雇用関係助成金の申請の流れと期限|「2か月以内」の起点は助成金ごとに違い、電子申請にはGビズIDが要る

3つの助成金の支給申請期限の起点を並べたアイキャッチ

雇用関係助成金の締切は、どれも「2か月以内」と書かれています。ところが何の日から数えて2か月なのかは助成金ごとに違い、計画を出す期限にいたっては「実施日の前日まで」から「訓練開始日の6か月前から1か月前まで」まで幅があります。同じ感覚で進めると、片方は間に合って片方は間に合いません。厚生労働省が各助成金のページとリーフレットで公開している期限を並べ、電子申請の仕組みとあわせて整理します。

先に押さえる3点

手続きは計画の提出が先、支給申請が後の2段階です。取組を始めてから計画を出しても受け付けられません。

支給申請の「2か月以内」の起点が助成金ごとに違います。キャリアアップ助成金は取組後6か月分の賃金を支払った日の翌日から、人材開発支援助成金は訓練終了日の翌日から、特定求職者雇用開発助成金は各支給対象期の末日の翌日からです。

電子申請は雇用関係助成金ポータルで行い、GビズIDの申請・取得が必要です。社会保険労務士や弁護士等の代理人に依頼する場合も必要とされています。

手続きは2段階。計画の提出が先で、支給申請は後

雇用関係助成金の多くは、取組を始める前に計画を出させる設計になっています。取組をしてから「これで申請できますか」と相談しても、計画の提出が要件になっている助成金では受け付けられません。

図1 雇用関係助成金に共通する手続きの骨格

  1. 計画の提出 キャリアアップ計画、職業訓練実施計画、育休復帰支援プランなど、助成金ごとに名前と様式が違います。提出先は管轄の労働局またはハローワークです。
  2. 取組の実施 計画に沿って、正社員転換、訓練、休業、制度導入などを実施します。計画と違うことをすると対象から外れることがあります。
  3. 一定期間の経過 多くの助成金で、実施後に継続雇用や賃金支払いの期間が求められます。キャリアアップ助成金の正社員化コースなら転換後6か月分の賃金の支払いです。
  4. 支給申請 定められた起点から2か月以内に、必要書類を添えて申請します。
  5. 審査・支給決定・振込 審査には一定の期間を要し、支給決定から振込までにさらに時間がかかります。

この骨格はどの助成金でも共通していますが、1と4の期限だけが助成金ごとに違います。そこを取り違えると、要件を満たしていても受け取れません。

計画を出す期限は助成金ごとに違う

制度ごとに公開されている計画提出の期限を並べます。

表1 計画・事前手続きの期限(各助成金の公式ページ・リーフレットの記載)
助成金 提出するもの 期限
キャリアアップ助成金 キャリアアップ計画(労働組合等の意見を聴いて作成) 各コースの実施日の前日まで
人材開発支援助成金(人材育成支援コース) 職業訓練実施計画届(様式第1-1号)、対象労働者一覧(様式第3-1号)など 訓練開始日の6か月前から1か月前までの間
人材開発支援助成金(認定実習併用職業訓練) 実践型人材養成システム実施計画(厚生労働大臣の認定を受けるもの) 訓練開始日の30日前まで
人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース) 事業展開等実施計画(様式第1-3号)を職業訓練実施計画届と併せて提出 職業訓練実施計画届と同じ
特定求職者雇用開発助成金 求人の提出(ハローワーク等からの紹介を受けるため) 雇入れの前(紹介を受ける前)

人材開発支援助成金の「6か月前から1か月前まで」は、早すぎても遅すぎても外れる点で他と性格が違います。研修会社から日程の提案を受けてから動き出すと、1か月前に間に合わないことがあります。逆に半年以上先の計画を先回りして出すこともできません。

キャリアアップ助成金の「実施日の前日まで」は、日付の余裕がないように見えますが、労働組合等の意見を聴いて作成する手順が入るため、実際には前日に作り始めて間に合うものではありません。詳細はキャリアアップ助成金と人材開発支援助成金の記事で扱っています。

支給申請は「2か月以内」。ただし起点が違う

ここが取り違えのいちばん多いところです。どれも2か月ですが、数え始める日が違います。

表2 支給申請の期限と、その起点(各助成金の公式ページ・リーフレットの記載)
助成金 起点 期間
キャリアアップ助成金(正社員化コース) 取組後6か月分の賃金を支払った日の翌日 起算して2か月以内
人材開発支援助成金(人材育成支援コース) 訓練終了日の翌日 2か月以内
人材開発支援助成金(人への投資促進コース) 訓練修了後 2か月以内
特定求職者雇用開発助成金 各支給対象期の末日の翌日 2か月以内
特定求職者雇用開発助成金(支給対象期の起算日) 賃金締切日が定められていない場合は雇入れ日、定められている場合は雇入れ日の直後の賃金締切日の翌日 起算日から6か月ごとに区切る

