取引先の動産・債権譲渡登記を調べる方法|誰でも取れるのは概要記録事項証明書まで。1通300円、ネットなら1件140円

誰でも請求できる証明書と当事者・利害関係人だけが請求できる証明書を2枚のカードで並べたアイキャッチ

これから売掛債権を買い取る、あるいは在庫を担保に取る。ABL(動産・債権担保融資)でも、そのとき最初にやることが、同じ資産に先に担保が付いていないかの確認です。動産・債権譲渡登記には、誰でも請求できる証明書と、当事者しか請求できない証明書があります。どこまで調べられて、どこから先は相手に見せてもらうしかないのか。法務省の公表資料で手順と費用を整理します。

このページの要点

  1. まず取るのは概要記録事項証明書。誰でも請求でき、全国の商業登記所・不動産登記所・法務局証明サービスセンターで交付を受けられる。
  2. 記録が無ければ「ないこと証明」が交付され、先行する登記が存在しないことを確認できる。
  3. 記録があった場合は、相手方に登記事項証明書の提示を求める。自分では取れない。
  4. 登記事項証明書の請求権者が限られているのは、債務者のプライバシーと譲渡人の営業秘密・事業戦略に関わる情報が載るため。
  5. 概要記録事項証明書の内容は登記情報提供サービスでインターネット確認できる。1件140円(令和8年4月1日から)。
  6. 窓口で取る場合の概要記録事項証明書は1通300円。オンライン請求・窓口交付なら250円。
  7. 登記は債権や動産が実在することを証明しない。調べて分かるのは、登記があるかどうかまで。

調べる前に、何が分かるのかを確認する

動産・債権譲渡登記の公示は3種類の証明書で行われていて、請求できる人が分かれています。誰でも請求できるのは登記事項概要証明書と概要記録事項証明書の2つで、譲渡された動産や債権を特定する事項は、どちらにも載りません。

特定する事項が載るのは登記事項証明書だけで、こちらは当事者や利害関係人等に限られます。つまり、外部から調べて分かるのは「この会社を譲渡人とする登記があるかどうか」までで、「どの売掛金が担保に入っているか」までは自力では分かりません。

この前提を押さえたうえで、手順に入ります。

手順は3ステップ

先行する登記の有無を調べる手順

ステップ1
概要記録事項証明書を請求する法務省は、概要記録事項証明書は誰でも請求することができる(特例法13条1項)ので、まず当該債権を譲渡しようとする者に係る概要記録事項証明書の交付を請求する、と案内しています。

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ステップ2a
記録が全く無い場合その旨の証明書、いわゆる「ないこと証明」の交付を受けることにより、先行する登記が存在しないことを確認できます。

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ステップ2b
記録が存在する場合譲り受けようとする債権が先行する登記の対象になっていないかどうかを確認するため、譲渡しようとする者に対し登記事項証明書の提示を求め、その登記事項の内容を確認することなどが考えられる、とされています。

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ステップ3
先後を確かめる登記事項証明書には登記の年月日に加えて登記の時刻も記録されます。先に登記した側が優先するため、日付と時刻で順位を判断します。

出典: 法務省「債権譲渡登記制度について 第5 Q&A」Q24(2026年10月20日確認)。動産譲渡登記についても、概要記録事項証明書は誰でも請求できる点は同じです。

ステップ2bが肝心なところです。登記があること自体は自分で確認できても、中身を見るには相手の協力が要ります。取引の条件として証明書の提示を求めるかどうかは、契約交渉の問題になります。登記の先後で優劣がどう決まるかは動産譲渡登記は誰に勝てるのかで扱っています。

なぜ登記事項証明書は誰でも取れないのか

法務省は理由をはっきり書いています。登記事項証明書の交付の請求をすることができる者は、特例法11条2項各号に掲げられた債権譲渡の当事者や利害関係人等に限られていて、これは登記事項証明書には債務者のプライバシーに関する情報、あるいは譲渡人の営業秘密や事業戦略に関わる情報が記載されているためだ、という説明です。

