動産譲渡登記の費用と手続|登録免許税は1件7,500円、延長3,000円・抹消1,000円。提出先は東京法務局の1か所だけ

動産譲渡登記7,500円、延長登記3,000円、抹消登記1,000円を3つの枠で並べたアイキャッチ

在庫や機械を担保に入れて借りるとき、担保に取ったことを第三者へ主張できる状態にする手段が動産譲渡登記です。費用は税金と手数料に分かれていて、税金のほうは登記の種類ごとに額が決まっています。手続きのほうは、提出先が全国で1か所しかない、誤りがあっても直せない、登記のあとで内容を更正できないという、不動産登記とはかなり違う作法で動きます。法務省が公表している条文・手数料表・運用の説明から、かかる費用と、申請前に押さえておく制約を整理します。

このページの要点

  1. 登録免許税は、譲渡の登記が1件7,500円、存続期間を延ばす延長登記が1件3,000円、抹消登記が1件1,000円。
  2. 納めるのは収入印紙か収納機関等発行の領収証書。登記印紙や県の収入証紙では納付できない。
  3. 提出先は東京法務局民事行政部動産登録課(東京都中野区野方一丁目34番1号)の1か所だけ。東京法務局本局とは場所が違う。
  4. 窓口に持ち込めばその日に受付。郵送だと受け取った日の次の執務日の受付になり、登記の日付が後ろへずれる。
  5. 処理完了までの目安は、標準的な内容なら窓口の受付時からおおむね30分〜1時間と公表されている。
  6. 1件の申請に載せられる動産は1,000個まで。存続期間は原則10年で、超えるには特別の事由を証する書面が要る。
  7. この登記には補正の制度がない。不備があればその場で却下され、登記後の更正もできない。

動産譲渡登記は「引渡しがあったとみなす」ための登記

在庫や売掛金を担保にした融資はABL(動産・債権担保融資)と呼ばれ、その動産側の対抗要件を担うのがこの登記です。動産の譲渡を第三者へ主張するには、民法178条の引渡しが要ります。ところが担保として差し入れる場合、在庫も機械も借り手の手元に置いたまま使い続けるのが普通なので、現実には占有改定という形の引渡しにならざるを得ません。これは外から見て起きたかどうかが分かりません。

そこを埋めるのが動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律(平成10年法律第104号。以下、特例法)3条1項です。法人が動産を譲渡し、その譲渡について動産譲渡登記ファイルに登記がされたときは、その動産について民法178条の引渡しがあったものとみなす、と定めています。登記そのものが引渡しの代わりになるという作りです。

法務省のパンフレットは、この制度が法人の在庫商品・機械設備・家畜などを使った資金調達を円滑にする目的で平成17年10月から運用が始まったものだと説明しています。あわせて、動産譲渡登記は過去にあった動産の譲渡の事実を公示することを目的とするものであって、当該動産の存在や所有権の帰属を公示するものではない、とも明記しています。登記があるからといって在庫が実在するとは限らない、という意味です。

対象になるのは法人がする動産の譲渡に限られます。譲渡の目的が担保目的か真正譲渡かは問われません。倉荷証券・船荷証券・複合運送証券が作成されている動産は、特例法3条1項のかっこ書きで対象から外れています。

登録免許税は3つ。譲渡の登記が7,500円、延長が3,000円、抹消が1,000円

費用のうち税金にあたるのが登録免許税です。法務省は登記の種類ごとの額を表で公表しています。

動産譲渡登記にかかる登録免許税(法務省公表)
登記の種類 何をする登記か 登録免許税額
動産譲渡登記 動産の譲渡について対抗要件を備える登記 1件につき7,500円
延長登記 動産譲渡登記の存続期間を延ばす登記 1件につき3,000円
抹消登記/一部抹消登記 動産譲渡登記を抹消する登記 1件につき1,000円

出典: 法務省「第2 登記申請の手続」、法務省「(動産譲渡登記)添付書面・登録免許税」(いずれも2026年10月19日確認)。7,500円と3,000円は租税特別措置法により軽減された額と注記されています。

