エンジェル税制(ベンチャー企業投資促進税制)とは、日本でもエンジェルによるベンチャー企業への投資を活性化するために作られた制度のことです。今回はエンジェル税制(ベンチャー企業投資促進税制)について解説します。
エンジェル税制(ベンチャー企業投資促進税制)とは
一定の要件を満たした企業に対して、個人が投資を行った場合、投資時点と売却時点で税制上の優遇措置を受けられる制度のことです。
眠っている個人資産を将来有望なベンチャー企業の資金へ循環させることによる経済活性化を狙いとしてつくられました。
減税対象となる企業によって優遇措置の内容も変わってきます。
エンジェル税制(ベンチャー企業投資促進税制)のメリット
中小企業
- エンジェル投資家から資金を集めやすくなる
個人投資家
- 投資時点で出資にも関わらずに損金計上が可能
- 売却時点で利益が出ていても全額控除が可能
- 売却時に損失が発生した場合も3年間の繰り越し控除が受けられる
エンジェル税制(ベンチャー企業投資促進税制)の優遇措置
優遇措置A
優遇内容
( 対象企業への投資額 - 2,000円 ) を総所得金額から控除
※控除対象となる投資額の上限は総所得金額の40%と1000万円のいずれか低い方
対象企業
- 創業(設立)3年未満の中小企業
- 下記のいずれかの要件を満たすこと
設立経過年数(事業年度) | イ要件(技術開発型) | ロ要件(ニュービジネス型) |
---|---|---|
1年未満 | 研究者が2人以上かつ全従業員の10%以上 | 開発者が2人以上かつ全従業員の10%以上 |
1年以上~2年未満 | 試験研究費等(宣伝費、マーケティング費用を含む) が売上高の3%超で直前期までの営業キャッシュ・フローが赤字 | 直前期までの営業キャッシュ・フローが赤字 |
2年以上~3年未満 | 試験研究費等(宣伝費、マーケティング費用を含む) が売上高の3%超で直前期までの営業キャッシュ・フローが赤字 | 売上高成長率が25%超で直前期までの営業キャッシュ・フローが赤字 |
- 外部(特定の株主グループ以外)からの投資を1/6以上取り入れている会社であること
- 大規模法人(資本金1億円以上等)及び当該大規模法人と特殊の関係(子会社等)にある法人(以下「大規模法人グループ」という)の所有に属さないこと
- 未登録・未上場の株式会社で、風俗営業等に該当する事業を行う会社でないこと
優遇措置B
優遇内容
対象企業への投資額全額を、その年の他の株式譲渡益から控除
対象企業
- 創業(設立)10年未満の中小企業
- 下記のいずれかの要件を満たすこと
設立経過年数(事業年度) | イ要件(技術開発型) | ロ要件(ニュービジネス型) |
---|---|---|
1年未満 | 研究者が2人以上かつ全従業員の10%以上 | 開発者が2人以上かつ全従業員の10%以上 |
1年以上~2年未満 | 試験研究費等(宣伝費、マーケティング費用を含む) が売上高の3%超 | 開発者が2人以上かつ全従業員の10%以上 |
2年以上~5年未満 | 試験研究費等(宣伝費、マーケティング費用を含む) が売上高の3%超 | 売上高成長率が25%超 |
5年以上~10年未満 | 試験研究費等(宣伝費、マーケティング費用を含む) が売上高の5%超 | 試験研究費等(宣伝費、マーケティング費用を含む) が売上高の5%超 |
- 外部(特定の株主グループ以外)からの投資を1/6以上取り入れている会社であること
- 大規模法人(資本金1億円以上等)及び当該大規模法人と特殊の関係(子会社等)にある法人(以下「大規模法人グループ」という)の所有に属さないこと
- 未登録・未上場の株式会社で、風俗営業等に該当する事業を行う会社でないこと
エンジェル税制(ベンチャー企業投資促進税制)の具体例
投資家A
総所得:1,000万円
中小企業への投資額:500万円 → 50万円で売却
他の株式の譲渡益:100万円
優遇措置A
控除額 = 1,000万円 × 40% - 2000円 = 3,998,000円
優遇措置B
控除額 = 他の株式の譲渡益 100万円
優遇措置Aと優遇措置Bを比較して有利な方を採用できます。このケースでは「優遇措置A」を採用した方が優遇幅が大きいようになります。
投資家B
総所得:500万円
中小企業への投資額:900万円 → 200万円で売却
他の株式の譲渡益:400万円
優遇措置A
控除額 = 500万円 × 40% - 2000円 = 1,998,000円
優遇措置B
控除額 = 他の株式の譲渡益 400万円
優遇措置Aと優遇措置Bを比較して有利な方を採用できます。このケースでは「優遇措置B」を採用した方が優遇幅が大きいようになります。
エンジェル税制(ベンチャー企業投資促進税制)の利用手順
- 投資を受けた企業が確認書の発行申請
- エンジェル税制の対象かどうか?を審査
- エンジェル税制の対象確認書が経済産業省大臣から交付される
- 投資を受けた企業が確定申告時に必要になる書類を個人投資家に交付
- 個人投資家は企業から交付された書類で確定申告
まとめ
エンジェル税制(ベンチャー企業投資促進税制)は個人投資家にとっては、投資時点で出資にも関わらずに損金参入ができるメリットと売却時点で譲渡益の全額が控除される非常に大きなメリットがあります。
エンジェル税制が定着すれば、中小企業の資金調達方法として「エンジェル投資家」というものがより大きなウェイトを占めてくるはずです。
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