クラウドファンディングは多数の人からお金を集める仕組みです。
お金を集めるためにはリターンが必要になるなど、デメリットもあります。
また、クラウドファンディングを始める際には基本的にはお金がかかりません。資金を調達できた場合にのみ、利用したクラウドファンディングサイトへの手数料や、返礼が必要になります。
上手く行けばいいですし、ダメでもリスクがないように見えます。
では、クラウドファンディングには何もリスクがないのかと言えばそんなことはありません。
クラウドファンディングのデメリットとは
クラウドファンディングによる資金調達は、従来の資金調達(銀行からの借入など)と比べて様々なメリットがあります。その一方、デメリットもあります。
デメリット1.運営会社による審査がある
その際、サイトへの掲載は運営会社が審査を行い、審査を通ったものだけが掲載されます。
従来の資金調達では銀行などの審査の結果によって資金調達ができるかどうかが決まりました。クラウドファンディングでは審査を経たうえで、さらにプロジェクトへの募集を行い、支援者・投資家がつくことではじめて資金調達を行うことができます。
デメリット2.調達できるかどうかが読めない
従来の資金調達も、融資や増資が決まっても、実際にお金が入金されるまで決して気を緩めるべきではないと言われてきました。融資も、出資も、最後まで(実際に入金されるまで)何が起こるか分からないためです(気が変わる、ということもあれば、不可抗力のような事情で資金調達に応じられなくケースもあります)。
これは逆に言えば、ある程度は「事前に予測することができていた」ということです。
融資であれ、出資であれ、銀行やVCなどの担当者と会話をする中で、資金調達ができるのかできないのか、おおよそは当たりをつけることができました。
これに対して
この多数の判断を予想することは、困難です(事前にそれぞれと会話しておくことが、数が多いためできないです)。
デメリット3.調達までの時間が読めない
クラウドファンディングによる資金調達は、資金調達できるかどうかも不明ながら、もう一つ重大な問題があります。
それが、いつ資金が利用できるようになるのか分からない、つまり時間が読めないことです。
クラウドファンディングの手順
クラウドファンディングは、まずクラウドファンディングサイトの運営者による審査があり、募集期間を決めることでスタートします。
募集の期限はいったん始めてしまうと通常、変更する、特に延期することができません。
期限に、プロジェクトが成功するまで応募が集まっていれば、その日から一定期間後(それぞれのクラウドファンディングサイトによって異なります)に手数料を差し引いた金額が会社に振り込まれることになります。
なぜ時間が読みずらいのか?
問題はクラウドファンディングを検討している段階ではいつが期限になるか分からない点です。
期限を決めるためには、クラウドファンディングサイトの運営者の審査に通る必要があります。また、その運営者との間で期限について合意する必要があります。
それぞれがスムーズに進み、募集期間も当初想定していた通りに設定できれば、資金を利用できる日もある程度見込めます。
デメリット4.調達までに時間がかかる
クラウドファンディングは、サイトの運営会社の審査を経て、実施されます。
サイト運営会社の審査にかかる日数は長くても1週間程度です。審査の後、募集期間が概ね1か月半かかります。クラウドファンディングが成功すれば期限の後、早くて半月ほどで入金がなされます。
非常にうまく進んだ場合で、2か月程度の時間がかかるということです。
しかし、審査の中で不備が指摘されれば、その是正を行ったうえで再度審査が行われるため、さらに時間がかります。
また、クラウドファンディングを始めるための準備には、説明資料やサイトの作成など、それなりに時間がかかります。
そのため、通常は3か月以上先の調達を見据えて、長期的にクラウドファンディングに取り組むことになります。
デメリット5.大型の資金調達には向いていない
なぜなら、一人ひとりの資金提供者が負担するリスクを小さく抑えることができ、それぞれの資金提供者は自分で選択した分だけのリスクを負担することができるからです。
しかしながら、多額の調達には向いていません。
資金提供者の事情
クラウドファンディングの認知度が向上していると言っても、実際に資金を提供している人は限られます。
また、小口に分散されたリスクは大口の投資家(例えば年金や金融機関など)には好まれません(リスクを分散する際にコストがかかるため、多額の資金を運用する場合にはほかにもっと選択肢があるためです)。
プロジェクト単位での調達になる
クラウドファンディングは、資金調達の目的を明示する必要があります。集めた資金を何に使うのかを明確にする必要があるということです。
寄付型や購入型のクラウドファンディングでは、かなり具体的な資金使途を明示する必要があります。クラウドファンディングに応募する人は、その資金の使い道に賛同して資金を提供してくれるためです。
貸付型や出資型の、いわゆる金融型のクラウドファンディングの場合には、資金使途はもっと緩い説明でも行われています。しかし、説明が不要になるわけではありません。
貸付型の場合、集めたお金が何に使われるのかによって、その資金をどうやって返済するつもりなのかが説明されます。これは銀行から融資を受ける場合に資金使途の説明を求められることと同じです。
出資型の場合、集めたお金をどう使うことで、会社の想定する事業成長を達成するのかが最も重要な点と言えます。これはベンチャーキャピタル(VC)から資金を集める際に必要になる説明と同じ程度には資金使途が含まれる事業計画を明確にする必要がある、ということです。
成功率が低下する
クラウドファンディングは大衆からお金を集める仕組みですが、その大衆が少額ずつを出し合う仕組みでもあるからです。特に出資型の場合には一人当たりの出資額に上限があります。
出資者を募るのに大がかりな宣伝費を使うことはできません。なぜなら、その資金があればクラウドファンディングを行う必要がないからです。