注意したいのは「1件につき」の数え方です。1件の申請に1,000個までの動産を載せられるので、担保に入れる動産が何個あっても、申請が1件なら税額は7,500円で収まります。逆に、保管場所が複数あって申請を分けるなら、分けた数だけ7,500円がかかります。

延長登記が3,000円で済むのは、同じ担保を維持したまま期間だけ伸ばす場面を想定しているからです。ただし法務省は、延長登記の存続期間は当初の登記の日から起算されると注記しています。延長した日からあらためて10年を数え直すという扱いではありません。

法務省の動産譲渡登記「第2 登記申請の手続」の公式画面。登記の種類と登録免許税の表に動産譲渡登記1件につき7,500円、延長登記3,000円、抹消登記1,000円と示され、提出先として東京法務局民事行政部動産登録課が書かれている
法務省「動産譲渡登記制度について 第2 登記申請の手続」の公式画面。登録免許税の表、3つの申請方式の表、提出先が同じページにまとまっています(2026年10月19日確認)。

納めるのは収入印紙か領収証書。登記印紙や収入証紙は使えない

登録免許税の納め方も法務省が明示しています。収入印紙または収納機関等発行の領収証書で納める必要がある、という書き方です。オンライン申請の場合は歳入金電子納付システムを利用して納付できるとされています。

法務省が公開している申請前のチェックリストには、登記印紙や県収入証紙等により納付することはできないという注意がはっきり書かれています。収入印紙と登記印紙は名前が似ていますが別のもので、取り違えると納付が成立しません。オンライン方式で申請した場合の電子納付は、金融機関のインターネットバンキングやペイジーに対応したATM等から行うと案内されています。

電子納付のタイミングにも順番があります。オンライン方式では、送信した申請に係る審査が完了したあとに納付情報を確認して納付する流れで、先に払っておく形ではありません。

提出先は東京法務局の1か所だけ

不動産登記や商業登記と違って、動産譲渡登記の申請先は全国に1か所しかありません。郵便番号165-8780、東京都中野区野方一丁目34番1号の東京法務局民事行政部動産登録課で、東京法務局中野庁舎の3階です。

法務省はこの点について、不動産登記および商業・法人登記の登記所がある東京法務局本局(東京都千代田区九段南一丁目1番15号、九段第2合同庁舎)とは場所が異なるので注意するよう、ページ上で呼びかけています。取引先の所在地や担保物の保管場所がどこであっても、提出先は変わりません。地方の会社が担保を設定する場合、窓口に持ち込むか郵送するかという選択がそのまま日程に効いてきます。

窓口の受付時間は午前8時30分から午後5時15分までで、土曜日・日曜日・国民の祝日等の休日と、12月29日から1月3日までの年末年始期間は受付を行っていません。

窓口か郵送かで、登記の日付が1日ずれる

同じ書類を出しても、持参と郵送では受付の日が変わります。法務省の説明では、窓口申請の場合は登記申請がされたその日に受付をしますが、送付申請の場合は登記所が登記申請書等を受け取った日の後の最初の執務日に、その日に受付をすべき他の登記申請書に先立って受付をするとされています。

法務省はこれを具体例で示しています。金曜日に登記申請書等を受け取った場合、翌執務日である月曜日の午前8時30分に受付になる、という例です。登記申請書に書く日付も、送付による申請では発送する日を書くことになりますが、登記年月日は登記所が登記申請書を受け取った日の翌執務日になると注記されています。

対抗要件の優劣は登記の先後で決まりますから、この1日のずれは単なる事務の問題では済みません。融資実行日を動かせない案件や、他の債権者と競合しそうな案件では、窓口に持ち込むほうが読みやすくなります。

郵送する場合の方法も指定されています。書留郵便か、民間事業者による信書の送達に関する法律に規定する一般信書便事業者・特定信書便事業者による信書便の役務であって、当該事業者において引受け及び配達の記録を行うものによる、と案内されています。普通郵便で送る前提にはなっていません。

