不動産を活用する資金調達方法に「不動産担保ローン」というローン商品があります。今回は「不動産担保ローンとは?」について解説します。
不動産担保ローンとは?
不動産担保ローンとは
を言います。
「住宅ローン」「アパートローン」と混同される方も多いのですが、資金使途が異なります。
- 不動産担保ローン:資金使途自由(事業資金とプライベート資金の分類はある)
- アパートローン:賃貸物件の購入資金、借り換え資金のみ利用可能
- 住宅ローン:自宅の購入資金、借り換え資金のみ利用可能
という違いがあります。
「不動産担保ローン」で借りたお金で海外旅行にいっても、問題ありませんが、「住宅ローン」「アパートローン」で借りたお金で海外旅行にいったら、銀行から一括返済を求められてしまいます。
不動産担保ローンは「使途自由」ですので
法人向けの不動産担保ローンで資金調達するのであれば
- 運転資金
- 設備資金
- 起業資金
- 仕入資金
- つなぎ資金
- 納税資金
- 融資の返済資金
- 新規事業立ち上げ資金
- 投資用不動産の購入資金
- 不動産の仕入れ資金
- 従業員の給与支払い
・・・
と、様々な事業資金に利用することができます。
担保とは?
不動産担保ローンでは、どんな不動産が担保になるの?
金融機関の立場で言えば
不動産担保ローンは
という位置づけです。
ですから
と言い換えることができます。
ということです。
- 土地
- 戸建て
- マンション
- ビル
- 区分マンション
- 店舗
- 駐車場
- 工場
- 農地
・・・
といった、不動産の種類が問題なのではないのです。
不動産担保ローンで担保にできない不動産というのは「売れない不動産」ですから
例えば
- 離島の土地・建物
- 辺境地の土地・建物
- 災害のリスクが大きい土地・建物(崖地など)
などはかなり厳しいことになります。「買い手」がいないからです。
価値が低い不動産の場合も、不動産担保ローンの担保にできても、希望額を借りられない可能性があります。
- 築50年以上の建物
- 違法建築
- 接道していないため建物が立てられない土地
- 農地
このような不動産は「買い手」がいないわけではないので売却はできますが、売却額が低くなってしまうため、不動産担保ローンの融資額も小さくなってしまうのです。
不動産担保ローンでは、いくらまで借りられるの?
ビジネスローンの場合は
- ノンバンク:最大500~1000万円
- 地方銀行:最大1000~5000万円
- 大手都市銀行:最大1億円
とある程度の相場が決まっていましたが、これは無担保ローンなので貸せる限度額というのが決まってくるのです。
不動産担保ローンの場合は
一応の目安はあるものの、限度額が不動産担保ローンごとに決まっているというよりは
という計算で融資額が決まってきます。
この掛け算する割合のことを「掛目(かけめ)」といいます。
- 銀行不動産担保ローンの掛目:70%前後
- ノンバンク不動産担保ローンの掛目:70%~100%
というのが相場です。
1億円の不動産担保ローンを利用する場合
- 掛目:70%の銀行不動産担保ローン → 7,000万円の借入が可能
- 掛目:100%のノンバンク不動産担保ローン → 1億円の借入が可能
と同じ不動産を担保にしても、借りられる金額は変わってくるのです。掛目はウェブサイト上で公開している金融機関もあれば、公開していない金融機関もあるので、不安な方は聞いてみることをおすすめします。
不動産は価値が時期によって大きく変動するものです。1億円の不動産に対して、1億円の融資をしてしまったら、2年後にその物件の価値が下落し、8000万円でしか売れなくなってしまった場合に2000万円の貸し倒れリスクが発生してしまうからです。
このリスクを回避するために、あらかじめ「掛目(かけめ)」によってリスクヘッジしているのです。
この「掛目(かけめ)」の概念は不動産担保だけのものではありません。
- 預金担保:掛目100%
- 証券担保:掛目90%
と担保によって相場が決まっているのです。預金は間違えなく現金化できるので100%になりますし、証券も株式市場で売却できるものなので、90%と高い掛目が設定されています。
ノンバンクの中には掛目100%という設定をしている不動産担保ローンもあります。
これは、なぜかというと、ノンバンクが不動産売買の機能を持っているからです。返済が滞った場合に担保である不動産を自社で売却する機能がある不動産担保ローン会社であれば
- 「買い手」の投資家がすでにいる状態
- 売却価格の予想も正確にできる
- 売買手数料3.0%~6.0%も手に入る
という特徴があるため、掛目100%に設定しても、リスクが少ないのです。
不動産担保ローンを提供している金融機関はどんなところがあるの?
