在庫が過剰にある状態が続いてしまうと、これは資金繰り上に大きな問題が発生することになります。過剰在庫を削減することができれば、資金調達をしなくても資金繰りが改善することにつながるのです。
過剰在庫はデメリットが大きい!
在庫が過剰にある状態というのは下記のようなデメリットを発生されることになります。
1.キャッシュフローの悪化
売れない在庫が過剰に発生してしまうということは、在庫の仕入れのための支払から、売れて入金されるまでの期間が長引くことを意味します。
この過剰在庫分が多ければ多いほど、キャッシュフローが悪くなり、資金繰りが悪化するのです。
2.損益の悪化(コストの増加)
過剰在庫が発生するということは、それに伴う
- 保管スペースのコスト
- 棚卸で発生する人件費
- 管理コスト
- 金利コスト
・・・
などが発生することになります。過剰在庫はキャッシュフロー上のデメリットとともに、損益上のデメリットも生んでしまうのです。コストが増えて、利益が減るということは、そのことによるキャッシュフローの悪化も考えなければならないのです。
3.商品の品質の低下
長期間売れずに保管しておけば、商品の消耗や消滅などの品質悪化を招いてしまいます。その結果、適正価格で販売できなくなるなどのリスクも内在しているのです。
4.経営指標「賃貸対照表」の悪化
過剰在庫の賃貸対照表上の記載
(借方) | (貸方) |
---|---|
流動資産 | 流動負債 |
適正在庫 | 流動負債 |
過剰在庫 | 過剰在庫にかかる債務 |
固定資産 | 固定負債 |
固定資産 | 資本 |
ということになるので、賃貸対照表自体が無駄に大きくなってしまい、経営指標が悪化してしまうのです。「経営指標の悪化というのは大した問題ではない」と考える経営者の方もいるかもしれませんが、これは銀行融資やビジネスローンなどでの資金調達の審査や限度額に影響してきてしまうのです。
まとめ
過剰在庫は百害あって一利なし
という存在なのです。
当然、通常の経営者であれば、過剰在庫を失くしたいと考えているはずですが、なかなか実行に移せないのは「どうやって過剰在庫を減らせばよいかわからない。」「本来売れたはずのものが売れない機会損失を避けたい。」という方が多いようです。
過剰在庫(余剰在庫)を減らす方法とそのヒント
過剰在庫を減らす方法は色々な方法があります。
難しい言い方をすれば
- 過剰在庫の定義付け
- 過剰在庫アイテムの可視化
- 過剰在庫の発生原因分析
- 在庫削減対策立案
- 在庫削減対策の実行
- 結果検証
というPDCAサイクルを回しながら、在庫削減の責任者が在庫管理を徹底するという方法になるのですが、中小企業ではここまで厳密にできない会社も多いのが現状です。
今回は過剰在庫が発生する原因を解説します。「自社に当てはまるものがあればその原因を解決するように働きかける」という方法が一番わかりやすい方法だと考えます。
過剰在庫(余剰在庫)が発生する主な原因
- 在庫の責任者・責任部門が明確ではない
- 週次、月次の経営会議などに在庫削減のプロジェクトや報告が組み込まれていない
- 過剰在庫(余剰在庫)が発生しているかどうかすら把握できていない
- 在庫の分析をする時間がない
- 商品別の在庫保有日数の目標値や実績値がわからない
- 販売者都合の仕入になってしまっている
- 在庫管理の精度が低い(実在庫とデータ上の在庫のタイムラグ、ずれが大きい)
- 返品が多い
- 欠品を極度に恐れてしまっている
- 過剰在庫では怒られないが、欠品で怒られるので過剰在庫を担当者が選択してしまっている
- 発注ロットを下げると仕入れ単価が上がってしまう
- 甘い読みで過剰在庫が売れることに期待してしまう
という原因が考えられます。
心当たりのある経営者の方も多いのではないでしょうか。
大きな問題点は
- 在庫の管理ができていないことで把握すらできないこと
- 過剰在庫を目標として経営に組み込んでいないこと
- 過剰在庫の責任の所在と過剰在庫の目標達成に対する評価ができていないこと
が起因していると考えられます。
とくに経営上は販売や売上に重点が置かれてしまいがちなため、社員は「売上を伸ばせば褒められるが、過剰在庫を減らしてもほめられない。」「売上を落としたら怒られるが、過剰在庫を増やしても怒られない。」と考えてしまっているのです。給料の評価に過剰在庫削減が関係あるかないかが社員の意識に与える影響も大きいと言えます。
これでは過剰在庫は膨らむ一方になってしまうのは当然なのです。
資金繰りが苦しい会社ほど、できるところから対策をして、過剰在庫(余剰在庫)が発生する主な原因をつぶすことで資金繰りの改善につなげる必要があります。
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