処理は受付の当日。目安は30分から1時間と公表されている

受け付けられた登記申請は、原則として受付をしたその日に処理を完了すると公表されています。所要時間の目安についても、事案や申請日によるとしたうえで、標準的な申請内容であれば1件あたり窓口における受付時からおおむね30分から1時間程度と明示されています。

ただし混む日があることも同じページに書かれています。月末、とくに3月・6月・9月・12月の月末は登記申請が集中して窓口が大変混雑するため、通常日に比べて処理完了まで長時間待つ場合があるとして、可能な限り月末を避けた申請を勧めています。決算期末に合わせて担保設定をまとめる実務とは、ちょうどぶつかる注意書きです。

証明書の受け取りにも順番があります。動産譲渡登記所で発行する登記事項証明書と登記事項概要証明書は、登記申請の処理完了後すぐに発行できるとされています。これに対して商業登記所で発行する概要記録事項証明書は、動産譲渡登記所での処理完了後、譲渡人の本店を管轄する商業登記所で譲渡人の登記事項概要ファイルに係る処理が終わるまで発行されません。

登記が終わると、譲受人あてに登記番号等を記載した登記完了通知書が送付されます。抹消登記の場合は譲渡人あてです。代理人によって申請がされた場合は代理人あてに送られ、書面方式・事前提供方式・オンライン方式のいずれで申請しても、通知書は書面で届きます。

申請方式は3通り。受付の時点と手間が変わる

提出のしかたは書面方式・事前提供方式・オンライン方式の3つです。どれを選んでも登録免許税の額は同じですが、何をオンラインで出すか、いつ受付になるかが変わります。

3つの申請方式の比較(法務省の説明にもとづく)
比較軸 書面方式 事前提供方式 オンライン方式
申請データの出し方 CD-RまたはCD-RWに記録して提出 オンラインで事前提供 オンラインで提出
登記申請書・添付書面 窓口に持参または郵送等 窓口に持参または郵送等 オンラインで提出
受付になる時点 窓口は提出した時/郵送は到達の翌執務日8時30分 登記申請書等を窓口へ出した時/郵送は到達の翌執務日8時30分 登記所で受け付けられた時(システムによる自動受付)
電子証明書 不要 不要 必要(譲渡人・譲受人・代理人)
形式チェックの事前確認 提出後に判明する 送信の約10分後に結果が返る 申請人プログラムで事前に実施
存続期間が10年超の申請 できる できる できない

出典: 法務省「第2 登記申請の手続」、法務省民事局のパンフレット「動産譲渡登記制度とは」(いずれも2026年10月19日確認)。

事前提供方式は、書面方式でCD-R等に入れていた申請データだけを先にオンラインで提出する方式です。法務省はこの方式の利点として、申請データの形式的な不備により登記申請が受理されないというトラブルを避けられること、電子証明書やCD-Rが不要になること、申請受付後に登記手続の終了や登記番号をオンラインで確認できること、送信した申請データについて申請前に相談を受けられることの4点を挙げています。形式チェックの結果は申請データ送信の約10分後に返信されると案内されています。

一方で、オンライン方式が使えない場面も列挙されています。法定代理人により行う申請、判決により申請するとき、延長登記・抹消登記のうち譲渡人または譲受人の表示が動産譲渡登記ファイルに記録された表示と異なるとき(その変更を証する書面に代わるべき登記情報を送信できる場合を除く)、動産譲渡登記の申請で存続期間が10年を超えるとき、延長登記の申請で延長後の存続期間が10年を超えるときです。長期の担保を組む案件はオンラインでは完結しません。

なお、オンライン方式の場合を除き、延長登記および抹消登記の申請については申請データの提出は必要ないとされています。

添付書面は作成後3か月以内。会社法人等番号で省ける場合がある

書面方式で動産譲渡登記を申請するときの提出物は、登記申請書、代理申請なら代理権限証書、取下書、譲渡人の代表者の資格証明書、譲渡人の代表者の印鑑証明書、譲受人が法人なら代表者の資格証明書(自然人なら住所を証する書面)、存続期間が登記の日から10年を超えるならその存続期間を定めるべき特別の事由があることを証する書面、そして申請データを記録したCD-RまたはCD-RWです。

