債務整理・事業再生の5手続きを条文で比較|民事再生・会社更生・特別清算・破産・特定調停

民事再生から特定調停まで5つの手続きの可決に必要な同意を条文番号とともに並べたアイキャッチ

民事再生、会社更生、特別清算、破産、特定調停。名前は知っていても、どの数字が法律に書かれていて、どこからが裁判所や当事者の判断なのかは、条文を並べないと見えません。このページは5つの手続きを同じ軸で比べ、根拠の条文を各欄に示します。数字はすべてe-Gov法令検索の条文で確認したものです。

比較の結論を先に

  • 対象を法人の形で絞っているのは会社更生(株式会社のみ)と特別清算(清算株式会社のみ)。民事再生・破産・特定調停に会社の種類による限定はない。
  • 多数決で反対者まで拘束するのは民事再生・会社更生・特別清算。特定調停に多数決の定めはなく、破産は配当の順位で決まる。
  • 経営の権限が外れるのは会社更生(管財人に専属)と破産(破産管財人に専属)。民事再生は再生債務者に残るのが原則。
  • 債務の期限の上限は、民事再生が10年、会社更生が15年(特別の事情があれば20年)。特別清算・特定調停に条文上の上限はない。
  • 費用の予納がなければ、民事再生・会社更生・特別清算・破産は入口で止まる。

5つの手続きを1枚で並べる

まず全体像です。各欄の括弧内が根拠の条文です。

5つの手続きの基本比較
軸 民事再生 会社更生 特別清算 破産 特定調停
根拠法 民事再生法 会社更生法 会社法510条以下 破産法 特定調停法+民事調停法
向かう先 事業または経済生活の再生(1条) 事業の継続を内容とする計画(41条1項3号) 清算の結了(514条2号) 換価と配当 経済的再生(1条)
対象 債務者(21条1項) 株式会社のみ(17条1項) 清算株式会社(510条) 債務者(15条・16条) 特定債務者(2条1項)
経営・財産の権限 再生債務者に残るのが原則(38条1項) 管財人に専属(72条1項) 清算株式会社(許可・同意が要る。535条) 破産管財人に専属(78条1項) 当事者のまま
多数決の有無 あり(172条の3) あり(196条5項) あり(567条1項) なし(194条の順位による) 条文に定めなし
債務の期限の上限 10年(155条3項) 15年/20年(168条5項) 条文に定めなし — 条文に定めなし
5本の道が中央の分岐から左右に分かれていく街並みを描いたイメージ画像
どの道を選ぶかで、止まるもの、残るもの、必要な同意の数が変わる。

誰が使えるか:対象の限定

条文の主語を読むと、対象の広さが3段階に分かれます。

対象の限定(各法の条文)
手続 条文の書き方 範囲
民事再生 「債務者に破産手続開始の原因となる事実の生ずるおそれがあるとき」(21条1項) 法人・個人を問わない
会社更生 「株式会社は、当該株式会社に更生手続開始の原因となる事実があるときは」(17条1項) 株式会社のみ
特別清算 「裁判所は、清算株式会社に次に掲げる事由があると認めるときは」(510条) 清算中の株式会社のみ
破産 「債務者が支払不能にあるときは」(15条1項)。法人は債務超過も原因(16条1項) 法人・個人を問わない。存立中の合名・合資会社は債務超過を除く(16条2項)
特定調停 「金銭債務を負っている者であって、支払不能に陥るおそれのあるもの」等(2条1項) 法人・個人を問わない。3類型のうち1つは法人限定

会社更生と特別清算が株式会社に限られているのは、株式を権利の種類として扱う仕組み(会社更生法168条1項5号・6号)や、清算手続の中に置かれた位置づけと表裏です。

誰が申し立てられるか

申立権者の広さと、要求される持分の有無で差が出ます。

申立権者と必要な持分
手続 申立権者 持分・債権額の要件
民事再生 債務者、債権者(21条) 定めなし
会社更生 株式会社、債権者、株主(17条) 債権者は資本金の額の10分の1以上、株主は総株主の議決権の10分の1以上
特別清算 債権者、清算人、監査役、株主(511条1項) 定めなし。債務超過の疑いがあるとき清算人に申立義務(511条2項)
破産 債権者、債務者(18条1項) 債権者は債権の存在と開始原因の事実を疎明(18条2項)
特定調停 特定債務者(3条1項) 定めなし