キャリアアップ助成金の起点は「賃金を支払った日」です。取組が終わった日でも、6か月が経過した日でもありません。締日から支給日までの間隔が長い会社ほど、実際の締切は後ろにずれます。

人材開発支援助成金は「訓練終了日の翌日」が起点で、賃金の支払いは関係しません。ただし支給申請までに訓練にかかった経費全額を支払っている必要があります。支払いが遅れると、期限には間に合っても要件を満たしません。

特定求職者雇用開発助成金は、支給対象期そのものの起算日に条件があります。賃金締切日が定められている場合は雇入れ日の直後の賃金締切日の翌日が起算日で、そこから6か月ごとに区切った期間の末日の翌日から2か月以内に申請します。ただし賃金締切日に雇い入れられた場合は雇入れ日の翌日、賃金締切日の翌日に雇い入れられた場合は雇入れ日が起算日になると注記されています。

起点を取り違えると起きること

・キャリアアップ助成金で「6か月が経過した日」から数えると、賃金支払日までの日数だけ締切を早く見積もることになります。早い分には問題ありませんが、逆に「支給日から数えればまだ余裕がある」と誤解すると、実際には過ぎていることがあります。

・特定求職者雇用開発助成金は第1期から第6期まで同じ手続きを繰り返します。1期分の締切を落とすと、その期の分だけ受け取れません。

電子申請は雇用関係助成金ポータル。対象は10の助成金

厚生労働省は「雇用関係助成金の電子申請」のページで、助成金ポータルによる電子申請を案内しています。対象の助成金一覧として公開されているのは次の10です。

表3 雇用関係助成金ポータルで電子申請できる助成金(厚生労働省「対象の助成金一覧」)
分類(ポータルリーフレットの区分) 助成金
雇用維持関係 雇用調整助成金
在籍型出向支援関係 産業雇用安定助成金
再就職支援関係 早期再就職支援等助成金
雇入れ関係 トライアル雇用助成金、地域雇用開発助成金
雇用環境の整備関係 人材確保等支援助成金、通年雇用助成金、キャリアアップ助成金
仕事と家庭の両立支援関係 両立支援等助成金
人材開発支援関係 人材開発支援助成金

特定求職者雇用開発助成金については、ポータルとは別のサイトで電子申請を受け付けていると案内されています。リーフレットには「社会保険労務士や代理人による申請にも対応しています。紙の申請と他の電子申請(e-Gov電子申請)も引き続きご利用いただけます」と書かれており、電子申請が唯一の経路になっているわけではありません。

厚生労働省の雇用関係助成金ポータルリーフレットで、電子申請が可能な助成金の分類が示されている画面キャプチャ
厚生労働省「雇用関係助成金ポータル」リーフレット。電子申請が可能な助成金が7つの関係に分けて並んでいる(資料番号LL060401保01)。

電子申請にはGビズIDが要る。代理人に頼む場合も必要

電子申請のページには、注意書きが2行で置かれています。「電子申請には『GビズID』の申請・取得が必要です。(事業主が社会保険労務士や弁護士等の代理人に電子申請を依頼する場合も『GビズID』の申請・取得が必要です。)」というものです。

代理人に任せれば自社でIDを取らなくてよい、とはなっていません。GビズIDの取得には手続きと時間がかかるため、申請の直前になって取り始めると締切に影響します。計画を出す段階で並行して進めておくのが順番です。

図2 電子申請を始める前に用意するもの

GビズID

事業主が取得します。代理人に依頼する場合も必要と明記されています。

マイページの事業所情報

令和8年4月からの新機能に伴い、マイページの事業所情報における労働保険番号の入力が必須とされています。

操作手順

厚生労働省公式YouTubeに、事業主向けと社会保険労務士又は代理人向けの操作手順動画が用意されています。

令和8年4月からの機能拡充。対象労働者一覧が自動生成できる

厚生労働省は「令和8年4月から、雇用関係助成金ポータルの機能を拡充します」というリーフレットを公開しています。追加されたのは、労働者一覧の作成を補助する機能です。

仕組みは、雇用保険の手続きで届出されている労働者の情報を活用し、各助成金の申請の際に添付する対象労働者一覧の作成を補助するというものです。雇用保険被保険者一覧の検索画面で助成金の対象として申請する労働者を検索して選択すると、選択した労働者の被保険者番号、カナ氏名等の情報が入力された対象労働者一覧の様式が自動生成されます。自動生成された様式は、ダウンロードした後に助成金固有の項目などを追加入力して、各助成金の申請画面にアップロードします。

使うには2段階の手続きが要ります。1つ目は利用希望の登録で、マイページの事業所情報画面で新機能の利用を「希望する」として登録します。利用希望の内容はいつでも変更できるとされています。2つ目は労働局の審査で、登録後に労働局がGビズIDのアカウント情報とマイページの事業所情報に食い違いがないことを確認します。リーフレットには「審査完了後、新機能は令和8年4月9日以降に利用ができるようになります」と書かれています。

機能拡充の留意事項(厚生労働省のリーフレットの記載)