資格証明書と印鑑証明書は作成後3か月以内のものに限られます。譲受人の住所を証する書面はこの期限の対象外とされています。印鑑証明書は登記所が作成したものである必要があり、本人申請の場合は登記申請書に押した譲渡人の印影と印鑑証明書の印影が同一でなければなりません。

省略できる場合もあります。登記された法人が申請するときに商号・本店等または会社法人等番号を提供し、登記官が行政機関間の情報連携によりその法人の登記情報を取得できるときは、譲渡人の代表者の資格を証する登記事項証明書などの添付を省けると案内されています。ただし、申請時にその法人について別途商業・法人登記が申請されていて、その登記が完了していない場合などは、登記官が情報を取得できないため省略できません。会社の商号変更や本店移転と担保設定が近い時期に重なるときは、先に確かめておく必要があります。

原本の還付についても答えが出ています。添付書面の原本の還付請求はできず、他の登記申請書の添付書面を援用して添付を省略することもできません。ただし、同時に数個の動産譲渡登記申請をする場合に各申請書の添付書面に内容の同一のものがあるときは、一個の登記申請書に一通の原本を添付すれば足り、他の申請書には原本の写しに相違ない旨を記載した謄本を添付することになります。

書面方式で却下につながりやすい点(法務省のチェックリストから)

1
商号・本店の略記登記申請書に記載した譲渡人・譲受人の商号や本店は、添付書面である資格証明書等の記載と一致している必要があり、これらの事項の略記は認められていません。
2
証明書の期限切れ資格証明書・印鑑証明書の有効期限は3か月です。取り寄せてから申請までに日が空くと期限を越えます。
3
納付手段の取り違え登録免許税として収入印紙または収納機関等発行の領収証書が貼付されているかを確かめます。登記印紙や県収入証紙等では納付できません。
4
動産の個数超過動産個別事項ファイルに記録する動産の個数が1,000個以内になっているかを確かめます。
5
CD-Rの中身提出するCD-R等に全ての申請データが保存されているか、申請データのXMLファイルのみがフォルダーに格納されずに保存されているかを確かめます。DVDは使用できません。
6
委任状の抜け代理申請では、委任事項に「取下げの件」が記載されているか、登記原因年月日や委任状作成年月日の記載漏れがないかを確かめます。

出典: 法務省「動産譲渡登記申請チェックリスト」(パンフレット「動産譲渡登記制度とは」所収、2026年10月19日確認)。

1件に載せられる動産は1,000個まで

1件の申請で登記することができる動産の個数は1,000個までです。1枚のCD-R等、つまり一つの申請に記録できる個数という形で上限が決められています。

この上限は、個別の動産を1個ずつ特定して登記する場合に効いてきます。機械設備を製造番号で1台ずつ拾っていくような登記では、台数がそのまま個数になるためです。一方、倉庫内の在庫をまとめて担保に入れる場合は、後述する保管場所による特定を使うので、在庫の点数が何万点あっても記録上の個数は膨らみません。

個数が1,000個を超えるなら申請を分けることになり、そのぶん登録免許税も申請の数だけかかります。担保に取る資産の持ち方しだいで費用が変わるということです。

動産の特定は「特質」か「保管場所の所在地」のどちらかを選ぶ

申請データのうち必須の記録事項が「譲渡に係る動産を特定するために必要な事項」です。法務省は特定の方法として、動産の特質によって特定する方法と、動産の保管場所の所在地によって特定する方法の2つがあり、いずれかを選択できると説明しています。

