イークラウドで資金調達する条件|審査料なし、手数料は5,000万円を境に22%と16.5%(税込)

イークラウドの募集等取扱手数料と審査料、相談から着金までの期間を3つ並べたアイキャッチ

イークラウドは、株式投資型クラウドファンディングの取扱業者5社のなかで最後に日本証券業協会へ加入した会社です。費用の決め方が他社とはっきり違い、取引約款に「当社は、審査料は頂きません」と書いています。一方で、金融商品取引業者としての登録の種類が他社と異なるため、投資家保護の枠組みにも違いがあります。どちらも公開文書で確認できます。

このページの要点

成約手数料は、発行価格の総額のうち5,000万円以下の部分が20%(税込22%)、5,000万円を超える部分が15%(税込16.5%)。審査料は取らないと取引約款に明記されています。

登録は第一種少額電子募集取扱業務などで、投資者保護基金には未加入です。自己資本規制比率の適用もありません。いずれも同社が取扱要領の末尾に自ら記載しています。

よくあるご質問では、東京都に本店または主たる事業所がある創業10年未満の企業は、対象要件の審査を経て東京都から最大1,000万円の手数料が助成されると案内しています。

イークラウドはどういう会社か

サービスを運営しているのはイークラウド株式会社です。日本証券業協会が公表する取扱業者の一覧では、加入日が2020年4月24日と記載されています。一覧の5社のなかでは最も新しい加入です。

同社の事業者向けページには、ベンチャーキャピタル等でベンチャー企業への投資経験が豊富なメンバーが多数在籍していること、大和証券グループのフィンテック領域における戦略的子会社から出資を受けてサービスを運営していることが書かれています。

登録の種類が他社と違う

見落とされやすいのが、金融商品取引業者としての登録の中身です。取扱要領の末尾に、同社は次のとおり記載しています。

表1 イークラウドが取扱要領の末尾に記載している事項
項目 記載内容
登録番号 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第3181号
業務の種別 第一種少額電子募集取扱業務、第二種金融商品取引業、投資運用業
加入協会 日本証券業協会、一般社団法人第二種金融商品取引業協会、一般社団法人資産運用業協会
投資者保護基金 未加入(同社は投資者保護基金への加入義務が適用されない旨を記載)
補償対象債権 投資者が同社に対して有する債権は、金融商品取引法第79条の56第1項に規定する補償対象債権に該当しない
自己資本規制比率 金融商品取引法第29条の4第1項第6号イおよび同法第46条の6に規定する自己資本規制比率の適用はない
券面の預託 金融商品取引法第29条の4の2第9項および第10項の規定により、店頭有価証券の券面の預託を受けることができない

この並びは、同じ株式投資型クラウドファンディングでも、取扱業者の登録の種類によって適用される枠組みが変わることを示しています。発行者にとって直接の損得ではありませんが、投資家に説明を求められたときに答えられるよう、押さえておく価値があります。他社の登録との違いは株式投資型クラウドファンディング5社比較とあわせて確認してください。

調達できるのは1年間に1億円未満

事業者向けページは「株式投資型クラウドファンディングで調達できるのは、1年間に1億円未満です」と書き、シード・アーリー期の企業の成長資金獲得に活用できるとしています。よくあるご質問でも、法令上1年間に1億円未満である旨を回答しています。

イークラウドの事業者向けページで約1億円まで調達可能、最短1ヶ月で資金調達、事業に共感する株主の3項目が並ぶ画面
イークラウド「事業者の方へ」。調達額の上限、申込みから着金までの期間、株主の性質という3点が並ぶ。期間は審査や募集の状況で変動すると注記がある。

取扱要領は、発行者の調達金額が法令で定められた少額要件に適合していなければ株式投資型クラウドファンディングの対象として取り扱うことができないとし、発行者からの提出書類と表明保証によって確認するとしています。

費用は成約時の手数料だけ

取引約款(発行者)第9条は、審査料および募集に掛かる諸費用等についてまとめています。ここに他社との最大の違いがあります。

表2 イークラウドの発行者向け費用(取引約款(発行者)第9条の記載)
いつ 名目 金額
募集の前 審査料 「なお、当社は、審査料は頂きません」と明記
成立時 募集等取扱業務の手数料(5,000万円以下の部分) 有価証券の発行価格の総額の20%(税込22%)相当額
成立時 募集等取扱業務の手数料(5,000万円超の部分) 総額の15%(税込16.5%)相当額
成立時 紹介がある場合 ベンチャーキャピタル等から紹介を受けた発行者については、手数料の割引を行うことがある
その他 別途の費用 発行者と協議の上、別途、費用を申し受けることがある
イークラウドの事業者向けよくあるご質問で利用手数料と東京都の助成について回答が開かれている画面
イークラウド「事業者の方へ」のよくあるご質問。手数料の回答に続けて、自治体の助成金が適用できる場合があることと、東京都の助成の案内が書かれている。

