどを評価して行われます。このようにビジネスモデルやマーケットの評価を行うのはベンチャー企業への投資だけではなく、上場株式への投資や、アセットファイナンス(資産を裏付けとした投資)等、投資であればなんであれ同様です。
しかしながら、他の投資とベンチャー企業への投資には一点、決定的に異なる点があります。
それは、他の投資ではこれらビジネスモデルやマーケットに加えて、ビジネスを進めていくための資産(生産設備やサービス提供のためのインフラや人材等)を評価できるのに対して、ベンチャー企業への投資の場合には資産がないため、それを評価できないということです。
資産の評価ができない代わりに、ベンチャー企業への投資は、経営者が評価されます。
経営者を評価するためには、その経営者の評判を集めたり、過去の実績を見たりもしますが、最終的には会って話してみることになります。
これは企業の採用に当たって面接が多く行われているのと同じことです。
資料をもらい、いろいろと調べてはみたものの会ってみたら印象が全然違っていた、というのは誰しも多々経験していることです。そのギャップをなくすために面接が行われるのです。
面談の方法
ベンチャーキャピタル(VC)との面談の一般的な流れは次のようになります。
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- まず最初にベンチャー企業が自社のプレゼンを行います。
- 次にベンチャーキャピタル(VC)が自社の紹介を行います。
- そして、最後にベンチャーキャピタル(VC)からの質問に移ります。
時間にして1時間が一つの目安です。
なお、目的が経営者を評価することですから、面談に臨むのは経営者(社長)その人になります。
面談の回数
ベンチャーキャピタル(VC)が投資を実行するまでに何回、面談を行う必要があるのかはケースバイケースです。しかし、最低でも2回は行われます。
ベンチャーキャピタル(VC)の投資は、まず担当者が投資したい案件を探してきます。そのうえで、ベンチャーキャピタル(VC)内の投資を決める会議体(通常は投資委員会と呼ばれます)で検討されます。その際、投資について担当者が説明することになります。
面談の1回目は、ベンチャーキャピタル(VC)の担当者との間で行われます。その担当者に投資したいと思ってもらい、投資委員会に説明してもらうためです。
担当者との面談は1回で終わるものではなく、何度か行われることもありますし、むしろ複数回の方が普通です。
必ず行われる2回目の面接(これをマネジメントインタビューと呼ぶベンチャーキャピタル(VC)もあります)は投資委員会の前後(ベンチャーキャピタル(VC)によっては投資委員会の席上)で行われます。
1回目の面談の相手は担当者ですが、マネジメントインタビューの相手はベンチャーキャピタル(VC)の社長、パートナー、場合によっては投資委員会のメンバー全員になります。
ベンチャーキャピタル(VC)が最終的に投資判断する当たって、担当者が面談で行った評価を確かめることがマネジメントインタビューの目的です。
こちらは通常は1回です(パートナーや投資委員会のメンバーごとに面談を行う場合には複数となることもあります)。
面談を成功させるコツ
人それぞれ魅力が異なるように、誰もが面談を成功させられる方法というのはありません。
しかし、成功の確率を上げるためのコツはいくつかあります。
事前準備
面談はぶっつけ本番です、やり直しがききません。
しかしそれは準備できないという意味ではありません。むしろ、できる準備はしっかりやっておく必要があります。
ベンチャーキャピタル(VC)との面談は大体、流れが決まっています。まずは事前に(面談の日時についてやり取りをする中で)その流れを聞いておきましょう。
一般的にはベンチャー企業が自社の説明を行うことから面談が始まり、面談時間の半分程度は自社の説明で終わります。つまり、面談の半分は事前に準備できますし、何ならリハーサルもできます。
また後半の質疑応答は事前に質問内容を知ることはできませんが、質問内容を予想することはできます。
予想する方法の一つは、そのベンチャーキャピタル(VC)との面談ではこれまでどのような質問が多かったのか、今回どのような質問をされそうかをベンチャーキャピタル(VC)自身に聞いてみることです。
可能であれば、そのベンチャーキャピタル(VC)の投資先に聞いてみるという方法もあります(ベンチャーキャピタル(VC)の投資先はベンチャーキャピタル(VC)のホームページに記載されています)。
そしてもう一つは、過去、別の人とした面談で聞かれたことを思い出してみることです。ベンチャー企業が事業内容のプレゼンを行う機会は多く、そこで出てくる質問も思い返せば似たようなものが多いはずです。
何を見られているのかを理解して臨む
担当者との面談、マネジメントインタビューのそれぞれで見られている内容が異なります。
担当者との面談では人柄についてはもちろんのこと、その担当者との相性が見られています。
