資金調達におけるベンチャーキャピタル(VC)の選び方・選ぶポイントとは?

資金調達に当たって、銀行や信用金庫などからの借入を検討する場合、「どこから借りるか」は重要です。

しかし、ベンチャーキャピタル(VC)からの資金調達を検討する際、「どのベンチャーキャピタル(VC)から投資を受けるか」は、「借入」とは比較にならないくらい重要です。

なぜなら借入は、借り入れ条件に従って返済している限り、債権者(貸主)が会社に介入しづらい仕組みである一方、ベンチャーキャピタル(VC)から資金調達すると会社が上手く行っていてもいなくても、ベンチャーキャピタル(VC)が会社経営に大きく関与するからです。

「どのベンチャーキャピタル(VC)から調達するか」によって、会社の行く末がまったく違った結果になります。

資金調達のラウンドとリード投資家

資金調達のラウンドとリード投資家

ベンチャー企業の資金調達では、一つのベンチャーキャピタル(VC)から必要額の全てを調達することは珍しく、通常は、同じタイミングで複数の投資家が出資します。

この同時期に行われる一連の資金調達を「ラウンド」と呼びます。

  • シードラウンド
  • シリーズAラウンド

のように使われます。

同じラウンドは、複数の投資家からの投資が、ほぼ同一の時期に行われることに加えて、同じ種類の株式(優先株式であれば同じ種類の優先株式)が使われ、また同一の発行価格で行われます。

複数の投資家にはベンチャーキャピタル(VC)のほか、エンジェル投資家(個人投資家)や事業会社などが含まれることがあります。

複数の投資家と交渉することは手間がかかることから、通常はもっとも多く出資するベンチャーキャピタル(VC)が全体の交渉を仕切ります。この全体を仕切るベンチャーキャピタル(VC)を「リード投資家(または単にリード)」と呼びます。

「交渉を仕切る」というと、それぞれの投資家との折衝もリードが行うように思わえれるかもしれませんが、実際には、リード以外の投資家が「リードが会社と交渉してまとめた条件」に乗っかって、投資するかどうかを判断することになります。

ベンチャーキャピタル(VC)からの資金調達に当たって、最も大事なのは、この「リードをどう選ぶか」です。

なぜなら、リードは、「そのラウンドの資金調達をまとめる」だけではなく、投資が行われた後、「会社に対してもっとも影響力を持つ」からです(リード以外の投資家はリードがその影響力を適切に行使することも投資判断に当たって考慮します)。
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以下では、リード投資家となるベンチャーキャピタル(VC)をどう選んだらいいのか、を見ていきましょう。

ベンチャーキャピタルの種類と選び方

日本国内にはたくさんのベンチャーキャピタル(VC)があります。

ベンチャーキャピタルの種類と選び方

出典:日本ベンチャーキャピタル協会

海外のベンチャーキャピタル(VC)が日本のベンチャー企業に投資する例も最近は増えてきています。

ベンチャーキャピタル(VC)は、「どこも同じではない」どころか各社の色が強くついています。

その中から、自社の株主となってもらうベンチャーキャピタル(VC)を選ぶ際、最初に注目すべきポイントは「そのベンチャーキャピタル(VC)の主要な出資者は誰か?」です。

ベンチャーキャピタル(VC)の出資者とは

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なぜベンチャーキャピタル(VC)の出資者に注目すべきなのかを理解するために、ベンチャーキャピタル(VC)の仕組みを確認しておきましょう。

「ベンチャーキャピタル(VC)がベンチャー企業に投資するお金は誰のものなのでしょうか?」

ベンチャーキャピタル(VC)自身のお金ではありません。

ベンチャーキャピタル(VC)が投資家から集めてきたお金です。

ベベンチャーキャピタル(VC)は、投資家から集めたお金をベンチャー企業に投資し、その投資の収益を投資家に分配しています。平たく言いなおすと、儲かったら投資家に返しています。