動産譲渡登記についても同じ構造で、法務省は、企業がどのような資産を保有しているかなどの営業秘密・事業戦略に関する情報の保護という観点から、情報内容によって異なる開示方法が設けられていると説明しています。

調べる側から見れば制約ですが、自社が担保に出す側になったときは、在庫の中身や売掛先が外部から見えないという保護になります。

誰でも取れる2つの証明書は、何が違うのか

登記事項概要証明書と概要記録事項証明書は、どちらも誰でも請求でき、譲渡に係る債権を特定するために必要な事項は記載されない、という共通点があります。違いは4つあります。

登記事項概要証明書と概要記録事項証明書の比べ方(債権譲渡登記の場合)
比較軸 登記事項概要証明書 概要記録事項証明書
請求先 債権譲渡登記所(東京法務局民事行政部債権登録課)の1か所 全国の法務局。譲渡人の本店所在地を管轄する登記所でなくても、不動産登記または商業・法人登記を取り扱っている登記所であれば請求できる
請求できる人 誰でも可 誰でも可
記載内容 登記原因、その日付、登記の存続期間、債権の総額が記載される これらの事項は記載されない
譲渡人の商号・本店 商業・法人登記で変更されても記載内容は変更されない 商業・法人登記簿の記録とリンクしており、連動して変更される
交付の時期 登記が完了した後、直ちに交付を受けられる 登記所間で通知され、登記事項概要ファイルへの記録がされた後でないと交付を受けられない
手数料(書面請求) 1通300円 1通300円

出典: 法務省「債権譲渡登記制度について 第5 Q&A」Q28、法務局「主な手数料一覧【令和8年4月1日〜】」(いずれも2026年10月20日確認)。

調査の実務では、最寄りの登記所で取れる概要記録事項証明書から入るのが現実的です。ただし登記直後は交付されないという弱点があるので、直前に入った登記を見落とす可能性が残ります。登記原因や存続期間まで知りたい場合は、登記事項概要証明書を取ることになります。

インターネットで調べる方法もある

窓口へ行かずに確認する方法も用意されています。法務省は、概要記録事項証明書の内容については、指定法人(一般財団法人民事法務協会)が運営する登記情報提供サービスにより、インターネットを使用して確認することができるとしています。

ただし範囲は限られます。同じ説明の中で、債権譲渡登記の登記事項証明書および登記事項概要証明書の内容については、同サービスを利用して確認することはできない、とされています。

料金は法務省が公表しています。令和8年4月1日からの利用料金で、登記事項概要ファイルの情報(動産譲渡、債権譲渡)は1件140円です。内訳は登記手数料130円と指定法人手数料10円とされています。

法務省の登記情報提供サービスの利用料金等一覧の公式画面。令和8年4月1日からの利用料金として、登記事項概要ファイルの情報(動産譲渡、債権譲渡)が1件140円(登記手数料130円+指定法人手数料10円)と記載されている
法務省「登記情報提供サービスの利用料金等一覧」の公式画面。登録費用は個人300円、法人740円、国または地方公共団体560円です(2026年10月20日確認)。

利用には登録が必要で、決済方法も区分ごとに決まっています。個人はクレジットカードによる決済、法人は銀行預金口座からの引き落とし、国または地方公共団体は協会の指定口座への銀行振込です。

情報提供サービスで得られるのは証明書ではなく情報です。取引の相手方に示す書面として使うなら、登記所で証明書の交付を受ける必要があります。証明書の種類と請求の仕方は動産譲渡登記の費用と手続、債権譲渡登記の費用と手続にまとめています。

「ないこと証明」を大量に取るとき

取引先が多い会社では、1社ずつ請求していては手間がかかります。法務省は、登記事項概要証明書のうち、特定の者を譲渡人とする登記ファイルの記録がない旨の証明書、いわゆる「ないこと証明」の交付を大量に請求する場合には、通常の請求方法のほか、2つの方法によって請求できると案内しています。