2つの特定方法の使い分け

特質によって特定する

  • 記録するのは【種類】と【特質】。製造番号や個体識別番号で1個ずつ押さえる
  • 記録例は、種類「マシニングセンタ」・特質「製造番号:AB0001」
  • 牛を個別動産として登記する例では、特質に個体識別番号を記録する
  • 製造番号や製品番号等がないものは、管理番号で特定する例が示されている
  • 対象が入れ替わらない機械設備に向く

保管場所の所在地によって特定する

  • 記録するのは【種類】と【所在】。所在地は必ず都道府県名から記載する
  • 記録例は、種類「日用品雑貨、文具、玩具、食料品その他一切の在庫商品」・所在「東京都中野区野方一丁目34番1号」
  • 太陽光パネル・パワーコンディショナー等の太陽光発電設備一式、海産物の原材料・半製品・製品一切といった書き方の例もある
  • 日々内容が変動する集合動産では通常この方法になる
  • 原則としてその保管場所にある同種類の動産の全てが対象となり、搬入された時点で効力が及ぶ

出典: 法務省民事局「動産譲渡登記制度とは」5 動産の特定の方法(2026年10月19日確認)。

当事者が任意に記録することのできる「有益事項」もあり、これは【備考】として記録されます。保管場所の名称、動産の名称、型式、製造社名などを入れておく使い方です。所有者の異なる動産が混在している場合に「保管ケースに『◯◯株式会社』のラベルが貼付されているものに限る」と記録する例や、保管場所が区画等で仕切られていない場合に倉庫内の位置を距離で示す例が示されています。

搬出された在庫の扱いについては、法務省の質疑応答が答えています。動産譲渡登記の効力は原則として、その動産が記載事項により特定された範囲内にある限りにおいて及ぶのであって、通常の営業の範囲内で搬出された動産には及ばないものと考えられる、という整理です。売れた在庫まで担保が追いかけるわけではありません。

存続期間は原則10年。超えるには「特別の事由」を証する書面が要る

特例法7条3項は、動産譲渡登記の存続期間は10年を超えることができないとしたうえで、10年を超えて存続期間を定めるべき特別の事由がある場合はこの限りでないと定めています。

この「特別の事由」について、法務省は実務上、動産の譲渡担保契約が5年から10年までの範囲内で見直されるのが一般的であることなどを考慮した規定だと説明しています。そのうえで、譲渡担保契約に係る被担保債権の償還期間について10年を超える定めをする場合などが特別の事由にあたるとしています。

証明の仕方も具体的です。特別の事由があることを証する書面として譲渡担保契約書等の添付が必要で、譲渡担保契約書と金銭消費貸借契約書が別個に作成されていて、譲渡担保契約書に被担保債権の償還期間が明記されていない場合には、当該金銭消費貸借契約書の提出も必要になるとされています。

被担保債権の償還期間に関係なく、単に債権保全のため当事者間で法定の存続期間を超える合意をした場合は「特別の事由」に当たらないと明記されています。契約書へ長めの期間を書いておけば通る、という性質のものではありません。

出典: 法務省民事局「動産譲渡登記制度とは」Q12(2026年10月19日確認)。

この10年という上限は、2025年に成立した整備法で20年へ延長されます。施行日は政令で定められるため、本稿の時点ではまだ10年です(譲渡担保法で動産・債権担保はどう変わるか)。

存続期間が満了したあとの扱いには例外もあります。特例法7条5項は、動産譲渡登記がされた譲渡に係る動産について譲受人がさらに譲渡をし、その存続期間の満了前に民法178条の引渡しがされた場合には、その動産についての存続期間は無期限とみなすと定めています。

補正ができない。だから取下書を付けておく

動産譲渡登記でもっとも性格が出るのがこの点です。法務省は、この制度では登記申請事件の即時処理が要請されることから補正の制度がない、と説明しています。登記申請の内容に不備、つまり却下事由があると、その申請は直ちに却下されます。

