これは、不動産売却を検討している方誰もが考えることではないでしょうか?そのための方法について専門家が解説します。
不動産売却の仕組みをおさらい
まず、不動産を高値で売却するためにはいくつか不動産取引の仕組みを理解しなければなりません。
と思う方もいるかもしれませんが、現実的に「不動産取引の仕組み」を理解しなければ、高く売ってくれる不動産会社を見つけることはできないのです。
その1.不動産会社の仲介手数料は法律で決まっている
不動産会社の取り分「仲介手数料」は
売買価格 | 報酬額 |
---|---|
200万円以下の部分 | 取引額の5%以内 |
200万円超400万円以下の部分 | 取引額の4%以内 |
400万円超の部分 | 取引額の3%以内 |
と決まっています。
多くの場合は、不動産価格は400万円をこえることが多いので
という計算になります。この数値は上限ですが、ほぼこの上限値で取引が行われています。
- 200万円以下は、5%なので計算のベースの3%よりも2%多いので、その分の4万円
- 200万円~400万円は、4%なので計算のベースの3%よりも1%多いので、その分の2万円
「合計:6万円」を後から足しているだけです。速算式と呼ばれています。
不動産会社は
- 売り手から「売買価格 × 3.0% +6万円」
- 買い手から「売買価格 × 3.0% +6万円」
を受け取ることが可能です。
不動産会社A社に不動産売却を依頼した場合
不動産会社A社が自分で買い手を見つけてきた場合には
「両手取引」:不動産会社A社に「売買価格 × 6.0% +12万円」が手に入ります。
不動産会社B社が不動産会社A社の掲載物件を見て、買い手を見つけてきた場合には
「片手取引」:不動産会社A社に「売買価格 × 3.0% +6万円」が手に入ります。
「片手取引」:不動産会社B社に「売買価格 × 3.0% +6万円」が手に入ります。
これが不動産会社の収入になります。
その2.不動産会社は同じ不動産サイトに物件を掲載する
不動産会社というのは、不動産売却の依頼が来たら・・・
- 自社の顧客(投資家)に案内する
- 自社で不動産サイトに掲載する
- 他社から来た掲載依頼に対応する(他社が不動産サイトに掲載する)
という流れを取ります。
自社の顧客(投資家)に案内して、物件の購入が決まれば「両手取引」で美味しい取引が可能です。
ですので、まずは自社の顧客(投資家)に購入を案内します。
次に自社の物件を不動産サイトに掲載します。
- HOMES
- SUUMO
- アットホーム
・・・
など、主要な不動産サイトに掲載します。
最後にレインズに掲載します。
媒介契約締結の日から7日以内がレインズへの登録期限です。
レインズに掲載すると、他の不動産会社もその物件情報を見ることができるので、他の不動産会社も、売りたいと思えば、該当物件を不動産サイトに掲載します。
- HOMES
- SUUMO
- アットホーム
・・・
など、主要な不動産サイトに掲載します。
このような構造になっているからこそ
「検索結果に、同じ物件が違う不動産会社名でいっぱい表示されている。」
ということが起こるのです。
その3.不動産会社には媒介契約と一般契約がある
できること | 媒介契約 | 専任媒介契約 | 一般媒介契約 |
---|---|---|---|
複数の不動産会社への仲介依頼 | × | × | ○ |
自ら探した相手との直接契約 | × | ○ | ○ |
- 専任媒介契約:その不動産会社に完全に売却を依頼する方法
- 一般媒介契約:複数の不動産会社に売却を依頼する方法
ほぼどちらかの契約方法を選ぶことになります。
不動産売却時の不動産会社の思惑と、不動産売却の注意点
その1.不動産売却では両手取引をしたがる業者は値下げ圧力を生む
前述した通りで
- 「両手取引」:「売買価格 × 6.0% +12万円」
- 「片手取引」:「売買価格 × 3.0% +6万円」
当然、ほぼ同じ労力で2倍の収益が生まれるのですから
というのが99%の不動産会社が考えることです。
と思う方も多いですが・・・
売却希望価格が3000万円の物件の場合
- 両手取引:3000万円 × 6.0%+12万円 = 192万円の収入
- 片手取引:3000万円 × 3.0%+ 6万円 = 96万円の収入
です。
こうなると「両手取引」の業者は
という考えを持つのです。
3000万円が適正価格であっても
- 2800万円にすれば、自社の既存顧客(投資家)に売れるかもしれません。
- 2800万円にすれば、自社が不動産サイトに掲載したらすぐに問い合わせが入るかもしれません。
とウソの誘導をして、「自社ルートでの売却による両手取引」を狙いに行くのです。
2800万円でも両手取引であれば
- 両手取引:2800万円 × 6.0%+12万円 = 180万円の収入
- 片手取引:3000万円 × 3.0%+ 6万円 = 96万円の収入
で
の方が収益が大きいのです。早期売却できれば、人件費や不動産の保有コストも小さくできるので、多くの不動産会社がこのような形で「両手取引」を狙いに行くのです。
不動産会社の思惑を外して、高値売却するためには
ということになります。
その2.一般媒介契約ではやる気を出さない
できること | 媒介契約 | 専任媒介契約 | 一般媒介契約 |
---|---|---|---|
複数の不動産会社への仲介依頼 | × | × | ○ |
自ら探した相手との直接契約 | × | ○ | ○ |
ですから、売り手からすれば
と思ってしまいます。
しかし、あなたが不動産会社の経営者だったとして
- 専任媒介契約のお客様:50人(ライバル:なし)
- 一般媒介契約のお客様:50人(ライバル:あり)
がいた場合に、どちらを優先して買い手を探すでしょうか?