そのため、ベンチャーキャピタル(VC)は、「それぞれの投資家の意向を強く受けて運営されています」(意向とは具体的には投資方針に影響を与えることなどです)。

一方で、ベンチャーキャピタル(VC)は、一人の投資家からお金を集めているのではなく、通常は複数の投資家からお金を集め、投資しています。

投資家の意向の反映のされ方は「ベンチャーキャピタル(VC)に対してどれだけの持ち分を持つか」言い換えると「そのベンチャーキャピタル(VC)に他の投資家よりも多く投資しているか」によって、異なります。

つまり、「主要な投資家」とは、「そのベンチャーキャピタル(VC)に多く出資し、その意向を反映させている投資家」を言います。

主要な投資家によるベンチャーキャピタル(VC)の分類

主要な投資家の属性によってベンチャーキャピタル(VC)は3つに分類することができます。

  • 独立系
  • CVC
  • 産学連携

特定の投資家からの影響を受けないで運営されているベンチャーキャピタル(VC)を「独立系」と呼びます。

特定の事業会社(金融機関である場合もあります)が大口投資家として存在し、その意向を強く受けて運営されているベンチャーキャピタル(VC)を「コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)」と呼びます。

大学の意向を強く受けて運営されているベンチャーキャピタル(VC)を「産学連携(ファンド)」と呼びます。ただ、大学自体が投資家として存在する場合もあれば、大学の公認ベンチャーキャピタルとして活動している場合もあります。

産学系と似た性格を持つベンチャーキャピタルとして、政府系・地方自治体などが出資し、その意向を強く受けているベンチャーキャピタル(VC)もあります。

そのベンチャーキャピタル(VC)の最大の投資家が中小企業基盤整備機構(通称は中小機構)であるケースが結構たくさんあります。

主要な投資家によるベンチャーキャピタル(VC)の分類

出典:中小機構基盤整備機構

中小機構は、中小企業の発展のためのサポートを行っている独立行政法人で、その一環として中小企業への投資を行うベンチャーキャピタル(VC)の投資家となっています。

しかし、中小機構は特定のベンチャーキャピタル(VC)の運営に口を挟むことはないため、そのベンチャーキャピタル(VC)の投資家であった場合でも、とくに注意する必要はありません。

このようにベンチャーキャピタル(VC)に影響を与える「主要な投資家」が、「ベンチャーキャピタル(VC)の投資方針」を決めています。
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具体的にそれぞれのベンチャーキャピタル(VC)の投資方針を見ていきましょう。

独立系のベンチャーキャピタル(VC)

独立系ベンチャーキャピタル(VC)の特徴

独立系のベンチャーキャピタル(VC)の特徴は、投資の目的が「純投資」であることです。

純投資とは
投資した後、回収できる金額の極大化を目指す投資です。

独立系のベンチャーキャピタル(VC)は、特定の投資家からの影響を受けていません。一方で、多くの投資家から資金を集める際、投資してもらう見返りに、高いリターンを返すことを約束しています。

そのため、独立系のベンチャーキャピタル(VC)は、ベンチャー企業に投資するにあたって「高いリターン」を求めます(そうしないと投資家に高いリターンを返せないからです)。

独立系ベンチャーキャピタル(VC)から投資を受けるメリット・デメリット

回収金額の極大化は、投資先のベンチャー企業が売上を伸ばし、または提供するサービスのユーザーを獲得するなど将来の売上につながる指標が成長することによって達成されます。

そのため、ベンチャー企業の成長に役立つための支援を手厚く行ってくれます。

ただ、一点、留意しておくべきなのは、ベンチャーキャピタル(VC)は投資している全ての投資先それぞれについて回収金額の極大化を目指しているわけではなく、いくつか投資しているベンチャー企業からの投資が足し合わせて最も回収額が多くなることを目指しているということです。

あるベンチャー企業を例にとって考えてみましょう。

そのベンチャー企業に10%の確率で成功し、成功すれば200%売上が成長する事業機会があった場合、そのような成功率の低い事業機会にチャレンジすることが、そのベンチャー企業にとってよいことかは状況によります。もっと成功率の高い事業で着実な成長を望む経営者もいます。