却下されると、申請人は登記申請書や添付書面等の返却を受けることができません。取り寄せたばかりの印鑑証明書も資格証明書も戻ってこないということです。

そこで使うのが取下書です。登記申請の内容に却下事由が存在すると登記官が認めたことを停止条件として登記申請を取り下げる旨を記載した取下書を添付しておけば、登記官が却下事由を発見したときでも申請は却下されず、取り下げられたことになります。結果として、申請書や添付書面等の返却を受けられます。添付自体は任意とされていますが、付けない理由はほとんどありません。

申請データに誤りがあったときに起きること

提出した時点
登記官はデータを修正できない登記すべき事項は法務省令で定める構造の電磁的記録媒体に記録して提出する必要があり、その媒体を用いて登記ファイルに記録するため、内容に誤りがあっても登記官が自らデータを修正することはできません。
他に却下事由がないとき
誤ったまま記録される本店・商号が添付書面と合致しないといった他の却下事由がない場合、誤った内容がそのまま動産譲渡登記ファイルに記録されます。
取下書があるとき
取り下げて出し直すいったん登記申請を取り下げ、修正したうえで再度申請します。郵送による申請では、登記所で取下げの手続をしたあと、登記申請書と電磁的記録媒体が返送されます。
登記が終わったあと
更正はできない登記完了後に登記事項へ変更が生じたり、登記事項に誤りがあったりした場合でも、変更の登記や登記の更正をすることはできません。

出典: 法務省民事局「動産譲渡登記制度とは」Q9・Q10・Q13(2026年10月19日確認)。

登記のあとで直す方法は、抹消と登記のやり直しだけ

登記した動産に誤りがあったと後から気づいた場合、更正はできません。法務省は、動産譲渡登記をすべきであった動産を対象とする登記を新たに申請するほかないと答えています。

誤った動産を対象にした登記のほうは、実体関係を欠く無効な登記なので、特例法10条1項1号の「譲渡が効力を生じないこと」に準じて抹消登記を申請することができると考えられる、という整理です。この場合の抹消登記の登記原因は「錯誤」とし、登記原因年月日を記載しないこととして差し支えないとされています。

つまり、やり直しには抹消登記の1,000円と、登記し直しの7,500円がかかります。譲渡人・譲受人の商号や本店が変わった場合も同じで、変更の登記や更正はできません。ただし譲渡人の商号・名称の変更の登記や本店・主たる事務所の移転の登記がされたときは、その譲渡人の登記事項概要ファイルの記録が連動して変更されると案内されています。連動するのは概要ファイルだけで、登記事項証明書や登記事項概要証明書の記載は登記した時点のままです。

なお、動産譲渡登記のあとに譲渡人または譲受人の商号・本店等が変わり、その後に延長登記や抹消登記を申請する場合には、変更を証する証明書として履歴事項全部証明書等を添付する必要があります。

証明書は3種類。誰が請求できるかが分かれる

動産譲渡登記の公示は3種類の証明書で行われます。何が書いてあるか、誰が請求できるか、どこへ請求するかが、それぞれ違います。

動産譲渡登記に関する3種類の証明書
証明書 主な記載事項 請求できる人 請求先
登記事項証明書 譲渡人・譲受人の商号本店等、登記原因と日付、存続期間、登記番号、登記年月日に加え、動産を特定するために必要な事項 当事者・利害関係人等のみ 動産譲渡登記所
登記事項概要証明書 上のうち動産を特定する事項を除いた事項 誰でも請求できる 動産譲渡登記所
概要記録事項証明書 譲渡人・譲受人の表示、登記番号、登記年月日 誰でも請求できる 最寄りの商業登記所・不動産登記所・法務局証明サービスセンター

出典: 法務省「第3 証明書交付請求の手続」、特例法11条・13条(いずれも2026年10月19日確認)。

この三段構えには理由があります。法務省は、企業がどのような資産を保有しているかなどの営業秘密・事業戦略に関する情報の保護という観点から、登記情報の開示について情報内容によって異なる開示方法が設けられていると説明しています。在庫の中身まで誰でも見られる仕組みにはなっていません。

