という経営者も多いはずです。今回は銀行の融資審査を通す裏技として「銀行が勝手に貸してくれるための仕組み」について解説します。
前提として
- 銀行に「資金繰りに困っているから融資をしてくれ」とお願いする
というスタンスよりも
- 銀行から「お金を借りてくれないか?」とお願いをされる
ケースの方が融資審査に通る可能誠意が高いのは言うまでもありません。
銀行側から営業してくるのですから、審査が通るのはほぼ確実と考えて構わないレベルということです。
ただし、銀行は
「晴れている日に傘を貸して、雨の日に傘を取り上げる」
と言われているように「銀行から融資のお願いをされる」というのは、経営状態の良い、資金調達の必要のない会社の可能性が高いのです。
今回は「銀行が勝手に貸してくれるための仕組み」について解説します。
そのために、まず知るべきことは「銀行の融資担当者の考え」です。
銀行の融資担当者の裏側を知る
銀行の融資担当者には300件ぐらいの担当企業がある!
銀行の融資担当者が受け持つ案件数というのは、個人事業主も含めて、300社ほどの規模になります。
シンプルに考えれば、営業日が20営業日あったとして、1日3件訪問したとしても、1人の融資担当者が回れる会社の数というのは、60社にすぎません。
さらに
融資審査の稟議書の作成なども実務もありますし
月数回訪問しなければならない重要な会社もあるのですから、
稟議書を起案(作る)のは融資担当者!
融資の流れ
- 融資担当者:稟議書を起案(作成)
- 支店内で役職者が回覧(担当者 → 次長 → 渉外課長 → 融資課長)
- 支店長決裁:決裁 → 場合によっては本部へ
- 本部融資部門:審査
- 役員:決裁
という流れになっています。
また、支店長に直訴したとしても、「稟議書」を作るのは融資担当者です。無下に飛び越えて交渉すると逆効果になることがあります。
銀行の融資担当者は「地域の情報」を必要としている!
銀行の融資担当者は、他の融資先に影響するような「地域の情報」を必要としています。
- 新規の融資先の開拓
- 既存の融資先の状況把握
が必要だからです。
銀行の融資担当者には「ノルマ」がある!
銀行の融資担当者には、色々な「ノルマ」があります。
- 口座開設
- 定期預金
- クレジットカード
- ローン
- 投資信託
- 融資額
- 融資先数
・・・
これがかなりきついノルマで
新人であっても、定期預金1000万円、投資信託1000万円、クレジットカード5枚・・・を毎月というようなノルマが課されるのです。
銀行にも、「売上を上げたい時期」と「売上を上げたくない時期」がある!
銀行は本部が、来季の目標を決定します。
各支店の目標値も、細かく決められているのです。
- 決算期の前に融資額が未達であれば → 融資を積極的にせざるを得ない
のですが
- 決算期の前に融資額の達成が見えていれば → 融資を抑えて来期に回したい
のです。
融資担当者は他行による借り換えで社内の評価が一気に落ちる!