大規模な広告(テレビ広告など)なしに、多数の人に会社を知ってもらい支援してもらうわけですから、数が多くなればなるほど大変と言えるのです。
返戻(リターン)が必要となる
調達額の限度を規定する事情にはもう一つ、リターンがあります。
出資型や貸付型の場合のリターンは、クラウドファンディングであっても、その他の従来から行われてきた銀行等を相手に行う場合であっても違いがありません。同じようにコストの一環として考えておけば足ります。
一方で購入型の場合には、用意できるリターンには限りがある場合もあります。プレミアム感を出すため、制限する場合もあります。
リターンとして約束できる範囲の資金調達でないと、サイト運営者の審査に通らないとも言えます。
デメリット6.コストがかかる
クラウドファンディングは無料で始めることができますし、募集金額が集まらずプロジェクトを断念する場合にはお金がかかりません。
しかし、目標金額までお金が集まるとコストが発生します。
一つはサイトの運営会社に支払う手数料です。これは、サイト利用料、決済手数料など、費目は異なりますが、募集した金額の一部をサイト運営会社に手数料として支払うことになります。
そしてもう一つ、クラウドファンディングで資金調達した場合に、リターンが設定されているとそのリターンが費用として必要になります。
寄付型や購入型の場合のリターンはいわゆる「返戻品」や「商品」ということになります。
これに対して、金融型と呼ばれる融資型の場合には、借りたお金に対する「利子相当額」がコストになります。つまりサイトの運営者に対して支払われる手数料と借りたお金に対する利子の合計がコストになります。
足元は低金利な経済状況であることも理由ですが、サイト利用料がそれなりに高額であることも理由です。また、出資型の場合には、リターンとして投資家に渡るものが株式や新株予約権であり、サイトの手数料だけがコストになります。
通常、第三者割当増資を行う際には、直接に費用が発生しない(間接的には、法定書類の作成のための弁護士費用などがかかります)のに対して、サイト利用料がかかる分だけクラウドファンディングの方がコストが大きいと言えます。
クラウドファンディングのリスクとは?
クラウドファンディングは成功しなければコストが発生しないため、一見すると「チャレンジするだけならしないよりもよさそう」に見えます。
しかし、クラウドファンディングを利用した結果、逆に会社に悪影響を与えることもあり得ます。
クラウドファンディングの利用にはどのようなリスクがあるのか見ていきましょう。
リスク1.プロジェクトがまねされる
より多くの人に知ってもらうことは、クラウドファンディングを成功するために必要で、会社やプロジェクトを知った人の一部が支援者や投資家となってクラウドファンディングに応募してくれることになります。
一方で、より多くの人に知られるのは良いことばかりではありません。悪意を持った人にも知られるということだからです。
特許で保護されている等、法的に強力に競合を排除できる仕組みがあれば考える必要のない問題です。
そのような仕組みで自社を守れないのであれば、アイディアをまねされても自社の競争力が守れるかを検討してみる必要があります。
リスク2.拡散にSNSを利用する(炎上するリスクがある)
自社の行うクラウドファンディングをより多くの人に知ってもらうためにはインターネット、特にSNSを活用する必要があります。
元々、SNSを使いこなしている会社であれば問題ありませんが、クラウドファンディングを機に会社の公式SNSを始めるような場合には、SNSの運用ルールについて事前に検討しておく必要があります。
(リスク・3)お金を集めてしまうとプロジェクトを中止できない
クラウドファンディングには
- All or Nothingと呼ばれる、目標金額の全額を超える応募が合った場合に初めて資金を受け取れるパターン
- All-inと呼ばれる、目標金額に届かなくても応募された金額が受け取れるパターン
の2種類があります。
どちらのパターンを利用するにしても、一度お金を受け取ってしまうと、約束したプロジェクトを行う義務が生じます。
具体的には、受け取った資金に相応するリターンを資金提供者に渡す義務が生じます。
そのプロジェクトが、少額の資金でも始められるのであれば何ら問題ありません。
しかしながら、リターンが目標額全額を集めたことを前提に設計されることがほとんどです。
リスク4.リターンは期待値を下回ると批判される
特に購入型のクラウドファンディングにおいて、応募者が応募してくる最大の理由はリターンとして設定されたものを手に入れたいからです。
その商品への期待が高い人が応募して資金を投じてくれるわけです。そのため、リターンが応募者の期待に沿うものであれば何ら問題ありません。
期待にそぐわないことは、その商品の品質面においても起こりえます。約束していた機能が実装できなかった、あるいは実装されているものの期待されているレベルには程遠いこともあり得ます。
また、期限の面でも起こりえます。想定していた期間で開発が終わらず、リターンの提供がクラウドファンディングで説明していた時期より遅れてしまうこともありえます。
応募者が商品に対して抱く期待値は明確ではありません。そのため、すべての応募者の期待を上回ることを難しいと言えます。
一部に批判的な人がいても、他の大部分の人が満足してくれているのであれば、深刻なトラブルにはならないでしょう。
逆に、多くの人の期待を下回った場合には、批判の声が大きくあがるとともに、広く拡散されることも覚悟しておくべきです。
まとめ
クラウドファンディングにはさまざまなデメリットがあります。
従来からある資金調達方法がより望ましい場面も多々あるということです。
しかし、デメリットはより良い方法があった、という反省に留まる一方、リスクの中には、会社に取り返しのつかない損害を与えるものもあります。
特に、会社の大切なアイディアが盗まれてしまうと、会社の事業に深刻な問題が生じる可能性があります。
また、クラウドファンディングを行ったことにより会社の評判を下げてしまうと現在の損失に留まらず、将来の顧客まで失う可能性があります。