法的整理で裁判所の許可が要る行為|民事再生・会社更生・特別清算・破産を条文で並べる

民事再生・会社更生・特別清算・破産について許可制になる条件などを縦横に並べて対比したアイキャッチ

手続きが始まったあと、会社は何を自分の判断でできて、何に裁判所の許可が要るのか。許可や同意を省いた行為は無効になり、民事再生では再生計画そのものを取り消す理由にもなります。4つの手続きで、許可が要る行為の範囲と、金額による例外の有無を条文で並べます。

条文で押さえる4点

  • 民事再生では裁判所が必要と認めたときに許可制にできる(民事再生法41条1項)。事業譲渡は常に許可が要る(42条1項)。
  • 会社更生では権限そのものが管財人に専属し、そのうえで裁判所が許可制にできる(会社更生法72条)。
  • 特別清算では開始命令があれば当然に許可または監督委員の同意が要る(会社法535条1項)。
  • 破産では管財人の行為のうち15の号に許可が要り、7号から14号までには金額による例外がある(破産法78条2項・3項)。
  • 許可や同意を得ずにした行為は無効。ただし善意の第三者には対抗できない(民事再生法41条2項、会社法535条3項、会社更生法46条9項)。

「許可が要る」の入り方が手続ごとに違う

同じ「裁判所の許可」という言葉でも、どのタイミングで要るようになるかが3通りに分かれます。

許可制になる入り方の3つの型

型1

裁判所が指定したときだけ。民事再生法41条1項は「必要があると認めるときは……許可を得なければならないものとすることができる」と定める。会社更生法72条2項も同じ書き方。

型2

開始命令があれば当然に。会社法535条1項は「特別清算開始の命令があった場合には、清算株式会社が次に掲げる行為をするには、裁判所の許可を得なければならない」と定める。

型3

行為の種類で常に。民事再生法42条1項の事業譲渡、会社法536条1項の譲渡、破産法78条2項の各号は、裁判所の指定を待たずに許可の対象になる。

型1は、許可が要るかどうかが事件ごとの裁判所の処分で決まるということです。条文だけを見て「許可は要らない」と判断できません。

押印した契約書と、その隣に閉じたままの門を並べたイメージ画像
手続が始まると、同じ取引でも決められる人が変わる。どの門をくぐる必要があるかは手続ごとに違う。

開始より前にも、動かせなくなる場面がある

許可制が始まるのは開始決定の後ですが、申立てから決定までの間にも財産を固定する仕組みが置かれています。許可の話と混同しやすいので、根拠条文を分けて確認します。

申立てから決定までの間に使える処分
手続 条文 内容
会社更生 30条1項 開始前会社の業務および財産に関し、保全管理人による管理を命ずる処分。申立てにつき決定があるまでの間
特別清算 会社法540条2項 申立てがあった時から決定があるまでの間も、財産の処分禁止の仮処分その他の保全処分ができる
特別清算 会社法542条2項 緊急の必要があるときは、対象役員等の財産に対する保全処分もできる
破産 25条1項 全ての債権者に対し、強制執行等および国税滞納処分の禁止を命ずる包括的禁止命令

会社更生法30条5項は、保全管理命令に対する即時抗告が執行停止の効力を有しないと定めています。破産法25条7項も同じです。不服を申し立てても、その間に管理や禁止が解けるわけではありません。

破産法25条1項のただし書には条件が付いています。包括的禁止命令を出せるのは、事前にまたは同時に、債務者の主要な財産に関し28条1項の保全処分をした場合か、91条2項の保全管理命令をした場合に限られます。債権者の手だけを縛る形にはしないという設計です。

会社法540条3項には、弁済禁止の保全処分の効果が書かれています。弁済その他の債務を消滅させる行為を禁じる保全処分が出されたあと、それに反して行われた弁済について、債権者の側から効力を主張する道が特別清算の関係では閉じられます。この制限がかかるのは、行為の時点で債権者が保全処分の存在を知っていた場合だけです。

民事再生:許可制にできる10の行為

民事再生法41条1項は、再生手続開始後に必要があると認めるときは、再生債務者等が次の行為をするには裁判所の許可を得なければならないものとすることができると定めています。

許可制にできる行為(民事再生法41条1項)
号 行為
1号・2号 財産の処分、財産の譲受け
3号 借財
4号 49条1項の規定による契約の解除
5号・6号 訴えの提起、和解または仲裁合意
7号・8号 権利の放棄、共益債権・一般優先債権・52条の取戻権の承認
9号・10号 別除権の目的である財産の受戻し、その他裁判所の指定する行為

