資金繰りが苦しい場合に優良な事業を売却してまとまった資金調達をするという方法もあります。最近では中小企業のM&Aも活発になってきているため、資金調達の有効な手段となりうるのです。今回は事業譲渡、株式譲渡などのM&Aによる資金調達について解説します。
M&Aとは
M&A(merger and acquisition)は、起業の合併や買収のこと
を言います。M&Aは上場企業などがニュースになってしまうため、大企業でないと縁のないものと思われがちですが、実際には中小企業同士のM&Aや経営者が高齢で引退するときの事業継承などでも活発に売買が行われているのです。
合併や買収というのは、会社丸ごと「売る」「買う」というだけでなく、会社の事業の一部を「売る」、株式の一部を「売る」ということも可能になっています。
つまり、M&Aをしても、会社自体は存続させて、事業譲渡によって資金調達をすることが可能なのです。
事業の全部を対象としたM&A
- 事業譲渡
- 株式譲渡
- 合併+株式譲渡
- 分割+株式譲渡
事業の一部を対象としたM&A
- 事業譲渡
- 分割+株式譲渡
- 業務提携・資本提携
M&Aによる資金調達方法
1.株式譲渡
株式譲渡は、単純に既存の株主の株式を購入希望の企業に売却して、経営参加をしてもらう形のM&Aです。
オーナー企業、社長が会社の株式の大部分を所有している場合に用いられていることが多いM&Aと言えます。
例えば、オーナー社長が自社の株式を100%所有していた時に、20%を経営参画したい企業に売却して、経営参加してもらうという形になります。社長の経営権は80%と小さくなってしまう反面、時価での株式の売却価格が社長に入ってくることになります。
注意が必要なのは、株の売却益はあくまでも株を売却した社長に入るということです。会社の資金調達をするためには、社長からの借入や社債発行という形をとらなければならないので、ひと手間加える必要があるのです。
2.事業譲渡
事業譲渡とは、会社のある特定の事業のみを譲渡することを言います。
事業譲渡をする場合には、一般的には利益が出ていて有望な事業でないと買い手がつきません。買い手も、購入後のシナジーなどが期待できるときに売買が成立します。
事業の価値というのはディスカウントキャッシュフロー法(DCF法)で計算されることが多く、大抵は年間の営業利益の5倍~7倍が売却額の目安となります。
1年で1000万円の利益を生み出せる事業の場合
5000万円~7000万円の売買が成立する可能性が高く、十分な資金調達になるのです。
当然、利益を生み出していなくても、ベンチャー企業のような将来性が期待できる独自技術の場合は、買い手がつく可能性があります。
注意が必要なのは、一般的には利益を生み出せていない事業には価格がつかないということです。事業譲渡によって資金調達でまとまった資金が入るものの、毎月の利益は減少してしまうリスクがあります。
3.業務提携・資本提携
業務提携や資本提携も広義のM&Aと言えます。
業務提携単独だと営業上の契約行為という意味合いしか持ちませんが、資本提携によってお互いの株式を取得することで業務提携の強化が可能になります。
資金調達という意味では、資本提携のときに自社の出資額よりも多く出資してもらうことによって、資金調達が可能になります。
資本提携の上に業務提携で、営業協力、商品開発の協力、人材やノウハウの協力ができれば、会社の収益性は高くなるはずですので、資金調達と同時に資金繰りの改善も見込める方法といえます。
注意が必要なのは、単純に売り手と買い手の関係である事業譲渡や株式譲渡と比較して、業務提携や資本提携は相手を見つけるのが難しいということです。お互いにWIN-WINの関係になるパートナーでなければ、提携する意味がないからです。
まとめ
事業譲渡、株式譲渡などのM&Aによる資金調達は、中小企業でも活発に行われている資金調達方法といえます。
資金繰りが苦しいのであれば、事業の一部を売却して資金調達をすると同時に事業のスリム化を行って、経営を改善する手法も考えるべきなのです。
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