ベンチャーキャピタル(VC)と知り合ってから資金調達を受けるまでの手順を徹底解説

銀行から融資を受ける場合には、銀行の担当者と面談の約束を取り、会社について説明したうえで、審査に必要な書類を提出して融資の可否について判断してもらいます。審査が通れば融資が受けられます。

ベンチャーキャピタル(VC)からの資金調達はこれとはだいぶ異なります。

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ベンチャーキャピタル(VC)からの資金調達はどのように行われるのかを、銀行融資との違いも踏まえてみていきましょう。

リードインベスターとは何か

リードインベスターとは何か

銀行からの融資とベンチャーキャピタル(VC)からの資金調達との違いで、最初に理解しておくべきことは「誰がその資金調達に参加するのか」です。

銀行融資の場合には、その銀行からお金を借りられるのか、借りられないのか、それだけです。銀行はお金を貸すのか貸さないのかを相手の会社だけを見て判断しています。

これに対して、ベンチャーキャピタル(VC)からの資金調達は、1つのベンチャーキャピタル(VC)から資金調達するケースはむしろ稀で、通常はベンチャーキャピタル(VC)、エンジェル投資家、事業会社や金融機関の中の複数からまとめて資金調達することになります。

ベンチャーキャピタル(VC)からの資金調達が複数になってしまうのはベンチャーキャピタル(VC)がリスクを減らすために、1社あたりの投資額を抑えるためです。
ベンチャー企業が複数の投資家から資金調達することを「ラウンド」と呼びます。今回の「ラウンド」では10億円集めたい、とか、次回の「ラウンド」を見据えてバリュエーションは押さえておこう、などという使い方をします。

つまり、ベンチャーキャピタル(VC)は、自社が資金調達に参加するか(投資するか)どうかだけを判断しているわけではなく、他社からの調達も含め、資金調達全体がちゃんと行われるのかも気にしています。

とくに「大きな金額を検討している投資家がいること」「その投資家の動向」は重要です。

仮に3億円集めるとして、10社から3千万円ずつ調達する場合には、各投資家ともに残り9名の投資家から調達できるのかを気に掛ける必要があります。1社が億円単位の投資する意向であれば、気にする相手が減ることになります。

その際、同じく3億円を投資家3名から、1社が2億6千万円を、残り2社が2千万円ずつ投資することになったとします。2千万投資する投資家はもう一人の2千万円投資する投資家よりも2億6千万円投資する投資家の動向を深く気にしますし、その投資家に集中していればいいということになります。

ベンチャー企業にとって、たくさんの資金調達先とそれぞれ条件交渉するのは大変です。

これは投資する側としても同じです。その理由としては、

  • ベンチャー企業が多くの投資家と話をすると、1社にかけられる時間が限られる。結果として、深く検討する時間、事業を行うための時間が確保できない。
  • 交渉で条件がまとまっても、他の投資家との交渉次第でまた条件が変わってしまう可能性がある

これらの困難を乗り越えるために、投資家の中から1社、「リードインベスター(リード投資家、単にリードと言われることが多いです)」を選ぶとがよく行われます。

リードインベスターとは何か定義があるようなものではありませんが、その資金調達ラウンドで(もっと言えば、次の資金調達ラウンドまで)もっともベンチャー企業に影響力を持つ投資家、のことを言います。

リード投資家がいることで他の投資家は、リードに条件交渉を一任することができます。

正確には、日本の場合には大枠をリード投資家が定め、細かい条件を各投資家が交渉できるようにしていることが多いです。アメリカの場合にはリード投資家が全て決め、他の投資家はそれを受けいれて、その条件で投資するか投資は見送るかだけを判断することも多くあります。

リードは、通常、そのラウンドでもっとも多額の投資を行います。

ベンチャーキャピタル(VC)と知り合ってから資金調達を受けるまで

次に、ベンチャーキャピタル(VC)と知り合ってから実際に資金調達を受けるまでの流れを理解しておきましょう。

1.ベンチャーキャピタル(VC)と知り合う

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ベンチャーキャピタル(VC)と知り合う方法はいくつかあります。

ベンチャーキャピタル(VC)と知り合う具体的な方法

銀行融資の場合と同様、「相手の連絡先を調べて電話してみる」というのも一つの方法です。ホームページや連絡先を公開していないベンチャーキャピタル(VC)はまずありません。

ベンチャーキャピタル(VC)の担当者(キャピタリスト)はTwitterなどのSNSをやっていることが多く、そこからメッセージを送ることも良い方法です(キャピタリストは資金調達を希望するベンチャー企業から連絡をもらうことを期待してSNSをやっています)。

