売掛金や債権の未回収は資金繰りに大きな悪影響を与えてしまいます。売掛金回収・債権回収は、資金調達以上にキャッシュフローにヒットする重要なミッションであることは間違えありません。しかし、一般的な会社経営者や社員がいきなり「売掛金回収・債権回収」をしろといっても「どうやっていいか皆目見当もつかない」という方が多いようです。今回は売掛金回収・債権回収を成功させる方法について解説します。
売掛金回収・債権回収を成功させる考え方
目的を見失わない!
当然、「お金を借りたものを返さない。」「支払う約束を実行しない。」ということは、相手方が悪いのは間違えありません。
しかし、売掛金回収・債権回収の目的は「確実に未回収債権を回収すること」ですから
いきなり「何で払わないんだコノヤロー。」と怒鳴り込んでも意味はありません。
いきなり「内容証明」を送っても、逆にこじれてしまうことも多いのです。
あくまでも、目的は「確実に未回収債権を回収すること」ですので、「なんでこちらが下手に出なければならないんだ。」と思うかもしれませんが、高圧的な態度は取らずに、友好的な態度で交渉に臨む必要があります。
連絡のスピード、連絡の回数を増やす!
多くの滞納をする方は「何も言ってこないところは後回しでいいや。」と思っているケースが多いのです。
資金が限られている場合には、支払いの優先順位も取引先にはあるのです。何も言ってこないところと毎日電話がかかってくるところだったら、後者を優先して支払うものなのです。
心理的なプレッシャーをかけるためにも、友好的な態度を崩すことなく
- 支払い遅延が発生したら速やかに連絡をする
- 連絡をしたら滞納の理由を確認して、支払いの期日を確認する
- 遅れた支払期日にも、遅延が発生したら速やかに連絡をする
ということを繰り返す必要があるのです。
「ここはうるさく何回も言ってくるから、先に払っておくか。」と思わせたら、勝ちです。
「忙しいから連絡は後回し。」
「取引先に悪いな。」
「嫌な奴と思われるのが厭だな。」
と思ってはいけないのです。請求するのは正当な権利ですから、連絡の密度を上げる必要があります。
売掛金回収・債権回収を成功させる手順
1.連絡を取る
2.支払い遅延の理由を確認する
3.支払い遅延の理由に応じて解決を図る
4.内容証明郵便を送る
5.法的手続き
6.強制執行
という手順になります。
1.連絡を取る
連絡を取らなければ話になりません。
まずは、支払期日に遅れたら、すぐに先方に連絡します。
2.支払い遅延の理由を確認する
連絡をした場合に「なぜ、遅れたのか?」をヒアリングする必要があります。
理由に応じて、取るべき債権回収の方法が変わってくるからです。
できるだけ細かく支払い遅延の理由を確認する必要があります。
3.支払い遅延の理由に応じて解決を図る
「忘れていた」
対応:すぐに支払い処理をしてもらう。支払日を約束する
「払う意思があるけれども、現在お金がない」
対応:公正証書を作成する
公正証書とは、公証人が作成する公正証書には判決と同等の効力認められ、有力な証拠となるものです。公正証書で「債務承諾弁済契約書」を作成し、執行認諾条項(金銭の支払いがなかった場合に、訴訟をせずに強制執行しても、異議を申し立てない)を入れておくことで、訴訟せずに強制執行が可能になります。
また、「債務承諾弁済契約書」には時効を中断する効果があるので、有効な方法となろいます。
「サービスや商品に不満があり、払いたくない。」
対応:「どこに不満があるのか?」をヒアリングして妥協ラインを探る
相手方のクレームを発端にして支払わないというケースは少なくありません。この場合、「どこに不満があるのか?」をヒアリングして対応する必要があります。
相手の言い分が理解できるものであり、こちらの落ち度もある場合には、支払額の減額(割引)や代替サービスの提供など、できる範囲で譲歩する必要があります。妥協したラインで「債務承諾弁済契約書」を結んでおきます。
相手の言い分がまったくの言いがかりである場合は、請求の正当性を主張し、内容証明を送るなどある程度、プレッシャーを強める必要があります。この場合は、双方の合意を得るために第三者の裁判所で判断してもらう民事調停などの方法も取れます。
「倒産しそう」
対応:すぐに支払い督促や訴訟を行う
「倒産しそう」と話してくれるケースは少ないのですが、周辺の取引先からの情報も踏まえて倒産しそうという状態であることをキャッチしたら、速やかに「支払い督促」「訴訟」などの手続きを取りましょう。差押えの手続(強制執行)を進める必要があります。
破産してからでは、ほとんど債権者にお金は戻ってきません。
支払い督促は簡易裁判所に申し立てるもので、2週間以内に異議がなければ30日以内に債権者の申し立てによって仮執行宣言が付されます。
差押えの手続(強制執行)とは相手から強制的に財産を取り上げ、債権回収を行ってしまう手続きのことです。差押えの手続(強制執行)を行うためには、裁判所の許可が必要となります。そのために「権利を証明する公的文書(判決、和解調書、公正証書など)」と「差し押さえの対象となる財産の情報」が必要となるのです。
その他の回答
対応:本当の理由を調べる
支払いが滞ってしまっている場合には、相手方は色々なウソをつくケースも少なくありません。相手方の回答だけを素直に受け取るのではなく、周辺の取引先の情報など、周りの情報をヒアリングして、真実を見極める必要があります。
4.内容証明郵便を送る
相手方に支払う意思がなければ内容証明郵便で支払い請求をする必要があります。
内容証明郵便を送れば6か月間は時効の停止が可能です。その間に訴訟の手続きをする形になります。
内容証明を送るというステータスになってしまえば、法的手続きのスタートという段階ですので、宣戦布告的な意味合いがあります。
今後の取引は継続できないものと考える必要があるので、内容証明郵便を送る場合には「話し合いでの解決ができないか?」余地を探る必要があり、慎重に実行に移す必要があります。
5.法的手続き
内容証明郵便には時効の停止の効果が6か月と限定されています。
そのため、内容証明郵便でも支払いが行われない場合には、速やかに「支払い督促」「訴訟」に進める必要があるのです。
- 支払い督促
- 少額訴訟
- 通常訴訟
などがあります。
訴訟で判決が出れば、強制執行が可能になるのです。
6.強制執行
まとめ
売掛金回収・債権回収をするというのは、する方も気持ちのいいものではありませんが、自社の資金繰りの悪化を引き起こすだけなので、きわめて冷静に手順を進めていく必要があります。
「感情的に怒る」ことも、「温情を与える」ことも、売掛金回収・債権回収には不要なのです。
債権の消滅時効を迎えないように、速やかかつ着実に売掛金回収・債権回収を行いましょう。
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