クラウドファンディングは多くの人から、少額ずつの資金を集める仕組みです。
資金を集めようとする人(実施者)が計画(プロジェクト)を立ち上げます。
プロジェクトでは次の項目が示されます。
- いくら集める予定なのか(目標額)
- 集めた資金で何をするか
- 資金を提供した人に何をお返しするのか(リターン)
資金提供者は、このプロジェクトを見て、気に入ったプロジェクトがあれば資金を提供します。
プロジェクトは、クラウドファンディングサイトで開示されます。
クラウドファンディングサイトを利用するにはサイトの運営者に対して手数料を支払う必要があります。
クラウドファンディングサイト(運営者)の役割と手数料
クラウドファンディングサイトの手数料はその運営者が果たす役務の対価です。
クラウドファンディングサイトの運営者の役割とはどのようなことでしょうか。また、その役割の対価となる手数料はどのようなものでしょうか。
クラウドファンディングサイトの役割
クラウドファンディングにおいて実施者と資金提供者をつなぐのがクラウドファンディングサイト(運営者)です。
つなぐ、の内容は2つあります。
- クラウドファンディングサイトに実施者のプロジェクトを掲載する
- 資金提供者から受領したお金を預かり、実施者に手渡す
プロジェクトの掲載
クラウドファンディングを実施するためにはクラウドファンディングのホームぺージ(クラウドファンディングサイト)にプロジェクトを掲載する必要があります。
プロジェクトがサイトに掲載されることにより、クラウドファンディングが実施されていること、そしてそのプロジェクトに参加する方法が分かります。
資金提供者は、例えばSNSの投稿や知り合いからの直接の連絡によってもクラウドファンディングが実施されていることを知ることはできます。
しかし、実際にクラウドファンディングが実施されているかは、クラウドファンディングサイトに掲載されていることを持って確認することになります。
資金の決済
クラウドファンディングは、資金提供者からプロジェクトの実施者へと、金銭が移動します。
しかし、この資金移動は、資金提供者とプロジェクト実施者との間で直接行われるのではありません。一度、運営者が金銭を資金提供者から預かり、実施者へと渡されます。
このように間に運営者が入ることは一見、非効率に見えますが、実際にはさまざまなメリットがあります。
資金提供者のメリット
資金提供者からすると、より安心して資金を提供しやすくなります。
資金提供者はクラウドファンディングに応募するに当たり、先にお金を支払う必要があります。先に、とは「リターンを受けるよりも先」にです。
そのため、実施者がリターンを用意できず返金する場合等、なんらかの事情で資金を返済しなければならなくなった場合等に自分の資金が返ってくるのかは非常に重要です。
実施者が広く知られており、自ら信用を勝ち得ている場合には問題ありません。しかしそうではなく、資金提供者にとって初めて名前を聞くような相手である場合には、信頼してよいのか、つまり何かあったときにちゃんとお金が返ってくるのか、という問題が生じます。
信頼してよいのかを調べることは資金提供者にとって手間です。そのため、その手間をかけるくらいなら、資金提供をやめようと思う資金提供者も出てきます。
プロジェクトの実施者と運営者を比較して、より信頼できるのは通常、運営者です。
プロジェクト実施者のメリット
プロジェクト実施者にとっても、資金提供者から資金を受け取ることは手間です。
金銭を受領した際に、誰からの金銭なのか確認する必要があります。
誰から、とは名前だけではなく、相手の連絡先なども確認する必要があります。なぜなら、連絡先の情報がないとリターンが渡せないからです。また、何等かの理由で返金が発生した際には相手の銀行口座を確認する必要があります。
その他の役割
サイトの運営者はこのほかにも、サイトの運営するために必要な役割を担っています。
プロジェクトの審査
運営者はクラウドファンディングの申込を審査し、審査を通ったプロジェクトのみをサイトに掲載しています。
サポート
審査に通ったプロジェクトの成功率を上げるためのサポートも行っています。プロジェクトの文章の校正や、プロジェクトが拡散される(多くの相手に資金提供を呼び掛ける)ためのアドバイスなどです。
リターンの管理
プロジェクトが成功した後、応募のあった金銭を実施者に渡すだけではなく、リターンが適正になされるかを管理しています。
リターンがなされないことは資金提供者からすれば詐欺に遭ったようなものです。そのようなことがことがあれば、資金を提供することに二の足を踏むことが予想されます。結果として、資金提供者を減らしてしまうことにつながります。
手数料の内容と金額の算定方法
この2つの手数料を別々に請求する運営会社もあります。合わせて(一括して)、手数料として請求する運営会社もあります。
クラウドファンディングを行った全ての実施者に対して、サイトへの掲載は行われます。
一方で資金決済は、クラウドファンディングが成功した(目標額の資金が集まった)場合にのみ行われます。
目標額が集まらず、クラウドファンディングが不成立となった場合には、運営会社の預かった資金がそのまま資金提供者へ返還されるためです。
運営会社の手数料はクラウドファンディングが成立した場合にのみ、徴求されます。
クラウドファンディングの手数料は、資金提供者が提供した金額に対して割合で請求されるのが一般的です。
例えば調達額の20%が手数料となっている場合、100万円調達すれば、20万円が手数料として運営会社に支払われます。
