中小企業の資金調達の方法でメジャーなものに「ビジネスローン」というローン商品があります。今回は「ビジネスローンとは?」について解説します。
ビジネスローンとは?
ビジネスローンとは
- 無担保
- 第三者の保証人なし(代表者の連帯保証は必要)
で利用できる個人事業主や中小企業、零細企業向けのローンサービスのこと
を言います。金融機関が使う正式名称では「法人向け無担保ローン」という分類になりますが、一般的には「ビジネスローン」という名称が一番浸透しています。
他にも
- 事業者ローン
- 事業ローン
- 商工ローン
- ビジネスローン
- ビジネスカードローン
- 法人カードローン
- 自営業ローン
- 自営者ローン
・・・
など販売している金融機関によって色々な名称がつけられています。
ビジネスローンが登場した背景
元々、銀行はプロパー融資(銀行が自社のみで貸し倒れリスクを負って融資をする方法)を中心に企業への融資を行ってきました。
プロパー融資の金利は2.0~5.0%程度なので、一定レベルの信用力のある企業(中規模~大規模な企業)でないと審査に通ることが難しかったのです。かといって、無理に審査を通しても、銀行が貸し倒れリスクを負って、損失を出すので審査を緩くすることもできませんでした。結果的に中小企業や零細企業は銀行からの資金調達ができない状態が続いたのです。
そこで登場したのがビジネスローン(銀行ビジネスローン)です。
- プロパー融資よりも高金利にすることで
- 審査の許容範囲を広げて
- 審査を自動化することで
中小企業、零細企業、個人事業主にも融資ができるローン商品を作り上げたのです。
銀行ビジネスローンはバリューセットのような既製品です。
しかし、信用保証協会の保証付融資ができ、銀行が中小企業への融資する際は「信用保証協会の保証付融資」を優先するようになりました。信用保証協会の保証付融資であれば、銀行は貸し倒れリスクを負わずに済むからです。ビジネスローンは金利が高いとは言え、貸し倒れリスクは銀行が取る必要があります。銀行は貸し倒れリスクを取りたくないのが本音なのです。
結果として、銀行はビジネスローンを積極的に販売しないようになってきました。
代わりにノンバンク(消費者金融、事業融資専門会社、カード会社、信販会社など)が中小企業、零細企業、個人事業主向けのビジネスローンを積極的に販売し始めたのです。
ビジネスローンの審査の仕組み
プロパー融資であれば
銀行は融資担当者が信用調査を行い、格付けをして、融資のための稟議書を作成し、支店内で回覧、支店長の決裁(場合によっては、本店の審査部の部長・役員決裁)をした上で融資の実行が決まります。
しかし、中小企業、零細企業向けの融資であるビジネスローンにそんなに人件費や時間をかけるわけにはいきません。
そこで生まれたのが「スコアリングシステム」による審査です。
スコアリングシステムとは
銀行には過去の膨大な融資データがあります。
どういうことかというと
1,000万円を100社に融資したら10億円です。
100社のうち5社が倒産などで貸し倒れになった場合
貸し倒れ率は5%、貸し倒れ損失は5,000万円です。
しかし、融資金利を年率5%にしておけば
年間の利息収入が10億円の5%で5,000万円入るので、プラスマイナスゼロになります。
- 融資金利 > 貸し倒れ率
であれば銀行側に損失は発生しないのです。
そのため、スコアリングシステムで申込んできた中小企業、零細企業の予想貸し倒れ率を算出し、それに銀行側の利益分の金利を上乗せした金利を設定することで銀行はリスクを回避しながら、利益を出すことができるのです。
これを可能にしたのがスコアリングシステムであり、スコアリングシステムによる審査では、審査のノウハウがない担当者でも、決算数値の情報や申込み時の情報を入力するだけで審査結果(融資可否、融資可能金額、融資時の適用金利)が自動的に数分で算出されるのです。
これはビジネスローンの特徴的な仕組みと言えるでしょう。
このスコアリングシステムがあるからこそ
- 最短即日融資
- 最短1時間審査
が可能になるのです。
