と嘆いている経営者も少なくありません。しかしながら、その一つの解決策として「M&Aによる会社売却、事業譲渡」という選択肢があるのです。今回は「M&Aによる会社売却、事業譲渡」という選択肢のメリットとデメリットについて解説します。
M&Aとは?
M&Aとは
M&Aには
- 大企業のM&A
- 中小企業のM&A
に大別されます。
大企業のM&Aは
上場企業、海外企業を巻き込んだ、巨額のM&Aを意味します。公開されている株を操作できるため、「敵対的買収」「クロスボーダーM&A(他国間のM&A)」などがあり、ニュースなどでも取り上げられるものです。
中小企業のM&Aは
会社のオーナー経営者が、買い手と条件をすり合わせて、事業を手放す、会社を手放す、友好的なM&Aです。あくまでも、会社のオーナーが売買条件、売買価格、今後の運営方針などに同意したうえで成立する取引なのです。ほとんどは、日本国内の中小企業同士の売買となります。
中小企業のM&Aは今後伸びている!
M&A件数の推移
年 | M&A件数 |
---|---|
1985 | 260件 |
1986 | 418件 |
1987 | 382件 |
1988 | 523件 |
1989 | 645件 |
1990 | 754件 |
1991 | 638件 |
1992 | 483件 |
1993 | 397件 |
1994 | 505件 |
1995 | 531件 |
1996 | 621件 |
1997 | 753件 |
1998 | 834件 |
1999 | 1,169件 |
2000 | 1,635件 |
2001 | 1,653件 |
2002 | 1,752件 |
2003 | 1,728件 |
2004 | 2,211件 |
2005 | 2,725件 |
2006 | 2,775件 |
2007 | 2,696件 |
2008 | 2,399件 |
2009 | 1,957件 |
2010 | 1,707件 |
2011 | 1,687件 |
2012 | 1,848件 |
2013 | 2,048件 |
2014 | 2,285件 |
2015 | 2,428件 |
2016 | 2,652件 |
2017 | 3,050件 |
出典:2018年版中小企業白書
中小企業のM&A仲介を手掛ける東証一部上場の3社((株)日本M&Aセンター、(株)ストライク、M&Aキャピタルパートナーズ(株))の成約組数
年 | 2012年 | 2013年 | 2014年 | 2015年 | 2016年 | 2017年 |
---|---|---|---|---|---|---|
(株)日本M&Aセンター | 111件 | 116件 | 170件 | 215件 | 256件 | 338件 |
(株)ストライク | 26件 | 28件 | 27件 | 46件 | 55件 | 73件 |
M&Aキャピタルパートナーズ(株) | 20件 | 27件 | 37件 | 47件 | 76件 | 115件 |
合計 | 157件 | 171件 | 234件 | 308件 | 387件 | 526件 |
出典:2018年版中小企業白書
徐々に中小企業M&Aの件数が伸びていることがわかるかと思います。
中小企業白書のデータは、株式会社レコフが調査しているデータであり、実数ではありません。リリースに出るような規模の大きいM&A案件の件数なのです。
さらに中小企業のM&A仲介を手掛ける東証一部上場の3社の数値もありますが、M&Aの業界では、弁護士、会計士、税理士や直接のM&Aなど、M&Aをつなぐ仲介会社の数は、何百社とあるため、この数字の10倍以上の数の成約数があると考えるのが一般的なのです。
中小企業M&Aが伸びる理由には
- 高齢化社会になり、経営者が引退しなければならない年齢になってきた。
- 社会の変革スピードが早いため、売却して新しい事業を興すという動きも顕著になってきた。
- 企業の内部留保が大きくなり、買収の資金余力が出てきた。
- オンライン上でM&Aを仲介するサイトが増え、気軽に売却を依頼することができるようになった。
- 会社を売る、会社を買うということが大企業だけのものでないことに気づいてきた。
- 関連する中小企業M&Aの書籍も増えてきた。
・・・
など、様々な要因がありますが
日本では、GDPに対して3%~4%のM&A取引しかありません。
まだまだ、潜在的なM&Aニーズが眠っているということです。
ようするに
ということを意味しています。
M&Aでうちの会社を売る・事業を売ることなんてできるの?
