銀行融資による資金調達では銀行融資の種類についても把握しておく必要があります。今回は銀行融資の種類「証書貸付」について解説します。
「証書貸付」とは?
「証書貸付」とは
証書(事実を証明するための文書、契約書)を交わして貸付を行うこと
を意味します。
ここでいう証書(事実を証明するための文書、契約書)とは、金銭消費賃借契約書のことを言います。
「証書貸付」とは融資内容が記載された契約書で融資を行う形の銀行融資と言えます。
金銭消費賃借契約書には
- 契約日
- 借入金額
- 借入利率
- 遅延損害金
- 返済方法
- 返済期間(返済回数)
・・・
等の融資の内容が記載され、
貸主 (以下、「甲」という。)と借主 (以下、「乙」という。)との間において次のとおり金銭消費貸借契約(以下、「本件消費貸借」という。)を締結した。
第1条(貸借)
甲は、乙に対し、金 円也を、貸渡し、乙はこれを確かに借受け、受領した。
第2条(利息)
本件消費貸借の利息は、元金に対し年 割 分の割合とする。
・・・
甲(住所)(氏名) 印
乙(住所)(氏名) 印
連帯保証人(住所)(氏名) 印
企業の署名、実印、連帯保証人の署名、捺印をして、銀行に差し入れる形の契約書となります。
差し入れ形式の契約書とは
差し入れ形式の契約書は、一方当事者が義務を負うことを相手方に約束しているのみで、その相手方の義務については一切記載されません。金銭消費賃借契約書は差し入れ形式の契約書であり、借主の義務だけが記載されていて、相手方(銀行)に約束するものです。
「証書貸付」は銀行融資方法の分類ですので
- プロパー融資の証書貸付
- 信用保証協会保証付融資の証書貸付
- ビジネスローンの証書貸付
・・・
など、融資商品ごとに「証書貸付」があるのです。
「証書貸付」の特徴
設備投資や長期運転資金などの資金調達に使われる
銀行の「証書貸付」は5年、10年、20年・・・と比較的長期の融資に利用されるものです。
- 長期運転資金
- 設備資金
として、使われる融資方法が「証書貸付」です。
元金均等返済が多い
「証書貸付」は「元金均等返済」が採用されることがほとんどです。
元金均等返済とは
元金部分の返済額がずっと同じで、利息部分が返済を重ねるごとに減っていくという返済方法のこと
3000万円の借入を60か月(5年)で返済する契約の場合
1ヶ月の元金返済額 = 3000万円 / 60か月 = 50万円
1ヶ月の返済額 = 「50万円 + 利息」
という形になります。利息は借入残高が減れば小さくなるので、徐々に毎月の返済額は小さくなっていく形の返済方法になります。
しかし、「証書貸付」は契約書による融資なので、銀行側や借主の意向に沿って、返済方法を変更することも可能です。
一括返済、返済間隔が1ヶ月よりも長い返済、返済期間を据え置く返済・・・など契約書による融資ですので双方の合意があれば自由に設定ができるのです。
審査は比較的厳しい
前述した通りで、「証書貸付」は長期の貸付になるため、銀行側の貸し倒れリスクも大きくなってしまいます。
結果として、審査は「長期安定して返済できる企業なのかどうか?」を厳しくチェックされるのです。
安定性が重要なので
- 事業歴
- 過去の売上、利益の推移
などが重要視される融資審査と言えるでしょう。
「証書貸付」で銀行融資を受ける際の注意点
金銭消費賃借契約書の内容は隅々まで確認すること
金銭消費賃借契約書はその名の通り契約書ですから、差し入れしてしまえば後から変更することはできません。
- 契約日
- 借入金額
- 借入利率
- 遅延損害金
- 返済方法
- 返済期間(返済回数)
・・・
という基本的な融資条件はもとより、細かい条項も含めて理解した上で契約する必要があります。不明点は銀行に聞けば丁寧に教えてくれます。
企業側に控えがもらえない場合は、コピーを取っておくと良いでしょう。
「証書貸付」にも種類がある
「証書貸付」は契約書面で融資を受けることですから、融資商品ごとに「証書貸付」があるのです。
- プロパー融資の「証書貸付」
であれば審査の難易度は高いのですが
- 信用保証協会保証付融資の証書貸付
- ビジネスローンの「証書貸付」
であれば審査の難易度は低くなります。
融資方法と融資商品を混同しないようにしましょう。「審査が通せそうか」などの感触は銀行の融資担当者に聞いて、選択する融資商品を相談すれば良いのです。
まとめ
「証書貸付」は一番基本的な銀行の融資方法と言えます。
契約書による融資の総称ですから、その中身は千差万別であることを理解する必要があります。
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