資金繰りの面で見落とせないのが3号の借財です。借入れそのものを禁じる条文ではありませんが、許可制の対象に指定されれば、一件ごとに裁判所の判断を仰ぐことになります。第2項により、許可を得ずにした行為は無効で、善意の第三者には対抗できません。

民事再生:事業譲渡は意見聴取まで条文に書かれている

42条1項は、再生手続開始後に営業もしくは事業の全部または重要な一部の譲渡と、一定の要件を満たす子会社等の株式・持分の譲渡について、裁判所の許可を得なければならないとしています。許可ができるのは事業の再生のために必要であると認める場合に限られます。

第2項は、裁判所が許可をする場合に知れている再生債権者の意見を聴かなければならないと定めています。ただし117条2項の債権者委員会があるときは、その意見を聴けば足ります。第3項は労働組合等の意見も聴かなければならないとしています。

子会社等の株式・持分の譲渡が対象になるのは、①譲り渡す株式等の帳簿価額が総資産額として法務省令で定める方法により算定される額の5分の1を超えるとき、かつ②効力発生日に議決権の総数の過半数を有しないこととなるときの両方に当たる場合です。

民事再生:監督委員が指定した行為には同意が要る

許可とは別に、同意という関門があります。民事再生法54条2項は、監督命令をする場合に監督委員を選任し、かつ「その同意を得なければ再生債務者がすることができない行為を指定しなければならない」と定めています。

第4項により、指定された行為を同意なしに行うと無効です。ここでも善意の第三者には対抗できません。何に同意が要るかは命令の中で個別に決まるため、監督命令の内容を確認しないまま取引を進めることはできません。民事再生の全体像は民事再生とはで整理しています。

「許可」と「同意」は別の関門。

民事再生では、裁判所の許可(41条・42条)と監督委員の同意(54条2項)が並んで存在します。どちらが要る行為なのかは、開始決定と監督命令の内容を見ないと分かりません。

会社更生:そもそも権限が管財人に移る

会社更生法72条1項は「更生手続開始の決定があった場合には、更生会社の事業の経営並びに財産……の管理及び処分をする権利は、裁判所が選任した管財人に専属する」と定めています。会社が許可を得て行うのではなく、行う主体が管財人に変わります。

そのうえで第2項は、裁判所が必要と認めるときに、管財人が財産の処分などをするには裁判所の許可を得なければならないものとすることができるとしています。二段構えです。会社更生の全体像は会社更生とはで整理しています。

会社更生:事業譲渡には株主の反対権がある

46条1項は、更生手続開始後その終了までの間は、更生計画の定めるところによらなければ事業等の譲渡をすることができないとしたうえで、第2項で計画案を決議に付する旨の決定がされるまでの間、管財人が裁判所の許可を得て譲渡できるとしています。

この許可には手続きが付きます。第3項により、知れている更生債権者、知れている更生担保権者、労働組合等の意見を聴かなければなりません。第4項により、譲渡の相手方・時期・対価・対象事業の内容と、反対する株主は2週間以内に書面で通知すべき旨を公告または株主に通知します。

第7項が株主の反対権です。期間内に総株主の議決権の3分の1を超える議決権を有する株主が書面で反対の意思を通知したときは、譲渡できません。ただし第8項により、相手方が特別支配会社である場合、または許可の時において更生会社が財産をもって債務を完済することができない状態にある場合には、4項から7項までは適用されません。

特別清算:開始命令があれば当然に許可が要る

会社法535条1項は、特別清算開始の命令があった場合に、清算株式会社が財産の処分、借財、訴えの提起、和解または仲裁合意、権利の放棄、その他裁判所の指定する行為をするには裁判所の許可を得なければならないとしています。ただし書きにより、527条1項で監督委員が選任されているときは、これに代わる監督委員の同意が必要です。

第2項に金額の例外があります。1号から5号までの行為については、最高裁判所規則で定める額以下の価額を有するものに関するとき、または裁判所が許可を要しないものとしたものに関するときは許可が要りません。

536条1項の譲渡には、この例外がありません。第3項は、467条1項5号を除く第二編第七章の規定を、特別清算の場合には適用しないと定めています。特別清算の全体像は特別清算とはで整理しています。

破産:15の号のうち、金額の例外が効くのは8つ

破産法78条2項は、破産管財人が15の行為をするには裁判所の許可を得なければならないとしています。金額による例外が働く範囲は7号から14号までで、それ以外の号には及びません(3項)。