できます。
多くの中小企業の経営者は
「買い手なんてあらわれないよ。」
と思ってしまう方が多いのですが
実際には
- 赤字決算
- 債務超過
- 利益が少ない
- 地方
であっても、「会社は売れる」のです。
例えば、赤字の中小企業であっても
- 赤字でも、ノウハウがある
- 赤字でも、長年の経営実績がある
- 赤字でも、地方に即した販売先がある
- 赤字でも、取引顧客がいる
- 赤字でも、免許を持っている
・・・
など、会社が存続している以上は何かしらの「強み」を持っているはずです。
「強み」がない会社は、そもそもつぶれてしまっています。
- ノウハウが欲しい企業
- 地方展開したい企業
- 新規事業としてチャレンジしたい企業
- 取引先に自社の商品をアップセルしたい企業
- 免許を取る時間やお金をかけたくない企業
・・・
と、「ニーズ」と「売却会社の強み」「売却額の妥当性」がマッチしていれば、十分に赤字決算だとしても、会社に値がついて、数千万、数億円で売却されることも珍しくないのです。
だとすれば
「社員を食わせていくためには、資金調達が必要。」
「会社の理念はなくしたくない。」
・・・
と考える経営者であれば
という選択肢も、有効な選択肢になり得るのです。
中小企業のM&Aでは「事業譲渡」という形のM&Aもよく行われます。
ということもできるので
会社は続けながらも、事業を売却して、資金調達して、ほかの事業の資金に使うということも可能になるのです。
「M&Aによる会社売却、事業譲渡」のメリット
メリットその1.資金が手に入る
最大のメリットは
まとまった資金が手に入る
という点です。
- 会社を売却した資金をプライベートの老後資金に使うことも
- 会社を売却した資金で別の会社を立ち上げることも
- 会社を売却した資金で借金を完済することも
- 事業を売却した資金で会社の資金繰りに充てることも
- 事業を売却した資金で新規事業を立ち上げることも
できるのです。
メリットその2.従業員の雇用を継続できる
「会社を売却する」のではなく、「会社を畳む」ことを選択してしまったら
- 社員(従業員)の雇用は確保されません。
「会社を売却する」のではなく、資金繰りに行き詰って「会社が倒産する」ことになってしまったら
- 社員(従業員)の雇用は確保されません。
しかし、「会社を売却する」形であれば
- 社員(従業員)の雇用は確保されます。
買い手の会社が資金的に余裕のある企業であれば
社員(従業員)の雇用条件(給与、福利厚生、ボーナス)も充実し、社員(従業員)にとっても、大きなメリットになるのです。
当然、会社を売却し終わってしまったら、元の社員(従業員)が買い手のオーナーの経営方針により、解雇されてしまうリスクがないわけではありませんが・・・
多くの場合は
買収した会社のノウハウを持っているのは「社員(従業員)」ですので、手厚い形で雇用を継続してくれるケースが多いのです。不安であれば、M&Aの買収条件に入れ込むことも可能です。
メリットその3.取引先との取引も継続できる
これも同様ですが
「会社を売却する」のではなく、「会社を畳む」ことを選択してしまったら
「会社を売却する」のではなく、資金繰りに行き詰って「会社が倒産する」ことになってしまったら
既存の取引先にも、商品やサービスを継続して提供することができなくなり「迷惑」をかけてしまいます。
メリットその4.債務の個人保証を外すことができる
会社経営者が銀行などの金融機関から融資を受ける際は
必ずといっていいほど
経営者個人が連帯保証になる(個人保証)
がつくものです。
「会社を売却する」のではなく、「会社を畳む」ことを選択してしまったら
「会社を売却する」のではなく、資金繰りに行き詰って「会社が倒産する」ことになってしまったら
経営者個人が残債分の借金を抱えることになってしまいます。
「会社を売却する」ことを選択すれば
- 債務もそのまま買い手が引き継いでくれる(その分、買収額が下がります。)
