クラウドファンディングは広く、多くの人から資金を集める仕組みです。
お金を提供してくれた人に対する返礼(これをリターンと言います)が何か、によってクラウドファンディングは4つの類型に分かれます。
- 寄付型
- 購入型
- 融資型
- 出資型
寄付型は、リターンがない全くないもの、または財産的な価値のないものです。
購入型は、リターンとして商品を受け取るものです。
融資型は、集めたお金が貸付られ、リターンとして元本、および利息を受け取るものです。
出資型は、リターンとして株式や新株予約権を受け取るものです。
実施者の提示するプロジェクト(資金を集める目的とリターンを明示したもの)にお金が集まればクラウドファンディングは成功です。
寄付型のクラウドファンディングの成功例
成功例1.【#マスクを医療従事者に】あなたの拡散や寄付が医療の力に
出典:Readyfor
プロジェクトの概要
Readyforで行われたクラウドファンディングです。
2020年4月、日本でコロナ感染が広まった当初、マスクが手に入りずらい状況でした。このプロジェクトは、まずは医療従事者(医者や看護師など)に、マスクを届けること、そのための資金を調達することを目的に立ち上げられました。
リターン
リターンとして設定されたのは、(1)領収書、(2)お礼の動画、の二つです。
本プロジェクトに応募した金額は税制優遇が受けられるため、領収書がリターンとして明示されています。
調達額
目標額5千万円に対して、最終的には1億5千万円を調達しています。調達額が多額であることに加え、1億円を調達するのに1日かからなかった(21時間で達成)という点で特筆すべき成功と言えます。
さらにもう一つのポイントは、多くの有名人が賛同しており広く拡散されたことがあります。
成功例2.片渕須直監督による『この世界の片隅に』(原作:こうの史代)のアニメ映画化を応援
出典:Makuake
プロジェクトの概要
Makuakeで行われたクラウドファンディングです。
このプロジェクトはこうの史代さんの漫画を映画化する資金を調達することを目的に立ち上げられました。単にお金を集めるだけではなく、この作品がクラウドファンディングを通じてより多くの人に知られることも目的の一つとされています。
リターン
このプロジェクトでは、支援した金額に応じて、リターンが設定されています。
共通するリターンは、(1)制作支援メンバーになれること(メンバーになることでグッズをもらえたり、映画の製作状況をすることができます)、(2)すずさん(登場人物)からの手紙、の二つです。
より多額の支援をすることで、映画のエンドロールに自分の名前を記載してもらえるなどがリターンとして設定されています。
調達額
目標額の2千万円に対して、最終的には4千万円弱を調達しています。
調達額が目標額に対して約2倍集まったこと、資金提供者が3,374人と多数に上ったことから、成功したプロジェクトと言えます。
なお、このプロジェクトの続きとして、映画を監督した片渕氏に海外の映画祭に参加してもらうための費用を調達するプロジェクトも立ち上げられており、こちらも目標額を大きく上回る資金調達を実施しています。
成功例3.キングコング西野の個展『えんとつ町のプペル展』を入場無料で開催したい!
出典:Campfire
プロジェクトの概要
Campfireで行われたプロジェクトです。
このプロジェクトは吉本興業に所属していた芸人の西野亮廣さんが書かれた絵本「えんとつ街のプペル」の完成を記念して絵本の原画の展示会を開催するための費用を調達することを目的とするものです。
単に展示会を開催する費用、というだけではなく、クラウドファンディングで費用を賄うことにより展示会の入場料を無料にする目的も示されています。
リターン
リターンは非常にたくさんの種類が設定されています。
特に、同じ金額でも複数のリターンが設定されており、その中から支援者が欲しいリターンを選ぶことができます。
例えば、最低金額の3,000円でも、
- この絵本(サイン入り)とポストカード
- この絵本と西野さんの読み聞かせ動画
- 西野さんに依頼して作成してもらう自分専用の1分動画
- 各種イベントの参加権
などのリターンが用意されています。
調達額
目標額の180万円に対して250倍を超える4,600万円を調達しています。
当初の設定金額が小さかったこともありますが、支援者が6,000人を超え、広く拡散されたことでこのような調達額になりました。
このプロジェクトは目標額と比較した調達額の多さ、という点からも、また支援者が非常に多数になったという点からもクラウドファンディングの代表的な成功例です。
成功の要因は、西野さん自身の非常に高い知名度に加え、プロジェクトの目的が共感されやすいものであったこと、また、多様なリターンが用意されていたことなど、多数挙げられます。
購入型のクラウドファンディングの成功例
成功例4.普段使いにも、旅先でも!スタイリッシュなチェーンレス電動アシスト自転車の登場
出典:Makuake
プロジェクトの概要
Makuakeで行われたプロジェクトです。
このプロジェクトはClick Holdingsが実施した購入型のクラウドファンディングです。
従前から販売している商品ではあります。
しかし、先着購入者には値引きが適用されること、また異なるカラーバリュエーションが用意されていることがクラウドファンディングでの販売での特徴となっています。
リターン
リターンの対象となる商品は「Honbike」というチェーンレスな電動折りたたみ自転車。
2020年「GOOD DESIGN AWARDのグッドデザイン・ ベスト100」に選出されています。
また、オプション製品となるバッテリーケースや、専用の自転車かごなども用意されています。
調達額
目標額の1,100万円に対して6億3千万円を調達しています。
調達額が桁違いに大きいのは、1台当たりの金額が144,000円と高額であるうえ、購入者が5,000人近くまで膨れ上がったためです。
成功例5.PrinCube – 世界最小のモバイルカラープリンター日本上陸!