許可を要する行為と金額の例外(破産法78条2項・3項)
号 行為 例外
1号・2号 不動産に関する物権・登記すべき船舶の任意売却、鉱業権・特許権・著作権等の任意売却 なし
3号・4号 営業または事業の譲渡、商品の一括売却 なし
5号・6号 借財、相続の放棄の承認等 なし
7号〜14号 動産の任意売却、債権・有価証券の譲渡、53条1項の履行の請求、訴えの提起、和解・仲裁合意、権利の放棄、財団債権・取戻権・別除権の承認、別除権の目的財産の受戻し 最高裁判所規則で定める額以下のとき等は許可不要
15号 その他裁判所の指定する行為 なし

不動産の売却、事業譲渡、借財という金額が大きく影響の残りやすい行為に例外がない点が、条文の設計として一貫しています。破産の全体像は破産手続とはで整理しています。

4つの手続きを並べる

許可・同意が要る範囲の対比
項目 民事再生 会社更生 特別清算 破産
許可制になる条件 裁判所が必要と認めたとき(41条1項) 裁判所が必要と認めたとき(72条2項) 開始命令があれば当然(会社法535条1項) 条文に列挙された行為は当然(78条2項)
行為の主体 再生債務者等 管財人(権限が専属) 清算株式会社 破産管財人
事業譲渡 常に許可。事業の再生に必要と認める場合に限る(42条1項) 計画によらない場合は許可(46条2項) 常に許可(会社法536条1項) 許可(78条2項3号)
金額による例外 条文に定めなし 条文に定めなし 535条1項1号〜5号にあり(2項) 7号〜14号にあり(3項)
同意の仕組み 監督委員の同意(54条2項) — 監督委員の同意が許可に代わる(会社法535条1項ただし書) —
労働組合の意見聴取 事業譲渡の許可で必要(42条3項) 事業等の譲渡の許可で必要(46条3項) 条文に定めなし 条文に定めなし

違反したときに何が起きるか

3つの法律が同じ構造の規定を置いています。

許可・同意を欠いた行為の効果

民事再生

41条2項「前項の許可を得ないでした行為は、無効とする。ただし、これをもって善意の第三者に対抗することができない」。54条4項も監督委員の同意について同じ。

会社更生

46条9項「第二項の許可を得ないでした行為は、無効とする。ただし、これをもって善意の第三者に対抗することができない」。

特別清算

会社法535条3項が同じ文言。536条2項により、譲渡についても準用される。

さらに民事再生法189条1項3号は、41条1項・42条1項に違反し、または54条2項の監督委員の同意を得ずに行為をしたことを、再生計画取消しの事由としています。無効にとどまらず、認可された計画を失う理由にもなるということです。

この記事で扱っていないこと

確認したのは各法の条文です。「最高裁判所規則で定める額」の具体的な金額、裁判所ごとの許可の運用、許可申請に要する期間は、今回は一次情報で確認していないため書いていません。

また、許可を得ずにした行為について第三者が善意であったかどうかの判断や、否認権との関係についても触れていません。個別の取引の可否は弁護士に確認してください。

よくある質問

民事再生では必ず許可が要りますか

41条1項は「必要があると認めるときは……許可を得なければならないものとすることができる」としており、裁判所の処分があって初めて許可制になります。ただし42条1項の事業譲渡は常に許可が必要です。

手続中に借入れはできますか

借財は民事再生法41条1項3号、会社法535条1項2号、破産法78条2項5号に挙がっています。禁じられてはいませんが、許可または同意の対象になり得ます。

少額なら許可は要りませんか

会社法535条2項と破産法78条3項には金額による例外があります。民事再生法41条と会社更生法72条2項には、条文上そのような例外の定めがありません。

従業員側に意見を言う機会はありますか

民事再生法42条3項と会社更生法46条3項は、事業譲渡の許可にあたって労働組合等の意見を聴かなければならないと定めています。

許可を得ずにした取引は取り消されますか

各法は「無効とする」と定めています。ただし、いずれにも「善意の第三者に対抗することができない」というただし書きが付いています。

許可を省くと計画はどうなりますか

民事再生法189条1項3号により、41条1項・42条1項の違反と、54条2項の同意を得ない行為は、再生計画取消しの事由に挙げられています。

許可の範囲を含む手続き全体の比較は債務整理・事業再生の5手続きを条文で比較、どの段階でこの話が出てくるかは会社の債務を整理する方法の一覧にまとめています。

出典