M&Aアドバイザリー(FA)と仲介の違い|会社の種類ではなく、案件ごとの契約で分かれる

中小企業庁の登録支援機関データベースの登録状況を3つの数字で示したアイキャッチ。FAと仲介の両方を登録しているのが45件(名称昇順の1ページ目50件のうち)、FAのみが3件で一方だけに助言する形に限定、仲介のみが2件で両当事者と契約する形に限定と並び、下に譲渡側の最低手数料がFAと仲介で違った機関は42件中1件、登録は全3,362件と書かれている

先に要点

  1. 違いは契約の相手の数です。仲介業務は両当事者と契約して双方に助言し、FA業務は一方当事者のみと契約して一方のみに助言します。中小企業庁の登録制度の宣言文にこの定義が示されています。
  2. 会社の種類で分かれるわけではありません。中小企業庁の登録支援機関データベースに登録されているのは全3,362件で、名称昇順の1ページ目50件を数えると45件がFAと仲介の両方に報酬体系を登録していました。
  3. 費用も分かれていません。同じ1ページ目で、FAと仲介の譲渡側の最低手数料が記載された42件のうち、金額が違ったのは1件だけでした。
  4. FAを専門に担う法人を別に設ける例もあります。ストライクグループは株式会社ストライク・ファイナンシャルアドバイザリーを、より専門性の高いFA業務を担うために設立したと説明しています。
  5. ガイドラインは業務形態の実態に合致した仲介契約あるいはFA契約を締結することを求めています。名乗りではなく、実際にどちらの立場で動くかが基準です。

M&Aの相談先を探すと、「仲介」と「FA(ファイナンシャル・アドバイザー)」という2つの言葉が出てきます。どちらに頼むべきか、という問いの立て方をされがちですが、実態としては同じ会社が両方を扱っていることのほうが多く、案件ごとにどちらの契約を結ぶかという問題になります。ここでは公的なデータベースの登録内容から、この2つの関係を確かめます。手続きの流れそのものはM&Aで会社を売るまでの流れをご覧ください。

定義は「契約の相手が何者か」で決まる

中小企業庁の中小M&Aガイドラインに沿って登録支援機関が公表している宣言文に、2つの業務の定義が併記されています。

仲介業務とFA業務の定義(遵守宣言の注記から引用)

仲介業務…譲り渡し側・譲り受け側の両当事者と契約を締結し双方に助言すること

FA業務…一方当事者のみと契約を締結し一方のみに助言すること

出典:M&A総合研究所「中小M&Aガイドラインの遵守について」に掲載された注記(2026年10月13日に表示を確認)。

定義はこれだけです。「どちらが高度か」「どちらが中小企業向けか」といった区別は含まれていません。契約の相手が両方か片方か、助言する相手が両方か片方か。その一点で分かれます。

同じ機関が両方を登録しているのが普通

中小企業庁は登録支援機関のデータベースを公開しており、1件ずつにFAと仲介の報酬体系が並記されています。

中小企業庁のM&A支援機関登録制度の登録支援機関データベースの画面。1から50件を表示中(全3,362件)と表示され、下の表は基本情報として支援機関名・本店所在地・M&A支援業務専従者数・不適切な譲り受け側に係る情報共有の仕組みへの加盟有無の列、手数料体系としてFAの譲渡側・譲受側と仲介の譲渡側・譲受側の列に分かれ、それぞれ成功報酬の有無・成功報酬算定方式・最低手数料・その他手数料が並んでいる
中小企業庁「M&A支援機関登録制度 登録支援機関データベース」(2026年10月13日に表示を確認)。ページを開いたときに重なる企業名の検索ダイアログは、表が隠れるため非表示にして撮影しています。

名称昇順で並んだ1ページ目の50件を数えると、次のようになりました。

登録のしかた 件数(50件中) 意味
FAと仲介の両方に登録 45件 案件ごとにどちらの契約でも結べる体制です
FAのみ 3件 一方当事者だけに助言する形に限っています
仲介のみ 2件 両当事者と契約する形に限っています

出典:中小企業庁「登録支援機関データベース」の名称昇順1ページ目(2026年10月13日に表示されていた50件を当サイトが数えました)。データベース全体は3,362件で、この50件は全体を代表する標本ではありません。

9割が両方を登録しているという結果です。つまり「FAの会社」「仲介の会社」という分類は、少なくとも登録の上では成り立っていません。同じ会社に相談しても、案件によってどちらの契約になるかが変わりうるということです。

費用もほとんど同じ金額で登録されている

さらに踏み込んで、同じ1ページ目で譲渡側の最低手数料を比べました。

FAと仲介で、譲渡側の最低手数料は違うのか(名称昇順1ページ目)

