日本政策金融公庫の中小企業事業に申し込むとき、何をどの順番で用意すればよいのか。公庫は「お手続きの流れ」のページで、ご相談・お申込・審査・ご融資・ご返済の5段階と、申込で出す書類の主なもの7種類を公表しています。決算書は最新3期分、納税証明書も入ります。さらに、制度ごとに追加の計画書が用意されていて、書式ダウンロードのページから様式と記載例を取れます。2026年11月3日に公庫の公式ページを開いて、申込から実行、その後の報告までを順番に整理しました。
公表されていること
- 相談の窓口は日本公庫各支店の中小企業事業。電話のほか、最寄りの商工会議所での定例相談の場でも相談を受けると書かれている。
- 申込で出す書類の主なものは7種類。必要に応じて補足資料を求められるとも明記されている。
- 審査では公庫職員が本社や事業計画予定地等に出向く。書類だけで完結する建て付けではない。
- 返済は原則として元金均等割賦返済で、取引金融機関の口座からの自動振替。元利均等払い方式もある。
- 設備資金では、融資の後に取得が適正に行われたかどうかの報告と、固定資産台帳への計上確認・現地確認がある。
- 制度によっては、借入申込書とは別に計画書の様式がある(新事業育成資金、中小企業経営力強化資金等、IT活用促進資金、事業承継・集約・活性化支援資金、働き方改革推進支援資金、海外展開・事業再編資金など)。
5段階の流れ
公庫が公表している手続きの順番
日本公庫各支店の中小企業事業の窓口に直接相談する。電話や、最寄りの商工会議所での定例相談の場でも相談を受けると書かれている。
「会社案内」「決算書」「事業計画書」などを持参すれば、より具体的な相談に対応できるとされている。
融資の検討にあたって必要な資料を提出する。主なものは7種類で、必要に応じて補足資料を求められる。
事業や計画の内容の理解を深めるため、公庫職員が本社や事業計画予定地等に出向いて融資を検討する。
融資が決まると貸付契約の打ち合わせを行う。貸付契約、抵当権設定などの手続きを終えたのち送金される。
原則として元金均等割賦返済により、取引金融機関の口座からの自動振替。設備資金では、融資対象の物件について取得が適正に行われたかどうか(金額および時期など)を報告し、固定資産台帳への計上確認や現地確認等が行われる。

申込で出す書類は7種類
| 書類 | どこで用意するか | 注意点 |
|---|---|---|
| 会社案内、製品カタログなどの参考資料 | 自社 | 相談の段階から持参すると具体的な相談に対応できるとされている |
| 法人の登記事項証明書 | 法務局 | 有効期間の記載は公式ページにない |
| 最新3期分の決算書・税務申告書 | 自社・税理士 | 3期分。設立間もない法人は期数が足りないことがある |
| 納税証明書 | 税務署・自治体 | 種類(その1・その2など)の指定は公式ページにない |
| 最近の試算表 | 自社・税理士 | 「決算月から時間が経っているかた」という条件付き |
| 設備投資の概要のわかる資料(見積書等) | 取引先 | 設備投資を行うときのみ |
| 担保の内容がわかる資料(登記事項証明書など) | 法務局など | 担保を入れる場合。担保の要否は相談のうえ決まる |
この7種類は「主なもの」です。公庫は「必要に応じて補足資料をお願いします」と明記しており、これだけで足りると約束しているわけではありません。
実務で時間がかかりやすいのは、最新3期分の決算書・税務申告書と納税証明書です。決算書は手元にあっても、税務申告書の控えが揃わないことがあります。納税証明書は税務署や自治体の窓口での取得になり、法人税・消費税・地方税のどれを求められるかは窓口で確認する必要があります。公庫のページにも種類の指定はありません。
制度によっては、借入申込書とは別に計画書が要る
公庫は「各種書式ダウンロード 中小企業の方【中小企業事業】」のページで、申込時の書式と、資金の利用後に提出する書式を公開しています。借入申込書と個人情報の利用目的に係る同意書、会社概要(簡易版・詳細版)のほかに、制度ごとの計画書が並びます。
| 様式 | 対象制度 | 公庫の説明 |
|---|---|---|
| 新技術・ノウハウ等活用に係る計画書 | 新事業育成資金 | 事業計画を記入するもの |
| 事業計画書 | 新事業育成資金 | 同上 |
| 事業計画書および同進捗報告書 | 中小企業経営力強化資金等 | 進捗報告の様式もある |
| DX推進指標活用計画書 | IT活用促進資金 | 公庫担当者から作成を依頼された場合に記入 |