もちろん、ベンチャーキャピタル(VC)も「誰か知り合いを通じてコンタクトする」方がよい結果になることが多いです(ただ、ベンチャーキャピタル(VC)は、銀行などと比較すればはるかに一見さんに丁寧に対応してくれます)。

銀行に口座を持っていれば、「銀行の担当者に紹介を依頼する」はぜひ試してみてもらいたい方法です。銀行はベンチャーキャピタル(VC)とつながりがあり、銀行の紹介は信用を得やすいためです。

自分からアクセスしたくないのであれば、ピッチイベントなどに参加して、「相手から声がかかるのを待つ」方法もあります。消極的なように聞こえるかもしれませんが、自社に興味を持つベンチャーキャピタル(VC)だけと知り合うことができるため、効率的です。

もちろん、いずれか一つの方法を選ぶ必要はありません。求めるベンチャーキャピタル(VC)と知り合うまで、いろいろな方法を試してみるべきです。

ますは「リード」と知り合うべき

ベンチャーキャピタル(VC)の中でも、できれば、まず最初にリードを探すべきです。

ベンチャーキャピタル(VC)によって「リード投資家となりたがる」ところ(あるいは「リード投資家になれないなら投資しない」という方針を持つところ)もあれば、「リードではやらない」というところもあります。

先にリードをやらない投資家と話してしまうと、リード投資家が決まってからまた来てくださいと言われてしまうので、無駄ではありませんが、非効率です。

もう一つの理由は、リード投資家が決まるとリード投資家がどのベンチャーキャピタル(VC)を回ればよいか教えてくれたり、紹介してくれたりする可能性があるためです。

2.出資までの手順

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知り合ったベンチャーキャピタル(VC)がリード投資家であることを前提に、資金調達をするまでの流れを見ていきましょう

とくに銀行等から融資を受ける場合との違いは、求められる書面や資料が異なることのほか、書面や資料に加えて「面談」が重視されるという点にあります。

担当者との面談

ベンチャーキャピタル(VC)と知り合って最初にすることは「担当者との面談」になります。

事前に資料(特に事業計画)を提出するように要請されることもありますが、しっかり目を通してくれると期待するのは禁物で、せいぜいが「事業領域を見ている程度」(どの分野の会社か)だと思った方がいいです。

そのため、初回の面談は「まず自分たちが何をしようとしているのか、を説明すること」から始まり、通常はそれで終わります。その内容に担当者が興味を持ってくれれば次回の面談へと繋がります。

資料の提出、デューデリジェンス(DD)

何度か話してベンチャーキャピタル(VC)の担当者が「投資したい」という気持ちになったところで、本格的に資料の提出を求められることになります。

事業計画のほか、「資本政策のような会社の計画に関する資料」「役職員の略歴や株主名簿等の事実関係を確認するための資料」「定款や商業登記簿謄本等の法廷書類」が共通して求められる資料ですが、ここに「それぞれのベンチャーキャピタル(VC)が必要とする資料」が追加されます。

銀行等から融資を受ける場合にはこれまでの会社の状態及び足元の状況についての資料を求められます(決算書や資金繰り表等)。これに対して、ベンチャーキャピタル(VC)からの資金調達では過去はあまり注目されず、むしろ将来の計画に重きを置かれる点に違いがあります。

ベンチャーキャピタル(VC)から求められた資料のいくつかを作成していないケースがあります。その際は「慌てて資料を作り始める」のではなくまずは「ベンチャーキャピタル(VC)に必要かどうかを確認してみる」べきです。

これも銀行等からの融資と異なる点ですが、ベンチャーキャピタル(VC)が求める資料は口頭で説明できればそれで足りることも多くあります。銀行等からの融資では必要な書類が整わない限り融資が実行されません。

資料の提出と前後して「ベンチャーキャピタル(VC)からの問い合わせ」が増えますので、その対応も行う必要があります。

資料の内容について不明点を教えてほしい、ということから始まり、法務や税務の観点から専門家(法務であれば弁護士、税務であれば税理士)からの意見書を取るよう求められることもあり、また事務所へ往訪させてほしいといった依頼もあります。

やや異なる依頼としては、業務提携先や主要販売先などから話を聞きたいと言われることもあります。

資料の提出と問い合わせは、投資する会社のことをよく調べるために行われます。この一連の手続きを「デューデリジェンス」(あるいは「DD」)と言います(「デューデリ」と略されることがほとんどです)。

投資委員会

銀行等から融資を受ける場合、まず銀行等の担当者が融資をしたいという書類(「稟議」と呼ばれます)を書きます。この書類が上司に渡り、上司の承認を得て、融資してもよいか判断する部署(審査部と呼ばれます)に回ります。審査部が承認すると融資が実行されます。