両方に金額の記載があった機関

42件

FAと仲介の両方を登録した45件のうち、金額が空欄でなかったものです。

FAと仲介で金額が同じ

41件

10万円から2,000万円まで幅はありますが、同一機関内では一致しています。

FAと仲介で金額が違う

1件

FAが15万円、仲介が10万円という登録でした。

出典:中小企業庁「登録支援機関データベース」の名称昇順1ページ目(2026年10月13日の表示を当サイトが数えました)。データベースは登録支援機関の自己申告を基に作成されていると注記されています。

成功報酬の算定方式についても同様で、譲渡側の算定方式がFAと仲介で違っていたのは45件中1件だけでした。1件の内訳は、FAが定額、仲介がレーマン方式の一種という登録です。

「FAのほうが高い」「仲介のほうが安い」とは言えない

少なくともこの範囲では、契約形態の違いが費用の違いとして登録されていません。費用で選ぶなら、FAか仲介かという軸ではなく、成功報酬の算定基準と最低手数料そのものを見るほうが実態に合います。算定基準の違いはM&Aの手数料相場と計算方法で扱っています。

では何が違うのか。利益相反の構造

違いが出るのは金額ではなく、交渉の場での立ち位置です。仲介は売り手と買い手の両方から手数料を受け取るため、どちらの利益を優先するのかという論点が構造的に残ります。

この点について、仲介を専業とするM&Aキャピタルパートナーズは、売り手と買い手の手数料を同一にしている理由として次の構造を挙げています。一部のM&A仲介では買い手の手数料が売り手より高く設定されることがあり、買い手の支出が増えた結果として買収価格が引き下げられ、売り手が本来受け取るべき株式譲渡対価が減少するリスクが高まる、というものです。

一方、FAの側からの説明もあります。ストライクグループの株式会社ストライク・ファイナンシャルアドバイザリーは、双方の間を取り持つ仲介ではなく一方のクライアントのみに寄り添うFAとしてサービスを提供するとしたうえで、クライアント専属のアドバイザーとして交渉に臨み、利益相反を起こさない形でクライアントの利益最大化を最優先とすると説明しています。

出典:M&Aキャピタルパートナーズ「弊社の手数料」およびストライク・ファイナンシャルアドバイザリーのページ(いずれも2026年10月13日に掲示を確認)。

FA専門の法人をグループ内に設ける例

ストライクの例は、この分野の構図を示しています。仲介を担う株式会社ストライクと、FAを担う株式会社ストライク・ファイナンシャルアドバイザリーが、同じ東証プライム上場のストライクグループに属しています。

同じグループ内で役割を分ける構成

株式会社ストライク

M&A仲介を担う事業会社。創業1997年7月、グループ全体の従業員数は486名(2026年6月末現在)。

ストライク・ファイナンシャルアドバイザリー

より専門性の高いファイナンシャル・アドバイザリー業務を担うために設立された、仲介グループ出自のM&Aブティックファームと説明されています。

提供するサービス

M&A案件組成・提案、M&A戦略の立案、企業価値評価、プロセス管理、デューディリジェンスのコーディネーションなどが挙げられています。

想定する相手

事業会社に加えて、プライベート・エクイティ、投資家、スタートアップが挙げられています。

出典:ストライク「会社情報」およびストライク・ファイナンシャルアドバイザリーのページ(2026年10月13日に掲示を確認)。

FAという形が選ばれやすいのは、相手方にも専門家が付く規模の案件です。双方にアドバイザーが立てば交渉は厳密になりますが、そのぶん費用と時間はかかります。中小企業の事業承継で仲介が広く使われているのは、相手方も含めて1つの窓口で進めたほうが成立しやすいという事情によるものです。

ガイドラインは「実態に合致した契約」を求めている

登録支援機関の遵守宣言には、契約形態について次の一文が置かれています。業務形態の実態に合致した仲介契約あるいはFA契約を締結する、というものです。

そのうえで、契約締結前に説明すべき事項の筆頭として「仲介者とFAの違いとそれぞれの特徴」が挙げられ、仲介者として両当事者から手数料を受領する場合には、その旨を含めて説明するとされています。

契約の前に確かめたいこと

どちらの契約を結ぶのか

仲介契約なのかFA契約なのかを、契約書の表題と条文で確認します。

相手方からも手数料を受け取るのか

仲介の場合は両当事者から受領します。受け取る時期と金額の関係も聞いておきます。

提供する業務の範囲

企業価値の算定、相手探し、交渉、契約書の作成のどこまでを担うのかは、契約形態とは別に決まります。

担当者の資格と経験

保有資格、経験年数、成約実績が説明事項に挙げられています。

検討の時間

説明の後、適切に判断するための十分な検討時間を確保するとされています。その場での署名を求められる進め方は想定と異なります。

出典:M&A総合研究所「中小M&Aガイドラインの遵守について」に掲載された遵守宣言の内容(2026年10月13日に掲示を確認)。同種の宣言は日本M&Aセンターやfundbookも公開しています。