ただし、スコアリングシステムは大規模なシステムであり、導入にはコストがかかるものです。そもそものベースとなる膨大な融資データがないと機能もしません。
そのため、大手消費者金融、銀行、大手カード会社ではスコアリングシステムによる審査が導入されているのですが、数十人規模の中小企業レベルの消費者金融の場合は、ビジネスローンといっても、昔ながらのアナログな審査方法で審査をしているところも多いのです。
ビジネスローンのメリット
無担保で借りられる
ビジネスローンは正式名称は「法人向け無担保ローン」です。その名の通り、無担保で借りられるローンサービスです。不動産担保や有価証券担保、売掛債権担保、動産担保などの担保を必要とするローンとは違い、無担保で利用できるローンです。
担保を持っていない中小企業にとって大きなメリットと言えます。
第三者の保証人なし
ビジネスローンは第三者の保証人も不要で利用できるローンサービスです。中小企業の場合は、頼める保証人がいないこともあり、保証人不要というのは大きなメリットになっています。
「第三者の保証人」とは
中小企業の場合、必ずと言っていいほど法人への融資では経営者(代表者)の連帯保証が必要になります。欧米では法人への融資のときに代表者の連帯保証を必要としないことが多いのですが、日本では一般的に法人への融資のときの代表者の連帯保証は必須なのです。どのような法人向けの融資でも、これを避けることはほとんどできません。(個人保証不要な資金調達方法)
ビジネスローンでも、法人への融資の場合は、代表者の連帯保証は必須です。ただし、代表者以外の第三者の保証人は不要ということです。
個人事業主の場合は保証人なしで利用できます。
最短即日融資が可能
ビジネスローンでは、スコアリングシステムによる審査が普及してから、審査に特別なノウハウを持つ担当者が不要になり、パソコンが自動計算してくれるので数分で審査結果が出るようになりました。
結果として
- 最短1時間審査
- 最短即日融資
が可能なビジネスローンが増えてきたのです。(すべてのビジネスローンが最短即日融資ができるわけではありません。)
- 今日中に従業員の給与を支払わなければならない
- 今日中に取引先への支払いを完了しなければならない
- 今日中に他の借金の返済をしなければならない
中小企業には、このような資金繰りのピンチが発生することも少なくありません。
このような一刻を争う状況の時にビジネスローンは活躍するのです。
審査が甘い
元々が信用力が低い中小企業や零細企業へ融資ができるように開発されたのがビジネスローンです。
金利が高い分、許容できる貸し倒れ率も高く設定されているため、銀行プロパー融資などの資金調達方法と比較して審査が甘く設定されているのです。
- 銀行プロパー融資の審査に落ちた。
- 信用保証協会の保証付融資の審査に落ちた。
- 日本政策金融公庫の審査に落ちた。
・・・
と審査に落ちた方でも利用できる可能性があることもビジネスローンの大きなメリットです。
限度額(極度額)に余裕があればコンビニATMで何度でも借りられる
大手消費者金融のビジネスローンなどは、ローンカードを発行するタイプのビジネスローンになっています。
限度額(極度額)で借りられる「枠」が設定され、その枠の範囲内であれば、いつでもお近くのコンビニATM、銀行ATMで借入・返済ができるのです。
緊急時になる前に「枠」を持っておけば、コンビニで数分で資金調達ができるので、使い勝手の良い資金調達方法と言えます。
使わない時は返済しておけば利息も発生しませんので、必要な時だけ短期的に利用することができるのです。ビジネスローンは金利も高い為、短期の利用として有効です。
ビジネスローンのデメリット
金利が高い
ビジネスローンの金利は年率10.0%~15.0%が相場となっています。銀行のプロパー融資や公的融資と比較すると利息制限法ギリギリの高金利の設定です。
金利が高ければ返済利息が資金繰りや経営損益に与える影響も大きい為、長期の借入としてはふさわしくありません。
- どうしても今月を乗り切れない
- 一時的なつなぎ資金が必要だ
- 来月の入金があるまでの支払いができない
