破産手続とは|配当は優先的破産債権から4段階。法人は債務超過も開始原因、費用が足りなければ同時に廃止

財団債権から約定劣後破産債権までの配当の順位を上から順に積み上げたアイキャッチ

破産は、裁判所が選んだ破産管財人が財産を換価し、法定の順位に従って配当して終わる手続きです。再建を目指す手続きとは違い、債権者の多数決も協定もありません。配当の順位と財団債権の範囲という2つの仕組みが、誰がいくら回収できるかをほぼ決めます。破産法の条文で確かめます。

条文に書かれている枠組み

  • 開始の原因は支払不能。支払を停止したときは支払不能にあるものと推定される(破産法15条)。
  • 債務者が法人の場合は、支払不能に加えて債務超過も原因になる。ただし存立中の合名会社・合資会社には適用しない(16条)。
  • 申立てができるのは債権者と債務者。債権者が申し立てるときは債権の存在と開始原因の事実を疎明しなければならない(18条)。
  • 開始決定があると、破産財団に属する財産の管理・処分の権利は破産管財人に専属する(78条1項)。
  • 配当の順位は優先的破産債権→一般の破産債権→劣後的破産債権→約定劣後破産債権の4段階。同一順位では債権額の割合に応じて配当する(194条)。
  • 破産財団で手続の費用を支弁するのに不足すると認めるときは、開始決定と同時に破産手続廃止の決定をしなければならない(216条1項)。

支払を止めると「支払不能」と推定される

15条1項は「債務者が支払不能にあるときは、裁判所は、第三十条第一項の規定に基づき、申立てにより、決定で、破産手続を開始する」と定めています。

第2項が実務で効く推定規定です。「債務者が支払を停止したときは、支払不能にあるものと推定する」。支払不能を一から立証しなくても、支払停止の事実があれば推定が働きます。債権者側から申し立てる場面で、この推定が入口の役割を果たします。

e-Gov法令検索の公式画面。破産法の法令名と章立ての目次が表示されている
e-Gov法令検索の破産法。開始の申立てから破産管財人、破産債権、配当と章が並ぶ(2026年10月21日に表示)。

法人には「債務超過」という原因が加わる

16条1項は、債務者が法人である場合の15条1項の適用について、「支払不能」とあるのは「支払不能又は債務超過(債務者が、その債務につき、その財産をもって完済することができない状態をいう。)」とすると読み替えを定めています。

第2項には除外があります。「前項の規定は、存立中の合名会社及び合資会社には、適用しない」。無限責任社員がいる会社形態は、債務超過だけでは開始原因にならないということです。

破産手続開始の原因(破産法15条・16条)
債務者 開始の原因
個人 支払不能(支払停止があれば推定される)
法人(下記を除く) 支払不能または債務超過
存立中の合名会社・合資会社 債務超過は原因にならない(16条2項)

支払不能と債務超過は別の概念です。支払不能は支払う能力の問題であり、債務超過は貸借の残高の問題です。16条1項が債務超過の定義を「債務者が、その債務につき、その財産をもって完済することができない状態」と括弧書きで置いているのは、15条の支払不能と取り違えないための線引きです。手元に現金があっても負債が資産を上回っていれば、法人については開始の原因になり得ます。

債権者が申し立てるには疎明が要る

18条1項は「債権者又は債務者は、破産手続開始の申立てをすることができる」としています。債権額の下限はありません。

ただし第2項により、債権者が申し立てるときは「その有する債権の存在及び破産手続開始の原因となる事実を疎明しなければならない」。債務者本人が申し立てる場合には課されていない負担です。

開始決定がされない2つの場合

30条1項は、開始の原因となる事実があると認めるときは、次のいずれかに該当する場合を除き破産手続開始の決定をするとしています。

破産手続開始の決定がされない場合(破産法30条1項)
号 内容
1号 破産手続の費用の予納がないとき(23条1項前段により費用を仮に国庫から支弁する場合を除く)
2号 不当な目的で申立てがされたとき、その他申立てが誠実にされたものでないとき

民事再生や会社更生にあった「計画の見込み」に当たる要件がありません。再建の見通しを問わない分、入口の要件は少なくなっています。第2項により、決定はその決定の時から効力を生じます。