- 同時に連帯保証も解除され、個人保証から外れる
ことになります。
のですから、無理をして「会社が倒産する」よりも、会社の売却の方が何倍も、経営者個人の資金面のメリットがあるのです。
メリットその5.別のことに時間を費やすことができる
会社の売却によって、会社経営に費やしていた時間を別のことに使えるようになります。
- 新し会社を立ち上げる
- 家族サービスに時間を費やす
- 趣味に時間を費やす
・・・
時間的な余裕ができることも、会社を売却する大きなメリットと言えます。
メリットその6.会社を経営してきた想いを引き継ぐことができる
中小企業のM&Aでは、経営理念まで買い手に求めることはできません。買い手のオーナーの会社の経営理念に合わせざるを得ないからです。
しかしながら、
- 人材
- 技術
- ノウハウ
- 商品
- サービス
と言ったものは、引き継がれていくため、ある意味で今まで苦労して作り上げてきた会社のアイデンティティを次世代の会社に引き継ぐことができるのです。
これは、経営者視点では重要なメリットと言えます。
「M&Aによる会社売却、事業譲渡」のデメリット
デメリットその1.買い手が現れるとは限らない
前述したように
- 赤字でも、ノウハウがある
- 赤字でも、長年の経営実績がある
- 赤字でも、地方に即した販売先がある
- 赤字でも、取引顧客がいる
- 赤字でも、免許を持っている
・・・
会社であれば、買い手が現れる可能性はゼロではありません。
しかしながら、だからといって、「必ず売却できる」というものでもないのです。
買い手が付きやすい会社というのは
- 売上が億単位
- 実質的な黒字決算(節税でわざと赤字にしている場合も含む)
- 債務超過ではない
- 一般的な業界に属している
- 一人のスーパーエースに頼った売上でない
会社なのです。
売りに出しても、買い手が現れないリスクがあることは知っておくべきです。
デメリットその2.買い手が見つかっても、条件で折り合わない可能性も高い
売り手としては
買い手としては
のですから、駆け引きもりますし、条件がすり遭わない可能性も出てきます。
デメリットその3.買い手が見つかってから、成約まで時間がかかる
資金調達を目的にM&Aを考える場合に意図しておく必要があるのは「時間」です。
M&Aになると、動く金額が高額になってしまうため
1カ月~半年ぐらい「デューディリジェンス(企業の資産価値を適正に評価する手続き)」がかかることも珍しくありません。
タイムリミットがある資金調達を考えているのであれば
- 売却額を抑える
- 別の資金調達方法を検討する
必要があるのです。
まとめ
M&Aとは
「Mergers(合併)&Acquisitions(買収)」の略称であり、会社同士が合併したり、買収しあったり、する手続きのことを「M&A(エムアンドエー、エムエー)」と呼びます。
M&Aは、大企業が行うものというイメージが世間的には強いのですが、どんどん中小企業のM&A市場が伸びているのが現状です。
資金調達方法の一つとして「会社を売る」「事業を売る」という選択肢も出てくるのです。
「M&Aによる会社売却、事業譲渡」のメリットには
- メリットその1.資金が手に入る
- メリットその2.従業員の雇用を継続できる
- メリットその3.取引先との取引も継続できる
- メリットその4.債務の個人保証を外すことができる
- メリットその5.別のことに時間を費やすことができる
- メリットその6.会社を経営してきた想いを引き継ぐことができる
「M&Aによる会社売却、事業譲渡」のデメリットには
- デメリットその1.買い手が現れるとは限らない
- デメリットその2.買い手が見つかっても、条件で折り合わない可能性も高い
- デメリットその3.買い手が見つかってから、成約まで時間がかかる
というものがあります。
「資金調達ができない。」
・・・