経営者同士の飲み会で、補助金・助成金の話題が出ることも少なくありません。今回は、「補助金・助成金の違いとキホン」について解説します。
補助金・助成金とは?何のためにあるの?
補助金・助成金とは?
を言います。
注目していただきたいのは
「返済する必要のない」資金
という点です。
銀行融資やビジネスローンなどの資金調達方法との違いは
- 銀行融資やビジネスローン → 返済義務あり
- 補助金・助成金 → 返済義務なし
という点にあり、当然、出資のように経営権が弱まるようなデメリットもありません。
簡単に言えば
なのです。
国や地方公共団体は、毎年、新しい政策を予算とともに作ります。
例えば
内閣府政策一覧
- 経済財政
- 地方分権改革・地方創生
- 規制改革
- 科学技術
- 知的財産・クールジャパン
- 宇宙
- 防災
- 原子力防災
- 沖縄及び北方対策
- 共生社会
- 子ども・子育て支援
- 勲章・褒章
- 男女共同参画
- 政府広報
- 制度
- その他
というカテゴリがあり、「男女共同参画」を細かく見ていくと
男女共同参画
- 女性の活躍促進
- 女性の活躍状況の「見える化」
- ポジティブ・アクション
- 仕事の生活の調和(ワーク・ライフ・バランス) 女性に対する暴力の根絶
- 男性にとっての男女共同参画
- 地方との連携
- 災害対応
- 国際的協調
などがあります。
という解決方法のひとつとして
という方法が採用されるのです。
これが国だけではなく、都道府県、市区町村レベルでも同じことが行われます。
- 国の政策を実現させるために予算を確保して「補助金・助成金」を作る
- 都道府県の政策を実現させるために予算を確保して「補助金・助成金」を作る
- 市区町村の政策を実現させるために予算を確保して「補助金・助成金」を作る
・・・
だからこそ、「補助金・助成金」は、3000を超える数が毎年募集されることになるのです。
主な「補助金・助成金」には
- ものづくり系
- 産学連携
- 展示会出展
- 海外進出
- 地域産品の開発・販路拡大
- 農商工連携
- 商店街活性化
- 温暖化ガス排出抑制
- 高齢者雇用
- 障害者雇用
- 新卒採用促進
- 雇用のための能力開発
・・・
があります。これを見ても、政策と「補助金・助成金」は紐づいていることがなんなくおわかりいただけるかと思います。
中小企業庁ミラサポ「補助金・助成金」検索
で検索すると2017年9月時点では、1380件の「補助金・助成金」がありました。
補助金と助成金の違いを比較
名称の意味の違いはほとんどありません。
- 経済産業省 → 「補助金」
- 厚生労働省 → 「助成金」
という使い分けをしているので、経済産業省と厚生労働省のスタンスの違いが、そのまま補助金と助成金の違いになってきます。
項目 | 助成金 | 補助金 |
---|---|---|
提供している主な機関 | 厚生労働省 | 経済産業省 |
支援分野 | 雇用増加、雇用安定、能力開発 | 技術開発、商店街活性化、エコ |
難易度 | 簡単 条件を達成すればもらえる |
難しい 優秀な提案のみもらえる |
金額 | 10万円~100万円程度 | 100万円~1億円程度 |
募集機関 | 通年 | 年1回で1週間~4週間 |
専門家 | 社会保険労務士、行政書士、コンサルティング会社 | 中小企業診断士、コンサルティング会社 |
大きな違いは
- 助成金 → 条件をクリアすれば必ずもらえる資金「難易度が低い」
- 補助金 → 多くの提案の中からコンペで良い提案のみが採択される仕組み「難易度が高い」
という違いです。
- 助成金は簡単に取得できる反面、もらえる金額が少額
- 補助金は難易度が高い分、もらえる金額が高額
という違いがあるのです。
また、
- 厚生労働省 → 「働く環境の整備、職業の安定・人材の育成」が役割
- 経済産業省 → 「民間の経済活力の向上及び対外経済関係の円滑な発展」が役割
ですから、政策にも違いが出てきます。
政策が異なるのですから、補助金と助成金では、そのクリア条件や募集目的も、違ってくるのです。
補助金・助成金の利用促進が進まない理由
ここまで「補助金・助成金」について理解していただければ
と思う方も多いかと思いますが、現実問題はそうなってはいません。
「補助金・助成金」の利用が進まない理由
その1.「補助金・助成金」を探すのが大変
「補助金・助成金」は毎年3000個ぐらいが国や地方公共団体を合わせれば登場します。
前述した中小企業庁ミラサポを使えば検索できないことはないのですが・・・
書き方もバラバラですし、お役所仕事ですから、難解な文章が並びます。
「結局、自分の会社はどれが利用できるの?」
これがぱっとみただけでは、全く分からないのです。
わからないから利用しない方が多いのは当然と言っていいでしょう。
その2.制度の内容が理解しにくい
また、募集条件の内容も毎年変わります。
募集要項の細部までチェックして「さあ申請しよう」という段階で
「あれっ、この条件があったらうちの会社は利用できないじゃん。」
ということも往々にしてあるのです。
その3.書類提出や手続きに大きな労力が必要
申請するための書類が膨大であり、補助金の場合はコンペですから、採択されるために事業計画などを作り込まなければなりません。
「そこまでの労力をかけて採択されないことになるぐらいなら・・・はじめから応募せずに営業した方がいいや。」
と考える経営者が多いのもまた事実なのです。
その4.資金をもらえるのは1年後!?
