ベンチャーキャピタル(VC)から資金調達するに当たっては、知識や情報が多ければ多いほど有利です。
その理由は、資金調達がベンチャーキャピタル(VC)との交渉事であるためです。交渉相手であるベンチャーキャピタル(VC)は資金調達を幾度となく経験しているのに対して、起業家側は多くの場合、初めての経験となります。
知識や情報があれば安心して取り組めることであっても、それがないために不安に襲われることも少なくありません。
資金調達に当たっての知識や情報は同じく資金調達に取り組んだ経験を持つ先輩起業家や、ベンチャーキャピタル(VC)、最近ではアクセラレータプログラム等、いろいろな人の話を聞くことにより得ることができます。
おすすめ本1.ベンチャー企業に携わる全ての人が目を通すべき、まさにバイブル「起業のファイナンス」
著者 磯崎哲也
発行年 2015
出版社 日本実業出版社
まずは全体像を知っておくことで、その後の個別の論点の理解が早くなります。本書はまさにその全体像を知るための格好の一冊です。
この本の特徴は3点あります。
一つはベンチャー企業の設立から上場に至るまで、そしてファイナンスに限らず法務等も含めてベンチャー企業が躓きやすい点について、解説しているという点です。つまり幅広くベンチャー企業が直面する問題を取り上げることで全体像を把握する、という目的にはうってつけの一冊と言えます。
ベンチャー企業の直面する問題について幅広く触れられているため、創業した後、何度も読み返しているベンチャー企業経営者も少なくありません。
そしてもう一つは非常に読みやすく書かれている点が挙げられます。ファイナンスに関しては、数字を扱うこととなるため、ともすれば数式が多くなりがちです。本書にはそのような読みづらさがありません。
最後の一つは、ファイナンスの中でも特に資本政策についてしっかり解説されていることです。
どんな内容
著者の磯崎哲也氏は公認会計士としてベンチャー企業の資金調達に携わってこられた経験を持って本書を書かれました。本書が発売される前はisologueという有名なブログを運営されていたことでも知られています(当該ブログ自体の更新は止まっていますが、活動の場をメルマガなどに移して現在でも情報発信を続けています)。
現在は自らフェムトパートナーズというベンチャーキャピタル(VC)を立ち上げ、ジェネラルパートナーとしてファンドを運営されています。
出典:フェムトパートナーズ
本書は2010年に発売され、2015年に増補改訂版が出ています。
こんな人におすすめ
この本がおすすめな人は、
- ベンチャー企業の資金調達に関わる全ての方
- ベンチャー企業に関わり始めたばかりの方
- ベンチャー企業についての理解を深めたい方
など・・・
おすすめ本2.文章よりもプレゼンテーションで学びたい人向け「起業大全」
書名 起業大全 スタートアップを科学する9つのフレームワーク
著者 田所 雅之
発行年 2020/7/30
出版社 ダイヤモンド社
この本の特徴
物事を理解する際、最初にフレームワークが頭に入っているのといないのとでは理解の速さが違ってきます。また課題に直面した際、適切なフレームワークを用いることで何をすればいいのかが明確になり、悩んで無為に時間を使ってしまうことを避けることができます。
この本はベンチャー企業の様々な課題に対して、どのようなフレームワークがあり、どのように使えばよいのかを解説しています。
ただ、フレームワークは一度、手に入れれば使い勝手が良いものの、言葉で説明されてもとても飲み込みずらいという特徴があります。これに対して、この本ではプレゼンテーションを用いることにより視覚的に訴えることでフレームワークを理解しやすくなっています。
どんな内容
ベンチャー企業の解決すべき9つの課題に対してそれぞれのフレームワークを提供します。資金調達については最後の章、ファイナンスに登場します。
ベンチャー企業経営者のリソースは有限である一方、やることは際限なくたくさんあります。ファイナンスに関するフレームワークを手に入れることでより的確な判断が下せるようになるとしています。
こんな人におすすめ
- ベンチャー企業の資金調達についていろいろと話は聞いているものの、頭の中で整理できていない人
- 手っ取り早くベンチャー企業の資金調達について学びたい人
- 文章を読むより、プレゼンテーションを見ることで理解がはかどる人
など・・・
おすすめ本3.具体的な資金調達の場面が思い浮かぶ「資金調達X.0」
書名 資金調達X.0 事業を軌道に乗せる新・資金調達 現代のスタートアップ法
著者 小山晃弘
発行年 2019/4/1
出版社 ゴマブックス
この本の特徴
ベンチャー企業の資金調達はベンチャーキャピタル(VC)からの調達が肝になるため増資の解説に偏りがちです。しかし、増資は資金調達の手段の一つで他にも方法はあります。
例えば融資です。最近は銀行等のベンチャー企業に対する融資姿勢も変わり、融資も有力な選択肢となっています。
またクラウドファンディングもあります。クラウドファンディングはベンチャー企業のプロダクトによっては、しっかりと計画に織り込むべき資金調達手段の一つとなってきています。
この本は増資以外の資金調達方法も広く解説している点に特徴があります。
どんな内容
会社を創業してから、それぞれの事業ステージで検討する資金調達の方法は異なります。この本では、順を追ってそれぞれの調達方法を学ぶことができます。