ただし、担当者との面談は1回で終わるものではありません。1回で終わらせる必要もないですし、むしろ1回で終わらない方が望ましいと言えます。
担当者に深く自社のことを理解してもらうことが、資金長調達のためには必要です。そのためには1回で説明しきることは難しく、また会いたいと思ってもらい、何度か会えるほうが望ましいからです。
相性は必ずしも1回会えばわかるようなものでもないため、複数回の面談を行う中で徐々に打ち解けていくのでも問題ありません。
一方でマネジメントインタビューでは、人柄や事業に対するやる気(熱意)が見られています。
こちらは一回しか機会がないため、なるべく元気な姿を見せられるよう、準備しておく必要があります。
普段と異なることをしようとしない
面談は緊張するものなので、つい頑張ってしまいがちです。
少しでもよく見せようと普段はしないようなアピールをしてみたり、過剰なサービスをしてしまうのもよく分かります。
しかし、ベンチャーキャピタル(VC)から資金調達を行えば、その先長い付き合いになります。
人間として好印象を残す
面談で聞かれることの多くは、資料を提出することや、何ならメールで質問されれば、メールで回答することもできるような質問です。
ベンチャーキャピタル(VC)は、面談の場でした質問への回答を知りたがっているだけではなく、むしろそれにどのように返答するかを見ています。もっと言えば、返答する様子から伝わってくる経営者の人柄を見ています。
どのような人柄が望ましいと思うかは人によりますので、ベンチャーキャピタル(VC)もそれぞれで異なります。
しかし、どのベンチャーキャピタル(VC)も共通して求めているのは、その経営者が会社の事業を続けていく気力があるかどうかです。
なぜならベンチャーキャピタル(VC)にとって最大のリスクは、経営者が事業を投げ出してしまうことにあるからです。
求めているものを明確に伝える
ベンチャーキャピタル(VC)との資金調達のための面談では、ベンチャーキャピタル(VC)が求めるものをいかに提供するか、どうやって答えるかに考えが向かいがちです。
もちろんそれはそれで大事なことなのですが、面談は相互理解の場なので、こちらが何を考えているか相手に伝えることも重要です。とくに、何をベンチャーキャピタル(VC)に期待しているかははっきりと伝える必要があります。
具体的には、次回の資金調達も手伝ってほしい、経営上の問題に対する相談役となってほしい、事業提携の相手を紹介してほしい、など、ベンチャーキャピタル(VC)に期待することをはっきり伝える必要があります。
ベンチャーキャピタル(VC)の経営者と会う機会はそれほど多くありません。担当者との間の約束が必ずしも守られるとは言い切れないことからも、ベンチャーキャピタル(VC)の経営者と握っておく(話しておく)ことには、いざということに持ち出せる手札が増えるという意味があります。
断られても折れないメンタルを
ベンチャーキャピタル(VC)との面談は、その面談の成否で資金調達できるかどうか決まってしまうという意味ではプレッシャーが大きく、気が重いものであることは間違いありません。
事前に準備することは成功率を高める唯一の方法です。しかし、これさえ準備しておけば必ず成功するというマニュアルはありません。
そのため、面談においてなにより重要なことは面談が上手く行かなかった場合に落ち込まないことにあります。
ベンチャーキャピタル(VC)からの資金調達のための面談では、2つの点から、意図して落ち込まないようにする必要があります。
ひとつには、ひとつのベンチャーキャピタル(VC)からの資金調達が上手く行かなかったからといって落ち込んでいる余裕はないからです。そのベンチャーキャピタル(VC)から資金調達を断られれば、別のベンチャーキャピタルに調達の相談に行く必要があります。
面談に限らずベンチャーキャピタル(VC)からの資金調達が上手く行われるかどうかは運やベンチャーキャピタル(VC)との相性が大きく影響します。そのため、できることをやりきることに加え、より多くチャレンジする、具体的にはより多くのベンチャーキャピタル(VC)と資金調達について話をすることで資金調達の成功に近づきます。
そしてもうひとつには、今、そのベンチャーキャピタル(VC)から資金調達について断られたとしても、この先、そのベンチャーキャピタル(VC)との関係がなくなるとも言い切れないからです。
例えば、そのベンチャーキャピタル(VC)から次の資金調達で出資を受けることも起こりえます。
また、昨今、ベンチャーキャピタル(VC)は投資しなかった会社についての情報を、そのベンチャーキャピタル(VC)の投資家に開示する事例が増えてきています(投資家が開示を求めるようになってきています)。
これは、投資家が提携したり、直接投資を行う候補先を探しているからです。
少しでもベンチャーキャピタル(VC)によい印象を残すことで、その先にいる投資家との接点ができる可能性があります。