クラウドファンディングとは「多数の人から資金を調達する仕組み」です。
従来、上場企業など一部の大企業を除き、会社の資金調達はごく少数の相手からなされてきました。
例えば、銀行から融資を受ける場合、初めての融資であれば1つの銀行から、2度目の融資以降も付き合いのある銀行から行われてきました。会社の規模が相当大きくなって初めて、複数の銀行から平行して借りることができるようになります。
同様に、第三者割当増資による資金調達を行う場合も、少数の出資者からしか資金が集まりませんでした。ストックオプションの付与により潜在株主が多い会社はあるものの、ほとんどの未上場企業の会社の株主は二桁です。
一方で、上場企業などの大企業は、中小企業も利用できるような従来からの資金調達方法(銀行借入など)も当然利用できます。それに加えて、公募増資や社債の発行により、多くの主体(個人投資家及び金融機関など)から資金を集めることができます。
クラウドファンディングは、中小企業であっても多数の人から資金を調達することを可能にする仕組みなのです。
現金収支がプラスになる
クラウドファンディングを行うことは現金収支を一時的にせよマイナスするものではありません。もちろん、成功すれば、現金収支はプラスになります。
なぜなら、クラウドファンディングは、成功した後に集まった資金の中から手数料が支払われる仕組みであって、クラウドファンディングの成功前に、資金の流出が生じないからです
クラウドファンディングを成功させるために、広告宣伝費などのコストをかけることがあります。その場合にはクラウドファンディングの成功前に一時的に資金流出が生じ、現金収支がマイナスになります。
しかし、このコストはクラウドファンディングのためだけに使われるコストではなく、会社の知名度を高めるコストの一部になります。
従来の資金調達でも同様に、資金調達により現金収支がプラスになります。銀行からの借入のため銀行に審査を依頼しても手数料がかかるわけではないからです。
調達までの過程が可視化される
従来の資金調達は、調達に応じてくれる人(銀行であったり、エンジェル投資家やベンチャーキャピタル(VC)であったり)が、融資・投資の判断をしている間、待っていることしかできません。
審査が順調に進んでいるのか、調達に対して銀行や投資家が前向きなのか後ろ向きなのか、は担当者に個別に聞くくらいしか確認する手段がありませんでした。そのため結果的に審査に落ちて資金繰りに窮する、ことは決して珍しい事例ではありません。
これに対してクラウドファンディングでは、その時点で「何人の人からいくらの資金が集まっているか」が開示されています。
調達目標額500万円に対して、既に100人から300万円が集まっている、ということが一目でわかるように開示されます。
このように、クラウドファンディングでは資金調達までの過程が可視化されているのです。
「調達予定額に対してどの程度が集まるとクラウドファンディングに成功するか」は、最初に設定した条件によります。調達目標額の全額が集まらないと失敗となり資金を手にできない条件を設定する場合もあります。
途中経過はあくまで途中経過で、必ずしもその時に応募されている資金が調達できるわけではないことには注意が必要です。
調達を頑張れる
調達までの過程が可視化されているため、クラウドファンディングでは「途中経過を知る」ことができます。
「目標額にいくら届いていないのか」が分かれば、「あとどれくらい頑張ればいいのか」が分かります。
そのため、目標額に届くまで、自らプロジェクトを宣伝するなど、プロジェクトの成功に向けて努力することが可能です。
従来の調達では、銀行や投資家が審査している期間、ただ結果を待つだけで、自らできることは何もありませんでした。
そのため、クラウドファンディングの方が従来からの調達よりも「資金調達できた際の達成感が大きい」という経営者もいます。
資金調達の過程が可視化されることの効果はそのクラウドファンディングを頑張れることだけではありません。
多額の資金を調達できる
従来の資金調達方法では、調達できる金額に上限がありました。
銀行からの融資はどこの銀行から借りてもそれほど金額に違いはありません。その規模の会社に対していくらまで貸せるのか、どこの銀行も同じような基準を設定しているためです。
これは、その会社に対して一つの銀行が取れるリスクには限界がある、ということです。
これに対してクラウドファンディングでは、多数の資金の出し手がリスクを分散して負担することになります。一人ひとりの資金の出し手は自分のとれるリスクの範囲内で支援や投資を行います。
さらにクラウドファンディングには資金の出し手の数に限度がありません。
誰でも使える
クラウドファンディングは成功しなければ資金調達ができません。しかし、だれでも挑戦することができます。
従来からの資金調達は一定の条件を満たす会社以外にはとても使いずらいものでした。
例えば、銀行からの借入では会社の規模、財務状態、あるいは担保の有無等が、融資の判断基準となっています。
会社を設立して間もない会社はこのいずれの基準にも満たないため、銀行からの借入が困難です。また、会社が事業に失敗して立て直しを図りたいときにも、この基準を満たせず資金調達が困難になりがちです。
また、第三者割当増資による資金調達は、親類や知人などの身近な人に対して行われることほとんどです。その他の投資家(エンジェル投資家やベンチャーキャピタル(VC))に増資を引き受けてもらえるのは、高い成長が期待できる事業に限られます。
しかし、クラウドファンディングでは多数の人が、それぞれの判断基準に従って資金提供するかどうかを判断します。
銀行等から資金調達を断られた