特別清算だけに申立ての義務が置かれている点は見落とされがちです。会社法511条2項は、債務超過の疑いがあるときに清算人が申立てをしなければならないと定めています。

入口で止まる条件

申し立てれば必ず始まるわけではありません。4つの手続きには棄却・不開始の事由が条文で列挙されています。

開始されない場合
手続 条文 主な事由
民事再生 25条 費用の予納がない/破産・特別清算が係属しそちらが債権者の一般の利益に適合する/計画の作成・可決・認可の見込みがないことが明らか/不当な目的
会社更生 41条1項 費用の予納がない/破産・再生・特別清算が係属しそちらが適合する/事業の継続を内容とする計画の見込みがないことが明らか/不当な目的
特別清算 514条 費用の予納がない/清算を結了する見込みがないことが明らか/債権者の一般の利益に反することが明らか/不当な目的
破産 30条1項 費用の予納がない(23条1項前段の場合を除く)/不当な目的
特定調停 11条 民事調停法13条の場合のほか、申立人が特定債務者と認められない/性質上適当でない

破産だけ事由が2つしかありません。再建の見込みを問う必要がないためです。なお破産では、財団で費用を支弁できないと認めるときは開始決定と同時に廃止の決定がされます(216条1項)。

費用の予納は、どの手続きでも最初の関門。

民事再生25条1号、会社更生41条1項1号、会社法514条1号、破産法30条1項1号。4つとも1号に置かれています。額は事件の規模と裁判所の運用で決まり、法律には書かれていません。

閉じた金庫と、そこから離れた場所に置かれた大きな鍵を描いたイメージ画像
財産を動かせる人が誰かは、手続が始まった時点で条文によって決まる。

開始後に誰が経営するか

最も結果の違う軸です。

開始後の業務遂行権・財産の管理処分権
手続 条文 誰が持つか
民事再生 38条1項 再生債務者。ただし64条1項の管理命令がされた場合は適用しない(38条3項)
会社更生 72条1項 裁判所が選任した管財人に専属(国外の財産も含む)
特別清算 535条・527条 清算株式会社。ただし一定の行為に裁判所の許可、または監督委員の同意が要る
破産 78条1項 破産財団に属する財産について破産管財人に専属
特定調停 条文に定めなし 当事者のまま。財産の管理権を移す規定はない

開始後に支払いはどうなるか

再建型の2つと清算型では、止め方が違います。

開始後の弁済の制限
手続 条文 内容
民事再生 85条1項 再生債権は計画の定めによらなければ弁済・受領その他消滅させる行為ができない(免除を除く)
会社更生 47条1項 更生債権等について同じ構造の禁止
特別清算 537条1項 協定債権者に債権額の割合に応じて弁済しなければならない
破産 100条1項 破産債権は破産手続によらなければ行使できない
特定調停 条文に定めなし 一律に止める規定はない。民事執行の停止は個別に申し立てる(7条)

特別清算だけ禁止ではなく按分です。止めるのではなく、割合を固定するという設計になっています。

例外的に払える債権

禁止型の手続きには、同じ形の例外が置かれています。

計画によらずに弁済できる例外
手続 主要な取引先である中小企業者 少額債権 約定劣後
民事再生 85条2項。裁判所の許可。申立てまたは職権 85条5項。再生債務者等の申立て 適用しない(85条6項)
会社更生 47条2項。管財人の申立てまたは職権 47条5項。管財人の申立て 適用しない(47条6項)
特別清算 — 537条2項。少額・担保付等について割合を超えて弁済できる —
破産 — — —

会社更生には報告義務も付いています。47条4項により、管財人は更生債権者等から申立てを求められたら直ちに裁判所へ報告し、申立てをしないこととしたときは遅滞なくその事情を報告しなければなりません。