データベースには報酬以外の項目も並んでいる

登録支援機関データベースで確認できるのは手数料だけではありません。相談先を絞り込むときに使える項目がいくつかあります。

項目 内容 使い方
M&A支援業務専従者数 M&A支援の業務に専従する従業員の人数。1ページ目では0人から20人まで幅がありました 税理士事務所などが片手間で登録している場合と、専業の組織とを見分ける手がかりになります
不適切な譲り受け側に係る情報共有の仕組みへの加盟有無 加盟しているかどうかが「有」「無」で表示されます 譲り受け側の問題は、ガイドライン改訂の理由として挙げられた課題のひとつです
成約実績件数 並び替えの条件として用意されています 実績の多い順・少ない順で一覧を並べ替えられます
FA・仲介それぞれの最低手数料 譲渡側・譲受側それぞれに金額が登録されています 金額の昇順・降順で並び替えられるため、規模に合う機関を探せます
本店所在地 都道府県が表示されます 近隣の機関を探す起点になります

出典:中小企業庁「登録支援機関データベース」の表示項目と並び替え条件(2026年10月13日に確認)。

注目したいのは、「不適切な譲り受け側に係る情報共有の仕組みへの加盟有無」という列が設けられていることです。日本M&Aセンターは、ガイドラインが令和6年8月に改訂された理由として、不適切な譲り受け側の存在、経営者保証に関するトラブル、M&A専門業者の過剰な営業・広告という3つの課題を挙げています。この列は1つ目の課題に対応するものです。

相手方の確認は、どちらの契約でも自分の課題として残る

仲介であれば相手方も同じ会社が担当しますし、FAであれば相手方には別のアドバイザーが付きます。どちらの場合も、譲り受ける側が信頼できるかどうかの判断は、最終的に自分でする必要があります。

中小企業庁は、M&Aに係るトラブルの発生を踏まえた対応に関する資料を繰り返し公表しており、直近では2026年9月1日に公開されています。同庁のサイトには情報提供受付窓口も設けられています。

譲渡後に代金が支払われない、約束された雇用の維持が守られないといった事態は、契約形態の選択では防げません。最終契約の条項と、譲り受ける側の資力・実績を確かめる作業は、仲介に頼んでも自分の側の専門家に確認してもらうほうが確実です。個人保証をいつ外すのかも、この段階で詰める項目に含まれます。

どちらを選ぶかより、何を確かめるか

相談先を決めるときの見方

会社の肩書きで選ばない

登録上は9割が両方を扱っています。社名に「アドバイザリー」と入っていても、結ぶ契約が仲介契約であることはあります。

費用は契約形態では決まらない

同じ機関ならFAでも仲介でも最低手数料はほぼ同じ金額で登録されています。見るべきは算定基準と最低額です。

立場を聞く

相手方とも契約しているのか、していないのか。交渉の場で誰の利益を代弁するのかは、ここで決まります。

自社側の専門家を別に置く

仲介でもFAでも、税務と法務の判断は自社側で確認するのが安全です。デューディリジェンスの結果の読み方も同じです。

登録の有無を確かめる

登録支援機関データベースで名称を引けます。事業承継・M&A補助金の対象になるかどうかにも関わります。

各社の報酬の条件はM&Aキャピタルパートナーズ、ストライク、M&A総合研究所のページにまとめています。

よくある質問

FAのほうが中立なのですか

FAは一方当事者のみと契約して一方のみに助言する形です。自分の側に付くという意味では中立ではなく、むしろ明確に一方の立場に立ちます。双方の間に入るのが仲介です。

仲介に頼むと売却価格が下がりますか

そう断定できる根拠は公表資料からは確認できませんでした。ただしM&Aキャピタルパートナーズは、買い手の手数料が売り手より高く設定された場合に買収価格が引き下げられ、売り手の受け取る対価が減るリスクが高まる構造を自社ページで指摘しています。手数料の設定が同一かどうかは確認する価値があります。

相談先が登録支援機関かどうかは、どこで分かりますか

中小企業庁のM&A支援機関登録制度のサイトにある登録支援機関データベースで、企業名から検索できます。本店所在地、M&A支援業務専従者数、FAと仲介それぞれの手数料体系が登録されています。

データベースの情報はどこまで信頼できますか

同サイトは「本データベースは登録支援機関の自己申告を基に作成されており、実際の情報とは異なる場合がございます。詳細は各支援機関にお問い合わせください」と注記しています。目安として使い、金額は見積りで確認してください。

掲載にあたって

本文の件数は、中小企業庁の登録支援機関データベースに2026年10月13日時点で表示されていた内容を当サイトが数えたものです。1ページ目の50件は全体を代表する標本ではなく、全数を集計した結果でもありません。登録内容は各機関の自己申告に基づくと同サイトが注記しています。各社の掲示は改定されることがあるため、契約の前には最新の情報と、実際に提示された契約書で確かめてください。税務・法務の判断は、税理士・公認会計士・弁護士など適切な専門家へご相談ください。