少人数私募債による中小企業の社債発行は有効な資金調達方法となっています。今回はその少人数私募債を付き合いのある金融機関が引き受ける際に活用できる信用保証協会の「特定社債保証制度」について解説します。
特定社債保証制度とは
一定の条件を満たした中小企業が発行する社債(少人数私募債)を金融機関が引き受ける際に信用保証協会が保証をする制度のこと
を意味します。
特定社債保証制度の概要
保証形態 | 保証協会80%、金融機関20%の共同保証方式 |
---|---|
発行額 | 1回3000万円~5億6000万円 |
発行形式 | 振替債 |
資金使途 | 運転資金または設備資金 |
保証期間 | 2年以上7年以内 |
返済方式 | 満期一括償還、定時償還 |
保証料率 | 保証協会の定める料率 |
担保 | 不要。保証金額2億円超で担保が必要 |
保証人 | 不要 |
特定社債保証制度を利用する条件
条件 | 項目 | 基準A | 基準B | 基準C |
---|---|---|---|---|
必須条件 | 純資産額 | 5千万円以上 3億円未満 |
3億円以上 5億円未満 |
5億円以上 |
ストック要件 どちらか一つを満たす |
自己資本比率 | 20%以上 | 20%以上 | 15%以上 |
純資産倍率 | 2.0倍以上 | 1.5倍以上 | 1.5倍以上 | |
フロー要件 どちらか一つを満たす |
使用総資本事業利益率 | 10%以上 | 10%以上 | 5%以上 |
インスタレスト・カバレッジ・レシオ | 2.0倍以上 | 1.5倍以上 | 1.0倍以上 |
- 純資産額 = 資本を含む賃貸対照表の資本の合計
- 自己資本比率 = 純資産額 / 総資産
- 純資産倍率 = 純資産額 / 資本金
- 使用資本事業利益率 =(営業利益 + 受取利息 + 受取配当金) / 資産 / 100
- インタレスト・カバレッジ・レシオ = (営業利益 + 受取利息 + 受取配当金) / (支払利息 + 割引料)
特定社債保証制度の審査
前述した条件をクリアしているかがチェックされます。その後、各資産の勘定科目の内容を精査することになります。すべて時価で審査されるため、不良債権や余剰在庫、含み損、含み益なども時価評価として判断されます。
その上で「社債を償還する能力があるかどうか?」の審査をするのです。営業利益やフリーキャッシュフローの金額が重視されるのは言うまでもありません。収入がなければ社債の償還ができないからです。
特定社債保証制度を利用するメリット
2億円以下なら無担保、保証人不要で資金調達が可能
特定社債保証制度の利用条件をクリアしていれば、社債を金融機関が引受てくれる可能性が高くなります。これは保証協会の厳正な審査をクリアしたということと、万が一償還前に倒産したとしても、保証協会が80%は支払ってくれるので金融機関側のリスクが軽減されることが理由になります。
金融機関が社債を引き受けてくれるのであれば、通常の銀行融資とは違って、無担保(2億円以下)、保証人不要で資金調達ができるのです。資金調達の方法としては非常にメリットがあります。
「特定社債保証制度を受けられた」事実が社会的信用につながる
この特定社債保証制度はあくまでも金融機関が社債を引き受ける際に適用される制度ですので、金融機関以外の投資家には関係がありません。
しかし、特定社債保証制度がついたということは厳しい信用保証協会の審査に通ったということですから、ある意味で「格付けのような信用」が生まれるのです。
「信用保証協会が保証をつけるような社債だから、自分が引受ても大丈夫だろう。」と考えてくれるため、社債の引き受け手を探すのが容易になります。また、社債以外の資金調達でも、信用の証として活用できるのです。
特定社債保証制度のデメリットと注意点
あくまでも金融機関が引き受けるもののみ保証される
金融機関が引き受けるときに信用保証協会が保証をする制度であり、金融機関以外の社債の引き受け手については保証はされません。
条件を満たさなければ利用できない
信用保証協会の条件を満たさない場合は特定社債保証制度は利用できません。
まとめ
特定社債保証制度は厳しい審査がある反面、審査が通れば、銀行から無担保、保証人不要で社債の引き受ける形で資金調達ができる制度です。
条件に合致している場合は申込んでみるのも資金調達の賢い選択肢と言えます。
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