株式投資型クラウドファンディングの募集はいつ確定するか|8日間の撤回、約定日、失権と不成立時の返金

株式投資型クラウドファンディングの撤回期間と約定日、不成立時の返金期限を3つ並べたアイキャッチ

株式投資型クラウドファンディングで一番誤解されやすいのが、募集期間の終了日と入金日の関係です。申込総額が目標募集額に届いた瞬間に調達が確定するわけではありません。投資家には申込みの日から8日間の撤回期間があり、その後に約定日が来て、さらに払込みを待つ期間があります。資金繰り表に入金予定を書くなら、この順序を押さえておく必要があります。

このページの結論

日本証券業協会は、株式の取得について申込みの日から8日間は申込みの撤回または契約の解除ができるとしています。この8日間は全社共通の前提です。

そのうえで、募集が成立する時点の定め方は会社ごとに違います。FUNDINNOは申込期間の最終日から起算して9日目の日を約定日と定義し、CF Angelsは募集期間最終日から起算して8日を経過することを成立条件としています。

不成立のときの返金も定めがあります。ユニコーンは不成立の表示の日から2週間以内に申込金を返金し、振込手数料は同社が負担するとしています。

8日間の撤回期間は制度として決まっている

日本証券業協会の制度の概要には、株式投資型クラウドファンディングによる株式の取得に関し、その申込みの日から8日間は申込みの撤回または契約の解除をすることができる、と書かれています。これは特定の会社のサービス仕様ではなく、制度としての取り決めです。

発行者から見ると、募集期間中に積み上がった申込金額は、この8日間のあいだ減る可能性があるということです。募集ページに表示される達成率が100%を超えていても、そこから撤回が出れば目標募集額を割り込むことがあります。

表1 撤回期間と、撤回したときの費用(各社の公表内容)
会社 撤回できる期間 撤回の方法と費用
AngelNavi 申込日から起算して8日間 マイページから撤回でき、手数料はかからない。システム上、9日目以降は撤回できない
ユニコーン 申込日から起算して8日以内 マイページの申込撤回ボタンで行う。キャンセル待ちの申込みも同じく8日以内
イークラウド 制度に従った撤回期間 申込み撤回受付後の手続きについて電子メールが送信される
CF Angels 撤回期間中 撤回により申込の総額が目標募集額を下回り、株式の発行が中止となる可能性があることを発行者が承諾する旨が約款にある
FUNDINNO 申込期間・申込撤回期間として設定 システム障害時には申込撤回期間の延長等の対応策を検討すると取扱要領に記載がある

FUNDINNOは「約定日」を日数で定義している

FUNDINNOの取扱要領は、ファンディング・プロジェクトが成立する条件と、成立した日を「約定日」として定義しています。条件は2つあり、どちらが達成されたかで約定日が変わります。

FUNDINNOの取扱要領で約定日の定義と当社への振込、発行者への支払い及び払込日等、キャンセル扱いが記載されている画面
FUNDINNO「取扱要領」。約定日の2つの条件、振込みの期限と最終期限日、振込みが行われなかった部分についての失権、キャンセル扱いの定めが並ぶ。

図1 FUNDINNOの約定日はどう決まるか(取扱要領の記載)

条件① 申込期間が終了した場合

応募額が目標募集額に到達した状態で申込期間が終了し、かつ申込期間の最終日から起算して9日が経過した時点で最終応募額が目標募集額以上であること。

このとき申込期間の最終日から起算して9日目の日が約定日になる。

条件② 上限応募額に到達した場合

申込期間中に上限応募額(発行者の株主総会で決められた増資の上限額)に到達し、到達した日から起算して9日が経過した時点で最終応募額が目標募集額以上であること。

このとき上限応募額に到達した日から起算して10日目の日が約定日になる。

例外

上限応募額に到達した日が申込期間の最終日であった場合は、当該最終日から起算して9日目を約定日とする。

いずれの場合も、株主または新株予約権者となるには発行者による会社法上の割当決議が必要。

この定義が意味するのは、早く上限に達したからといって入金が早まるとは限らないということです。到達日から9日の経過を見たうえで約定日が来ます。各社の条件の違いは株式投資型クラウドファンディング5社比較にまとめています。

CF Angelsは2つの条件のどちらかで成立する

CF Angelsの取引約款は、募集の成立を2つの条件で定めています。ひとつは、募集期間が終了した場合に、申込み受付額の総額が目標募集額以上を維持した状態で、募集期間最終日から起算して8日を経過すること。もうひとつは、申込み受付額の総額が募集期間中に上限募集額に到達した状態で、到達した日から起算して8日を経過することです。

いずれの条件も達成されない場合は不成立となり、応募があった部分についても払込金の振込みは行われません。募集が成立した場合には、同社が募集株式に対する払込金を発行者の指定する預金口座に振り込みます。