「補助金・助成金」が無事申請が受理・採択されても
その「補助金・助成金」の目的に即した経営をして、その結果、実際に実行されれば「補助金・助成金」が振り込まれるということになります。
申請してすぐに振り込まれるものではないのです。
つまり、
- わかりにくい
- 見つからない
- 手間が大変
- お金がすぐにはいってこない
という4つの問題点があるからこそ、「返済義務のない、もらえる事業性資金」という大きなメリットがあるのに利用が進まないのです。
補助金・助成金の受給までの流れ
補助金の受給までの流れ
1.補助金が公募される
補助金を募集している国や地方公共団体のウェブサイトに1週間~4週間程度、掲載されています。公募が終われば、公募終了となっています。
2.申請書類の提出
指定された期日までに申請書類を用意して提出します。
3.書類審査
提出書類が審査されます。
4.書類審査通過
書類審査で大部分が振るい落とされます。
5.面接
書類審査に通過したら、面接になります。面接も、審査の一環です。
6.採択決定
補助金がおりることを採択といい、面接の審査もクリアすれば、採択決定です。
7.交付申請書の提出
交付申請書を提出します。
8.交付決定
交付決定通知書が送られてきます。
9.補助事業開始
補助金の対象になる事業がスタートする形になります。
10.定期報告、巡回指導
補助金によっては、定期報告書の提出や巡回指導があります。
11.実績報告書の提出
補助事業の実績をまとめて報告書として提出します。
12.確定検査の実施
報告書の内容通りに事業が実施されたのか、厳しく審査されます。
13.補助金の支給額の確定
確定検査の結果を受けて、最終的な補助金支給額が確定します。
14.清算払い請求
補助金を請求して、支払いが完了します。
助成金の受給までの流れ
1.実施計画の申請
助成金の支給要件に沿った実施計画を策定し、提出します。
2.実施
実施計画を実行します。
3.支給申請
助成金の支給を申請します。
4.支給
支給要件をクリアしていれば、助成金が支給されます。
補助金・助成金の受給までの流れのポイント
補助金・助成金の受給までの流れを比較してみても
補助金は金額が高額なものも多く、
採択決定後にも、定期報告や巡回などでチェックが入りますし、経費も、提出した経費明細書通りに使われているのかのチェックが入ります。
そう簡単ではないのです。
補助金・助成金を利用する際の注意点
専門家に依頼することも検討すべき
- 補助金コンサルタント
- 助成金コンサルタント
- 社労士
- 弁護士
などが、補助金・助成金申請のサポートをサービスとして展開しています。
前述した通りで
「補助金・助成金」がお得なことはわかっていても
- わかりにくい
- 見つからない
- 手間が大変
- お金がすぐにはいってこない
という理由で断念してしまう経営者も少なくないのです。
この場合には、専門家に頼ることも一つの解決策です。
専門家は
- 自分の会社に「補助金・助成金」はどれか?の提案
- 「補助金・助成金」の申請書類の作成
- 「補助金・助成金」の申請に必要な事業計画などへのアドバイス
- 「補助金・助成金」の申請業務
- 会計検査院の検査対応
などをしてくれます。
結局、融資や自己資金による資金調達が必要
「補助金・助成金」も支払いが行われるのは、1年後です。
と考えて、無事補助金が採択されたとしても、
先に新規事業を展開して、1年後に入金がある
のですから、補助金が受給されるまでの期間は先出で資金が必要になります。
その期間は、自己資金、もしくは銀行からの融資などの資金調達をしなければならないのです。
ということを覚えておく必要があります。
不正受給に注意!
「補助金・助成金」の不正受給のニュースを見たことがある方もいるかと思います。
- 経費を水増しして助成金をだまし取る
- 発注を水増しして助成金をだまし取る
・・・
学校法人「森友学園」の問題も、補助金の不正受給事件です。
が不正受給の大きな要因となります。
実際は、補助金の支給前には確定検査があり、そこで問題があれば補助金の支払自体が行われませんので、不正受給に至らないのですが、それをすり抜けてしまい、後から「経費の水増し」が発覚すると、不正受給となります。
不正受給があった場合には
- 経済産業省などのウェブサイトに会社名や処分内容が掲載される
- 返還を求められる
のですが、悪質な場合には刑事告発されます。
補助金は、助成金と比較して金額が高額な分、不正受給へのチェックも厳しいのです。
助成金の場合でも、申請条件を改ざんした申請書や報告書で突破しようとした場合は不正受給になります。
まとめ
「補助金・助成金」とは
- 国や地方公共団体が政策を推進するために提供する「返済する必要のない」資金のこと
を言います。
- 「返済する必要のない」資金 = もらえる資金
ですから、使い方によってはかなり強力な経営支援になります。
これだけを聞けば「利用しない手はない」資金調達手段なのですが
実際には
- わかりにくい
- 見つからない
- 手間が大変
- お金がすぐにはいってこない
という問題点があり、なかなか普及が進んでいないのも現実なのでS。
それでも、これらの問題点は専門家を活用したり、他の資金調達方法と併用することで回避することができます。
返済不要の事業資金を、それほど労力を掛けずに受け取ることができれば、有効な経営支援になるのは事実ですので、「補助金・助成金」について正しい理解をしながら、専門家などのサポートサービスを利用して、受給を目指すことをおすすめします。
ただし、経費の水増しや書類の改ざんなどを行うと不正受給になってしまい、最悪の場合刑事告発もありえますので、正しい知識と不正のない申請をして、受給を目指しましょう。