出典:Campfire
プロジェクトの概要
Campfireで行われたプロジェクトです。
このプロジェクトはThe good thingsというスタートアップの実施した購入型のクラウドファンディングです。
既に前年、アメリカのクラウドファンディング大手Indiegogoにて約5億円を調達した実績があり、日本でのクラウドファンディングをCampfireで行ったものになります。
リターン
リターンの対象となる商品はカラープリンターです。
その特徴は、手のひらに収まるほど小さく、持ち運びが可能であること、そしてもう一つは、どんなものにでも印刷できることです。
調達額
目標額の100万円に対して3億円を調達しています。
1台当たりの販売額は小さいものの、2万人を超える購入者がいたことからこの金額となりました。
成功例6.世界初、完全ワイヤレス骨伝導イヤホン誕生。earsopen®︎ “PEACE”
プロジェクトの概要
GREEN Fundingで行われたプロジェクトです。
このプロジェクトはBoCo株式会社の実施した購入型のクラウドファンディングです。
既に販売されている商品ではなく、開発中の商品を扱っています。
そのため、購入から実際に商品が手元に届くまでに時間が空くことになります。
リターン
リターンの対象となる商品は、イヤホンです。
骨伝導のイヤホンで、聴覚障がい者用と音楽用の二つがあります。
また、スタンダードなモデルと高級モデル、あるいは無線と優先等、様々なリターンのバリュエーションが用意されています。
調達額
目標額の100万円に対して1億6,500万円を調達しています。
一つ当たりの価格もそれなりに値が張るうえに、購入者が7,500人を超え、この調達額となりました。
融資型のクラウドファンディングの成功例
成功例7.インサイトファンド#1
出典:Funds
プロジェクトの概要
Fundsで行われた融資型のクラウドファンディングです。
このプロジェクトでは集まったお金でファンドに出資を行い、そのファンドから企業への貸付が行われます。
貸付を受ける企業は株式会社インサイトです。当社は非上場会社で集金代行及び企業の計算事務代行業務を行っています。
親会社の保証はついていませんが、株式会社アクトコールの子会社です。
リターン
貸付型のクラウドファンディングにおいてリターンの対象となるのは貸付元本と利息です。
元本は貸付けた金額です。
利息は、予定利回りがこのプロジェクトでは1.50%(年率・税引前)になります。
調達額
目標額の5,000万円に対して5,000万円を調達しています。
貸付型のクラウドファンディングは人気が高く、目標額が調達できないことはまれです。また、予定調達額を超過した場合に、その分を受け取ることも、ありません(超過して調達した金額に対しても利息が発生するためです)。
このプロジェクトでは、全額の調達が見込まれていたことから、募集が2種類に分かれています。
調達額のうち、半分は先着順で、先に申し込んだ人から投資することができます。残りの半分は抽選となっており、申込額が集まったところで、投資できる人が決まることになります。
出資型のクラウドファンディングにおける成功例
8.クロスロケーションズ
出典:Fundinno
プロジェクトの概要
Fundinnoで行われた出資型のクラウドファンディングです。
出資対象の企業はクロスコミュニケーションズです。
同社は位置情報をAIで解析するサービスを展開しています。
具体的には位置情報のビックデータからさまざまな有用な情報を引き出すためのツール「Location AI Platform」(LPA)を開発し、利用した企業から収益を上げています。
既にドコモベンチャーズ他、数社のベンチャーキャピタルや事業会社から資金を調達した実績があります。
リターン
このプロジェクトのリターンは、クロスロケーション社の新株予約権です。
新株予約権は、会社が新株を発行する際に、会社が定めた条件で株式を取得できる権利です。実際にどれだけの持ち分を取得できるのかは会社が新株を発行するまで分かりません。
調達額
目標額24,750,000円、上限額99,000,000円に対して、上限一杯の99,000,000円を調達しました。
成功例9.日本発のクラウドサービスで世界のゲーム市場に挑む技術者集団「Game Server Services」
出典:イークラウド
プロジェクトの概要
イークラウドで行われた出資型のクラウドファンディングです。
出資対象の企業はGeme Server Services株式会社です。
既にベンチャーキャピタル(VC)、事業会社から資金を調達した実績があります。
リターン
このプロジェクトのリターンは、Game Server Services社の株式です。
3万円で一株を取得することができます。
調達額
目標額49,950,000円、上限額99,990,000円に対して64,170,000 円を調達しています。
成功例10.“世界一”飲食店に優しいフードテックサービスへ!共創型プラットフォームで新たな食の流通を拓く「ごちめし」
プロジェクトの概要
Campfire Angelsで行われた出資型のクラウドファンディングです。
出資対象の企業はGigi株式会社です。
同社の社長の今井氏は作曲家・音楽プロデューサーであり、安室奈美恵さんの「HERO」などを手掛けられています。
リターン
このプロジェクトのリターンはGigi社の株式です。
1株当たり10,000円ですが、申込単位は10株から、10株単位のため、最低10万円からの申込となります。
調達額
目標募集額2千万円、募集上限が3千万円に対して、ほぼ上限となる29,800,000円を調達しています。
このプロジェクトの成功の要因は2つあります。
一つは代表者の知名度がクラウドファンディング向きであったことです。
そしてもう一つは、会社の事業目的が収益の獲得だけではなく、日本での寄付文化の浸透という共感を得やすいものであったです。