大量請求の2つの方法

方法1

証明書作成用の別紙を申請書に添付して提出する方法。

方法2

データフォーマットに譲渡人等の情報を記録して提出する方法。

共通の注意

通常の「登記事項概要証明交付申請書」を利用して「ないこと証明」の交付請求をすることも可能とされています。大量請求の方法は選択肢であって、必須ではありません。

出典: 法務省「動産譲渡登記制度について 第3 証明書交付請求の手続」、同「債権譲渡登記制度について 第3 証明書交付請求の手続」(いずれも2026年10月20日確認)。

ファクタリング会社や金融機関のように、継続的に多数の相手を調べる立場ならこの方法が効きます。年に数回の調査であれば、通常の請求で足ります。

調べるのにいくらかかるか

調査に使う証明書・情報の手数料(令和8年4月1日から)
手段 対象 書面請求 オンライン請求
概要記録事項証明書 動産譲渡登記・債権譲渡登記とも 1通300円 送付270円/窓口交付250円
登記事項概要証明書(動産) 動産譲渡登記 1通500円 送付450円/交付400円
登記事項概要証明書(債権) 債権譲渡登記 1通300円 送付300円/交付250円
登記情報提供サービス 登記事項概要ファイルの情報(動産・債権) 1件140円(登記手数料130円+指定法人手数料10円)
登記事項証明書(動産) 当事者・利害関係人等のみ 1通800円 送付750円/交付700円
登記事項証明書(債権) 当事者・債務者その他の利害関係人のみ 1通500円 送付500円/交付450円

出典: 法務局「主な手数料一覧【令和8年4月1日〜】」、法務省「登記情報提供サービスの利用料金等一覧」(いずれも2026年10月20日確認)。枚数の加算にも注意が要ります。概要記録事項証明書は、1通が50枚を超えると超過分について50枚までごとに100円が足されます。

法務局の主な手数料一覧【令和8年4月1日〜】の公式資料。動産譲渡登記と債権譲渡登記の欄に、登記事項証明書・登記事項概要証明書・概要記録事項証明書それぞれの書面請求とオンライン請求の手数料額が並んでいる
法務局「主な手数料一覧【令和8年4月1日〜】」の公式資料。動産譲渡登記と債権譲渡登記が別の区分として並び、登記情報提供サービスの料金も同じ表に載っています(2026年10月20日確認)。

調べても分からないこと

調査の限界も押さえておく必要があります。法務省は、債権譲渡登記の申請に際しては、譲渡された債権自体の存在を証する書面やその譲渡があったことを証する書面の添付は必要とされていないとしたうえで、債権譲渡登記は譲渡された債権が真実に存在することや真実に譲渡がされたことまでを公示・証明するものではない、と明記しています。

動産についても同じで、動産譲渡登記は過去にあった動産の譲渡の事実を公示することを目的とするものであって、その動産の存在や所有権の帰属を公示するものではない、とされています。

登記があってもその債権や在庫が実在するとは限らず、登記が無くても民法の方法で対抗要件が備わっていることがあります。債権なら確定日付のある証書による通知や承諾、動産なら引渡しです。登記の調査は必要条件であって、十分条件ではありません。

出典: 法務省「債権譲渡登記 第5 Q&A」Q6、同「動産譲渡登記制度とは?」(いずれも2026年10月20日確認)。

法務省は、登記の真正を担保するために譲渡人および譲受人が共同して申請しなければならないとしつつ、仮に通謀して虚偽の登記を申請し、実際に生じていない債権や既に消滅した債権について登記がされたとしても、それによって債権の存在や譲渡の真正が公的に証明されるわけではない、とも述べています。

調べる相手を間違えないために

証明書は譲渡人ごとに作成されます。法務省は、不動産登記の証明書が土地・建物ごとに作成されるのと異なり、債権譲渡登記の証明書は譲渡された債権ごとに作成されるものではなく、譲渡人ごとに作成されると説明しています。証明書には、交付申請書で指定した検索条件に応じて譲渡された債権が記載されます。