強制執行と担保権はどうなるか

既にされている強制執行等の扱い
手続 条文 扱い
会社更生 50条1項 中止する。特別清算手続は効力を失う
特別清算 515条1項・2項 中止し、開始命令の確定により特別清算の手続の関係で効力を失う。一般の優先権がある債権に基づくものは除く
破産 42条2項 破産財団に対して効力を失う。ただし管財人が破産財団のために続行できる
特定調停 7条1項 申立てと疎明により個別に停止を命じられる。給与に係る債権に基づくものは対象外

担保権の扱いも分かれます。破産法65条1項は別除権を破産手続によらないで行使できるとし、67条1項は相殺も手続外でできるとしています。これに対し会社更生では、更生担保権が168条1項1号の権利の種類として計画の対象になります。

国税滞納処分の扱い

税は条文が個別に扱っています。

租税に関する条文
手続 条文 内容
会社更生 50条2項・3項 開始決定の日から1年間は国税滞納処分ができず、既にされているものは中止。伸長には徴収の権限を有する者の同意が要る
破産 148条1項3号 開始当時まだ納期限が到来していない、または納期限から1年を経過していない租税等の請求権は財団債権
破産 100条2項 開始時に既にされている国税滞納処分等による行使には100条1項を適用しない
破産(個人) 253条1項1号 免責の効力は租税等の請求権に及ばない

開始の効力はいつ生じるか

決定が出た瞬間に効くのか、確定を待つのか。この違いは、取引先への連絡や資金繰りの組み替えをいつ始めるかに直結します。3つの法律が同じ書き方をしています。

開始決定の効力発生時期
手続 条文 書き方
民事再生 33条2項 前項の決定は、その決定の時から、効力を生ずる
会社更生 41条2項 前項の決定は、その決定の時から、効力を生ずる
破産 30条2項 前項の決定は、その決定の時から、効力を生ずる
特別清算 515条2項 中止した手続等が効力を失うのは開始命令が確定したとき

再建型2つと破産は、確定を待たずに決定の時点で動き出します。不服申立てがあっても効力の発生は後ろへずれません。特別清算では、中止した強制執行等が失効するのは命令の確定時と書き分けられています。

開始より前に止められるもの

申立てから決定までの間にも、財産や債権者の動きを止める仕組みが置かれています。許可制とは別の系統の条文です。

申立てから決定までの間の処分
手続 条文 内容 即時抗告の効力
会社更生 30条 保全管理人による管理を命ずる処分。1人または数人の保全管理人を選任する 執行停止の効力を有しない(5項)
特別清算 会社法540条2項 財産の処分禁止の仮処分その他の必要な保全処分 条文に定めなし
特別清算 会社法542条2項 対象役員等の財産に対する保全処分。緊急の必要があるとき 条文に定めなし
破産 25条 全ての債権者に対する強制執行等および国税滞納処分の禁止(包括的禁止命令) 執行停止の効力を有しない(7項)
特定調停 7条 特定調停の目的となった権利に関する民事執行の手続の停止。申立てと疎明が要る 即時抗告ができる(4項)

破産の包括的禁止命令には条件が付いています。25条1項ただし書により、事前にまたは同時に28条1項の保全処分をした場合か、91条2項の保全管理命令をした場合に限られます。債権者の手だけを縛る形にはしないという設計です。

手続を動かす機関

誰が選ばれ、何をするのかも手続ごとに違います。名前が似ていても権限は同じではありません。

手続の機関と主な権限
機関 手続と条文 主な権限
監督委員 民事再生法54条 同意を得なければ再生債務者がすることができない行為を指定される。同意なしの行為は無効
監督委員 会社法527条 535条1項の許可に代わる同意をする権限を付与されることがある。法人も就任できる
管財人 会社更生法42条1項 開始決定と同時に選任される。事業の経営と財産の管理処分の権利が専属する
破産管財人 破産法78条 破産財団に属する財産の管理処分権が専属する。15の行為に裁判所の許可
調査委員 会社法522条 開始に至った事情、業務・財産の状況、役員等責任査定決定の要否などを調査する
民事調停委員 特定調停法8条 法律、税務、金融、企業の財務、資産の評価等の専門的知識経験を有する者が指定される

会社更生法42条1項は、開始決定と同時に管財人を選任し、更生債権等の届出期間と調査期間を定めなければならないとしています。後から検討する事項ではありません。第2項には、知れている更生債権者等の数が1,000人以上で相当と認めるときの通知省略の特則も置かれています。