一般媒介契約の場合は、どんなに手間暇かけても、最後に他の不動産会社で売られてしまう可能性があります。
不動産会社の人員も、無限にいるわけではありませんので、コストをかけて対応すれば高い確率で自社で売却できる「専任媒介契約」が優先されるのです。
不動産会社の思惑を外して、高値売却するためには
ということになります。
その3.一括査定サイトの査定価格は信用しない
不動産売却では「一括査定サイト」を利用する機会が多いはずです。
3000万円が適正価格の不動産を一括査定サイトに見積もり依頼すれば
- 不動産会社A社:3123万円
- 不動産会社B社:3203万円
- 不動産会社C社:3309万円
・・・
と高い査定価格がつき、適正価格以上の「不動産会社C社:3309万円」で売れる
と思ってしまいます。
しかし、「一括査定サイト」の査定価格は、あくまで「査定(売れるかもしれない)価格」であり、「確実にその価格で売らなければ不動産会社にペナルティがある価格ではない。」ということに注意が必要です。
不動産会社の思惑は
というものです。
不動産会社の思惑を外して、高値売却するためには
ということになります。
プロが教える不動産を高値で売却する方法
手順その1.不動産一括査定サイトで複数社の不動産会社を見つける
導入は、不動産一括査定サイトを利用します。
この時点で不動産会社は「一括査定サイト」を使っていることを理解しています。
- 競争相手がいる状態であること
- 高値売却を希望していること
を前提条件として理解するのです。
そのため、「一括査定サイト」を使うこと自体には、牽制の意味もあるので、問題ありません。
おすすめの不動産売却一括査定サイト
不動産売却一括査定「イエイ不動産売却査定」
RE-Guide不動産一括査定
不動産売却一括査定「イエウール」
手順その2.見積もり提示した不動産会社の情報をチェックする
不動産サイトでの不動産会社の掲載物件情報をチェックしましょう。
- 掲載物件数が少ない
- 掲載物件の表示情報(見出し、概要説明)が魅力的に見えない
- 掲載物件の表示情報(写真)が魅力的に見えない
- 不動産サイトにその不動産会社の物件がない
・・・
という不動産会社の場合は
- 自社で物件を売る能力が低い
- インターネットを活用していない
ことを示しています。
手順その3.複数社に「訪問査定」を依頼する
一括査定サイトでの査定価格は、現場を見ない「机上査定」です。物件の劣化状況や瑕疵などは考慮されません。
実際に不動産売却を依頼するタイミングでは、「訪問査定」を依頼して、実際に現地を見に来てもらって査定してもらう必要があります。
この時に1社だけの不動産会社に「訪問査定」を依頼してしまうと、その場の営業トークに呑まれて、その会社に契約せざるを得ない雰囲気になってしまいます。
はじめから、3社ぐらいは「訪問査定」の予定を組んでおけば、強引な契約依頼にも
「他の会社にも「訪問査定」を依頼していますので、それが終わったらご連絡させていただきます。」
とスマートにに断ることができるのです。
手順その4.不動産会社の営業マンにヒアリングをする
「訪問査定」の時に不動産会社の営業マンにヒアリングをします。
「御社の両手取引の割合はどのくらいでしょうか?」
【ヒアリング意図】
「競合物件はどのくらいの価格帯で出していますか?」
「競合物件に対してこの物件はどういう強み・弱みがありますか?」
【ヒアリング意図】
「査定価格の根拠は何でしょうか?」
【ヒアリング意図】
査定価格が、根拠なしに高値設定されている場合には、その価格で売却できる可能性は非常に少ないと言えます。
「専任媒介契約」欲しさに高値で査定価格を適当に付けただけでしょう。
そんな不動産会社では、査定価格で売れることはなく、後から「この価格では買い手がつかなかったので、値下げしましょう。」と言われるのが落ちです。査定価格の算定根拠をヒアリングする必要があります。
「販売戦略を教えてください。」
【ヒアリング意図】
「どういう手順で販売をするのか?」ヒアリングします。
レインズに掲載しないで、他の不動産会社に隠しておく「囲い込み」などをする業者もあるため、「どの不動産サイトに掲載するのか?」「他社が扱える状態になっているのか?」を確認します。
手順その5.複数社から1社に絞る
- 訪問査定の価格
- 査定根拠
- 不動産会社の販売戦略
- 両手取引の割合
- 不動産会社の営業マンの印象
を比較して、1社に絞り込む必要があります。
専任媒介契約の契約期間は3カ月です。
1社を選ぶ際にも、次点の候補を残しながら
と、にこやかに、プレッシャーを掛けましょう。
まとめ
不動産会社の思惑を理解すれば
- その1.不動産売却では両手取引をしたがる業者は値下げ圧力を生む
- その2.一般媒介契約ではやる気を出さない
- その3.一括査定サイトの査定価格は信用しない
ということがわかります。
不動産会社の思惑を交わしながら、高値売却を実現するためには
- 手順その1.不動産一括査定サイトで複数社の不動産会社を見つける
- 手順その2.見積もり提示した不動産会社の情報をチェックする
- 手順その3.複数社に「訪問査定」を依頼する
- 手順その4.不動産会社の営業マンにヒアリングをする
- 手順その5.複数社から1社に絞る
という手順で、不動産査定、不動産売却を進めることをおすすめします。
不動産会社によって「売却できる時期」「売却価格」は大きく変わってくるものです。人を雇用するときの面接のように不動産会社の強み・弱み・内実・思惑を理解した上で、優秀な不動産会社に依頼しなければなりません。査定価格は、売却価格を保証してくれるものではありませんので、あくまでも目安であることを理解して、不動産売却を進めましょう。