群衆(つまり多くの人)から資金を集める仕組みをクラウドファンディングといいます。
クラウドファンディングは、資金を集めたい人が、どのような理由で、いくら集めたいのか、資金を提供してくれれば「何を返せるのか」を示します(これをプロジェクトと言います)。
この「返すもの」を「リターン」と言います。
プロジェクトを見て、資金を提供したい人が応募します。
それぞれの応募者が提供する金額は様々です。その累積が目標としている金額を超えれば、クラウドファンディングは成功です。
クラウドファンディングに応募する人が資金を提供する理由は様々です。しかし、資金提供の一番大きな動機が、クラウドファンディングの対価として受け取るリターンにあることは間違いありません。
クラウドファンディングにはいくつかの仕組みがありますが、どの仕組みを利用するかによってリターンが変わってきます。
クラウドファンディングの種類とそれぞれのリターン
応募者(資金提供者)が何をリターンとして得られるのかによって、クラウドファンディングは金融型と非金融型に分類することができます。
金融型
金融型のクラウドファンディングは
金銭的なリターンとは、提供した資金以上の資金がリターンとして手に入るものを言います。
貸付型
貸付型のクラウドファンディングは資金を調達する方からは、銀行からの借入と同じになります(誰から借りているのかが違うだけです)。借りりた資金はあらかじめ決まっている期日に返済します。その際、あわせて利息を支払う必要があります。
資金を提供する方から見れば、提供した資金があらかじめ決められた期日に利息を付けて払い戻されることになります。
出資型
従って、出資型のクラウドファンディングの直接のリターンは株式などです。
株式などは、持っているだけでは収益を生みません(出資型のクラウドファンディングで対象となる会社は通常、配当を行いません)。
資金を提供した人は、持っている株式などを売却することにより金銭を得ることができます。
出資型のクラウドファンディングで取得する株式などは、未公開株(上場していない株)のため、そのままでは売却できません。会社が上場したり、M&Aにより第三者に買われる際に処分ができます。
上場やM&Aのときに、自分が株式を取得した時点よりも会社が成長していれば、提供した以上の金額で株式などを売却することができ、利益を得ることができます。
貸付型、出資型のほかに組合型、あるいはファンド型と呼ばれるクラウドファンディングもあります。
これは特定のプロジェクトの成果を資金提供者に分配するものです。
具体的には、期間限定のショップを開店し、期間経過後に残ったものを分配します。ショップが上手く行けば投資した以上の金銭が返ってくる一方で、失敗すれば提供した資金の全額が返ってこないこともあり得ます。
組合型のクラウドファンディングのリターンは、金額の計算方法こそ異なりますが、直接現金を対象にしている点では貸付型と同じです。
非金融型(寄付型、購入型)
寄付型
しかし、何もリターンがないクラウドファンディングが成功しずらいこともまた事実であり、実際には何等かのリターンが設定されています。
寄付型のリターンとは例えば、寄付に対するお礼の動画や、映画を作成するための資金集めを目的としたクラウドファンディングで、完成した映画の最後に自分の名前がクレジットとして記載される、といったものです。
購入型
事例として多いのはハイテク商品(AIなどの搭載されたイヤホン、プリンター、自転車等)ですが、食品、化粧品などの日用品、家具や材料同、あらゆる商品で利用することができます。
ただし、購入型のクラウドファンディングでは、集めた資金を使って商品を開発し、それをリターンとすることができます。通常の商売であれば(例えば、お店に行って買い物する際には)考えられない販売方法と言えます。
リターンについてさらに知っておくべき事柄
クラウドファンディングの類型とそれぞれのリターンについてみてきました。
追加的なリターンは自由に設定できる
一つ目は、リターンは追加できるという点です。
寄付型の場合には、提供される資金と比べて財産的価値のないものであれば、リターンとして何を設定してもいいのでわかりやすいでしょう。
購入型の場合には、主に購入の対象になるものに何らかの権利を付け加えたようなリターンを設定することも可能です。公道では走れないセグウェイを販売し、セグウェイを乗り回せる土地の利用権を付ける、ようなことも可能です。
金融型のクラウドファンディングでも追加的なリターンは自由に設定できます。
貸付型のクラウドファンディングのリターンとして、元本と利息に加えて、会社の商品(飲食店であれば利用権など)を提供することができます。
出資型の場合にも同様に株式、新株予約権以外のリターン(その会社の提供するサービスの無償利用権など)を設定することが可能です(上場企業の株主優待券に近いものと言えます)。
リターンは一律である必要はない
クラウドファンディングにおけるリターンは、全ての資金提供者に対して、まったく同じものである必要はありません。
より多くの資金を提供してくれた人に特別なリターンを設定することもできます。
寄付の場合には、先ほどの映画のクラウドファンディングで映画のクレジットに資金提供者の名前を記載する例を考えてみます。例えばより多くの資金を提供してくれた人に対してはクレジットの文字を大きくする、色を変える、ようなことも可能です。
購入型も同様に、より多くの資金を提供してくれた人だけに特別なカスタムを行うことができます。これも例えば限定色を用意することや、場合によっては別素材のものをリターンとして設定することもできます。
同じ資金に対して違うリターンを設定することも可能です。
貸付型や出資型の場合、資金提供者に対する金銭的なリターンは同じくする必要があります。
