手形の不渡りとは?6か月に2回で取引停止処分|受け取った側・振り出した側の対応

1回目の不渡りで不渡報告に掲載され、6か月以内に2回目を出すと取引停止処分となり、その後2年間は参加銀行との当座預金取引と貸出取引が禁止されることを示した年表

手形の不渡りとは、支払期日に手形の代金が支払われないことです。受け取った側は予定していた現金を得られず、振り出した側は取引先と金融機関からの信用を大きく損ないます。

ただし、1回の不渡りで銀行取引が止まるわけではありません。ここを誤解したまま慌てると、打てる手を打ち損ねます。処分の要件は回数と期間ではっきり決まっているので、まず制度の中身を正確に押さえてください。そのうえで、自分がどちらの立場かによって動き方を変えます。

6か月に2回で、2年間の取引停止処分

全国銀行協会は電子交換所を運営しており、そこには取引停止処分制度があります。全銀協の説明はこうです。

6か月間に2回、手形・小切手の不払い(不渡り)を起こした者について、その後2年間、参加銀行との当座預金取引や貸出取引を禁止する

出典:全国銀行協会「手形交換制度」(2026年9月4日確認)

1回目の不渡りで不渡報告に掲載され、6か月以内に2回目を出すと取引停止処分となり、その後2年間は参加銀行との当座預金取引と貸出取引が禁止されることを示した年表
1回目と2回目の間隔がすべてを決めます。
段階 何が起きるか 取引への影響
1回目の不渡り 不渡報告に掲載され、参加銀行へ通知される 取引停止処分ではない。ただし信用情報として共有される
6か月以内に2回目 取引停止報告に掲載される 取引停止処分
処分後の2年間 参加銀行との当座預金取引と貸出取引が禁止される 手形の振出も、銀行からの借入もできなくなる
2回目を出さずに6か月経過 取引停止処分には至らない
出典:全国銀行協会「手形交換制度」(2026年9月4日確認)。要件は電子交換所規則に定められています。

1回目と2回目の間隔がすべてです。2回目が6か月を1日でも過ぎていれば、処分の対象にはなりません。逆に言えば、1回出してしまったあとの6か月が勝負になります。

「2年間、当座預金取引と貸出取引が禁止される」の意味は重いものです。当座預金がなければ手形を振り出せず、貸出取引が止まれば銀行から新たに借りられません。実質的に、それまでの資金繰りの前提が崩れます。

不渡りの情報はどこまで共有されるのか

不渡りを出すと、その情報は参加銀行の間で共同利用されます。全銀協が公表している共同利用の対象は次のとおりです。

共同利用される情報
氏名(法人であれば名称・代表者名・代表者肩書)
住所(法人であれば所在地)
生年月日、職業
当該手形・小切手の種類および額面金額
不渡事由
取引停止処分を受けた年月日 等
不渡報告(第1回目不渡)または取引停止報告(取引停止処分)の別
出典:全国銀行協会「不渡情報の共同利用に当たっての公表文」(2026年9月4日確認)

利用目的として掲げられているのは「手形・小切手の円滑な流通の確保および金融機関における自己の与信取引上の判断」です。つまり他行が融資を判断するときの材料になります。

注目してほしいのは最後の行です。1回目の不渡りも「不渡報告(第1回目不渡)」として区別して共有されます。処分にならなかったから何も残らない、というわけではありません。

立場によって、やることがまったく違う

手形を受け取った側は回収に動き、振り出した側は2回目を出さないことに集中するという、立場別の対応手順を並べた図
同じ「不渡り」でも、受け取った側と振り出した側では動き方が逆になります。

受け取った側:回収に動く

銀行に取立を依頼していた手形が不渡りになると、手形が戻ってきます。まず不渡返還の理由を確認してください。資金不足なのか、記載の不備なのかで、その後の見通しが変わります。

割り引いていた場合は、割引先から買戻しを求められます。これは契約の話である以前に、手形法にもとづくものです。手形法第15条は「裏書人ハ反対ノ文言ナキ限リ引受及支払ヲ担保ス」と定め、第43条は満期に支払がないとき所持人が裏書人へ遡求できるとしています。約束手形にも準用されます(第77条)。

順番 やること 期限の目安
1 不渡返還の理由を確認する 手形が戻った当日
2 割引先からの連絡内容と、買い戻す金額・期限を確認する 連絡を受けた当日
3 買戻しに必要な資金を工面する 指定された期限まで
4 振出人へ連絡し、支払いの見通しを確認する できるだけ早く
5 同じ振出人の他の手形・売掛金の回収可能性を洗い直す 数日以内
6 金額が大きければ弁護士に相談する 状況を把握したら速やかに
手形を買い戻しても、振出人に対する債権は残ります。回収の手立ては別に考える必要があります。