- 銀行のプロパー融資の審査に少し時間がかかる。その間の資金調達が必要
- 公的融資の審査に少し時間がかかる。その間の資金調達が必要
- 補助金・助成金のお金が降りるまで少し時間がかかる。その間の資金調達が必要
という短期の資金繰りに対して活用するべきローンなのです。
- 運転資金
- 設備資金
にはビジネスローンは不向きなのです。
決算数値が審査で重視される
銀行プロパー融資であれば、その事業の将来性や競合優位性など、未来の情報も含めて審査の検討材料になります。
しかし、ビジネスローンの場合は「提出した決算書の数字の入力」によって、審査結果がはじき出されるため、
- 数字ありき
- 実績ありき
の審査になるのです。審査自体のハードルは低いものの、審査の前提にあるのは決算情報ですので、どれほど見込みのある事業であっても、実績がないと審査に通らない可能性が高いのです。
ビジネスローン利用時の注意点・活用法
複数の資金調達方法と並行して利用する
前述した通りで
ビジネスローンは「金利が高いけれども審査が甘い」という特徴があるため、短期的な資金繰りでは活躍する一方、長期の運転資金としては不向きの資金調達方法です。
ですから、資金繰りに苦慮してビジネスローンを利用したとしても、そのままずっとビジネスローンで借り続けるということはおすすめできないのです。
利益が出ているときに「枠」を作っておく
ビジネスローンでは決算情報が審査の重要なファクターですから
- 利益が十分に出ている時 → 審査に通りやすい
- 利益が落ち込んできたとき、赤字 → 審査に通りにくい
ことになります。
前述した通りで、大手消費者金融のビジネスローンは限度額(極度額)が設定され「枠」がもらえるものです。
「枠」は持っていても、利用しなければコストは発生しません。年会費も、維持費も、ローンカード発行手数料もありません。
だとすれば
審査の通りやすい利益が十分に出ているときにこそ、ビジネスローンに申込んで「枠」を持っておくに越したことはないのです。
いざ資金繰りが悪化したときに「枠」を利用して借り入れをするのであれば、改めて審査をする必要もなく、数分でコンビニATMで借入ができるのです。
資金繰りが悪化してから、申込むとその時点では経常利益が悪化していることが多く、審査に通らない可能性がかくなってしまいます。
余裕がある時に「枠」を作っておくことをおすすめします。
闇金業者に注意!
カードローンであれば、提供している金融機関が多く、知名度のある企業がほとんどなので怪しい会社かどうかは名称である程度予測することができますが
ビジネスローンの場合は、大手消費者金融、銀行を除けば、社員数十数名程度の比較的小規模のノンバンクがサービス提供していることが多いのです。当然、優良な小規模のノンバンクがほとんどですが、中には闇金もあります。
闇金かどうかを判断するためには登録番号を確認の上、財務局、日本貸金業協会のウェブサイトからその番号が正しいものかどうかの確認が必要です。大手消費者金融や銀行の関連会社と思われやすい名前を用いていることがあるので、知名度の低いノンバンクを利用する際には登録番号を確認することをおすすめします。
まとめ
ビジネスローンは「最短即日融資が可能」「無担保」「第三者保証人不要」「審査が甘い」というメリットがある反面、「金利が高い」という大きなデメリットがあります。
いざという資金繰りのピンチの時に活躍するものですが、長期の資金繰りに活用するには返済利息が資金繰りや経常損益に与える影響も大きい為、不向きなのです。
ビジネスローンで直近の資金難をしのいでいる間に、銀行融資、保証協会の保証付融資、日本政策金融公庫、出資など低金利な資金調達方法で、長期の運転資金のための資金調達をすすめていく必要があります。
他の資金調達方法で低金利で借りられるメドが立てば、その調達資金でビジネスローンを完済する、つまり借り換えを行うことで、短期の資金繰り重視のビジネスローンから、長期の安定した資金調達方法へ切り替えることが可能です。
「ビジネスローンは借りられたから当面は大丈夫。」と安心するものではなく、同時並行で他の低金利の資金繰りに動くべきものなのです。