・対象労働者一覧の添付を求めていない助成金など、一部対応していない助成金があります。

・雇用保険被保険者一覧の情報は、前営業日時点の情報に基づきます。雇用保険窓口の繁忙期等は特に、最新の情報が反映されていないことがあります。

・社会保険労務士等を含む代理人による申請の場合は、システム上の制約により新機能を利用できません。

・新機能追加に伴い、マイページの事業所情報における労働保険番号の入力を必須とします。

代理人申請では使えない、という制限は実務に効きます。社会保険労務士に申請を任せている会社では、この機能の恩恵を受けられません。

厚生労働省のリーフレットで、雇用関係助成金ポータルの対象労働者一覧の自動生成機能と利用手順が示されている画面キャプチャ
厚生労働省「令和8年4月から、雇用関係助成金ポータルの機能を拡充します」。対象労働者一覧の自動生成、利用希望の登録と労働局の審査、留意事項が1枚にまとまっている(資料番号LL080409保01)。

郵送で出す場合は、到達日が期限になる

郵送申請も認められています。厚生労働省は「雇用関係助成金は郵送申請が可能です。郵送にあたっては、簡易書留等、配達記録が残る方法で郵送してください。また、申請期間内に到達していることが必要です」としています。

ここは消印ではなく到達で判定されます。締切日に投函しても、到達が翌日になれば期間を過ぎます。配達記録が残る方法を求めているのは、到達の事実を確認するためです。

あわせて「一部の助成金について、申請に必要な書類のチェックリストを掲載していますので、申請前に書類の不備がないようご確認ください。ただし、ここに掲載したもの以外であっても、都道府県労働局が審査にあたって求めた書類は提出の必要があります」とも案内されています。チェックリストを満たせば十分、とは書かれていません。

様式は、計画届を出した時点のものを使う

様式の版も落とし穴です。人材開発支援助成金の制度ページには「支給申請書などの書類は、職業訓練実施計画届または制度導入・適用計画届提出時の様式をお使いください」と書かれています。申請時点の最新様式ではなく、計画届を出した時点の様式が原則です。

ただし例外もあります。令和7年4月1日以降に提出した計画届について令和8年8月3日以降に支給申請を行う場合、様式第8-3号(eラーニング訓練実施結果報告書)は令和8年8月3日改正様式を使うよう案内されています。また、令和8年5月14日付けの支給要領改正により、訓練計画届の提出時期を問わず、一定の条件に当たる場合は「受講料等の価格設定に関する疎明書(様式第28号)」の提出が必要になりました。

キャリアアップ助成金側も同じ考え方で、制度ページは「支給申請様式や支給金額は、各コースの取組を行った日で変化しますので、支給申請を行う際は、該当の様式のダウンロードをお願いします」としています。原則と例外の両方があるため、申請の直前に制度ページを開き直す運用にしておくのが確実です。

厚生労働省の雇用関係助成金ポータル電子申請の対象助成金一覧の画面キャプチャ
厚生労働省「『雇用関係助成金ポータル』電子申請 対象助成金」。10の助成金が列挙されている。

申請前に確認する順番

期限と様式のほかに、共通要領の要件も満たす必要があります。雇用関係助成金の共通要領で扱っているとおり、労働保険料の未納や役員等一覧の未提出は、コース側の要件とは無関係に不支給になります。

順番としては、まずGビズIDと共通要領の確認、次に計画の提出期限、そのあとに取組、最後に支給申請の起点と様式です。取組を始めてから逆算しようとすると、計画の提出期限が過ぎていることに気づきます。助成金の位置づけそのものは助成金とは?申請条件・申請から受給までの流れで整理しています。

まとめ

雇用関係助成金の手続きは、計画の提出が先で支給申請が後です。計画の期限は、キャリアアップ助成金が各コースの実施日の前日まで、人材開発支援助成金(人材育成支援コース)が訓練開始日の6か月前から1か月前までの間と、性格が違います。

支給申請はどれも2か月以内ですが、起点が違います。キャリアアップ助成金は取組後6か月分の賃金を支払った日の翌日、人材開発支援助成金は訓練終了日の翌日、特定求職者雇用開発助成金は各支給対象期の末日の翌日です。

電子申請は雇用関係助成金ポータルで、GビズIDの申請・取得が必要です。代理人に依頼する場合も必要とされています。令和8年4月からの対象労働者一覧の自動生成機能は、代理人による申請では利用できません。郵送の場合は到達日が期限になります。個別の期限は、各助成金の制度ページと管轄の労働局でご確認ください。

どの助成金で申請するかを決める段階では雇用関係助成金13分類の比較、制度の仕組みは助成金とはをご覧ください。

参照した一次情報

期限・手続きは2026年10月1日に厚生労働省の公式ページおよびリーフレットに掲載されていた内容です。各助成金の支給要領と申請様式は年度途中にも改定され、適用される内容は計画届の提出時期や取組を行った日によって変わります。受給を保証するものではなく、個別の期限や適用の可否は管轄の都道府県労働局またはハローワークにご確認ください。