よくあるご質問では、同じ料率を「22%(税込)相当額を上限とした手数料」「16.5%(税込)相当額を上限とした金額」という書き方で説明しています。取引約款が定める率が上限として働き、個別には下がる余地があるという読み方になります。

調達額ごとに手数料を計算する

公表されている料率を当てはめ、税込で計算すると次のようになります。5,000万円を境に段が変わるため、そこから上では総額に対する実効的な率が下がっていきます。

表3 公表料率から計算した手数料(税込)と、総額に対する割合
調達額 手数料 総額に対する割合
1,000万円 220万円 22.0%
3,000万円 660万円 22.0%
5,000万円 1,100万円 22.0%
7,000万円 1,430万円 約20.4%
9,000万円 1,760万円 約19.6%

上の金額は、イークラウドの取引約款にある料率を当てはめて出した数字で、見積書ではありません。約款もよくあるご質問も「上限」という言い方をしているため、実際の請求はこれ以下になる可能性があります。

東京都の企業は手数料の助成を受けられることがある

同社のよくあるご質問は、自治体等による助成金、交付金等が適用できる場合があるとしたうえで、東京都に本店もしくは主たる事業所がある創業10年未満の企業の場合、対象要件の審査を経て東京都から最大1,000万円の手数料が助成される、と案内しています。予算が上限に達した場合には申請の受付が早期に終了する場合がある、との注記もあります。

東京都創業NETの案内では、この事業は「クラウドファンディング(購入寄付型・株式型)を活用した資金調達支援事業」という名称で、株式型は取扱ECF事業者に支払う手数料の一部を助成するものです。補助区分は2つあり、1/2補助区分の上限額が750万円、2/3補助区分の上限額が1,000万円とされています。対象は創業10年未満の都内中小企業です。

図1 手数料と助成を合わせて考えたときの負担感(公表されている上限額で整理)

3,000万円を調達した場合

計算上の手数料は660万円(税込)。

1/2補助区分の上限750万円の範囲に収まる規模なので、助成の対象になれば負担は大きく変わる。

助成は申請して審査を受けるもの

対象要件の審査があり、予算が上限に達すれば受付が早期に終了することがある、と同社も注記している。

手数料が自動的に減るわけではない。

確認先は東京都側

制度の詳細、補助区分の条件、申請期限は東京都の事業ページで確認する。

取扱業者の案内は入口であって、要件の正本ではない。

審査で見られる11の項目

取扱要領は、取り扱おうとする株式または新株予約権証券とその発行者について、①から⑪の項目を審査すると列挙しています。

イークラウドの取扱要領で審査項目が①から⑪まで列挙されている画面
イークラウド「取扱要領」の審査項目。実在性、財務状況、事業計画の妥当性から、過去に調達した資金の資金使途、コーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の状況までが並ぶ。

FUNDINNOの取扱要領と並べると、イークラウドは「⑩過去に調達した資金の資金使途」を独立した項目として挙げている点が目を引きます。今回の使途だけでなく、前回集めた資金をどう使ったかが審査の対象になるということです。2回目の募集を考えている会社ほど、この項目の意味は重くなります。

審査の材料は、発行者から提出された基本状況に関する資料、財務状況や事業計画等に関する資料、経営者や会社関係者へのインタビュー、その他外部データとされています。審査を行う案件については案件審査会議を行い、審議内容や指摘事項、結果の判断に至る事由を記載した議事録を作成し、提出資料とともに審査終了日から10年間保存すると定められています。

提出する書類は18項目が挙げられている

よくあるご質問には、提出する書類の一覧が置かれています。会社の登記や代表者の確認書類から、資金使途や取引先の情報まで広い範囲に及びます。

図2 よくあるご質問が挙げる提出書類(性質で分けたもの)

会社と役員を示すもの

  • 定款(写し)
  • 履歴事項全部証明書
  • 印鑑登録証明書
  • 会社役員の本人確認書類
  • 会社役員の経歴・プロフィール

取得に日数がかかる書類が含まれる

数字と資本を示すもの

  • 決算書・税務申告書(写し)
  • 納税証明書
  • 月次試算表
  • 預金通帳(写し)
  • 株主名簿および新株予約権原簿
  • 過去の投資関連契約書

事業と計画を示すもの

  • 事業計画書
  • 事業内容説明書
  • 資金使途に関する書類
  • 主な取引先情報
  • 借入一覧表および返済計画表・契約書(写し)
  • 労使協定書

労使協定書が挙がっているのは、他社の一覧ではあまり見かけない項目です。このほか「その他当社が必要と認める資料」が付くため、実際の提出点数は会社の状況によって増えます。

