日本ではクラウドファンディングを通じた資金調達は、2020年の1年間で約1,700億円です。
この資金調達額は、前年から微増です。コロナの影響により落ち込むでもなく、また家にいる時間が伸びたからと言って極端に増加していることもありません。ここ数年は、堅調に推移しています。
2,000兆円を超える金融市場全体から見ればクラウドファンディングによる資金調達はまだまだ少額の資金を扱っている分野にすぎません。しかし、その大半が個人あるいは中小企業の調達によって占められていることから、中小企業の資金調達に当たっては注目すべき方法の一つと言えます。
自社の資金調達方法としてクラウドファンディングに取り組む場合、どうしたら成功させることができるのでしょうか。
正しくクラウドファンディングを選ぶ
- 寄付型
- 購入型
- 融資型
- 出資型
それぞれのクラウドファンディングはどのようなものか
寄付型
ただし、ほとんどのケースでは何かしらのリターンが設定されています。リターンが資金提供額と著しく見合わない場合には寄付型に含められます。
購入型
クラウドファンディングを実施する方からすれば、商品の販売に他なりません。
融資型
融資型はリターンとして、元本及び利息を受け取ることができます。一方で、借り入れた事業者が破綻した場合には投資した金額が返ってこない、というリスクも引き受けます。
出資型
資金提供時にそのまま株式を受け取って株主になるパターンもあれば、一度株式を受け取れる権利だけを受け取り(これを新株予約権といいます)、後から新株予約権を行使して株主となるパターンもあります。
なぜクラウドファンディングの選択が重要なのか
準備
寄付型、購入型の場合には、どうやってプロジェクトをより多くの人に知ってもらうか、が何より重要です。
そのため、SNSアカウントを作成し、フォロワーを増やしておくなどの準備が必要となります。
一方、融資型や出資型の場合には自ら宣伝せずともサイトの運営者に資金提供者を集めることは依頼できます。
むしろ、サイトの運営者に選んでもらえることが何より重要になります。そのため、サイトの運営者にクラウドファンディングを行ってもらうための事業計画の立案やその説明資料の作成が必要になります。
サイト選び
クラウドファンディングサイトはそれぞれ、得意な分野が異なります。
そもそも寄付型や購入型のサイトでは貸付型や出資型を取り扱っていないため、自分の望むクラウドファンディングを行えるサイトを選ぶ必要があります。
リターン
リターンとして何を選択するかはクラウドファンディングの成否、つまり調達できるか否かに大きく影響します。
しかし、リターンはクラウドファンディングが成功し、資金調達した場合には返さなければならない会社の義務となります。
同じ種類のクラウドファンディングでも、何をリターンにするかは重要です。
クラウドファンディングを通じて、資金だけではなくその商品の認知度も高まるため、この先自社が主力商品として売っていくものを選択するのと等しいからです。
クラウドファンディングを成功させるためのコツ
次に、具体的にクラウドファンディングを成功させるためのコツを見ていきましょう。
コツその1 クラウドファンディングを利用する理由を再確認する
クラウドファンディングを成功させる最初のコツは、クラウドファンディングを利用する目的をはっきりさせることです。
利用目的をはっきりさせることにより、次のような効果があります。
- 適切な資金調達方法を選ぶことができる
- クラウドファンディングの成功率を高める
- クラウドファンディングをやり抜くためのよすがとなる
適切な資金調達方法を選ぶ
クラウドファンディングを利用する理由を考えることは、なぜ他の資金調達方法ではなくクラウドファンディングを利用するのかを考えることにつながります。
クラウドファンディングによる資金調達は、従来からの資金調達方法(銀行からの融資、ファクタリング、第三者割当増資など)と比べてメリット、デメリットがあります。
そのため、よく比較したうえで、本当にクラウドファンディングを利用することが望ましいのかを検討する必要があります。
クラウドファンディングの成功率を高める
クラウドファンディングの利用目的を再確認することでクラウドファンディングの成功率を高めることができます。
クラウドファンディングは多くの人に知ってもらうことが必要です。自社がクラウドファンディングを行っていることを知った人の一部が資金提供者となってくれるためです。
その際、誰もが疑問に思うのが、なぜクラウドファンディングをしているのだろう、です。
