近年、クラウドファンディングという言葉が急速に広まってきました。
クラウドファンディングは、群衆を意味するクラウド(crowd)と資金調達を意味するファンディング(funding)を組み合わせた言葉です。
その内容は、言葉の通り、群衆(つまり多数の人)から資金調達する(つまり資金を集める)ことです。
実際に仕組みを理解している人、利用したことのある人(資金調達側、資金提供側のどちらも)はそれほど多くありません。
クラウドファンディングの流れ
クラウドファンディングで、それぞれの資金調達のことをプロジェクトと言います(それぞれのプロジェクトにおいて資金を集めようとする人をプロジェクト実施者と言います)。
資金提供者が応募する動機は二つあります。
一つは、プロジェクトの目的に共感する、賛同するなど、プロジェクトを実施させたいと思った場合です。
そしてもう一つは、プロジェクトに資金提供した際に得られるお礼(これをリターンと言います)を得たい場合です。
ステップ1 事前準備を行う
資金を集める目的を決める
クラウドファンディングは特定の目的のために資金を集める仕組みです。
- 例えば、何かしたいことがあり、特に大したお礼もできないので寄付を募りたい。
- 例えば、新商品を開発するための資金を募りたい。
資金を集める目的はプロジェクトの一部として公開されます。
運営会社を選定する
クラウドファンディングに運営会社が存在することによって、プロジェクト実施者、資金提供者それぞれにメリットがあります。
プロジェクト実施者にとって運営会社はプラットフォームを提供してくれます。
例えば、プロジェクトに応募してくれた人からお金を集めるのは運営会社がしてくれます。誰がお金を出してくれたのか確認しないことにはお礼ができませんが、その特定は運営会社がしてくれます。
また運営会社のプラットフォームを利用することで、そのプラットフォームの信用を利用することができ、多くの人にお金を集めていることを知ってもらえる機会が増えるというメリットもあります。
一方で資金提供者は運営会社が存在することで安心して資金提供することができます。
運営会社なしに行われたクラウドファンディングはそれが詐欺なのか、本当にお金を必要としており、約束した返戻やサービスが受けられるのかを自分で確認する必要があります。これは大変な手間です。
運営会社側でもクラウドファンディングを行うための審査があります。
- 資金調達の目的が適法なものであるか
- 自社のプラットフォームにふさわしいものなのか
等が見られます。
ステップ2 プロジェクトを作成する
目的と運営会社が決まったところで、細かい条件を決めてプロジェクトを煮詰めていくことになります。
具体的に決めるべき条件は次のようなことです。
- プロジェクトの実施期間(資金調達を呼びかける期間)
- 資金提供者に対するお礼(リターン)の内容
- 資金の受取り条件(成功条件)
プロジェクトの実施期間
プロジェクトは一定の期間内で行われます。
この期間はプロジェクト実施者がいかようにでも決められますが、通常、40-60日程度です。
一見すると、期間が長くなれば目標とする資金を集められる可能性が高まるように思えます。しかし実際には中だるみしてしまうため、長ければいいということはありません。また、後ほどプロジェクトの終了後の資金の移動について説明しますが、集めた資金がすぐにプロジェクト実施者に振り込まれ、使えるようになるわけではありません。
資金提供者に対するお礼(リターン)の内容
資金を提供してくれた人に対してお礼として渡すものをリターンと言います。
リターンは提供された資金額によって変えることができます。
また同じ金額を提供して人にリターンを選んでもらうようにすることもできます。
資金の受取り条件(成功条件)
プロジェクトでは目標金額が明記されます。
二つの方法があります。
- 一つは、目標額に達しなかった場合は、応募された額を一切受け取らない、という方法です。これをAll or Nothing方式と言います。
- そしてもう一つは、目標額に達しなかった場合でも応募された額を受け取る、という方法です。こちらはAll-in方式と言います。
資金調達としてクラウドファンディングを利用する場合、例え少額でも資金を手にしたくなります。しかし、どちらの方式を採用するかは、予定していたプロジェクトが実施できるのかを基準に判断すべきです。
ステップ3 プロジェクトを実施する
プロジェクト作成できたら、いよいよプロジェクトを始めます。
具体的には、プロジェクト期間内に目標額を集めるための活動を行い、集まった資金でプロジェクトの目的に向けて活動し、資金提供者に対してリターンを渡すことになります。
周知する
プロジェクトは、運営会社のホームページで公開されることで始まります(この時点から、資金を提供したい人が申し込めるようになります)。
しかし、運営社のホームページで公開しただけで、お金が集まることは多くはありません。
そのため、大抵のプロジェクトは、プロジェクト実施者が自分で自分プロジェクトを宣伝し、多くの人に知ってもらう必要があります。
周知のために、SNS等のインターネットが利用されます。クラウドファンディングがWebサービスとして行われることから、SNS等とは相性が良いからです。
なお、プロジェクトに資金提供することを申し込んだ人はこの時点で運営会社に対してお金を支払います。しかし、運営会社はそのお金をプロジェクトの実施者にこの時点では渡しません。
プロジェクト実施者にお金が渡るのはクラウドファンディングが成功した場合で、失敗した場合には、そのまま申し込んだ人に返金されることになります。
資金を受取る
プロジェクトが成功した場合にのみ、運営者が預かっている応募者からの資金がプロジェクトの実施者に支払われます。
プロジェクトの成功・失敗は設定された期限の最終日に判明します。
