今回は、仮想通貨でできる資金調達方法「ICO」について解説します。
そもそも、「ICO」って何?
- IPO(イニシャル・パブリック・オファリング)
- ICO(イニシャル・コイン・オファリング)
IPO = 株式を公開すること = 上場すること
を意味しています。株式を投資家に公開することで、株を投資家に購入してもらって、その購入代金を得るのが「IPO」です。
ICO = トークンを発行すること
資金調達をしようとする事業者は「トークン」を投資家に発行し、「トークン」発行の対価として資金調達をする行為のことを「ICO」と呼びます。
「トークン」とは?
を言います。
仮想通貨に詳しくない方にとっては、さっぱり意味が分からないかもしれません。
もっと噛み砕いて言えば
と言えます。
トークンは、企業が独自に発行することができ、独自の特典などを付与することもでき、ビットコイン等の仮想通貨とも交換できる特徴があります。
と考えることもできます。
ポイントとトークンが違うのは、トークン自体は通貨であり、通貨としての価値を持つことです。
そのため、ICOでは、資金調達をしたい事業者が自社独自のトークンを発行し、それを投資家が購入することで資金調達が可能になるのです。
ICOによる資金調達の仕組み
- ICOをする事業者:トークンを発行
- ICOに出資する投資家:トークンを仮想通貨で購入
ICOを実行する事業者は「ホワイトペーパー(資金調達の計画書)」を発行し、投資家はそれを読んで投資判断をします。
一般的には、トークンは関係者向けのプレセールが行われ、その後、大々的にクラウドセールが行われます。
ICOによる資金調達の実例
サンタルヌーの飲食店による初のICO
サンタルヌーとは、名古屋にあるベルギービールの専門店です。都内への進出のための資金調達をICOで行ったのです。サンタルヌーは、仮想通貨NEM(XEM)を決済手段として初めて採用し、ピザが買われたことで有名な会社でもあるのです。
このICOは仮想通貨「イーサリアム(ETH)」で資金調達されました。
サンタルヌーのICOホワイトペーパーの概要
都内の場所は未定。ICOでの資金調達状況により候補地を決める。
(仮候補地、三軒茶屋、目黒、渋谷、恵比寿、代々木上原、神田、神保町、品川)東京出店及び付随するコストをERC20に準拠したトークンによるETH建てICO形式及びBTC、XEM、MONACOINにて調達する。
期間:2017年7月10日21時~17日21時第一目標 東京視察の旅費、滞在費として 10ETH
第二目標 東京移転の為の必要経費として 2790 万円分の ETH
第二目標が未達成の場合、第一目標でかかった経費及び送金コストなど事務的経費を抜いて各自に返金する。トークンは店の了解を得ずに保有者同士が売買、譲渡できる。
トークン
今回のICOで発行されるトークン「SAT」(Sant Arnould Tokyo)
- トークンの変換比率が1ETHあたり5000SAT(1SAT=1円)
- 店舗での会計:1SAT=1円
特典
- トークンでのみ購入可能なグッズの販売
- 5,000SAT(3,2000円)以上保有でプレオープンイベントに参加
- 10万SAT(600,000円)以上保有で10%OFF
- 5万SAT(300,000円)以上保有で5%OFF
- 一定以上のSAT保有者のみのイベントへの参加
結果
7日間(2017年7月10日から7月17日)でおよそ2,600万円を集めた
結果が出ています。
という疑問が出てくるかもしれませんが・・・
多くの投資をした方は、常連さんであり、
という気持ちで投資をしたものだと考えられます。
日本最大規模のICO「COMSA」
仮想通貨取引所「Zaif」を運営しているテックビューロ社が行ったICO「COMSA」があります。
「COMSA」とは
を言います。
初期に提供が開始されるサービスは以下の通りです:
- ブロックチェーン技術、特にトークンを用いたビジネスプランとサービスデザイン
- 既存ビジネスにおけるアセットのサイバースペース上でのトークン化
- ICOとトークン化におけるリーガルサポート
- 他言語のホワイトペーパー作成
- クラウドセールプラットフォームを用いたトークンの作成と販売
- Zaif取引所でのマーケット提供
- オンプレミスもしくはクラウドBaaS環境での、内部勘定システムのためのプライベートブロックチェーンmijinの提供
- NEMパブリックブロックチェーン上で、法定通貨建てと主な暗号通貨建てでの商取引を可能とする、ネットワークフィー委任サービスとペッグされたトークンの提供
- NEMブロックチェーン上でのスマート・サイニング・コントラクトの開発
- Ethereumブロックチェーン上でのスマート・コントラクトの開発
IPOで上場するときには証券会社の力を借りる必要があります。
- 上場基準に適しているかの確認