会社法522条1項の調査命令は、知れている債権者の債権の総額の10分の1以上に当たる債権を有する債権者、または議決権の100分の3以上を6か月前から引き続き有する株主などの申立てによることができます。公開会社でない清算株式会社では、6か月という保有期間の要件が外れます(同条3項)。

役員の責任を追及する仕組み

手続の中で、役員の責任が別途追及されることがあります。会社法542条1項は、清算の監督上必要と認めるときに、発起人、設立時取締役、設立時監査役、423条1項に規定する役員等または清算人の責任に基づく損害賠償請求権について、その財産に対する保全処分ができると定めています。

545条1項は、必要と認めるときに損害賠償請求権の査定の裁判(役員等責任査定決定)ができるとしています。第3項は、この申立てまたは職権による手続開始の決定があったときの効果として、時効の完成猶予と更新について裁判上の請求があったものとみなすと定めています。第4項により、査定決定の手続は特別清算が終了したときに終了します(決定があった後のものを除く)。

過去の取引がさかのぼって覆ることがある

破産法には否認権の規定があり、手続の前に行った取引の効力が後から否定されることがあります。期間が条文に書かれているため、取引を見直す起点になります。

否認の対象と期間(破産法160条・162条)
条文 対象 期間・要件
160条1項1号 破産債権者を害することを知ってした行為 利益を受けた者が知らなかったときを除く
160条1項2号 支払の停止等があった後にした、破産債権者を害する行為 利益を受けた者が知らなかったときを除く
160条3項 無償行為およびこれと同視すべき有償行為 支払の停止等があった後、またはその前6か月以内
162条1項1号 既存の債務についてした担保の供与・債務の消滅に関する行為 支払不能になった後、または申立てがあった後。債権者が知っていた場合に限る
162条1項2号 義務に属しない、または時期が義務に属しない行為 支払不能になる前30日以内
162条3項 支払の停止(申立て前1年以内のものに限る)があった後 支払不能であったものと推定する

6か月、30日、1年。3つの期間が条文に置かれています。支払いが苦しくなってからの弁済や担保設定は、後から見直される余地があるということです。

計画・協定で決められること

権利変更の枠
手続 平等原則 期限の上限 触れられないもの
民事再生 再生債権者の間で平等。同意・少額等は例外(155条1項) 認可決定の確定から10年(155条3項) 開始前の罰金等(155条4項)
会社更生 同一の種類の権利を有する者の間で平等。種類間は順位を考慮した公正かつ衡平な差(168条1項・3項) 15年。特別の事情があれば20年(168条5項) 開始前の罰金等(168条7項)
特別清算 協定債権者の間で平等(565条) 条文に定めなし —
特定調停 公正かつ妥当で経済的合理性を有する内容(15条・17条2項) 条文に定めなし —

会社更生の15年・20年は、担保物の耐用期間が判定できる場合にはその耐用期間と15年(または20年)のいずれか短い期間になります。社債を発行する場合はこの上限が適用されません(168条6項)。

数の多い側へ大きく傾いた天秤を描いたイメージ画像
頭数で測るのか、金額で測るのか、その両方か。手続ごとに秤の目盛りが違う。

可決に必要な同意

数字が最も細かく分かれる軸です。

可決の要件
手続 頭数の要件 金額の要件
民事再生 議決権者(出席または書面投票をした者に限る)の過半数(172条の3第1号) 議決権の総額の2分の1以上(同2号)
会社更生(更生債権) 定めなし 議決権の総額の2分の1超(196条5項1号)
会社更生(更生担保権) 定めなし 期限の猶予は3分の2以上、減免等は4分の3以上、事業の全部廃止は10分の9以上(同2号)
会社更生(株式) 定めなし 議決権の総数の過半数(同3号)
特別清算 出席した議決権者の過半数(567条1項1号) 議決権の総額の3分の2以上(同2号)
特定調停 条文に定めなし 条文に定めなし

会社更生は権利の種類ごとに分かれて決議します(196条1項)。更生債権・更生担保権・株式は、それぞれ別の種類の権利としなければならないと定められています(同2項ただし書)。