これに対して、ベンチャーキャピタル(VC)が投資する際には、ベンチャーキャピタル(VC)の中の会議体で投資するかどうかを判断されることが一般的です(銀行等からの融資の場合にも、融資金額が高額であれば会議体で判断されることがありますが、その多額は少なくても数十億円、銀行であれば数百億円を超えるような場合であることが一般的です)。

このベンチャーキャピタル(VC)の会議体を「投資委員会」と言います。

投資委員会がどのようなメンバーで構成されているのかはそれぞれのベンチャーキャピタル(VC)によって異なりますが、少なくともそのベンチャーキャピタル(VC)の社長や役員は必ず入っています。

投資委員会でベンチャーキャピタル(VC)の担当者が投資したいベンチャー企業について説明し、議論されたのちに投資の可否が判断されることが普通ですが、ベンチャー企業が呼ばれ、投資委員会で自社について説明するよう求められるケースもあります。

マネジメントインタビュー

書類審査ではなく「投資委員会の議論」がなされる点に加えて、ベンチャーキャピタル(VC)からの資金調達では、「マネジメントインタビュー」が行われる点も銀行等からの融資とは異なる点として挙げられます。

マネジメントインタビューとは
経営者からの聞き取り調査のことです。

投資候補であるベンチャー企業の社長が自社についてプレゼンしたうえで、ベンチャーキャピタル(VC)の社長あるいは投資委員会のメンバーとの質疑応答を行います。

マネジメントインタビューは何か具体的な知りたいこと、聞きたいことがあって行われるよりも、ベンチャー企業の経営者の人柄を知るために行われます。

投資契約書の締結

ベンチャーキャピタル(VC)が投資することを決めたら(これを「投資の意思決定」をしたら、と言います)、「契約書について交渉する」ことになります。

ベンチャーキャピタル(VC)との契約交渉で論点になるのは主に以下の2点です。

  1. 株式の発行価格
  2. 会社による株式の買戻しの条件

それ以外にも、ベンチャーキャピタル(VC)が役員を派遣する権利(認めるか、認めるとして誰だったら認められるのか)、資金使途上場義務(ベンチャー企業が上場できる状態になったら意図的に上場しないことを認めない)などが契約条件として話し合われます。

契約以外の条件のすり合わせ

投資契約を交渉する段階では、契約条件以外にも多くのことが話し合われます。特に大事なことは、事業がそこそこ上手く行った場合、少し上手く行かなかった場合にお互いに何をするか、のすり合わせです。

さらに具体的にはベンチャーキャピタル(VC)が何をするのかを決めておく必要があります。

上手く行った場合については、どのような成果が達成されるとベンチャーキャピタル(VC)は追加出資してくれそうなのか。あるいは、上手く行かなかった場合、どういう状態になれば今の事業をあきらめ事業内容を変更する(これをピボットすると言います)のか、あるいは資金的にはどこまで支えてもらえるのか。

このような契約書には規定されないものの、投資が実行される前に話し合っておくべきことが多々あります。

フォローとの交渉

リードと契約条件について合意したのち、「他の投資家(フォロー)」の投資手続きも決着させることになります。

リードとのすべての条件交渉が終わる前でも、リードの投資意向が見えている場合にはフォローの手続きも並行して進んでいくのが普通です。

ただし、リードの投資意思決定がフォローの投資意思決定の条件となっていることが多く、リードの意思決定を知らせて、投資実行の準備をしてもらう必要があります。

投資実行

リード、フォローの条件が整ったところで投資が実行され、会社の口座に入金されることになります。

フォローの投資実行がリード(や何社かのフォロー)よりも遅れることもあります。これは意思決定に時間がかかっている(投資すべきか悩んでいる)場合もありますし、単純にフォローの社内手続きの問題である場合もあります。

PRの実施

PRはパブリック・リレーションの略で、会社の広報活動を言います。ベンチャーキャピタル(VC)から投資を受けたのち、プレスリリースを出すことが多くあります。

「ベンチャーキャピタル(VC)からの投資を受けた」というのは会社にとっては「成果」として誇るべき事柄ですし、ニュースインパクトもあるため、会社の知名度を高めるチャンスだからです。

ラウンドに、ベンチャーキャピタル(VC)以外の投資家(事業会社やエンジェル投資家)が含まれる場合には「投資したことを開示しないでほしい」と言われることがあります。

また、社名を出して開示することは認められても、投資額(会社から見れば調達額)については開示を拒否する投資家もいます。

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ベンチャーキャピタル(VC)からの資金調達はプレスリリースまでがワンセットです。プレスリリースを行う際は、投資家の意向を慎重に確認しておきましょう。

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