費用が足りなければ同時に手続が終わる

216条1項は「裁判所は、破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるときは、破産手続開始の決定と同時に、破産手続廃止の決定をしなければならない」と定めています。

第2項により、手続の費用を支弁するのに足りる金額の予納があった場合には適用されません。第3項は、同時に廃止の決定をしたときは、開始決定の主文と廃止決定の主文・理由の要旨を直ちに公告し、破産者に通知しなければならないとしています。

財産が足りなければ、管財人も配当も置かれないまま終わる。

216条1項は「しなければならない」と書かれています。裁判所の裁量ではありません。財産の有無が、手続の形そのものを分けます。

破産財団に入る財産と、入らない財産

34条1項は「破産者が破産手続開始の時において有する一切の財産(日本国内にあるかどうかを問わない。)は、破産財団とする」と定めています。第2項により、開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権も破産財団に属します。

第3項が除外です。民事執行法131条3号に規定する額に2分の3を乗じた額の金銭と、差し押さえることができない財産は破産財団に属しません。ただし、民事執行法132条1項により差押えが許されたものと、破産手続開始後に差し押さえることができるようになったものは除かれます。

第4項には拡張の仕組みがあります。裁判所は、開始決定があった時から決定が確定した日以後1か月を経過する日までの間、破産者の申立てまたは職権で、生活の状況、開始時に有していた3項各号の財産の種類と額、収入を得る見込みその他の事情を考慮して、破産財団に属しない財産の範囲を拡張できます。第5項により、その決定にあたっては破産管財人の意見を聴かなければなりません。

管財人の権限と、許可が要る行為

78条1項は「破産手続開始の決定があった場合には、破産財団に属する財産の管理及び処分をする権利は、裁判所が選任した破産管財人に専属する」としています。

第2項は、管財人が一定の行為をするには裁判所の許可を得なければならないとして、15の号を挙げています。主なものを整理します。

破産管財人が裁判所の許可を要する主な行為(破産法78条2項)
号 行為 金額による例外(3項)
1号 不動産に関する物権、登記すべき日本船舶または外国船舶の任意売却 例外なし
3号 営業または事業の譲渡 例外なし
4号 商品の一括売却 例外なし
5号 借財 例外なし
7号 動産の任意売却 最高裁判所規則で定める額以下のとき等は許可不要
8号 債権または有価証券の譲渡 同上
13号 財団債権、取戻権または別除権の承認 同上
14号 別除権の目的である財産の受戻し 同上

第3項により、金額による例外が及ぶのは7号から14号までです。不動産の売却や事業譲渡、借財にはこの例外がありません。

開始決定で強制執行は効力を失う

42条1項は、開始決定があった場合に、破産財団に属する財産に対する強制執行、仮差押え、仮処分、一般の先取特権の実行、企業担保権の実行、外国租税滞納処分で、破産債権または財団債権に基づくもの等はすることができないと定めています。

第2項は、既にされているものについて「破産財団に対してはその効力を失う」としています。中止ではなく失効です。ただし書きにより、強制執行または一般の先取特権の実行の手続は、破産管財人が破産財団のために続行することを妨げません。

第4項により、続行された手続に関する破産者に対する費用請求権は財団債権になります。第6項は、破産債権または財団債権に基づく財産開示手続・第三者からの情報取得手続について、申立てができなくなり、既にされているものは効力を失うと定めています。

破産債権は手続の外では行使できない

100条1項は「破産債権は、この法律に特別の定めがある場合を除き、破産手続によらなければ、行使することができない」としています。

第2項に例外があります。破産手続開始の時に破産財団に属する財産に対して既にされている国税滞納処分と、徴収の権限を有する者による還付金または過誤納金の充当によって租税等の請求権を行使する場合には、1項は適用されません。

開始前に全債権者の執行を止める命令がある

25条1項は、破産手続開始の申立てがあった場合に、24条1項1号または6号による中止の命令では手続の目的を十分に達成することができないおそれがあると認めるべき特別の事情があるときは、利害関係人の申立てまたは職権で、開始の申立てにつき決定があるまでの間、全ての債権者に対し、債務者の財産に対する強制執行等および国税滞納処分の禁止を命ずることができると定めています。