FUNDINNOが「9日目」、CF Angelsが「8日を経過」と書いているように、同じ8日間の撤回期間を前提にしていても、起算と到達の表現は会社ごとに違います。スケジュールを引くときは、自社が使う会社の文言をそのまま書き写して数えるのが確実です。

目標募集額を超えた分の扱いも決まっている

申込みが目標募集額を超えたときにどこまで受けられるかは、会社ごとに上限の決め方が違います。AngelNaviは上限金額を目標募集額の115%までとし、CF Angelsは上限募集額を目標募集額の150%以内と定義しています。ユニコーンは、上限募集額を超えて株式の追加発行は行わないとしたうえで、上限募集額に到達した時点以降は申込期間の最終日までキャンセル待ちを受け付けます。

AngelNaviの取扱要領は、目標募集額と上限募集額との間で募集金額が確定した場合、目標募集額以上の募集金額の取扱いについて、個々の契約締結前交付書面に定める資金使途の項目に対して割当を行うとしています。超過分を何に使うかを、募集前の書面で決めておく必要があるということです。

投資家の入金が遅れると、その分は失権する

撤回されなくても、入金が行われなければ調達額は減ります。FUNDINNOの取扱要領は、この扱いを具体的に書いています。

図2 FUNDINNOの入金と失権の流れ(取扱要領の記載)

  1. ①当初支払期限 応募した投資家は、約定日の翌営業日から起算して3営業日以内に申込金額を同社の銀行口座へ振り込む。
  2. ②最終期限日 当初支払期限までに全額が振り込まれない場合、当初支払期限日の翌営業日から起算して5営業日目を最終期限日として残額の振込みを待つ。
  3. ③払込期日 最終期限日後、振り込まれたすべての金額を確認したうえで、払込期日に同社の銀行口座から発行者の銀行口座へ支払いを行う。
  4. ④失権 振込みが行われなかった部分が発生している状態で株式の発行を行う場合、その部分については発行者に払込みができず、株式は発行されず失権する。新株予約権の場合は消滅する。
  5. ⑤受渡日 払込期日(払込期間が設けられた場合には同社の口座から発行者への払込日)が株式の受渡日となり、株主名簿に記載される。

振込手数料を投資家が負担せず、最終期限日までに振込みが確認できない場合の扱いも定めがあります。申し込みに係る店頭有価証券のうち最小取扱単位分の金額がキャンセル扱いとなり、その金額から送金手数料を控除した金額が返金されます。キャンセル扱い分以外の金額は、投資家の振込額として同社から発行者へ入金されます。

他社の入金期限も確認しておきます。イークラウドは、申込みを受け付けた後に送る連絡メールが到着してから翌々営業日までの入金を求め、期限までに確認できない場合は投資者の責に帰すべき事由によるか否かを問わず申込みが撤回されたものとみなすとしています。ユニコーンは申込完了日から起算して3営業日以内に入金が確認されない場合、申込みが失効の扱いになるとしています。

目標募集額に届かなかったときに何が起きるか

不成立のときの手当ては、会社ごとに書き方が違います。ユニコーンは、不成立が確定した時点でその旨を会員へ電子メールで知らせるとともにポータルサイトにも表示し、その表示の日から2週間以内に申込みをした会員へ申込金を返金するとしています。この場合の振込手数料は同社が負担します。

ユニコーンの取扱要領で案件成否後の会員への対応として成立時の払込と不成立時の2週間以内の返金が記載されている画面
株式会社ユニコーン「取扱要領」の8ページ目。案件成立の場合は払込期日に発行会社へ入金し投資者はその日をもって株主となること、不成立の場合は表示の日から2週間以内に申込金を返金し振込手数料は同社が負担することが書かれている。

AngelNaviは、申込期間の最終日に応募申込の合計金額が目標募集額を下回った場合、募集は不成立となり、投資家が登録した銀行口座へ振込額の全額を返金すると答えています。そのうえで、発行企業と協議のうえ申込期間を延長する場合があるとも書いています。

FUNDINNOは、目標募集額に到達しない場合に申込期間を延長する場合があるとしたうえで、プロジェクトが成立した後に払込金額や振込手数料が一部の投資家から払い込まれず払込額が目標募集額を下回った場合の扱いも定めています。現時点での資金調達額を発行者へ伝え、当初の資金使途の履行可能性、使途の変更、当初予定事業への影響等を発行者と協議したうえで、発行者の判断で募集を実施することも、中止することもあるという内容です。

表2 不成立・未達のときの扱い(各社の公表内容)
会社 不成立のときの返金 期間の延長
ユニコーン 不成立の表示の日から2週間以内に申込金を返金。振込手数料は同社が負担 システム障害時に申込期間の延長など募集の取扱いを変更する場合がある
AngelNavi 登録された銀行口座へ振込額の全額を返金 発行企業と協議のうえ申込期間を延長する場合がある
FUNDINNO 目標募集額に到達しない場合は申込期間を延長する場合がある。払込額が目標募集額を下回ったときは発行者と協議 目標募集額に到達しない場合に延長する場合がある
CF Angels 募集は不成立となり、応募があった部分についても払込金の振込みは行われない 公開ページでは延長の定めを確認できなかった
イークラウド 公開ページでは返金の期限を確認できなかった 公開ページでは延長の定めを確認できなかった