そのため、調べるときに必要なのは資産の情報ではなく、譲渡人の商号と本店です。取引先の正式な商号を登記簿のとおりに把握しておかないと、検索条件が合いません。

商号変更や本店移転があった場合の扱いも押さえておきます。概要記録事項証明書は商業・法人登記簿の記録とリンクしているため、譲渡人の商号変更や本店移転の登記がされると連動して記載内容が変わります。これに対して登記事項概要証明書は連動しないため、登記した時点の商号・本店のまま残ります。

調査の直前に相手の商業登記を確認しておくと、取り違えを防げます。

自分が債務者側になったとき

調べる側ではなく、売掛先として登記事項証明書の交付・通知を受ける立場になることもあります。法務省はこの場合の対応も示しています。

通知を受けた債務者の判断

どこを見るか譲渡された債権の内容は、登記事項証明書の2枚目に「債権個別事項」として記載されています。原債権者、債務者等の記載から、自分が債務者に当たるかどうかを確認します。
債務者名が無いとき債務者が特定されていない債権の場合、具体的な債務者名は記載されません。債権の種類や債権発生原因の記載から判断します。
心当たりがないとき登記事項証明書に自分が債務者であると記載されているからといって、支払義務があるとは限らないとされています。債権が存在しない場合や、弁済済みで消滅している場合もあり得ます。
通知が重なったとき双方が登記事項証明書を交付してされた通知なら、証明書に記載された登記の日時で先後を確認し、先にされた登記の譲受人を債権者として取り扱うことになります。

出典: 法務省「債権譲渡登記制度について 第5 Q&A」Q21・Q22・Q23(2026年10月20日確認)。法務省は、具体的な判断に際しては法律の専門的知識が必要になる場合があるとして、法律専門家への相談も検討するよう案内しています。

よくある質問

取引先に知られずに調べられますか。
概要記録事項証明書は誰でも請求でき、請求したことが相手に通知される仕組みにはなっていません。ただし登記事項証明書は自分では取れないので、中身を確認するには相手に提示を求めることになります。

最寄りの法務局で取れますか。
概要記録事項証明書なら取れます。譲渡人の本店所在地を管轄する登記所でなくても、不動産登記または商業・法人登記を取り扱っている登記所であれば請求できるとされています。

登記が無ければ担保に入っていないと言えますか。
言えません。債権なら民法467条の通知や承諾、動産なら引渡しによっても対抗要件は備わります。登記が無いことは、登記による対抗要件が無いことを意味するだけです。

登記直後の情報も分かりますか。
概要記録事項証明書は、登記所間の通知と登記事項概要ファイルへの記録が終わってから交付されます。直前に入った登記は反映が遅れる可能性があります。

登記情報提供サービスで証明書は取れますか。
取れません。提供されるのは情報で、証明書ではありません。また、登記事項証明書と登記事項概要証明書の内容は同サービスでは確認できません。

出典

  1. 法務省「債権譲渡登記制度について 第5 Q&A」(Q6・Q21・Q22・Q23・Q24・Q25・Q27・Q28、2026年10月20日確認)
  2. 法務省「動産譲渡登記制度について 第3 証明書交付請求の手続」(請求権者・請求先・大量交付請求、2026年10月20日確認)
  3. 法務省「債権譲渡登記制度について 第3 証明書交付請求の手続」(請求権者・請求先、2026年10月20日確認)
  4. 法務省「動産譲渡登記制度について 第1 動産譲渡登記制度とは?」(登記の効力、2026年10月20日確認)
  5. 法務省「登記情報提供サービスの利用料金等一覧」(令和8年4月1日からの利用料金、2026年10月20日確認)
  6. 法務局「主な手数料一覧【令和8年4月1日〜】」(証明書手数料、2026年10月20日確認)