少人数私募債による資金調達の手順

road128_128少人数私募債は中小企業ができる有望な直接金融による資金調達方法です。では、実際に少人数私募債で資金調達をしようとしたら、何から、どうやって進めれれば良いのでしょうか?今回は少人数私募債による資金調達の手順について解説します。

少人数私募債による資金調達の全体の流れ

  1. 資金調達の目的を決定する
  2. 募集内容を決定する
  3. 取締役会議事録を作成する
  4. 募集要項を作成する
  5. 投資家(利害関係者)に訪問・説明会などで投資を募る
  6. 社債申込書を投資家から受け取る
  7. 募集引受書を投資家に発送する
  8. 投資家が入金する
  9. 社債申込み預かり証を発行する
  10. 社債を管理する
  11. 利息を支払う
  12. 満期に償還金を支払う
  13. 社債権者への定期的な説明

1.資金調達の目的を決定する

資金調達で少人数私募債を利用する目的を確定させます。

資金調達をするということは、当然、設備投資や資金繰りに資金が必要ということですから、目的なしに行うものではありません。

  • 調達額が妥当なのか?
  • 他の資金調達方法ではなく、少人数私募債を利用する理由は明確なのか?
  • 資金調達による設備投資などが本当に経営に必要なのか?
    ・・・

といった大前提の部分を、経営者、経営陣でコンセンサスを取る必要があります。少人数私募債は有望な資金調達方法ではありますが、会社の利害関係者が投資家になる仕組みとなっています。

妥当性のないプランや適当な見積もりによる余分な資金調達などは、利害関係者に迷惑をかけてしまう原因になりかねず、会社の信頼を損なうリスクもあるので、慎重に目的を検討する必要があるのです。

2.募集内容を決定する

社債を発行するときの法的根拠は「取締役会の承認」です。取締役会での承認を得る前に社債で募集する条件が決まっている必要があります。

  • 目的
  • 発行総額
  • 利率
  • 発行価額
  • 償還期間
  • 発行時期
  • 利息の支払期間

などです。

3.取締役会議事録を作成する

取締役会の議事録を作成します。取締役会では出席取締役の過半数の賛成で、少人数私募債の発行が決定されます。

投資家にプレゼンするときにはこの取締役会議事録のコピーを証拠として提示するケースもありますし、社債を発行するときの法的根拠は「取締役会の承認」のみであり、その証拠になるものですので、必ず作成し、管理保管しておく必要があります。

4.募集要項を作成する

募集要項を作ります。この募集要項を元に投資家にプレゼンをするのです。募集要項は「社債申込書」の裏に記載することが多いようです。申込書と募集要項をワンセットにして作成します。

申込書に署名と捺印をしてもらって、申込みが完了することになります。

社債申込書のサンプル

社債申込書

株式会社○○   第   回少人数私募債(○○ファンド)

額面 ○年償還社債1口 券面額 金○○万円を○口 社債申込金計 金○○万円

社債発行に関する次頁記載事項を承認の上、申込いたします。

平成   年  月  日

申込人
住 所
氏 名
(署名又は記名押印してください)

募集要項のサンプル

株式会社   第   回少人数私募債(○○ファンド)募集要項

1.会社の商号  ○○株式会社
2.社債募集総額  金    円
3.社債の種類  無担保少人数私募債とする。ただし、債権不発行
4.社債の金額  額面 金   万円
5.社債の利率  年  %
6.発行価額  額面どおり
7.償還金額  額面どおり
8.社債償還の方法及び期間

元金は平成  年 月 日にその金額を償還する。ただし、会社は平成  年 月 日以降何時でも申し出のあった社債権者所有の全部を買入償却することができる。(記名式、一括譲渡以外の譲渡禁止の転売制限、券面50枚未満、表示単位未満の券面分割制限)【定義省令7③二】

9. 利息の支払い方法日及び期間

利息は発行日の翌日から償還期間までこれをつけ、毎年 年の年1回経過分を支払う。ただし、1年に満たない場合は日割り計算とする。

10. 中途換金(解約)の方法及び利率

社債権者は、満期日前に所有の全部を取締役会の承認を受けた上で、換金解約することができる。ただし、平成 年 月 日以前 に解約した場合の利率は、年 %とし、平成 年 月 日に支払われた利息との差額は、換金される額より控除されるものとする。

11. 第三者譲渡の方法及び譲渡制限

社債権者は、満期日前に所有の全部を第三者に売却譲渡する場合は、取締役会の承認を受けるものとする。譲渡価格は利息の附される経過期間を考慮して、当事者間の合意によって決定するものとする。

12. 元金支払方法  当社本社
13. 社債元利請求権の時効

社債の償還請求権は10年を経過するときは時効に因って消滅する。利息の請求権は5年を経過するときは時効に因って消滅する。

14. 申込期間

平成 年 月 日( )より同年 月 日( )までとする。ただし、申込額が募集額に達したときは期間中であっても、申込を締め切ることができる。

15. 募集方法  直接募集。ただし、当初の募集金額に対して過不足が生じた場合は適宜応募額を決定する。
16. 払込期日  平成 年 月 日( )
17. 振込銀行  ○○銀行 支店 普通預金No     口座名義人
18. 申込取扱い場所  ○○株式会社

5.投資家(利害関係者)に訪問・説明会などで投資を募る

書類がそろったら、利害関係者に訪問して少人数私募債への投資を依頼します。説明会などを開くケースもあります。

どうしても、投資家が集まらない場合は、条件を投資家に有利に修正するなど、募集要項自体の見直しが必要になります。

逆に集まりすぎてしまった場合には「次回の少人数私募債募集時には優先的にお声がけをします。」と伝えて、丁重にお断りしましょう。

6.社債申込書を投資家から受け取る

同意してくれた投資家から、署名・捺印してもらった社債申込書を受け取ります。

7.募集引受書を投資家に発送する

社債申込書を預かったら、預かった証拠として「募集引受書」発行し、投資家に発送します。

8.投資家が入金する

入金してもらいます。

9.社債申込預り証を発行する

入金確認後「社債申込預り証」を発行します。これが社債券の代わりの投資家が保有する証拠となるものです。

10.社債を管理する

この段階で入金による資金調達は完了していますが、償還までは責任を持って社債の管理をしていかなければなりません。

社債原簿で管理すべき情報

  • 社債権者の指名
  • 社債権者の住所
  • 社債権者の振込口座
  • 社債の取得年月日、利息支払日、償還日
  • 社債の券面額、社債の番号、入金合計額、利率など
  • 譲渡先の情報

11.利息を支払う

社債原簿のリストに従って、利息の支払いを行います。

12.満期に償還金を支払う

社債原簿のリストに従って、償還を行います。

13.社債権者への定期的な説明

少人数私募債も、通常の社債も、同じですが償還日前に次の社債を発行することで資金繰りを継続させることになります。

当然、投資家からの信頼というのが、利害関係者が投資家になる少人数私募債では重要度が高いものとなってきます。

上場しているわけではありませんので、決算情報を開示する義務はありません。しかし、投資家との信頼関係の構築という意味で、定期的に決算情報などを情報共有するなどの対応が求められます。

まとめ

少人数私募債は複雑な手順は必要なく、中小企業のノウハウや人員でも十分に発行が可能な資金調達方法です。

しかしながら、利害関係者が投資家となるため、利害関係者との信頼関係を崩すような不誠実な対応は絶対にしてはいけません。利害関係者ですから信頼を損なうと本業へのダメージもあるのです。

少人数私募債発行の手順を確認しながら、誠実な対応を心がけて、実行する必要があります。

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