銀行から融資を断られた、ベンチャーキャピタル(VC)から増資の引受を断られた、など他の資金調達にチャレンジしてみた結果、上手く行かなかった場合でもクラウドファンディングにチャレンジすることができます。
従来の方法での資金調達が上手く行かなかったことは、直接にはクラウドファンディングの成否に影響しません。
資金調達を断ったことを銀行から開示されることはないからです。
事業の不確実性が高い
銀行からの融資は不確実性が高い会社、事業には行われません。貸出はリターン(収益)が金利の範囲に限定されるため、リスクが高い場合にはリスク・リターンが見合わないためです。
仮にリスク・リターンが見合っていたとしても銀行は不確実性の高い融資は行いません。
クラウドファンディングの場合には、それぞれの投資家がリスク・リターンに見合うかどうかを判断します。銀行等では取れないリスクも取ることができます。
従来からの資金調達方法では調達できなかった
従来、寄付は仕組みや制度としては可能であったものの、実際にはほとんど利用されてきませんでした。クラウドファンディングの中の寄付型は、この寄付を資金調達として利用できる仕組みです。
これまで寄付が資金調達に使われてこなかった理由は、寄付を受ける側(資金調達する会社)が寄付で資金が集まるとは思ってこなかったこと、反対に寄付をする側も、どの会社が寄付を受け付けているのかを知る方法がなかったためです。
とくに寄付を行う側からすると、なにがしかの返戻(リターン)が期待できるのか皆目見当もつかなかったことや、自分の寄付したお金がどのように使われるのかを確認することが手間であったことなどが寄付の障害でした。
プロジェクトを多くの人に知ってもらえる
多くの人から資金を集めるクラウドファンディングに成功するためには、そもそも、会社を多くの人に知ってもらう必要があります。
その会社を知らない人がクラウドファンディングに応募することはなく、知った人の一部がクラウドファンディングに応募して資金を提供してくれる可能性があるからです。
つまり
逆に言えば、クラウドファンディングを行うことで、多くの人に会社を知ってもらうことができます。
具体的には、営業の面で会社の信用は役に立ちます。知らない会社の商品は買ってよいのか悩むのに対して、知っている会社の商品であれば安心して購入できるというのは誰しも経験しているところです。
あるいは採用においても、知名度のある会社ほど、採用しやすいと言えます。
出資者からは応援してもらえるようになる
これは商品を買ってくれる顧客が、商品を提供している会社に興味と好感を持っている、ということと似ています。
クラウドファンディングの場合には、資金を提供してからリターンを受け取るまでに時間があります(出資型の場合にはリターンとしての株式や新株予約権はすぐに入手できますが、その株式などが価値を持つまでに時間がかかります)。その時間は会社が製品を開発したり、あるいは、集めた資金を投資して事業を行うために使われるものです。
このリターンを受け取るまでの時間、資金を提供してくれた人は、会社の応援者となります。なぜなら、会社が商品開発や事業を成功させることで、自分にも返礼品が確実に手に届くことや、分配金などが増えるなど、メリットがあるからです。
また、資金受領後の報告やリターンで満足させることができれば、会社の応援者は、その後もSNS等を通じて会社やその商品を宣伝してくれることが期待できます。
普通の人が理解できる説明の練習になる
クラウドファンディングを通じて、多くの人から資金を集めるためには、まず会社を知ってもらうことが必要です。
その際により正しく会社を理解してもらうことができれば、より多くの資金が集まりやすいです。人はなんだか分からないものには財布のひもを緩めないからです。
少人数に理解してもらうためには一人一人の疑問に向き合い、話し合うことが有効です。しかし、多くの人に理解してもらうためには、一人ひとりと話すのは効率の面で問題があります。
そのため必然的に、文章や図表、映像などにより理解してもらうことになります。
とくに説明資料を見て、分からない箇所のフィードバックをもらえることが重要です。それを都度直していくことで、より資料の完成度が上がってゆくからです。
資金提供者の意向に左右されにくい
従来の資金調達方法では、少数の人から資金を調達してきました。少人数から資金調達することの弊害として、資金調達に応じてくれた相手の影響を受けやすい点が挙げられます。
出資であれば
- 議決権を行使される
- 少数株主権を行使される
法的にも会社に影響を及ぼす行為を行うことができます。
貸付の場合にも、貸し手側は様々な影響力を持っています。
法的には
- 貸付契約書に定められた期限の利益喪失を主張する権限
があります。
これは借り手に何か借入を返せない事柄が発生した場合には、その時点で借りている資金を全て債権者に返済するというものです。借り手に発生する事柄とは例えば、破産の申し立て、不渡り手形の発生などです。
この他にも貸し手は法的な権限のあるなしに関わらず、会社に様々な影響を与えます。
株主であれ貸し手であれ、何か権利を行使する理由は、資金調達した側にもあり得ます。事業に失敗した、あるいはその結果、会社の経営が苦しくなった、などです。
しかし、株主や貸し手が行動を起こす理由が、株主や貸し手の側にあることも、ままよくあります。
クラウドファンディングで資金調達することにより、多くの株主、貸し手が存在することとなります。
なぜなら、そのような事態は収拾がつかなくなるため、あらかじめ株主間契約を締結しておくことや、貸し手が直接会社との間で貸主にならないように匿名組合を間に挟むスキームを採用することで、株主、貸し手が一体として会社に対して影響力を行使するような仕組みが整備されているからです。