- 監査
- IR活動のサポート
- 上場価格の決定
・・・
など、上場のためにはやるべきことがたくさんあるからです。
ICOでも同様に
- ホワイトペーパーを世界言語対応で作る
- トークンを発行する
- 投資家に販売する
・・・
など、トークン上場のためにはすべきことが多く、専門家も少ないので、それをサポートするサービスを販売機能を持った仮想通貨取引所「Zaif」を運営しているテックビューロ社が行うというのは、非常に理にかなったものと言えるでしょう。
仮想通貨法(改正資金決済法)という法的根拠もある中でのICO支援プラットフォームということで注目を集めたのです。
結果
11月6日に終了し、約109億円を調達した。
95614242.43092581 USD相当
ICOでテックビューロ社が発行したトークン「COMSA」は、そのまま仮想通貨取引所「Zaif」で売買ができるものとなっているのです。
30秒以内に3500万ドルを調達したBrave
最も有名な「ICO」案件が、Mozilla前CEOのBrendan Eich氏が立ち上げたブラウザ開発企業Brave社が行ったICOです。
現在のネット広告システムへの問題点があり、解決できることを提唱するBrendan Eich氏は、ブロックチェーン技術を使って広告システムを効率化することを提案し、「ICO」を立ち上げています。
結果
自社独自の通貨Basic Attention Token(BAT)を10億枚発行
30秒以内に3500万ドル(15万6250ETH)を調達
「ICO」による資金調達のメリットデメリット
発行する事業者側のメリット
- 集めた資金に対して配当を行う必要がない
- 出資とは違って経営権を明け渡す必要がない
- 事業に対して応援するという付加価値で投資してくれる方もいる
- 証券会社などの仲介者不要でできる
- 世界中の投資家から募集できる
発行する事業者側のデメリット
- 「いくら集まるか?」全く予想ができない
- 法的根拠がないため、自主的に情報開示をしていかないと投資家からの反発を買う
- 「IPO」ほどではないにしろ、多少の初期コストは発生する
投資家側のメリット
- 企業が成長すれば大きなリターンが期待できる
- 発行されたトークンを通貨として使える
- トークン自体を取引所で売買することができる
投資家側のデメリット
- ICOをする事業者をチェック・監査する機能がない
- 法的根拠が弱い
- 情報が少ない
- 株式と違って、大量に保有しても経営に参画できるわけではない
「ICO」は有効な資金調達方法になりえるのか?
中小企業が日本の証券取引所に上場するためには、十分な利益や企業規模が必要になります。
しかし、それができないスタートアップの企業の場合には
- ベンチャーキャピタルからの出資
- エンジェルからの出資
という選択肢になります。
どちらも「出資」ですから、仮に目論見通りに会社が成長して、上場したとしても、経営権の大部分は創業者ではなく、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家が持ったままになります。
これは資金調達をする企業の経営者にとっては、頭の痛いところです。
そこで近年登場してきたのが
- クラウドファンディングによる資金調達
です。
クラウドファンディングであれば、中小企業であっても、投資家に取って魅力的なリターンを用意することができれば、小規模の個人投資家から直接的に資金調達をすることができるのです。
ただし、クラウドファンディングによる資金調達の弱点は・・・
- 投資家の共感を得るプロジェクトでないと高額な資金調達は望めない
- 十分なリターンがあるプロジェクトでないと高額な資金調達は望めない
という点です。
- すでに情報発信力がある芸能人が立ち上げたクラウドファンディング
- 利回り5.0%以上のリターンがあるクラウドファンディング
でないと、なかなか資金調達が軌道に乗らないという問題があります。
- ICOによる資金調達
の場合は
という思惑も投資家には持っています。
「クラウドファンディングよりも儲かる可能性が高い資金調達方法」が「ICOによる資金調達」と考える投資家も多いのです。
しかも、投資を集める対象は、日本国内ではなく、全世界の投資家が対象です。
中小企業であっても、やりようによっては
少額の初期コストで高額な資金調達が可能になる
と言っても過言ではありません。
しかも、
- 出資とは違って、経営権を売り渡さないで済む
- 出資とは違って、出資者への配当は義務ではない
- 融資とはちがって、返済の義務はない
のですから、資金調達を検討する事業者にとっては、いいことづくめと言っても良いでしょう。
魅力的な事業計画があり、まとまった金額の資金調達を検討しているのであれば「ICO」は検討すべき資金調達方法と言えます。
さらに今なら、宣伝効果も桁違い!