しかし、純投資を目的とするベンチャーキャピタル(VC)はそのような「事業機会にチャレンジすることを求めがち」です。なぜなら、彼らの投資先が10社あって、すべてが同じ状況だとした場合、すべての会社が挑戦すればどこか1社が成功し、大きく成長することで、他の会社の失敗を埋められるからです。

また、独立系のベンチャーキャピタル(VC)は回収できない投資を抱えていることを望みません。そのような投資はさっさと見切りをつけ、資金も時間も別のことに振り向けたいと考えます。

そのため、事業が上手く成長しない場合は、早期に出口(売却先の斡旋や買戻し)を求められることになります。

良くも悪くも、投資先企業の成長が独立系ベンチャーキャピタル(VC)の一番の関心事なので、会社の成長が最も大事ではなく、「会社の成長だけが大事だ」と思える経営者には独立系のベンチャーキャピタル(VC)が向いていると言えます。

コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)

独立系ベンチャーキャピタル(VC)の特徴

コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)の特徴は、投資の目的が「そのベンチャーキャピタル(VC)の設立の母体となった事業会社と投資先のベンチャー企業との連携を進めること」にあります。

具体的には、ベンチャー企業の技術やサービスが事業会社の役に立つことを求めています。

ベンチャー企業が成長し、収益を上げることをよりも事業会社の役に立つことの方を大事に考えているということです。

例えば、ベンチャー企業が成長できる事業があったとしても、その事業に取り組む結果、事業会社との提携の進捗が遅れる場合には、その事業への取組みに反対することがあります。

コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)から投資を受けるメリット・デメリット

CVCをリードとして迎え入れることにより、会社の売上は増えないかもしれませんが、会社の行いたい事業を前に進めらえる可能性は高まります。これは「事業会社から、リソース(人員、設備、データ)等の提供を受けられる」からです。

工場内の物の移動を手助けするロボットを開発しているベンチャー企業を例に考えてみましょう。このベンチャーは、実際に工場を持つ事業会社のCVCから投資を受けることで、自社で開発したロボットが工場内で実際に動くのかを試してみることができます。

トラブルが起こればそれを修正することも可能です。顧客が何を求めているのか、実際に使ってもらって調査することは簡単ではないため、そのような機会が得らえるのはCVCから投資を受けるメリットと言えます。

また、売上や収益が増えていかなくても、事業会社の役に立つとの期待が続く限り、CVCが資金面から追加支援してくれることもあります。

一方で、CVCから投資を受けた場合、事業会社との連携のため、手間と時間を多く割く必要があります。

とくにCVCを作る事業会社はそのほとんどが大企業であることから、大企業のやり方に沿って仕事を進める必要が出てきます。これは例えば資料の作成や、その前提としての情報の収集が重要になってくるということです。

また、特定の事業会社との連携を深めることは、その事業会社と近しい企業との取引を増やす助けとなる一方、「その事業会社の協業先(ライバル企業)との取引が見込めなくなる」といった弊害も起こりがちです。

産学連携

産学連携ベンチャーキャピタル(VC)から投資を受けるメリット・デメリット

産学連携のベンチャーキャピタル(VC)の特徴は、投資の目的が「大学での研究成果の実用化である」など、公的なものであることです。

投資先の選定においても、会社の成長可能性よりも、コアな(他社がまねできない)技術を持っていることが重視されますし、投資した後は売上や収益よりも、技術やその技術を用いたサービスの開発が進展することを投資先に求めます。

産学連携ベンチャーキャピタル(VC)から投資を受けるメリット・デメリット

産学連携のベンチャーキャピタル(VC)の投資先は、大学の特定の研究者の技術を元にしていることが多く、その研究者と良好な関係を築くことが非常に重要です。

産学連携のベンチャーキャピタル(VC)はその研究者との関係の構築・維持に深く関わり協力してくれます。

一方で、事業の進捗、中でもとりわけ開発の進捗について多くの報告を求められます。報告先はベンチャーキャピタル(VC)のほか、大学や場合によっては役所も含まれ、ベンチャー企業にとっては負担となります。