5番目を飛ばさないでください。1枚が不渡りになったということは、その取引先からの他の入金も止まる可能性があります。被害を1枚分に見積もると、資金繰りの読みを外します。

振り出した側:2回目を出さないことに集中する

1回目を出してしまったなら、やるべきことは1つに絞られます。6か月以内に2回目を出さないことです。

順番 やること なぜ
1 取引銀行に状況を説明する 隠すと後の相談がすべて難しくなる
2 次の支払期日と必要額を全部書き出す どこが危ないかを特定する
3 間に合わない見込みなら、期日前に相手と支払方法を相談する 不渡りにする前なら交渉の余地がある
4 資金繰りを立て直す手段を並べる 売掛金の早期回収、支払いの繰り延べ、資産の売却など
5 税理士・中小企業診断士などに早めに入ってもらう ひとりで抱えると打ち手が狭まる
3番目が最も効きます。期日を過ぎてからでは選択肢が激減します。

3番目を強調します。支払期日の前に相手へ相談すれば、支払方法や期日の見直しという交渉が成立する余地があります。不渡りにしてしまってからでは、相手にとっても事故として処理された後です。

資金繰りの立て直しについては恒常的な資金繰り改善方法と具体的な実行手順に、支払いの優先順位は資金繰りが苦しいときに返済を後回しにして良い支払先の順番にまとめています。

割り引いた手形が不渡りになったときの資金の動き

手形割引を使っていた場合の影響を、金額で見ておきます。額面300万円の手形を年率8.0%・満期まで90日で割り引いていたとします。

時点 資金の動き
割り引いたとき 割引料59,178円が引かれ、およそ2,940,822円を受け取る(取立料等は別)
不渡りになったとき 額面300万円で買い戻す
差引 約59,178円の割引料を払ったうえで、300万円を用意することになる
計算は説明のための例です。買戻しの条件は契約によります。

ここが最も重い点です。受け取った現金はすでに支払いに使っているのが普通で、そこへ額面全額の買戻しが来ます。手元にその金額がなければ、自社の支払いが連鎖して止まります。

だから手形割引を使うかどうかの判断では、「不渡りになったとき買い戻せるか」を条件のひとつに挙げています。費用の安さより先に確認すべき点です。

「不渡り=倒産」ではない

不渡りという言葉には強い響きがありますが、取引停止処分は倒産手続きではありません。破産や民事再生といった法的整理とは別の制度で、全銀協が運営する電子交換所の枠組みのなかの措置です。

言葉 何を指すか 誰が決めるか
不渡り 支払期日に手形の代金が支払われないこと 事実として発生する
取引停止処分 6か月に2回の不渡りで、2年間の当座預金取引・貸出取引の禁止 電子交換所の制度
倒産(法的整理) 破産・民事再生・会社更生など 裁判所の手続き
取引停止処分を受けたからといって、自動的に法的整理へ進むわけではありません。

ただし実務上は、事業の継続がかなり難しくなります。手形を振り出せず、銀行から借りられない状態が2年続くためです。「倒産ではない」というのは制度上の区別であって、深刻さが変わるという意味ではありません。

不渡りを避けるためにできること

立場 できること 効き方
受け取る側 信用力の高い振出人の手形を優先して割り引く 不渡りの確率そのものを下げる
受け取る側 特定の取引先に売上が偏りすぎないようにする 1社の事故で連鎖しないようにする
受け取る側 買戻しに備えた資金を別に確保しておく 起きたときに耐えられる
振り出す側 支払期日と資金の見通しを月次で突き合わせる 危ない期日を前もって特定できる
振り出す側 間に合わない見込みが立った時点で相手に相談する 期日前なら交渉できる
双方 手形以外の決済手段へ移行する そもそも不渡りという事故が起きなくなる
最後の行は、制度の変化を踏まえると現実的な選択肢になっています。

受け取る側で最も効くのは1行目です。どの手形を割り引くかは自分で選べます。決済実績のある振出人の手形を優先するだけで、リスクも割引率も下がります。詳しくは手形割引率の相場と決まり方をご覧ください。