融資担当者が最も気をつけていることは
他行からの借り換え
です。
他行からの借り換えが起これば
- 得られるはずだった利息がなくなる
- 支店の融資額の目標達成が遠のく
- 融資先が減る
- ライバル企業の売上が増える
・・・
とデメリットがありすぎるので「他行からの借り換え」が発生すれば
融資担当者が
- 顧客の管理不足
- 管理責任
を問われ、社内での評価もがた落ちしてしまうのです。
銀行が勝手に貸してくれるための仕組み
その1.銀行からこまめに融資を受ける
会社としては、1回に高額な資金調達をして、後は経営に力を専念する方がわかりやすいので良いのですが、これだと次の資金需要が発生するまでにかなり時間が経過してしまうので、融資担当者は定期的に訪問しようとはせず、優先順位は下がってしまいます。
1回で5000万円の資金調達をするぐらいならば
2ヵ月ごとに500万円ずつの資金需要を発生させて、きちんと返済していく方が「継続顧客」として融資担当者も足しげく通ってくれることになります。
その2.地域情報を融資担当者に提供する
前述した通りで、融資担当者は「地域の情報」「競合の情報」「業界の情報」を常に欲しています。
新規顧客を開拓するにせよ
既存顧客の状態を外側から知るにせよ
「情報」が必要不可欠だからです。
「地域の情報」に詳しく、訪問すれば常に新しい情報をくれる経営者には資金需要がなくても、定期的に訪問してくれるはずです。
例えば
- 支店の営業区域内での冠婚葬祭
- 国や地方自治体の動き
- 知り合いの経営者の紹介
- 知り合いのお金持ちの紹介
などです。
その3.融資担当者の「ノルマ」達成に協力する
前述した通りで、銀行の従業員は厳しい「ノルマ」を課されます。
- 口座開設
- 定期預金
- クレジットカード
- ローン
- 投資信託
- 融資額
- 融資先数
・・・
など、融資担当者の「ノルマ」達成に協力すれば、融資担当者にはメリットのある融資先という位置づけになります。
すべての依頼に付き合うひつようはありませんが
- 定期預金
- クレジットカード
など、コストの発生しないものであれば、協力姿勢を取るべきです。
その4.銀行に定期的に訪問する
銀行から融資の営業を受けるためには
融資担当者が足しげく通ってくれる融資先になる
のが重要なポイントです。
しかし、銀行の融資担当者に来てもらうのを待つだけでなく
こちらから行く
というのも、有効な方法なのです。
と思う方も多いかと思いますが、雑談でも良いのです。
支店長と話す必要もなく、融資担当者でも、次長・課長でも良いのです。
銀行の融資担当者も、融資の稟議を決裁者も、人間ですから
- 面識がある
- コミュニケーションを取っている
ことで信頼があれば、融資審査が通る確率は上がるのです。
その5.メインバンクを重視する
という声が増えていますが、メインバンクが需要なことには変わりはありません。
資金繰りが困難な状態で、新規の銀行へ融資を依頼するのと、メインバンクへ融資の依頼をするのでは、「メインバンクの方が融資は受けやすい」からです。
新規の銀行は、その会社に融資をせずに倒産されても、痛くも痒くもありません。
だとすれば、メインバンクを重視した方が融資審査に通る可能性は高くなるのです。
前述した通りで「他行からの借り換え」が発生すれば、融資担当者の社内評価はがた落ちしてしまいます。だとすれば、そうならないような関係づくりをすべきです。
- 何も知らせずに借り換えを検討する
- 何も知らせずに他行から新規の借入をする
・・・
となれば、信頼関係は破綻してしまうことは言うまでもありません。
その6.支店長に直接アプローチをしない
という経営者も少なくありませんが、実際に稟議書を起案するのは現場の融資担当者です。
支店長が見る融資先というの10~15社ぐらいの、支店の上位10位の融資先+有力顧客になりそうな融資先5社ぐらいなのです。
社員数が数名~十数名程度の中小企業経営者が、支店長に直接アプローチしたところで、よほどの売上・利益がなければ、「現場の融資担当者から回答させます。」と丁寧に断られるのが落ちです。
これをしてしまえば、飛び越えて交渉された「融資担当者」の立場がありません。
支店長から見れば、「直接渡しに交渉に来るということは融資担当者は信用されていない」と判断され、「融資担当者」の評価も下がってしまうのです。
その7.現場を見てもらう、情報開示が重要
銀行の融資担当者は約300社の顧客を受け持っています。
300社も顧客がいたら、1社1社の商品やサービスを深く調査して理解することなんて、できるわけがないのです。
- 銀行に訪問する
- 融資担当者に訪問してもらう
際に、少しずつでも、リアリティのある商品力やサービスを知ってもらうことが重要になります。
融資担当者は決算書の数値などで会社の情報を把握することには長けていますが
「どんな商品が売られていて、競合他社と比較してどこに優位性があるのか?」理解するのは苦手なのです。
だからこそ、訪問してもらったときには
- 現場を見てもらう
- 社員が見える場所で打ち合わせをする
- 新製品のサンプルを渡す
- 製造過程を見てもらう
- 競合他社との違いを毎回説明する
・・・
その商品やサービスが競合他社と比較して良いものであることを理解してくれれば、より融資の検討をしてくれる可能性が高まるのです。
決算書が全く同じ状態の2社があった場合
- A社の商品・サービス・市場・競合には詳しい
- B社の商品・サービス・市場・競合には疎い
状態であれば、確実にA社に融資の依頼をしてくれるはずです。
その8.銀行は敵ではなく、パートナー
どうしても、銀行は「あのとき融資をしてくれなった。」というような経験があると「敵」として認識してしまう経営者も少なくありません。
「敵」をだましてなんとか融資を勝ち取ろう!