- 銀行 → 不動産担保ローンを提供していても、個人のみの不動産担保ローンがほとんど
- 不動産担保ローン専門会社 → 不動産担保ローンのみを扱う。個人、法人両方とも利用可能
- 事業融資の専門会社 → ビジネスローンなどの事業融資サービスのひとつとして不動産担保ローンを扱う。法人向けが多い
- 消費者金融 → キャッシング、フリーローンなどのサービスのひとつとして不動産担保ローンを扱う。個人向けが多い
とな
っています。
個人向けの不動産担保ローンは一部の銀行(ネット銀行、信託銀行)で取り扱いがありますが、ほとんどの銀行は不動産担保ローンを提供していません。なぜなら、個人向けは住宅ローンの販売がメインであり、需要が100分の1程度しかない不動産担保ローンは需要がないと判断しているからです。
そのかわり、賃貸住宅(アパート、マンション)の購入資金を融資するローン商品として「アパートローン」を提供しています。
法人向けの不動産担保ローンはほとんどの銀行で取り扱いがありません。なぜなら、「法人に不動産担保で融資をする」というのは、通常の銀行融資の中で日常的に行われているからです。銀行融資は無担保融資も、有担保融資もありますが、借入希望額の審査が通らなそうな場合は銀行の担当者は不動産担保や保証人を要求して、審査を通すのです。これは不動産担保ローンと仕組みがほぼ同じですので、わざわざ銀行は不動産担保ローンを商品化していないと言えます。
資金調達で不動産担保ローンを利用するメリット
ビジネスローンよりも審査が通りやすい
- 無担保ローン(ビジネスローン) → 返済が滞った場合に回収する宛がない
- 有担保ローン(不動産担保ローン) → 返済が滞った場合に不動産を売却して回収できる
という大きな違いがあります。
つまり
- 日本政策金融公庫の審査が通らない
- 銀行融資の審査が落ちた
- ビジネスローン審査が通らない
- 赤字決算
- 税金未納
- リスケ中
・・・
と信用力に問題がある企業であっても、不動産担保を持っていれば、不動産担保ローンで資金調達できる可能性があるということになります。
不動産担保ローンの審査では
- 借入希望額と担保評価額が同じ → 審査が厳しい
- 借入希望額は担保評価額の2分の1 → 審査が通りやすい
- 借入希望額は担保評価額の5分の1 → 審査がかなり通りやすい
というように担保評価額と借入希望額の割合に応じて、審査の通りやすさが変わってきます。
高額な資金調達が可能
不動産担保ローンの融資可能額は前述した通りで
となります。
また、不動産売買をする不動産業者は、物件を仕入れるときに自社で数億円の仕入資金を持っていることはほとんどなく、銀行融資や不動産担保ローンで、仕入れる物件を担保にして資金を調達しているのです。。
ビジネスローンよりは低金利
不動産担保ローンの金利は
1.0%~10.0%
程度です。
- 不動産担保評価額と借入希望額の割合
- 不動産担保の質
- 借りる会社の信用力
- 返済実績
- 継続利用
など、様々な条件によって適用金利が決定されますが、概ね無担保ローンのビジネスローンよりは低金利での資金調達が可能になってきます。
不動産担保ローンの中でも、「賃貸物件の購入」に資金使途が限定されたアパートローンの金利は
1.0%~5.0%
と、さらに低金利が適用されます。これは賃貸経営という収支がある程度固く読める事業だからです。
長期の借入が可能
不動産担保ローンは最長で35年(420回)の返済期間設定が可能です。
家族所有の不動産を担保に資金調達が可能
不動産担保ローンの場合は、本人所有の不動産を担保にできるのは当然ですが、家族(3親等内の親族)の所有する不動産も担保にできるのです。
資金調達で不動産担保ローンを利用するデメリット
不動産を持っていなければ利用できない
当たり前ですが、不動産担保ローンを利用する条件は、ご自身、もしくはご家族が不動産を所有していることが前提条件です。不動産がなければ不動産担保ローンは利用できません。
返済が滞った場合には不動産を売却されてしまう
不動産を担保として差し出すということは、返済が滞った場合には不動産を売却されてしまうことを意味します。
1回、2回返済が遅れたぐらいで売却されてしまうわけではありませんが・・・
目安としては
- 年に2回以上の返済遅延
- 2ヵ月以上の返済遅延
などがあると、金融機関から、催促の連絡が入り、それでも返済が進まない場合は、競売で不動産を売却されてしまうことになります。
即日の資金調達には不向き
不動産担保ローンの中には「最短即日融資」ができるものもいくつかあります。しかし、実際は不動産担保を鑑定する作業が必要になり、融資の際には抵当権設定登記などの手続きも必要になるため、通常は早くても、2営業日~3営業日ほどかかってしまうものです。
事務手数料が発生する
不動産担保ローンでは、事務手数料が発生します。
- 不動産の鑑定
- 不動産の調査
- 関連資料の収集
- 司法書士による抵当権設定
・・・
と融資・審査で発生する事務作業の量が多い為、事務手数料を設定している不動産担保ローンがほとんどです。事務手数料無料のビジネスローンと比較するとイニシャルコストが発生することに注意が必要です。
事務手数料以外にも、司法書士報酬や印紙代、火災保険料又は家財保険(質権設定の為)などが発生します。
まとめ
不動産担保ローンは
です。
法人が不動産担保ローンで資金調達するメリット
- ビジネスローンよりも審査が通りやすい
- 高額な資金調達が可能
- ビジネスローンよりは低金利
- 長期の借入が可能
- 家族所有の不動産を担保に資金調達が可能
法人が不動産担保ローンで資金調達するデメリット
- 不動産を持っていなければ利用できない
- 返済が滞った場合には不動産を売却されてしまう
- 即日の資金調達には不向き
- 事務手数料が発生する
があります。