中でも特に力強く創業期のベンチャー企業を支援してくれる日本政策金融公庫(単に公庫と呼ばれることが多いです)からの融資について解説されています。公庫からの融資はどのようなものなのか、どのような手続きで融資が進んでいくのか、実際に提出する書類をどのように書いたらよいのか、を丁寧に説明しています。
こんな人におすすめ
- 公庫からの融資を検討している人
- 初めてベンチャー企業の資金調達を行う人
- 創業を考えている人
など・・・
おすすめ本4.ベンチャーキャピタル(VC)の考え方を学べる「僕は君の「熱」に投資しよう――ベンチャーキャピタリストが挑発する7日間の特別講義」
書名 僕は君の「熱」に投資しよう――ベンチャーキャピタリストが挑発する7日間の特別講義
著者 佐俣アンリ
発行年 2020/8/6
出版社 ダイヤモンド社
この本の特徴
ベンチャーキャピタル(VC)からの資金調達について知るためには、ベンチャーキャピタル(VC)がどのようなことを考えて、望んでいるかを知っておくべきです。
この本はベンチャーキャピタル(VC)ANRIの経営者、そしてキャピタリストでもある佐俣アンリ氏によって書かれています。ベンチャーキャピタル(VC)のまさに当事者の考え方を知ることができます。
ベンチャーキャピタル(VC)が特に重要視する「成長」とは何なのかを解説している点がこの本の特徴です。
どんな内容
この本はベンチャー企業の立ち上げを熱く進める本です。細かい資金調達の方法や技術について述べられているものではありません。
またこの本を読むことでベンチャーキャピタル(VC)から投資を受けた後、どのようなことをベンチャーキャピタル(VC)から求められことになるのか、も知ることができるでしょう。
こんな人におすすめ
- 起業を考えている人
- ベンチャー企業を経営している人
- ベンチャーキャピタル(VC)からの資金調達を検討している人
など・・・
おすすめ本5.資金調達の目的を考えなおせる「ゼロ・トゥ・ワン: 君はゼロから何を生み出せるか」
書名 ゼロ・トゥ・ワン: 君はゼロから何を生み出せるか
著者 ピーター・ティール
発行年 20214/9/25
出版社 NHK出版
この本の特徴
この本を書いたピーター・ティールはPaypalという(アメリカの)ベンチャー企業を創業し(その時の仲間にテスラ・モータースを率いるイーロン・マスクがいます)、その多大な成功の後に自らベンチャーキャピタル(VC)を立ち上げて多数のベンチャー企業への投資を行っている投資家です(特にFaceBookの初期の投資家として有名です)。
そのペーター・ティールがスタンフォード大学の学生に向けた講義をまとめたのがこの本です。
彼が学生に求めるものはそのまま、彼が投資家に求めるものにつながります。また、日本でも多くのキャピタリストがこの本をお勧めの本として挙げています。
どんな内容
この本に書かれていることはベンチャー企業が何を目指すべきなのか、というもっとも基本的な話です。それは、他人にはないアイディアを元に起業することに他なりません。その結果、市場を独占することができることになります。
AppleやGoogle、FaceBookを目指す、と聞くと夢物語に聞こえるかもしれません。
しかし、ベンチャーキャピタル(VC)はそのような会社を探しており、そのようになれるかもしれない会社への投資を望んでいるのです。
こんな人におすすめ
- 起業を考えている人
- 起業したのち、事業の進め方を変える必要があると感じている人
- ベンチャーキャピタルからの資金調達を考えている人
など・・・
おすすめ本6.ベンチャー企業が経験した資金調達を追体験できる「現役経営者が教えるベンチャーファイナンス実践講義」
書名 現役経営者が教えるベンチャーファイナンス実践講義
著者 水永政志
発行年 2013/2/1
出版社 ダイヤモンド社
この本の特徴
この本を書いた水永政志氏はスター・マイカ株式会社の創業者にしてCEOです。この本は著者が、創業から上場を通じて得た経験を元に書かれた本です。
ベンチャーキャピタル(VC)からの資金調達について書かれた本は多くありますが、自ら上場まで事業を進めた経営者が資金調達について書いた本は珍しいです。
また水永氏は大学で教えていることもあり、自らの経験だけではなくそれを一般化して、誰もが使える「知識」に変換している点がこの本の特徴といえます。
どんな内容
資金調達については実際にやってみてどのような点が問題になり、何に悩むのかを理解することも重要です。その点、この本は著者が実際に直面した問題を丁寧に説明しています。
また、この本は用語の解説が非常に丁寧で、多くの用語について説明しています。これにより、初めてベンチャー企業の資金調達に触れる人が用語でつまずいてしまわまないように配慮されています。
こんな人におすすめ
- ベンチャー企業の経営をしている人
- ベンチャー企業の管理職以上の人
- ベンチャー企業の資金調達について知りたい人
など・・・
まとめ
ここまで紹介してきた本はいずれも書き手の体験が元となっています。
また、いざ、資金調達を行う際には、じっくり本を読みなおしている余裕はないでしょう。その時に、自分の求める知識に素早くたどり着くためにも今から読んでおくことをお勧めします。