相談から着金までの流れと期間

事業者向けページは、相談から着金までの流れを段階で示しています。期間は、相談から着金まで最短で約1か月、募集期間はその中で2週間程度とされています。よくあるご質問の別の箇所では、申込みから着金まで約1〜2か月という書き方もあり、審査や募集の状況で変動すると注記されています。

図3 イークラウドが示す相談から着金までの段階

  1. ①資金調達を相談する フォームから相談する。
  2. ②事前審査 フォームの登録情報を基に申込者の事前審査が行われる。
  3. ③審査・ページ作成 本審査と並行して募集ページを作る。
  4. ④募集開始 募集期間は2週間程度。
  5. ⑤募集終了・着金 相談から着金までは最短で約1か月が見込みとされている。

申し込める投資家の条件

取扱要領は、投資者登録の際の適合性審査の基準を定めています。個人投資家は、リスクの大きな金融商品への投資経験があること、金融資産が300万円以上であること、年齢が満20歳以上満75歳未満であることが挙げられています。投資者登録後に時間の経過により満75歳以上となった場合は、その後の募集案件への申込みができなくなるとされています。

法人投資家については、法人がリスクの大きな金融商品への投資経験があること、法人の金融資産が300万円以上であることが基準です。

投資額は、一発行者につき一人あたり1年間50万円以下です。取扱要領は、本サービス以外の手段で同一発行者の株式または新株予約権証券を過去1年以内に取得している投資者について、その投資金額が確認できない場合や確認した金額が50万円以上の場合は申込みが取り消されると定めています。50万円以内に収まるよう申込額が自動で調整されることはない、とも書かれています。

投資家は申込時に7つの事項へ同意・表明する

取扱要領は、投資家が募集案件へ申し込むときの手続きも具体的に書いています。申込みフォーム内で確認・同意または表明し、電磁的方法で提出する事項は次のとおりです。

表4 申込時に投資家が確認・同意・表明する事項(取扱要領の記載)
事項 内容 発行者にとっての意味
確認書の内容 「株式投資型クラウドファンディング業務による店頭有価証券の取得に関する確認書」。同社で初めて投資を申し込むときのみ 初回の投資家には一段手続きが増える
反社会的勢力でないことの表明 投資家側の表明 株主名簿に載る相手の確認が制度に組み込まれている
個別払込額の要件 一発行者につき一人あたり1年間50万円以下であること 必要な投資家の人数を決める制約になる
契約締結前交付書面の理解 記載されたリスク、手数料等の内容を十分に理解・確認する 募集ページの記載がそのまま判断材料になる
募集事項に関する通知の確認 株式または新株予約権証券の募集事項に関する通知の確認 発行決議の内容が投資家に届く
投資家間契約への同意 投資家間契約への同意 株主が増えたあとの関係を契約で整理する前提になっている
将来IPOが行われる場合に備えた同意 将来IPOが行われる場合に備えた同意 上場準備の局面で株主対応が滞らないよう先に取り決める

後ろの2つは、発行者が資金を受け取ったあとの株主管理に直結します。株式投資型クラウドファンディングで株主が一度に増えることの実務的な難しさを、申込みの段階で手当てしておく設計になっています。

投資家の入金が遅れると申込みは撤回とみなされる

取扱要領は、申込みを受け付けた後に直ちに投資者へ連絡メールを送り、投資者は連絡メールが到着した後、翌々営業日までに指定の銀行口座へ投資資金を入金する、と定めています。振込手数料は投資者の負担です。

そして、翌々営業日までに入金が確認できない場合は、投資者の責に帰すべき事由によるか否かを問わず、申込みが撤回されたものとみなされます。再度申し込むことはできますが、その場合は改めて入金期限までに全額を入金する必要があります。

発行者から見ると、募集期間中に表示される申込金額は、まだ入金が済んでいない分を含んでいる可能性があります。着金予定を資金繰り表に入れるときは、入金期限と撤回の仕組みがあることを前提に置いてください。

反社会的勢力の排除は契約条項で担保されている

取扱要領は、発行者に係る反社会的勢力の排除について、確認の方法と契約の内容まで書いています。外部専門事業者等が作成するデータベースと公知の情報を用いて該当性と関係の有無を確認し、発行者との間で書面による契約を締結するとしています。

契約に盛り込まれるのは、発行者が反社会的勢力でない旨の確約と、その確約が虚偽であると認められた場合や、発行者が反社会的勢力に該当すると認められた場合に、同社の申出により契約が解除される旨です。業務開始後に判明した場合も、発行者に通知のうえ契約を解除し、直ちに業務を中止すると定められています。