ただし書きに条件が付いています。事前にまたは同時に、債務者の主要な財産に関し28条1項の保全処分をした場合か、91条2項の保全管理命令をした場合に限ります。財産を押さえる手当てをしないまま、債権者の手だけを縛ることはできないという建て付けです。

第3項により、包括的禁止命令が発せられると、既にされている強制執行等の手続と外国租税滞納処分は、申立てにつき決定があるまでの間、中止します。第7項は即時抗告に執行停止の効力がないと定めています。

手続の外で回収できる2つの権利

破産手続によらなければ行使できないのが原則(100条1項)ですが、条文が明示的に外している権利が2つあります。

65条1項は「別除権は、破産手続によらないで、行使することができる」と定めています。第2項により、担保権(特別の先取特権、質権または抵当権)の目的である財産が管財人による任意売却その他の事由で破産財団に属しないこととなった場合でも、当該担保権がなお存続するときは、その財産について別除権を有します。

67条1項は「破産債権者は、破産手続開始の時において破産者に対して債務を負担するときは、破産手続によらないで、相殺をすることができる」としています。第2項により、債権が期限付・解除条件付であっても、また負担する債務が期限付・条件付や将来の請求権に関するものであっても、相殺は妨げられません。

破産手続によらずに行使できる権利
条文 権利 条文の書き方
65条1項 別除権 破産手続によらないで行使することができる
67条1項 相殺権 破産手続によらないで相殺をすることができる
100条1項 破産債権 特別の定めがある場合を除き、破産手続によらなければ行使することができない

支払不能の前後でさかのぼって否認される

破産手続の前に行った取引が、後から効力を否定されることがあります。160条1項は、担保の供与または債務の消滅に関する行為を除く行為について、次の場合に破産財団のために否認することができると定めています。

1号は破産者が破産債権者を害することを知ってした行為。ただし、利益を受けた者がその行為の当時それを知らなかったときは除かれます。2号は支払の停止または破産手続開始の申立て(支払の停止等)があった後にした破産債権者を害する行為で、同じただし書きが付いています。

第3項には期間が書かれています。「破産者が支払の停止等があった後又はその前六月以内にした無償行為及びこれと同視すべき有償行為は、破産手続開始後、破産財団のために否認することができる」。無償行為については、相手方が知っていたかどうかを問いません。

162条は、既存の債務についてされた担保の供与または債務の消滅に関する行為を対象にしています。

特定の債権者に対する担保の供与等の否認(破産法162条1項)
号 対象となる行為 要件
1号イ 支払不能になった後にした行為 債権者が支払不能であったことまたは支払の停止があったことを知っていた場合に限る
1号ロ 破産手続開始の申立てがあった後にした行為 債権者が申立てがあったことを知っていた場合に限る
2号 破産者の義務に属さず、またはその時期が義務に属しない行為で、支払不能になる前30日以内にされたもの 債権者が他の破産債権者を害することを知らなかったときを除く

第3項には推定が置かれています。「支払の停止(破産手続開始の申立て前一年以内のものに限る。)があった後は、支払不能であったものと推定する」。第2項により、債権者が161条2項各号に掲げる者である場合などには、知っていたものと推定されます。

「払えるうちに回収しておく」が後から覆ることがある。

162条は、支払不能を知ったうえで受けた弁済や担保の設定を否認の対象にしています。30日・6か月・1年という期間が条文に書かれており、取引を見直す起点になります。

財団債権は配当を待たずに支払われる

148条1項は財団債権となる請求権を8つ挙げています。配当の対象である破産債権とは別枠で、手続の中から随時弁済される債権です。

財団債権となる主な請求権(破産法148条1項)

1号

破産債権者の共同の利益のためにする裁判上の費用の請求権。

2号

破産財団の管理、換価および配当に関する費用の請求権。

3号

開始前の原因に基づく租税等の請求権のうち、開始当時まだ納期限が到来していないもの、または納期限から1年を経過していないもの。

4号

破産財団に関し破産管財人がした行為によって生じた請求権。

8号

破産手続の開始によって双務契約の解約の申入れがあった場合に、開始後その契約の終了に至るまでの間に生じた請求権。

3号の「納期限から1年」という線引きが、滞納している租税の扱いを分けます。第4項により、保全管理人が債務者の財産に関し権限に基づいてした行為によって生じた請求権も財団債権です。