登記事項証明書を請求できる範囲は特例法11条2項と政令で決まっていて、譲渡に係る動産の譲渡人または譲受人、譲渡に係る動産の取得者、差押債権者・仮差押債権者、これらの動産を目的とする質権その他の担保権や賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利の取得者、これらの者の財産の管理及び処分をする権利を有する者、そして譲渡人の使用人が挙げられています。

記載が連動するかどうかも証明書で違います。商業登記簿のほうで譲渡人の商号・本店が変更された場合、概要記録事項証明書の記載は変更されますが、登記事項証明書と登記事項概要証明書は動産譲渡登記をした時点の商号・本店のままです。

法務省の動産譲渡登記「第3 証明書交付請求の手続」の公式画面。登記事項証明書は当事者・利害関係人等のみが請求でき、登記事項概要証明書は誰でも請求できると説明され、一括証明と個別事項証明の違いも記載されている
法務省「動産譲渡登記制度について 第3 証明書交付請求の手続」の公式画面。登記事項証明書の一括証明と個別事項証明の違い、「ないこと証明」の扱いが説明されています(2026年10月19日確認)。

証明書の手数料は請求方法と交付方法で変わる

手数料は請求のしかたと受け取り方で細かく分かれています。令和8年4月1日からの額は次のとおりです。

動産譲渡登記に関する証明書の手数料(令和8年4月1日から)
証明書 書面請求 オンライン請求・送付 オンライン請求・交付
登記事項証明書(個別事項証明) 1通800円 1通750円 1通700円
登記事項概要証明書 1通500円 1通450円 1通400円
概要記録事項証明書 1通300円 1通270円 1通250円(窓口交付のみ)

出典: 法務局「主な手数料一覧【令和8年4月1日〜】」、法務省「第3 証明書交付請求の手続」(いずれも2026年10月19日確認)。

登記事項証明書には、2個以上の動産に係る登記事項を一括して証明した一括証明と、それぞれの動産を個別に証明した個別事項証明の2種類があります。一括証明の手数料は、1通800円に、動産の個数が1個を超えるごとにその超える個数へ300円を乗じた額を加えた金額です。法務省は動産が5個の場合に800円+4×300円=2,000円になるという計算例を示しています。記載される登記事項そのものに違いはないものの交付手数料は異なる、という注記が付いています。なお、証明される動産の個数が1個の場合に一括証明は交付されません。

概要記録事項証明書には枚数の加算があり、1通の枚数が50枚を超える場合は超える枚数50枚までごとに100円が加算されます。また、概要記録事項証明書についてはオンラインによる交付を取り扱っておらず、窓口交付か送付による交付だけです。

該当する記録がない場合の「ないこと証明」も請求できます。登記事項証明書のないこと証明については個別事項証明書が交付され、一括証明は交付されません。

証明書の請求方法は、書面による請求(窓口への提出または送付)、オンライン請求(かんたん証明書請求)、オンライン請求(申請用総合ソフト)の3通りです。かんたん証明書請求では登記事項概要証明書と概要記録事項証明書を請求できますが、オンラインによる交付を受けることと登記事項証明書を請求することはできません。

登記の対象にならない動産がある

すべての動産が対象になるわけではありません。法務省の質疑応答は、自動車・船舶・小型船舶・航空機等のように特別法によって民法の対抗要件とは別に所有権の得喪に関する対抗要件が設けられている動産のうち、既に特別法による登録等がされたものの譲渡については動産譲渡登記の対象とならないとしています。

逆に言えば、まだ登録されていない自動車は対象になり得ます。法務省の記録例にも、種類「未登録自動車」として保管場所の所在地で特定する例が挙げられています。

無記名債権についても、法務省は、証券の交付が対抗要件ではなく譲渡の効力発生要件とされており、物権変動に関する民法の意思主義の例外をなしていることから、その譲渡は動産譲渡登記の対象にならないとしています。ただし根拠条文は入れ替わっています。法務省の説明が引く民法86条3項(無記名債権は動産とみなす)は2017年の民法改正で削除され、2020年4月1日から施行されています。現行の民法86条は2項までで、無記名証券については520条の20が記名式所持人払証券の規定を準用し、その譲渡は証券を交付しなければ効力を生じないとされています(520条の13)。結論は変わりませんが、条文を引くときは現行法を見る必要があります。株券も、その交付が譲渡の効力発生要件とされていることから対象外です。前述のとおり、倉荷証券・船荷証券・複合運送証券が作成されている動産も条文で除かれています。

