返済の必要のない資本による資金調達方法の一番シンプルな方法が「株主割当増資」です。今回は、株主割当増資による資金調達について解説します。
株主割当増資による資金調達とは
中小企業の場合、上場企業とは違って、公募で出資を募ることはほとんど不可能です。上場企業は株式市場に上場することで、投資家に対して情報公開をして常に出資を募ることができるのです。投資家は証券会社を通して「株を購入=出資」することができます。
一方で、中小企業の場合は一般の投資家に出資を募る方法も、信用も、ないのです。
そのため、公募ではなく、私募増資という方法を選択するしかありません。
私募とは
50人未満の特定の投資家に出資してもらうこと
知り合いや付き合いのある会社の役員など、特定の投資家に出資を募るのが私募増資です。
- 既存の株主
- 役員
- 従業員
- 取引先(会社、個人)
- 持ち株会
- 将来的な利害関係がある関係者
など
が出資してもらう対象となります。
私募であれば、決算内容を公開する必要もないため、中小企業でも利用しやすいのです。
私募増資は
- 既存の株主 → 株主割当増資
- 新規の株主 → 第三者割当増資
に分類されます。
株主割当増資による資金調達とは
既存の株主に追加の出資(増資)をしてもらうことで資金調達をすること
と言えます。
株主割当増資による資金調達のメリット
自己資本比率が高まる
資本金が増えるので、自己資本比率が高まります。返済の必要ない資金が調達できるメリットがあります。自己資本比率が高まれば、銀行融資などの審査でも信用力が高まります。
株主構成比が変わらない
同じ割合で増資をしてもらうことができれば、株主の持ち株比率は変わりません。持ち分割合の低下などの問題が発生しにくいのです。経営者自身も出資すれば、経営者の持分も変わりませんので、会社の支配権も維持できることになります。会社の経営判断に影響がないのです。
時価よりも低い価格で実施が可能
持分比率が変わりませんので、時価よりも低い価格で増資をしても、課税関係は発生しません。あくまでも持分比率が変わらないことが全逓です。
株主割当増資による資金調達のデメリット
全株主が同じ割合で増資できるとは限らない
「持ち株比率も変わらないのに追加で出資をしなければならない」ということは投資家に対してはメリットが薄く、その出資の妥当性を理解してもらえなければ実現しません。
また、同じ割合での増資が必要になる場合に、株主が複数いれば増資ができる投資家とできない投資家が出てきてしまうため、なかなか成立しにくいのが現状なのです。
そのため、資本政策の初期段階でオーナー社長や家族経営の会社で株主割当増資は利用されるケースが多いのです。
株主が増えれば増えるほど、株主割当増資による資金調達がスムーズに行える可能性は下がってしまいます。
まとめ
株主割当増資は「持ち株比率が変わらない」というメリットがある一方、「持ち株比率が変わらない」ということは株主が実行するメリットも少なく、なかなか実現しにくい増資方法となってしまっています。
アーリーステージの「社長だけが株を持っている」「社長と副社長だけが株を持っている」「社長と家族高絵が株を持っている」会社が行うことの多い資金調達となっています。
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