募集そのものが中止になる場合

成立・不成立とは別に、募集の取扱いが中止される場合もあります。ユニコーンの取扱要領は、法令等に違反する等の事由により業務管理体制の改善等を求められた場合、業務執行不能な状態に陥った場合、発行会社の事由により株式の募集を取りやめることとした場合、投資者保護の観点から中止が適当と判断した場合などを挙げ、中止する場合はポータルサイトのトップページで公表するとしています。

CF Angelsの取引約款は、同社について金融商品取引法や関連政府令、日本証券業協会の規則に違反する等の事由により業務を停止する必要が生じた場合と、同社と発行者が募集を中止することに合意した場合を中止事由として挙げています。

加えて、発行者の表明保証違反があったときの扱いも定められています。審査手続き中であれば直ちに審査を打ち切り、審査終了後から募集終了までであれば直ちに募集取扱を中止し、募集終了後であればサイト上の発行会社の情報を削除する、という段階的な対応です。

資金繰り表に入れるときの考え方

ここまでの定めを踏まえると、募集期間の終了日を入金日として扱うことはできません。少なくとも、撤回期間、約定日、投資家の入金期限、発行者への払込日という4つの段を経ます。

図3 入金予定を見積もるときに置いておく3つの前提

① 金額は減る方向に動く

8日間の撤回と、入金されなかった部分の失権。どちらも申込総額を下げる方向にしか働かない。

上振れは上限募集額で頭打ちになる。

② 日付は後ろへ動く

目標募集額に届かないときの期間延長、システム障害時の期間延長。いずれも公表されている。

前倒しの定めは見当たらない。

③ 成立しても即入金ではない

投資家の入金期限を待ってから、発行者への払込みが行われる。

FUNDINNOは最終期限日を当初支払期限日の翌営業日から起算して5営業日目としている。

調達した資金を支払いに充てる予定があるなら、募集期間の終了日ではなく、払込期日の見込みを基準に置いてください。手数料の支払時期も関係します。CF Angelsは募集取扱手数料を払込金の入金後、直ちに支払うものとしています。

よくある質問

募集期間が終わったら金額は確定しますか。
確定しません。日本証券業協会は、申込みの日から8日間は申込みの撤回または契約の解除ができるとしています。この期間に撤回が出れば申込総額は減ります。
目標募集額を超えたら、超えた分も全部受け取れますか。
上限募集額までです。上限の決め方は会社によって違い、AngelNaviは目標募集額の115%まで、CF Angelsは目標募集額の150%以内と定義しています。
投資家が入金しなかったらどうなりますか。
FUNDINNOの取扱要領では、振込みが行われなかった部分について発行者に払込みができないため、その部分の株式は発行されず失権します。新株予約権の場合は消滅します。
不成立になったら投資家のお金はどうなりますか。
返金されます。ユニコーンは不成立の表示の日から2週間以内に返金し、振込手数料は同社が負担するとしています。AngelNaviは振込額の全額を返金するとしています。
募集期間が延びることはありますか。
あります。AngelNaviは発行企業と協議のうえ申込期間を延長する場合があるとし、FUNDINNOは目標募集額に到達しない場合に申込期間を延長する場合があるとしています。システム障害時の延長も各社が定めています。
株主になるのはいつですか。
ユニコーンの取扱要領は、案件成立の場合に発行会社へ払込期日に入金し、投資者は当該払込期日をもって株主となり株主名簿に記載または記録されるとしています。FUNDINNOは払込期日が株式の受渡日となり株主名簿に記載されるとしています。

まとめ

募集期間の終了は、調達額が決まる日ではありません。8日間の撤回期間があり、そこから約定日が決まり、投資家の入金期限を待ってから発行者への払込みが行われます。入金されなかった部分は失権するため、申込総額と実際の調達額は一致しないことがあります。

日数の数え方は会社ごとに文言が違います。FUNDINNOは「9日目の日を約定日とする」、CF Angelsは「8日を経過すること」と書いています。自社が使う会社の条文を書き写して数えるのが、もっとも確実な方法です。各社の条件はFUNDINNOで資金調達する条件やユニコーンで資金調達する条件で条文ごとに整理しています。

このページの内容は、日本証券業協会の制度の概要と、各社が公開している取扱要領・取引約款・よくあるご質問の記載に基づいています。各社の文書は改定されるため、スケジュールを引く前に、使う会社の最新の文言を確認してください。

調達資金の入金時期を前提にした支払い計画については、顧問の税理士や中小企業診断士、認定経営革新等支援機関と相談しながら組み立ててください。

出典