| 事業承継計画書/付加価値向上計画書/PMI計画書 | 事業承継・集約・活性化支援資金 | 付加価値向上計画書は「承継・集約する方」と「される方」で様式が分かれる |
| 働き方改革実現計画書および同進捗報告書 | 働き方改革推進支援資金 | 進捗報告の様式もある |
| 海外展開事業概要書(EPA・FTA) | 海外展開・事業再編資金 | — |
| 賃上げ計画書および同報告書 | 賃上げ貸付利率特例制度 | 申込時の計画書と、賃上げの報告書が別にある |
これらの様式には共通の注記が付いています。「公庫にご提出をいただく場合は、会社ゴム印の押印または代表者の自署による記名を行ったものをご提出ください」。電子データを送って終わりではなく、押印または自署が要るという書き方です。

進捗報告書の様式が用意されている制度(中小企業経営力強化資金等、働き方改革推進支援資金、賃上げ貸付利率特例制度)は、借りた後にも提出が続くことを意味します。申込の手間だけでなく、融資後の報告の手間も見込んでおく必要があります。
進捗報告と取得確認|借りた後に続く手続き
融資実行後に公庫が行うこと・求めること
設備資金の取得確認
融資対象の物件について、取得が適正に行われたかどうか(金額および時期など)を報告する。公庫は固定資産台帳への計上確認や現地確認等を行うと書いている
計画の進捗報告
中小企業経営力強化資金等、働き方改革推進支援資金には進捗報告書の様式がある。賃上げ貸付利率特例制度には賃上げ報告書がある
返済
原則として元金均等割賦返済で、取引金融機関の口座からの自動振替。元利均等払い方式による返済などもあると注記されている
利率の引き下げを受けた制度では、引き下げの根拠になった条件が後から確認される構造になっています。賃上げ貸付利率特例制度に賃上げ報告書があるのが分かりやすい例です。
計画を出して利率を下げたあと、計画どおりに進まなかった場合にどう扱われるかは、公庫の書式ダウンロードのページには書かれていません。申し込む前に窓口で確認してください。
元金均等割賦返済だと、返済額は最初が重い
公庫が原則としている元金均等割賦返済は、毎回の元金が一定で、利息が残高に応じて減っていく方式です。元利均等払い(毎回の支払総額が一定)と比べると、初期の支払いが重く、後半が軽くなります。
たとえば1億円を10年(120回)で借り、年3.50%(2026年11月2日実施の主要利率一覧表の9年超10年以内の基準利率)とした場合、元金均等なら毎回の元金は約83.3万円。初回の利息は1億円に対する1か月分で約29.2万円なので、初回の支払いは約112.5万円です。最終回は残高が約83.3万円まで減っているので、利息は約0.24万円で支払いは約83.5万円。初回と最終回で約29万円の差が出ます。これは方式の性質を示すための単純な試算で、実際の計算方法や端数処理は契約で決まります。
公庫は注記で「ご返済方法は、この他にも元利均等払い方式による返済などもあります。詳しくは日本公庫中小企業事業の窓口にお問い合わせください」としています。据置期間を取れば、その間は元金の返済が始まらないので、初期の負担は軽くなります。据置期間は制度ごとに上限が決まっており、確認した6制度のうち新事業育成資金の設備資金だけが5年以内、ほかは2年以内でした。
審査で実地に来る、という前提で資料を作る
公庫は審査の段階について「事業や計画の内容の理解を深めるために、公庫職員が貴社の本社や事業計画予定地等にお伺いし、ご融資の検討をします」と書いています。書類審査だけで終わる建て付けではありません。
設備投資であれば、設置予定の場所を見られることになります。計画書に書いた内容と現場の状況が食い違っていれば、そこで質問が出ます。逆にいえば、現場を見れば伝わることは、書類で過剰に説明しなくてもよいということでもあります。
融資の後にも現地確認があります。設備資金では「融資対象の物件について、取得が適正に行われたかどうか(金額及び時期など)報告していただくとともに、固定資産台帳への計上確認や現地確認等を行います」とされています。見積書どおりに買ったか、いつ取得したか、帳簿に載っているかまでが確認の対象です。見積りの段階で仕様を変えるつもりがあるなら、事前に窓口へ相談しておくほうが安全です。
代理貸付は窓口が違う
公庫は手続きの流れのページの末尾に「なお、代理貸付をご利用の場合には、日本公庫 中小企業事業の代理店となっている金融機関の窓口に直接ご相談ください」と書いています。直接貸付とは相談の入口から違います。
代理貸付の融資限度額は、確認した6つの制度すべてで1億2千万円です。直接貸付は制度によって7億2千万円または14億4千万円なので、必要額が1億2千万円を超えるなら直接貸付になります。制度ごとの限度額は新事業活動促進資金、企業活力強化資金、IT活用促進資金、環境・エネルギー対策資金、BCP資金の各記事にまとめています。