認可・不認可の判断

認可されない場合
手続 条文 主な事由
民事再生 174条2項 法令違反で補正できない/遂行の見込みがない/決議が不正の方法で成立
会社更生 199条2項 6要件すべてに該当する場合に認可。法令適合、公正かつ衡平、遂行可能、決議が誠実かつ公正、他社の行為が可能、行政庁の意見に重要な点で反しない
特別清算 569条2項 法律違反で補正できない/遂行の見込みがない/不正の方法で成立/債権者の一般の利益に反する
特定調停 18条1項 公正かつ妥当で経済的合理性を有する合意の見込みがない/成立した合意がそう認められない

会社更生法199条3項には緩和規定があります。手続が法令等に違反していても、違反の程度、更生会社の現況その他一切の事情を考慮して認可しないことが不適当と認めるときは、認可の決定ができます。

労働組合と株主の関与

意見聴取と反対権
場面 条文 内容
民事再生の事業譲渡 42条2項・3項 知れている再生債権者と労働組合等の意見を聴かなければならない
会社更生の事業等の譲渡 46条3項 更生債権者、更生担保権者、労働組合等の意見を聴かなければならない
会社更生の事業等の譲渡 46条4項・7項 株主に公告・通知し、2週間以内に総株主の議決権の3分の1超の反対があれば譲渡できない
会社更生の認可 199条5項・7項 労働組合等は意見を述べられる。決定があった旨は通知される
特定調停(法人の事件) 14条2項 労働組合等の意見を求めるものとする

裁判所の許可が要る行為

手続中に自分の判断で動かせる範囲も違います。

許可制の入り方

民事再生・会社更生

裁判所が必要と認めたときに許可制にできる(民事再生法41条1項、会社更生法72条2項)。事業譲渡だけは常に許可が要る(民事再生法42条1項)。

特別清算

開始命令があれば当然に、財産の処分・借財・訴えの提起・和解・権利の放棄等に許可または監督委員の同意が要る(会社法535条1項)。金額による例外あり(同2項)。

破産

管財人の15の行為に許可が要る(78条2項)。金額による例外が及ぶのは7号から14号まで(同3項)。

違反の効果も共通しています。民事再生法41条2項、会社更生法46条9項、会社法535条3項は、いずれも許可を得ずにした行為を無効としたうえで、善意の第三者には対抗できないとしています。詳しくは法的整理で裁判所の許可が要る行為で条文を並べています。

上の球がまだ空になっていない砂時計を描いたイメージ画像
終結の決定、取消しの申立て、時効。閉じたあとにも期間を数える条文が置かれている。

終わり方

手続が閉じる条文
手続 条文 内容
民事再生 188条 監督委員も管財人もいなければ認可確定で終結。監督委員がいる場合は遂行時または認可確定から3年
会社更生 234条 棄却の確定、開始決定取消しの確定、不認可の確定、廃止の確定、終結の決定の5つ
特別清算 573条・574条 結了または必要がなくなったときに終結。協定の見込みがない等のときは職権で破産へ
破産 216条1項 財団で費用を支弁できないと認めるときは開始決定と同時に廃止
特定調停 民事調停法16条 合意が調書に記載されれば成立。裁判上の和解と同一の効力

終わったあとに残るもの

閉じたあとの扱いも条文が分けています。民事再生法189条は、認可決定の確定後でも不正の方法による成立、履行を怠ったこと、許可や同意を欠いた行為を理由に計画が取り消されることを定めています。190条により、履行完了前に破産手続開始等の決定がされると、変更された再生債権は原状に復します。

会社法571条2項は、協定が保証人その他清算株式会社と共に債務を負担する者に対して有する権利に影響を及ぼさないと明記しています。515条3項は協定債権の時効について、登記の日から2か月を経過する日までの間は完成しないとしています。詳しくは法的整理が終わったあとに残るもので条文を整理しています。

検討の分かれ目になる問い

条文から読み取れる範囲で、どの手続きを検討するかを分ける問いを並べます。いずれも結論を決めるものではなく、条文の要件に当てはまるかどうかを確かめるための入口です。