結果、実施者の手元に残るのは80万円になります。
ごく一部の運営会社は審査手数料を徴求することがあります。また、サイト掲載、資金決済以外の手数料をオプションとして設定している会社もあります(その手数料の分だけ、プロジェクトへの支援が手厚くなったりします)。
利用するサイトの手数料は事前によく確認しておきましょう。
資金提供者の支払う手数料
クラウドファンディングではこのように実施者が手数料を支払うことが一般的です。しかし、資金提供者が手数料を支払うサイトもあります。
この場合、資金提供者は自分の提供する金額に対して一定の割合で手数料を支払います。
仮に一定の割合が20%だとすると、10万円の資金提供をした場合に、運営者に対して2万円が手数料として支払われ、実施者に対して8万円が支払われることになります。
実施者と資金提供者、いずれが手数料を支払ったとしても、手数料の料率が同じであれば、プロジェクトで調達される金額の総額は変わりません。
手数料の計算方法と手数料の安いサイト
クラウドファンディングにおいては手数料の支払いが必要となります。
では、どのサイトを使うと手数料を安く済ませることができるのでしょうか。
各サイトの手数料を比較する際、単純に比較することには意味がありません。クラウドファンディングには種類があり、その種類によって、手数料の水準が異なるためです。
クラウドファンディングの種類
クラウドファンディングには2つの種類があります。「金融型」と「非金融型」です。
「金融型」と「非金融型」はクラウドファンディングのリターンが金銭的なものか、金銭以外のものかによって区別されます。
金銭型はさらに、「貸付型」と「出資型」の2つに分かれます。
貸付型とは、資金提供者の提供したお金が、実施者に貸し付けられるものを言います。資金提供者はリターンとして、提供した金額(元本)と、それに対する利息を受領します。
出資型とは、資金提供者の提供したお金が、実施者への出資になるものを言います。資金提供者はリターンとして、提供額に見合った株式、新株予約権などを受領します。
非金銭型のクラウドファンディングサイトの手数料
非金銭型クラウドファンディングサイトの手数料の計算方法
その一部、は集まった金額に一定の割合(手数料率)をかけて算定されます。
つまり、手数料が実額として安いことは、そのサイトの手数料が安いことと同じではありません。Aサイトでは手数料が20万円だった、Bサイトでは手数料が10万円だったとしても、Bサイトの方が手数料が安い、とは言えません。
Aサイトの手数料率が10%、Bサイトの手数料率が20%であった場合、Aサイトでは200万円の調達が行えたのに対して、Bサイトでは50万円の調達した行えなかったことになるからです。
手数料から見ておすすめの非金銭型のクラウドファンディングサイト
非金銭型のクラウドファンディングにおいて、手数料率が安いサイトと言えば、Kibidangoです。
出典:Kibidango
Kibidangoでは調達金額の10%が手数料となります。
貸付型のクラウドファンディングサイトの手数料
貸付型のクラウドファンディングの手数料は、組成手数料と管理報酬の2つがあります。
組成手数料
貸付型のクラウドファンディングにおいて、資金提供者は、実施者に対して直接貸付を行いません。サイト運営者の指定するファンドに対して出資することになります。
そして、そのファンドが実施者に対して貸付を行います。
維持手数料
もう一つの手数料は、ファンドの維持にかかる手数料です。これを管理報酬と言います。
管理報酬は、ファンドが貸付の利息として取得した金銭の一部を受領することになります。
100万円を10%で貸し付けているプロジェクトでは、1年間の利息は10万円になります。実施者は利息として10万円をファンドに支払います。
一方、ファンドの管理報酬が投資管理している金額(100万円)の1%だとすると、1万円になります。ファンドは利息から1万円を差し引いた9万円を資金提供者に支払うことになります。
貸付型のクラウドファンディングサイトにおいて、実施者の支払う組成手数料は、一般には開示されていません。また、実施者の信用によって変わり、貸付の都度、交渉で決められることになります。
出資型のクラウドファンディングサイトの手数料
出資型のクラウドファンディングの手数料は実施者が支払います。
審査料はクラウドファンディングを開始するときに徴求されます。クラウドファンディングが不成立の(成功しなかった)場合でも返金されません。
これに対して取扱手数料は調達金額に対して割合で発生します。各社ともに20%が基本です。
2回目以降は割引になる、調達金額が一定水準(5,000万円)を超えた場合には、超えた分の金額については割引になる、といったサイトもあるので、調達金額や回数を考えながら選ぶ必要があります。
手数料のキャンペーンや助成
クラウドファンディングの手数料は固定されていて不変、というわけではありません。
コロナによる緊急事態宣言が発令された期間、複数のクラウドファンディングサイトが手数料の引き下げを行っています。
出典:パルコ
現時点ではこれがコロナが終息するまでの一時的なものなのか、継続するものなのか、は分かりません。
いずれにしてもクラウドファンディングの手数料は変動するのです。
そして、できるだけ手数料が安くなったタイミングでクラウドファンディングを実施すべきです。
また、クラウドファンディングの手数料については、行政からの助成金が受け取れるケースもあります。
出典:東京都