配当の順位は4段階に決まっている

194条1項は、配当の順位を破産債権間において次の順位によると定めています。優先的破産債権どうしの順位は98条2項の優先順位によります。

配当の順位(破産法194条1項)
順位 種類
1号 優先的破産債権
2号 1号・3号・4号以外の破産債権(一般の破産債権)
3号 劣後的破産債権
4号 約定劣後破産債権

第2項は「同一順位において配当をすべき破産債権については、それぞれその債権の額の割合に応じて、配当をする」としています。上の順位が満額になるまで下の順位に回らないという建て付けです。

免責で責任を免れない請求権がある

免責は個人の破産者についての制度です。253条1項は、免責許可の決定が確定したときは破産手続による配当を除き、破産債権についてその責任を免れるとしたうえで、例外を列挙しています。

免責の効力が及ばない主な請求権(破産法253条1項)
号 請求権
1号 租税等の請求権
2号 破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
3号 故意または重大な過失により加えた、人の生命または身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権
4号 夫婦間の協力扶助、婚姻から生ずる費用の分担、子の監護、扶養の各義務に係る請求権など

租税が1号に挙がっている点は、148条1項3号で一定の租税が財団債権とされていることと合わせて読む必要があります。税金は手続の前でも後でも別扱いになっています。

他の3つの手続きとの違い

これまで見てきた手続きと並べると、債権者の同意を要するかどうかで大きく分かれます。

破産と他の3手続の対比
項目 破産 特別清算 民事再生・会社更生
債権者の同意 要らない(配当は法定の順位による) 協定の可決が要る(会社法567条1項) 計画の可決が要る
対象 債務者(法人・個人) 清算株式会社(会社法510条) 債務者/株式会社
財産の管理処分権 破産管財人に専属(78条1項) 清算株式会社(許可・同意が要る。会社法535条) 再生債務者または管財人
既存の強制執行 効力を失う(42条2項) 中止し、開始命令の確定で効力を失う(会社法515条) 中止する
費用が足りないとき 開始と同時に廃止(216条1項) 予納がなければ開始命令なし(会社法514条1号) 予納がなければ棄却・開始せず

各手続きの条文は民事再生とは、会社更生とは、特別清算とはで個別に整理しています。

この記事で扱っていないこと

確認したのは破産法の条文です。予納金の額、同時廃止と管財事件の振り分けの運用、配当までに要する期間は、裁判所ごとに決まるもので、今回は一次情報で確認していないため書いていません。

また、否認権、相殺権、別除権の行使方法、免責不許可事由の個別の判断についても、この記事では条文の所在を示すにとどめています。個別の事案の判断は弁護士に相談してください。

よくある質問

支払を止めた時点で破産になりますか

なりません。15条2項は支払を停止したときに支払不能にあるものと「推定する」と定めているだけで、開始には30条の決定が必要です。

合同会社は債務超過だけで破産しますか

16条2項が適用を除外しているのは「存立中の合名会社及び合資会社」です。合同会社はこの除外に挙げられていません。

債権者から破産を申し立てられることはありますか

18条1項により債権者も申立てができます。ただし2項により、債権の存在と開始原因となる事実を疎明しなければなりません。

担保を取っている債権者は配当を待ちますか

65条1項は「別除権は、破産手続によらないで、行使することができる」と定めています。配当の順位(194条)の外で回収できる権利です。

税金は配当で消えますか

148条1項3号は、開始当時まだ納期限が到来していないか、納期限から1年を経過していない租税等の請求権を財団債権としています。また253条1項1号により、個人の免責の効力は租税等の請求権に及びません。

会社の財産がほとんどない場合はどうなりますか

216条1項により、破産財団をもって手続の費用を支弁するのに不足すると認めるときは、開始決定と同時に破産手続廃止の決定がされます。費用を支弁するのに足りる予納があれば適用されません(2項)。

他の手続きとの条文上の違いは債務整理・事業再生の5手続きを条文で比較、破産に至る前にどの打ち手があるかは会社の債務を整理する方法の一覧で整理しています。

出典