調達したあとに続くこと

よくあるご質問は、資金調達を行った後も実施すべき事項として、会社法に基づいた株主等への対応と、イークラウド上の情報開示機能を利用する方法等により、出資した株主等に対して継続的な情報提供を行うことを挙げています。イークラウドを通じた株主等ではない方への連絡等は従来どおり行うように、とも書かれています。

同社の取引約款(発行者)には、募集後の継続費用について公開ページで確認できる金額の定めは見当たりませんでした。情報開示に関する詳細は取引約款(事業者)を確認するよう案内されているため、契約前に条文で確かめることをおすすめします。

よくある質問

審査に落ちたら費用はかかりますか。
取引約款(発行者)第9条は「なお、当社は、審査料は頂きません」と明記しています。ただし同じ条には、発行者と協議の上、別途、費用を申し受けることがあるという定めもあります。
ベンチャーキャピタルからの紹介だと手数料は下がりますか。
取引約款は「ベンチャーキャピタル等から紹介を受けた発行者については、手数料の割引を行うことがあります」としています。「ことがあります」という書き方なので、必ず下がると読むことはできません。
5,000万円を超えると手数料はどうなりますか。
5,000万円以下の部分に20%(税込22%)、5,000万円を超える部分に15%(税込16.5%)がかかります。超えた分だけ率が下がる方式なので、総額に対する実効的な割合は調達額が大きいほど下がります。
東京都の助成は必ず受けられますか。
受けられるとは限りません。同社のよくあるご質問も「対象要件の審査を経たうえで」と書いており、予算が上限に達した場合に申請の受付が早期に終了する場合があると注記しています。要件と期限は東京都の事業ページで確認してください。
新株予約権でも募集できますか。
取扱要領は、審査の対象を「株式又は新株予約権証券」と書いており、投資家の適合性審査や個別払込額の確認でも両方を対象としています。実際に募集できるかは案件ごとの審査によります。
投資者保護基金に未加入だと、発行者に不利はありますか。
投資者保護基金は投資者の債権を補償する仕組みで、発行者への手数料や調達額に直接関係するものではありません。ただし投資家から質問を受ける可能性があるため、同社が取扱要領の末尾に自ら記載している内容として把握しておくと説明しやすくなります。

まとめ

イークラウドは、審査料を取らないと明記している点と、5,000万円で料率が段に分かれる点が、公開文書から読み取れる特徴です。審査で落ちたときの持ち出しを抑えたい会社、5,000万円を超える規模を考えている会社にとっては、比較の土俵に乗りやすい条件といえます。

一方で、調達できるのは1年間に1億円未満、投資家1人あたりは1年間50万円以下という枠は他社と変わりません。審査項目に「過去に調達した資金の資金使途」が入っている点は、2回目以降を考える会社が先に意識しておくべきところです。他社の条件は株式投資型クラウドファンディング5社比較とFUNDINNOで資金調達する条件にまとめています。

このページに書いた金額と条件は、イークラウドが公開している取扱要領、取引約款(発行者)、事業者向けページおよびよくあるご質問の記載に基づいています。取引約款や事業者向けページの記載はイークラウド側で更新されます。相談を始める前に、同社のページで数字を突き合わせてください。

東京都の助成制度の要件、補助区分、申請期限は東京都側の案内が正本です。東京都の助成を含めて自社が使えるかどうかの判断は、税理士や中小企業診断士、認定経営革新等支援機関に確認しながら進めてください。

出典

  • イークラウド「取扱要領」(審査項目①〜⑪、審査記録の10年保存、反社会的勢力の排除、投資者の適合性審査、個別払込額50万円以下、登録番号と加入協会、投資者保護基金未加入)https://ecrowd.co.jp/transaction_summary
  • イークラウド「取引約款(発行者)」(5,000万円を境にした2段階の料率、審査料を頂かない旨、紹介時の割引、別途費用)https://ecrowd.co.jp/agreement_company
  • イークラウド「事業者の方へ」(1年間に1億円未満、相談から着金まで最短約1か月、募集2週間程度、大和証券グループからの出資、提出書類、手数料と東京都の助成、調達後の情報提供)https://ecrowd.co.jp/company
  • 日本証券業協会「株式投資型クラウドファンディング業務を行う金融商品取引業者」(加入日2020年4月24日)https://market.jsda.or.jp/shijyo/kabucrowdfunding/toriatsukaigyousha/20200907114040.html
  • 東京都創業NET「クラウドファンディング(購入寄付型・株式型)を活用した資金調達支援事業」(株式型は1/2補助区分 上限750万円、2/3補助区分 上限1,000万円、対象は創業10年未満の都内中小企業)https://www.tokyo-sogyo-net.metro.tokyo.lg.jp/finance/crowd_fun_ding.html