というスタンスでは、必ずボロが出てしまいます。
銀行は資金調達・資金繰りのアウトソーシング先であり、銀行も「会社が成長して、融資額が伸び、安定的に利息収入が増えること」を期待しているのです。
目的は、経営者と何ら変わりません。
経営者と銀行は「パートナーである」という意識を持って、銀行と対応する必要があります。
だからといって、いつでも融資してくれるわけではありませんが
融資担当者も人間ですから
という話をしてくる経営者よりも
という話をしてくる経営者に貸したくなるのは当然なのです。
その9.決算書を確定させる前に相談する
決算書というのは融資を通すためには必要な情報です。
経営してきた結果は変わらないのですが
- 「減価償却を計上するかどうか?」
- 「どの勘定科目に分類するのか?」
によって、決算書の数値というのは動いてしまいます。
決算書を確定させるときに税理士とだけ相談してしまえば、利益を圧縮して税金負担を小さくしようとするはずです。それは税金を小さくすることには有効ですが、融資審査を通りやすくすることとは真逆のことなのです。
しかし、銀行の融資担当者の視点では、もうすこし利益を残しておいてくれれば融資審査に通るのにというラインもあるのです。
その10.資金繰りの情報をこまめに更新して伝える
- 資金繰り表
- 販売先一覧
- 仕入先一覧
- 事業計画書
・・・
などの情報を更新しながら、融資担当者に渡して、現在の状況と資金繰りの相談を常にしていけば
融資担当者は
- いつ、資金需要が発生するのか?
- どのタイミングで資金調達したいと考えているのか?
- 新商品や新事業のタイミングはいつなのか?
前もって予測することができます。
まとめ
銀行の融資審査を通すためには
「融資を依頼する」のではなく「融資を依頼される」環境づくりが必要になります。
「融資を依頼される」仕組みを作るためには「融資担当者の立場や考え」を理解する必要があります。
融資担当者の立場や考え
- 銀行の融資担当者には300件ぐらいの担当企業がある!
- 銀行の融資担当者は「地域の情報」を必要としている!
- 銀行の融資担当者には「ノルマ」がある!
- 銀行にも、「売上を上げたい時期」と「売上を上げたくない時期」がある!
- 融資担当者は他行による借り換えで社内の評価が一気に落ちる!
銀行が勝手に貸してくれるための仕組み
- その1.銀行からこまめに融資を受ける
- その2.地域情報を融資担当者に提供する
- その3.融資担当者の「ノルマ」達成に協力する
- その4.銀行に定期的に訪問する
- その5.メインバンクを重視する
- その6.支店長に直接アプローチをしない
- その7.現場を見てもらう、情報開示が重要
- その8.銀行は敵ではなく、パートナーと思いこむ
- その9.決算書を確定させる前に相談する
- その10.資金繰りの情報をこまめに更新して伝える
最も重要なことは「銀行は経営者のパートナーである」ということです。
「会社を成長させたい」という目的は同じなのです。敵視せずにパートナーとして相談することで融資審査に通る確率も上がってくるのです。
「どうすれば銀行から融資を受けられるのか?知りたい。
・・・