まだまだ、日本でのICO案件は、2018年時点で10個程度しかありません。
できるだけ早い段階でICOプロジェクトを立ち上げれば、いろいろなニュースに取り上げられることが必見です。
前述した「サンタルヌー」などは、飲食店でありながら、様々なメディアに取り上げられ、仮想通貨の聖地として崇められるぐらいです。
ICOによる資金調達の注意点
今後は、法的規制も強くなっていくのは間違えない!
ICOを行う企業は、上場企業の目論見書に相当する「ホワイトペーパー」を公開して、投資を募るのが慣例となっています。
しかし、ホワイトペーパーにも統一した書式やルールは存在しません。
詐欺案件も横行しているのです。
- 実現不可能な報酬を約束する
- 実現不可能なプロジェクトで高額なトークンを売却する
- 集めた資金を別の事業に使ってしまう
- 資金を集めてすぐに計画倒産する
・・・
結果として、中国や韓国ではICOを禁止しました。
アメリカでは、募集・売り出しを行うにはアメリカ証券取引委員会(SEC)への登録が必要としています。
規制の枠組みがなく、違法行為が増加すれば、誰も投資家が手を出してこない業界になってしまいます。
そうならないためにも、世界的にICOへの規制強化が進んでいくことは間違えないと考えられています。
また、詐欺案件でなくても
- 予定されていたサービスがはじまらない
- 予定されていた商品の販売が開始されない
- 取引所での売買自体ができない
というICO案件も急増してしまっているのです。
このような観点からも、証券取引所までとは行かないまでも、十分な投資家保護の仕組みが急務になっています。
これはICOでまじめに資金調達しようとする方にとっても、歓迎すべきものです。
ICOによる資金調達の仕方
必要なことは
- ホワイトペーパーを作る
- 独自トークンを作る・発行する
- 投資家を募集する
の3つです。
基本的に、ICOは仲介者に頼らなくても、自力で立ち上げられることが大きなメリットです。
ただし、大規模な資金調達が必要な場合は
- ICOコンサルティングを行っている会社
- ICO支援サポート「COMSA」
などに依頼することをおすすめします。
- ホワイトペーパーを作る
- 独自トークンを作る(アプリで簡単に作成可能)
まではできるのですが
- 投資家に告知する
というのが、大企業やメディアの力を借りないと、なかなかできるものではないのです。
誰も知らないトークンを発行しても、当然投資は集まりません。
ICO支援サポート「COMSA」などを利用すれば、それなりに初期コストはかかってしまいますが、法的根拠がある取引所がICOをフォローしてくれて、「Zaif」での売買もできるようになるので、投資家にとっても、メリットが大きいのです。
まとめ
「ICO」とは
- 企業が独自のトークンと呼ばれる仮想通貨を発行して、投資家に売却し、資金調達を行う方法のこと
を言います。
「ICO」には
発行する事業者側のメリット
- 集めた資金に対して配当を行う必要がない
- 出資とは違って経営権を明け渡す必要がない
- 事業に対して応援するという付加価値で投資してくれる方もいる
- 証券会社などの仲介者不要でできる
- 世界中の投資家から募集できる
発行する事業者側のデメリット
- 「いくら集まるか?」全く予想ができない
- 法的根拠がないため、自主的に情報開示をしていかないと投資家からの反発を買う
- 「IPO」ほどではないにしろ、多少の初期コストは発生する
というメリットデメリットがあり、十分に既存の資金調達に取って代わるポテンシャルを備えています。
「ICOって何?」
「ほかの資金調達方法と何が違うの?」