All or Nothing方式(目標額が集まらなければプロジェクトが成功しない)の場合には、誰もが成否を判断できます。
All-in方式(目標額が集まらなくても、集まった金額だけ受取ることができる)の場合には、プロジェクト実施者が資金を受領するかどうか判断します(集まった資金だけでは目的が達成できないのであれば受け取らないこともできます)。
リターンを提供する
クラウドファンディングで資金を受け取るとプロジェクトで約束していたリターンを資金提供者に対して提供する必要があります。
リターンがすぐに提供可能なものであれば資金提供者に渡されます。
一方で、現時点では手元にリターンとして提供したいものがないケースもあり、その場合は用意できた時点で渡すことになります。
クラウドファンディングの種類
プロジェクトの流れを理解したところで、次に、クラウドファンディングにはどのような種類があるのかを見ていきます。
クラウドファンディングの種類は、リターンによって分類されます。
リターンが何か、によってクラウドファンディングは4つに分類することができます。
- 寄付型
- 購入型
- 貸付型
- 出資型
寄付型のクラウドファンディング
社会課題解決を目的としたプロジェクトでよく使われます。
一例として新型コロナウィルス感染症:拡大防止活動基金があります。これは集めたお金をコロナ対策に利用するものです。
購入型のクラウドファンディング
つまりそれぞれの資金提供者は、商品を購入していることになります。
商品を購入するのであれば、個々人が発注して商品を購入すればいいはずです。なぜクラウドファンディングが用いられるのでしょうか。
販売する会社からすれば、クラウドファンディングを利用することにより一度にまとめて販売することができます。また、購入する方からすれば、クラウドファンディング限定の商品を手に入れることができます。
購入型のクラウドファンディングは、リターンとして今すぐには提供できないものを設定することもできます。
例えば開発中の商品をリターンにして、完成したら渡す、こともできます。言い換えると、開発資金を調達することができます。
貸付型のクラウドファンディング
リターンは、貸付の元本と、貸付から生じる利息になります。
借り手となるのは主として企業(事業会社)です。不動産等が担保にされているものもあります。
出資型のクラウドファンディング
上場企業は株式市場で増資ができるため、ベンチャー企業の増資で利用されています。資金提供者はベンチャー企業の株式を取得する(株主になる)ということです。
ベンチャー企業の株式はそのままでは特別な価値がありません。株式を換金することができず、配当も期待できないためです。
また株式は会社が倒産してしまえば無価値になります。
しかしベンチャー企業が上場したり、M&Aにより買収されれば、売り抜けることができます。その際、株式を取得した時よりも会社が成長していれば、成長の度合いに応じて(つまり青天井で)株式の価値も上がります。
ハイリスク・ハイリターンな投資です。
クラウドファンディングは資金調達にどのように使えるのか
クラウドファンディングは実際に資金調達に使えるものなのでしょうか。
従来からあった資金調達手段の一部とは同じ様に使うこともできますし、従来は難しかった資金調達も可能です。
従来と同様の資金調達
これまで利用可能だった資金調達の中にはクラウドファンディングでも同様に利用可能なものがあります。それは借入と増資です。
借入
銀行などからの借入と同じく、借り入れにより資金を受け取り、期日に利息をつけて元本と合わせて返済することになります。
違いは、借りる相手が、銀行などから、クラウドファンディングに応募してきた多数の個人になる点です。
この違いは主に審査に影響します。
銀行などからの借入は、大変手間と時間のかかる審査を経て行われます。これに対してクラウドファンディングは多数の個人がそれぞれプロジェクトを見て判断します。
増資
エンジェル投資家などからの出資受け入れと同じく、出資されたお金は返済義務がなく、また会社の利益を分配するときは出資者にも出資持ち分に応じておこなう必要があります。
出資型のクラウドファンディングは解禁されてからまだそれほど時間が経っていません。そのため、エンジェル投資家などから出資を受け入れた場合と比べて、株主数が増えるのですが、それが何にどのように影響するのか必ずしも明らかではありません。
これまでは難しかった資金調達
一例として開発中の商品にかかるプロジェクトファイナンスが挙げられます。
従来、未完成の製品を販売する方法がなかったわけではありません。
しかし、しっかりと仕組みを作るためにはコストがかかり、また税務的にも必ずしも取り扱いが明らかではない局面がありました。
そのため、数百億円を超えるような多額のプロジェクトでしか使われることがありませんでした。これは、個人に対して販売する商品に対してはほぼ利用不可能であった、ということです。
クラウドファンディングを用いた資金調達のメリット
従来型の資金調達とクラウドファンディングによる資金調達は、資金を調達することの外側に非常に大きな違いが一つあります。
従来の資金調達においては、資金が提供されるのは、主に資金提供者が経済的な利益得るためでした。また、貸付の場合には銀行、増資の場合にはベンチャーキャピタルやエンジェル投資家など、少数の人しか関与しませんでした。
クラウドファンディングを通じて資金提供した人は経済的な利益のみを求めるのではなく、そのプロジェクト、あるいは会社に対して特別な思い入れがある、またはクラウドファンディングを通じて特別な思い入れを持つことが少なくありません。
一例として不動産を裏付けとするクラウドファンディングの場合、出資者は建物の完成後にはその不動産を訪れる可能性が高くなります。また実際に訪れることがなくとも、SNS等で話題にしてくれる可能性が高くなります。
さらに、このような思い入れを複数の人が持つことになります。