取引先が不渡りを出したと聞いたとき

自社が手形を受け取っていなくても、取引先の不渡りは影響します。売掛金の回収が止まる可能性があるからです。噂を聞いた段階でも、確認しておくことがあります。

確認すること なぜ必要か
その取引先への売掛金の残高と回収予定日 影響額を把握する
受け取っている手形があるか、期日はいつか 期日が先なら猶予がある
その手形を割り引いていないか 割り引いていれば買戻しの可能性がある
担保や保証を取っているか 回収の手段が残っているかを確認する
今後の取引をどうするか 納品を続けると債権が増える
3行目に該当するなら、割引先に状況を伝えておくと後の対応が早くなります。

最後の行が判断を要するところです。納品を止めれば相手の資金繰りをさらに悪化させ、回収がかえって難しくなることもあります。一方で続ければ債権が積み上がります。担保の有無と、相手の再建見込みを踏まえて決めてください。金額が大きいなら、判断する前に専門家に相談したほうが安全です。

手形が電子化されると、この制度はどうなるのか

全国銀行協会は2025年3月26日に、「2027年度初から電子交換所における手形・小切手の交換を廃止する」ことを決定したと公表しました。同時に「2027年度初から手形・小切手が使用できなくなるものではありません」とも明記しています。

取引停止処分制度は、その電子交換所が運営しているものです。交換が廃止されたあとの運用がどうなるかについて、現時点で公表されている情報は確認できませんでした。制度の扱いは今後の発表を待つ必要があります。

全国銀行協会の公式サイトにある手形交換制度と取引停止処分制度を説明するページ
取引停止処分制度は全国銀行協会が運営する電子交換所の制度です。出典:全国銀行協会(2026年9月4日確認)

ただし、実務としてはっきりしていることがあります。紙の手形を受け取らなくなれば、手形の不渡りという事故そのものが起きません。でんさい(電子記録債権)や振込へ移行していけば、この記事で説明したリスクは自然に消えていきます。

もっとも、「相手が支払えない」というリスクまで消えるわけではありません。でんさいも支払期日に相手の口座に資金がなければ決済されません。手段が変わっても、取引先の信用力を見る必要は残ります。移行の中身はでんさい(電子記録債権)とはにまとめました。

よくある質問

1回不渡りを出したら、もう銀行から借りられませんか

取引停止処分は6か月以内に2回目を出した場合の措置です。1回目だけで自動的に借入ができなくなるわけではありません。ただし不渡報告として参加銀行に共有され、与信判断の材料になります。融資の審査が厳しくなることは覚悟しておいてください。

不渡りになった手形は無効になりますか

いいえ。支払われなかっただけで、手形上の権利がなくなるわけではありません。振出人に対する請求権は残ります。ただし現実に回収できるかは相手の資産や再建の状況によります。手形そのものは証拠として保管しておいてください。

取引停止処分の2年間が過ぎたらどうなりますか

全銀協は「その後2年間、参加銀行との当座預金取引や貸出取引を禁止する」としています。期間経過後の取扱いは各金融機関の判断になります。自動的に元どおりになるとは限らないため、取引銀行に確認してください。

小切手も同じ扱いですか

全銀協の説明は「手形・小切手の不払い(不渡り)」となっており、小切手も対象に含まれています。共同利用される情報にも「当該手形・小切手の種類および額面金額」とあります。

取引先が不渡りを出したことは調べられますか

不渡情報は参加銀行の間で共同利用される情報であり、一般の企業が自由に照会できるものではありません。取引先の信用状況を確認したい場合は、信用調査会社の情報や、取引金融機関への相談を検討してください。

この記事の要点

  • 不渡りは、支払期日に手形の代金が支払われないこと
  • 6か月間に2回で取引停止処分。その後2年間、参加銀行との当座預金取引と貸出取引が禁止される
  • 1回目も「不渡報告(第1回目不渡)」として参加銀行に共有される
  • 受け取った側は回収に動き、割り引いていれば額面全額の買戻しが来る(手形法第15条・第43条・第77条)
  • 振り出した側は、期日前に相手と相談することが最も効く
  • 電子交換所での交換は2027年度初に廃止される。廃止後の制度運用は現時点で確認できず

参考にした一次情報

2026年9月4日に確認しています。制度の運用は今後変更されることがあります。実際の取扱いについては取引金融機関にご確認ください。この記事は制度の説明であり、個別の債権回収や法務・税務の判断を保証するものではありません。不渡りが発生した場合は、弁護士・税理士・中小企業診断士など適切な専門家にご相談ください。

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手形と手形割引まわりは、次のページで扱っています。