質権が設定されている動産については、質権はその目的となる動産が債権者に引き渡されることが効力発生要件とされ(民法344条)、質権者が当該動産を継続して占有することが対抗要件とされている(民法352条)ため、質権の対抗要件具備が常に先行し、質権者が占有を継続している限り質権者が譲受人に優先する、と整理されています。

費用はいくらになるのか

税金と手数料を組み合わせると、場面ごとの登記所への支払額はおおよそ次のように見積もれます。司法書士に依頼する場合の報酬は別です。

場面別の登記所への支払額(登録免許税と証明書手数料。書面請求の場合)
場面 内訳 合計
在庫を担保に入れて登記する 動産譲渡登記7,500円 7,500円
登記したうえで登記事項概要証明書を1通取る 7,500円+500円 8,000円
保管場所が3か所で申請を3件に分ける 7,500円×3件 22,500円
存続期間を延ばす 延長登記3,000円 3,000円
返済が終わって抹消する 抹消登記1,000円 1,000円
対象動産を誤って登記し直す 抹消登記1,000円+動産譲渡登記7,500円 8,500円

登録免許税と手数料の額は法務省・法務局の公表値によります(2026年10月19日確認)。司法書士報酬、交通費、郵送費、資格証明書・印鑑証明書の取得費用は含みません。

借入額に対して見れば小さな額ですが、申請を分ければ比例して増える点と、やり直しに二重でかかる点が、ほかの登記と違うところです。債権を担保にする場合の費用や、担保の取り方そのものの選び方はABLとはに戻って確かめてください。

よくある質問

動産譲渡登記は個人事業主でも使えますか。
使えません。特例法1条は、この法律が法人がする動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等を定めるものだとしています。譲渡人が法人であることが前提です。

登記があれば、担保に取った在庫が実在することの証明になりますか。
なりません。法務省は、動産譲渡登記は過去にあった動産の譲渡の事実を公示することを目的とするものであって、当該動産の存在や所有権の帰属を公示するものではないと明記しています。

取引先に知られずに登記できますか。
登記事項概要証明書と概要記録事項証明書は誰でも請求できるので、登記があること自体は調べられます。ただし、どの動産を担保に入れたかを示す「動産を特定するために必要な事項」が載るのは登記事項証明書だけで、これは当事者・利害関係人等しか請求できません。

申請してから登記が終わるまでどれくらいかかりますか。
受け付けられた登記申請は原則としてその日のうちに処理が完了し、標準的な申請内容なら窓口における受付時からおおむね30分から1時間程度が目安と公表されています。ただし月末は混雑するとされています。

登記した内容を後から直せますか。
直せません。変更の登記も更正もできないため、抹消登記をしたうえで登記をやり直すことになります。

出典

  1. e-Gov法令検索「動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律」(1条・3条・7条・10条・11条・13条、2026年10月19日確認)
  2. 法務省「動産譲渡登記制度について 第2 登記申請の手続」(登録免許税・提出先・受付時間・処理時間、2026年10月19日確認)
  3. 法務省「(動産譲渡登記)添付書面・登録免許税」(登記の種類ごとの税額と納付方法、2026年10月19日確認)
  4. 法務省「動産譲渡登記制度について 第3 証明書交付請求の手続」(証明書の種類・請求権者・手数料、2026年10月19日確認)
  5. 法務省民事局「動産譲渡登記制度とは」(申請方式・動産の特定方法・申請チェックリスト・質疑応答、2026年10月19日確認)
  6. 法務局「主な手数料一覧【令和8年4月1日〜】」(証明書手数料、2026年10月20日確認)