条文に当てはめる5つの問い

1

事業を続けるのか、たたむのか。続けるなら民事再生・会社更生・特定調停、たたむなら特別清算・破産に条文の目的が向いている。

2

株式会社か。会社更生は株式会社に限られ、特別清算は清算中の株式会社に限られる。

3

経営の主導権を残す必要があるか。会社更生と破産では権限が管財人に専属する。

4

反対する債権者を拘束する必要があるか。特定調停に多数決の定めはない。合意できた相手との間だけで条件が変わる。

5

費用を予納できるか。4つの手続きは1号に予納を置いており、ここで止まる。

この記事は条文の内容を整理したもので、個別の会社にどの手続きが適するかを判断するものではありません。どの手続きを選ぶか、いつ動くか、計画をどう組むかは、弁護士・公認会計士・税理士・中小企業診断士・認定経営革新等支援機関といった専門家に個別に確認してください。借りずに支払いを止める方法としては納税の猶予・換価の猶予、返済条件を変える方法としては銀行融資のリスケジュールもあります。

手続ごとの条文を読む

各手続きの詳しい条文

民事再生とは

目的、申立権者、棄却の4事由、弁済禁止と2つの例外、再生計画の平等と10年、可決の2要件、不認可の3事由までを条文で確認する。

会社更生とは

株式会社に限られる理由、資本金の10分の1という債権者の要件、管財人への専属、6種類の権利と可決割合、認可の6要件を条文で確認する。

特別清算とは

清算株式会社であること、清算人の申立義務、按分弁済、協定の可決要件、不認可の4事由、破産への移行における義務と裁量を条文で確認する。

破産手続とは

支払不能の推定、法人の債務超過、破産財団の範囲、管財人の権限、財団債権、配当の4順位、同時廃止までを条文で確認する。

特定調停とは

特定債務者の3類型、申立時の提出書類、民事執行の停止、経済的合理性の要件、裁判上の和解と同一の効力を条文で確認する。

事業再生ADR中のつなぎ資金

中小企業基盤整備機構の債務保証、てん補率80%、債権者全員の同意を要する確認、再生・更生計画での衡平の判断を条文で確認する。

手続きを選ぶ前の段階、つまり払う時期をずらす打ち手やつなぎ資金まで含めた全体の並びは、会社の債務を整理する方法の一覧で層に分けて整理しています。

この記事で扱っていないこと

確認したのは各法の条文です。予納金の額、審理の期間、申立てから開始までの日数、予納郵券の額は、裁判所ごと・事件ごとに決まるもので、今回は一次情報で確認していないため書いていません。統計や利用件数も扱っていません。

また、小規模個人再生・給与所得者等再生の特則、簡易再生・同意再生、否認権や相殺権の詳細、税務上の取扱いについても、このページでは比較に必要な範囲を超えて踏み込んでいません。

よくある質問

どの手続きがいちばん早いですか

所要期間は条文に書かれていません。計画案の提出時期について、会社更生法184条3項は開始決定の日から1年以内という上限を置いていますが、民事再生法163条1項は裁判所の定める期間としています。

合同会社でも使えますか

会社更生法17条1項は株式会社を対象としています。民事再生法21条1項と破産法15条・16条は会社の種類を限定していません。ただし破産法16条2項は、存立中の合名会社・合資会社について債務超過を開始原因から除いています。

全員の同意がなくても進められますか

民事再生・会社更生・特別清算には多数決の規定があり、可決・認可されれば反対した債権者も拘束されます。特定調停に多数決の定めはありません。

担保を持つ債権者はどう扱われますか

破産法65条1項は別除権を手続外で行使できるとしています。会社更生法168条1項1号は更生担保権を権利の種類として計画の対象に含め、196条5項2号で可決に必要な割合を3段階に分けています。

税金は減らせますか

民事再生法155条4項と会社更生法168条7項は、開始前の罰金等について減免等の定めができないとしています。租税等の請求権については、破産法148条1項3号が一定の範囲を財団債権とし、253条1項1号が個人の免責の効力を及ぼさないとしています。

保証人の責任はどうなりますか

会社法571条2項は、特別清算の協定が保証人その他共に債務を負担する者に対する権利に影響を及ぼさないと定めています。他の手続きについては、本記事では条文を確認していません。

出典