申込までの段取り
相談の前に決めておくこと・揃えておくこと
- どの制度で申し込むかを決める。制度によって追加の計画書が要る。IT活用促進資金ならDX推進指標活用計画書、事業承継・集約・活性化支援資金なら事業承継計画書・付加価値向上計画書・PMI計画書が様式として用意されている。
- 決算書と税務申告書を3期分そろえる。税務申告書の控えが手元にない場合は、税理士か税務署から取り寄せる時間を見込む。
- 納税証明書の種類を窓口で確認する。公式ページに種類の指定がないため、相談のときに聞いておく。
- 決算月から時間が経っているなら試算表を用意する。公庫は条件付きで挙げているが、決算から半年以上経っていれば求められると見ておく。
- 設備投資なら見積書を取る。概要のわかる資料として挙げられている。土地に係る資金が含まれるかどうかも、このときに切り分けておく。
- 担保に出せるものを整理する。登記事項証明書など、担保の内容がわかる資料が必要になる。担保・保証の扱いは中小企業事業の担保・保証人の記事にまとめた。
- 押印または自署の準備をする。計画書の様式には、会社ゴム印の押印または代表者の自署が求められる。
相談の入口は支店だけではない
公庫は「日本公庫各支店の中小企業事業の窓口に直接ご相談ください」としたうえで、「電話や、最寄りの商工会議所での定例相談の場でもご相談をお受けします」と書いています。支店が遠い場合や、まず話だけ聞きたい場合の入口が用意されているということです。
相談の段階で「会社案内」「決算書」「事業計画書」などを持参すれば、より具体的な相談に対応できるとされています。逆にいえば、手ぶらでも相談はできる書き方です。制度の該当判定(どの入口に当たるか、特定設備に該当するか、サービス業に当たるかなど)は、確認した各制度ページでも「支店の窓口までお問い合わせください」に委ねられている部分が多いため、早い段階で相談に行く意味があります。
どの制度で申し込むかが決まっていないなら、この手続きに入る前に制度を選ぶ工程が残っています。限度額と優遇の上限で5制度を並べた横断比較と、目的別の入口の分かれ方を説明した中小企業事業の融資の全体像が、その段階で見る2本です。
よくある質問
- オンラインだけで完結しますか。
- 中小企業事業の手続きの流れのページには、審査の段階で公庫職員が本社や事業計画予定地等に出向くと書かれています。また計画書の様式には会社ゴム印の押印または代表者の自署が求められます。オンラインで完結するという記載は確認できませんでした。
- 決算書は何期分必要ですか。
- 「最新3期分の決算書・税務申告書」と書かれています。期数が足りない場合の扱いについては、このページに記載がありません。
- 納税証明書はどの種類ですか。
- 公式ページには「納税証明書」とだけ書かれており、種類の指定はありません。窓口で確認してください。
- 返済方法は選べますか。
- 原則は元金均等割賦返済で、注記に「ご返済方法は、この他にも元利均等払い方式による返済などもあります。詳しくは日本公庫中小企業事業の窓口にお問い合わせください」とあります。
- 融資の後に提出するものはありますか。
- 設備資金では、取得が適正に行われたかどうかの報告が求められ、固定資産台帳への計上確認や現地確認等が行われます。制度によっては進捗報告書の様式も用意されています。
調査方法と参考にした一次情報
2026年11月3日に日本政策金融公庫の「お手続きの流れ 中小企業の方」と「各種書式ダウンロード 中小企業の方【中小企業事業】」を表示し、手続きの段階、必要書類、返済方法、融資後の報告、制度ごとの計画書の様式を書き写しました。納税証明書の種類、登記事項証明書の有効期間、3期分の決算書が揃わない場合の扱い、計画どおりに進まなかった場合の取り扱いは、いずれもこれらのページでは確認できませんでした。審査期間や融資までの日数についても公表が見当たりませんでした。確認できなかったことは、確認できなかったものとして書いています。
- 日本政策金融公庫「お手続きの流れ 中小企業の方」(2026年11月3日に表示)。5段階の流れ、必要書類7項目、返済方法、設備資金の取得確認、代理貸付の窓口。
- 同「各種書式ダウンロード 中小企業の方【中小企業事業】」(2026年11月3日に表示)。借入申込書、会社概要、制度ごとの計画書と進捗報告書、押印・自署の注記。
- 同「事業資金 中小企業の方【中小企業事業】」(2026年11月3日に表示)。中小企業事業が扱う融資制度の目的別一覧。