資金提供された額に応じて、一律に利率が計算され、あるいは出資型であれば一律にリターンの株数・新株予約権の個数が決まります。
リターンの設定で注意すべき事柄
どのようなリターン設定が可能かを見てきたところで、次にリターンの設定で注意すべき事柄を見ていきます。
クラウドファンディングのリターンには、そもそも設定できないものがあります。
クラウドファンディンは、サイトを運営する会社(運営会社)がクラウドファンディングを「自社のサイトで実施してもよいのか」の審査を行います。
リターンの設定に問題があれば、ここではじかれます。
例えば、リターンとして違法なもの(麻薬や武器など)を設定することはできません。
違法でなくとも、運営会社の信頼を傷つけるようなもの、例えばポルノなども設定できません。
リターンは提供可能か
リターンの設定において何よりもまず避けるべきなのは提供できないようなリターンを設定することです。
金融型のクラウドファンディングにおける提供が難しいリターン
出資型のリターンは通常は提供できないことはありません。
出資型のリターンは「株式及び新株予約権」です。
対象会社に資金が払い込まれれば株式、あるいは新株予約権として効力が生じるため、会社が提供する、しないという判断や行動をすることはないからです。
貸付型のリターンは提供できない場合があります。
貸付型のリターンは「元本」と「金利」です。
これが提供できない場合というのは、銀行借り入れなどであれば返済できない状態です。いうまでもなく、借りたお金を返せないような事態は何としても避けなければなりません。
非金融型のクラウドファンディングにおける提供が難しいリターン
寄付型のリターンが提供できない場合は、クラウドファンディングでの資金調達の目的であるプロジェクトが不調に終わる場合があります。
先ほどの映画製作費用をクラウドファンディングで調達し、リターンをクレジットに名前を入れることで設定した場合を考えてみます。
映画の製作が完成しなければリターンを提供することができなくなります。
購入型のリターンは、商品の販売となる場合であれば提供できないケースはまれでしょう。
しかし、クラウドファンディングでは通常の商品販売とは異なる販売方法が可能です。それは開発中の商品を販売することです。
開発中の商品は想定通り販売できないことが起こりえます。
開発に手間取り予想していた出荷時期に製品が完成しないこともあれば、開発途中で問題が生じ、開発を断念せざるを得ないこともあります。
リターンは調達額に見合うのか
リターンはクラウドファンディングを行った際のコストの一部です。
クラウドファンディングではリターンのほかに運営会社への手数料が発生します。
コストが調達額を上回る、あるいは調達額に比べて重すぎる場合には、リターンを考え直す必要があります。
ただ、リターンを減らせばいい、ということはありません。
リターンを減らすことにより確かにコストが少なくなります。
しかし、一般的にはリターンが少なくなれば、その分、クラウドファンディングに応募する人も減ります。
結果として、調達できる金額も減ることになるからです。
望ましいリターンとは
クラウドファンディングにおいてリターンはある程度決まっているものと、自由に設定できるものとがあります。
金融型であれば金銭を目的とするリターンは金利や株式等の発行による希薄化の程度など、条件は変更できてもリターンそのものは変更しようがありません。
一方で非金融型は自由にリターンを設定することができます。
また、金融型でもメインのリターン(金利や株式など)に付随するリターンについては自由に設定できることになります。
特徴1 期間限定にする
期間限定のリターンはプロジェクトの成功率を高めます。
いつでも手に入るのであればクラウドファンディングに応募する必要がありません。
需要が多く見込めるもの、つまり普通に売ってもよく売れそうなものは定番商品とすべきで、期間限定にする意味がありません。
特徴2 複数のリターンを準備する
購入型のリターンは商品に魅力がないとクラウドファンディングに応募してもらうことが難しいです。また、追加的に設定するリターンはその追加リターンはいらない、という応募者もそれなりにいます。
より多くの人にクラウドファンディングに応募してもらうためには、応募者が自分の気に入ったものを選択できように複数のリターンを用意しておく方法があります。
リターンは同じものを多量に用意する方がコストがかかりません。逆に少量のリターンを数多く揃えることはコストがかかります。
特徴3 値引きする
商品販売において、「値引き」は単純ではあるものの効果の高い手法です。
クラウドファンディングのリターンが、他の機会(会社のECショップなど)で手に入れるよりも値引きされていれば、資金提供者を引き付ける魅力の一つとなります。
一方で値引きは一時的な売上の増加、一時のクラウドファンディングの成功につながるものの、繰り返すことで効果が薄れます(購入者がそのうちまた値引きするだろうと購入を手控えるためです)。
特徴4 リターンのイメージがわく画像を準備する
クラウドファンディングはSNSなどで拡散されることにより応募者を増やすことが成功の鍵です。
SNSで拡散されるためには、何よりもまずタイトルと画像で訴える必要があります。
後に続く文章や映像は、タイトルと画像に惹かれなければ、まず閲覧されることはないからです。
形がある商品であればより商品の特徴と魅力が伝わる画像を添付するべきです。
形のないサービスをリターンとする場合であっても、そのリターンを想像しやすい画像を用意することが成功へと繋がります。
次に、リターンを設定する際に注意すべき事柄を説明します。
最後に、どのようなリターンが望ましいのかを見ていきましょう。