クラウドファンディングは、広く拡散することを目指すため、取引先、顧客に対しても自社を知ってもらうことになります。特に、現在の取引先、顧客だけではなく、将来の取引先、顧客に対しても自社を知ってもらうことになります。
目的のはっきりしないクラウドファンディングを実施するとこのような人たちの信頼を損なってしまいかねないことにも注意が必要です。
コツその2 正しく運営会社を選ぶ
クラウドファンディングの利用に当たってはクラウドファンディングサイト、およびその運営者の選定が必要になります。
運営会社はあくまで支援してくれるのであって、すべてを任せてしまうことはできません。クラウドファンディングとは、あくまで自社が主体的に実施する自社のプロジェクトなのです。
とはいうものの、運営会社はクラウドファンディングが成功することで手数料を得られます(成功しない限り手数料を受け取れません)。そのため、実施者との関係では、同じ目的に向かって進む仲間と言えます。
そのため、クラウドファンディングの運営会社はどこを選んでも同じかというと、そうではありません。運営会社の選定は、クラウドファンディングの成否を大きく左右する重要な事柄です。
運営会社の選定が重要な理由は3つあります。
運営会社が扱えるクラウドファンディングの種類
運営会社はその運営するサイトによって取り扱っているクラウドファンディングの種類が限定される場合があります。
例えば出資型のクラウドファンディングを行うためには、出資型のクラウドファンディングを行える運営会社を選ぶ必要があります。
これは、出資型のクラウドファンディングを行うためには、運営会社が金融庁への登録を行っている必要があるためです。
運営会社の得意領域
同じ種類のクラウドファンディングを運営していても、運営会社によって得意な領域が分かれます。
例えば、同じ購入型を取り扱う運営会社であっても、目新しい商品が得意な会社、特定の地域に強い会社があるということです。
運営会社の支援
クラウドファンディングを行う人(実施者)は多くの場合、クラウドファンディングを始めて行う実施者です。一方で、運営会社は、多数のクラウドファンディングを身近に見てきています。そのため、多くの経験に基づく知識、ノウハウを持っています。
しかも、運営会社はクラウドファンディングを行う人(実施者)と同じ目的に向かっています。
つまり、一番頼りになる相談役と言えます。
コツ3 資金を提供する側の理由を考える
クラウドファンディングは多数の人から資金を集めるプロジェクトです。
そのため、多数の人がなぜ資金を出してくれるのかを考えてみることでより成功率が高まります。
リターンの魅力を高める
人が財布のひもを緩める理由は、ほしいものがあるからです。
クラウドファンディングの場合にはリターンが「ほしいもの」であれば資金を提供してもらえます。
金融型の場合にはリターンを上げることは、実施者のコストを増やすことになります。そのため、どこまでコストをかけてでも資金調達したいのかを慎重に検討する必要があります。
一方で、金融型であれ、非金融型であれ、金銭的なリターン以外のリターンを自由に設定できます。そのため、資金提供者が欲しいと思えるリターンの設定を工夫する余地があります。
プロジェクトへの共感を得る
人が財布のひもを緩めるもう一つの理由は、お金を受け取る相手がすることに共感するからです。
寄付型という類型があることからも明らかな通り、必ずしも誰もがリターンを求めて資金提供を行っているわけではありません。
クラウドファンディングを成功させるに当たっては、リターンの魅力を高めることが手っ取り早く合理的です。ただし、それだけがクラウドファンディングの成功にとって必要な要素ではないということです。
リターンと共感
これはプロジェクトによって異なります。
寄付型の場合にはリターンが決定的に重要ではありませんが、リターンのみを期待して寄付する人もいます。
一方で金融型の場合にも、リターン以上に共感で資金が集まるケースがあります。
まとめ
クラウドファンディングは金融全体からみればまだまだ小さなマーケットです。
しかし、中小企業の資金調達に当たって検討すべき方法の一つになってきています。
クラウドファンディングは何よりもまず、4つの種類(寄付型、購入型、貸付型、出資型)から、何を選ぶのかが重要です。
また、クラウドファンディングを成功させるには3つのコツを抑える必要があります。
- クラウドファンディングを行う理由を再度確認する
- 運営会社を正しく選択する
- 資金を提供する側の理由を考えてみる
クラウドファンディングを検討することは他の資金調達方法について見直すきっかけになります。また、クラウドファンディングを実施して得られることは、単に資金を調達できることだけではありません。