また産学連携のベンチャーキャピタル(VC)は「事業計画」を大事にする傾向にあります。

ベンチャー企業は想定通りに物事が進むことの方が珍しいとも言われ、上手く行かなければ「事業内容を変える」(これを「ピボット」と言います)ことも珍しくありません。

産学連携のベンチャーキャピタル(VC)は投資先の事業計画の変更に対して、詳細な説明を求める傾向にあります。

ベンチャーキャピタル(VC)の選び方

以上の通り、ベンチャーキャピタルにはその種類によって特徴があります。

ベンチャー企業側がどのベンチャーキャピタル(VC)から調達するかを検討する際には、この特徴を理解して、

  1. 資金提供以外にどんな支援を受けたいのか
  2. 会社にどのようなことを求められることのが望ましいのか

を判断することになります。

「とにかく、お金を稼いで大金持ちになりたい」あるいは、「会社を大きくして雇用を増やしたい」と考える会社(経営者)には、独立系のベンチャーキャピタル(VC)があっており、逆に産学連携のベンチャーキャピタル(VC)は合っていません。

逆に「誰かの役に立つのが何よりうれしい」会社(経営者)と独立系のベンチャーキャピタル(VC)とは相性があまり良くないです。

もちろん、これらは目安であって絶対ではありません。

CVCが事業会社との提携よりも会社の成長をより重視している(つまり「純投資」に近い投資を行っている)ケースも中にはあります。

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それぞれのベンチャーキャピタル(VC)の立ち位置、あるいは投資の方針は、3つに分かれますが、それをまずは「主要な投資はだれなのか」からよく確認しておく必要があります。しかし、それだけでは十分ではなく、ベンチャーキャピタル(VC)との面談等の機会をとらえて確認しておくことが必要です。

リード投資家ではないベンチャーキャピタル(VC)の選び方

リード投資家ではないベンチャーキャピタル(VC)の選び方
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リード投資家ではないベンチャーキャピタル(VC)が資金調達に参加する場合、どのように選んだらよいのでしょうか。

リード投資家と異なり、それ以外の投資家(フォロー投資家と呼ぶこともあります)は、どこを選んでもそのラウンドにおいては、それほど大きな違いはありません。

もちろん株主として会社に迎え入れるため、困った振る舞いをするベンチャーキャピタル(VC)は排除する必要があります。

面談してみて「合わないと思ったベンチャーキャピタル(VC)を選ばない」ことに加え、リード投資家の意見も大いに参考にすべきであると言えます。

そのラウンドには影響なくても、どのベンチャーキャピタル(VC)を選ぶかが、次の資金調達のラウンドに影響する場合があります。

独立系のベンチャーキャピタル(VC)は、今回のラウンドでリードでなくても、この先のラウンドでリードとなってくれる可能性があります。そのようなベンチャーキャピタル(VC)は株主として迎え、会社についてよく知ってもらうことが有益です。

また、CVCは「特定の事業会社」とのつながりが深いため、その事業会社との提携等を希望するのであれば、積極的に選んでおくとよいでしょう。

リードのベンチャーキャピタル(VC)を選ぶ際は慎重な上にも慎重な対応を

リードのベンチャーキャピタル(VC)を選ぶ際は慎重な上にも慎重な対応を

ベンチャーキャピタル(VC)を選ぶときは、リードなのか、それ以外なのか、をはっきり意識する必要があります。

リードについては、独立系、CVC、産学連携の中から、自社に合ったベンチャーキャピタル(VC)がどれなのかをまずは考えてみるといいでしょう。

いずれを選んでも、資金調達後にやり直すことは非常に難しくなります。ベンチャーキャピタル(VC)から株式を買い戻すのはハードルが高いためです。

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そのため、ベンチャーキャピタル(VC)を選ぶ際には慎重なうえにも慎重に情報を集める必要があります。

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