仮想通貨担保ローンというのは聞きなれない言葉と思う方が多いはずです。それもそのはずで、仮想通貨担保ローンは執筆時点の2018 年6月1日に日本では初めて、誕生したローン商品となっています。今回は、この仮想通貨担保ローンのメリットデメリットについて解説します。
仮想通貨担保ローンとは?
その名の通り
を言います。
- マイホームを担保に融資を受けるローンサービス → 住宅ローン
- 不動産を担保に融資を受けるローンサービス → 不動産担保ローン
- 自動車を担保に融資を受けるローンサービス → 自動車担保ローン
・・・
と同じことで、資産的価値がある「仮想通貨」を担保にしたローンサービスが登場するのも、自然の流れなのです。
海外では「仮想通貨担保ローン」はすでに登場している!?
海外では
という名称で、ローンサービスが登場しています。
仮想通貨は、海外では暗号通貨(Cryptocurrency)と呼ばれるので
- crypto-to-cash = 仮想通貨を法定通貨に変える
- lending = ローンサービス
ということになり、「仮想通貨担保ローン」のことを差しているのです。
Unchained Capital
Unchained CapitalはBitcoin Core(BTC)を担保として提供する企業や個人に現金融資を提供する会社です。
金利:年率12.5%~14.0%
と比較的高金利ですが
- 融資可能額:1万ドル(約100万円)~100万ドル(約1億円)
- 掛目:50%
- 借入可能期間:3カ月~60カ月
- 融資スピード:翌営業日
- 対応可能仮想通貨:Bitcoin(ビットコイン)またはEthereum(イーサリアム)
- 返済方法:毎月の利払いのみ。
という商品設計になっています。
- 申込
- オンライン契約
- 入金
という流れで、担保になる「仮想通貨」を指定の場所(コールドウォレット)に送金する手続きが入ります。ローンを完済し終えると、担保の「仮想通貨」はあなたのウォレットに返されます。
といっても、
- 担保にしている仮想通貨:25%減 → 担保にしている仮想通貨を追証を要求する(もっと、担保が必要)
- 担保にしている仮想通貨:45%減 → 担保にしている仮想通貨を売却して回収する
というサービス設計にしています。
しかも、
当社は、いかなる信用調査機関にも情報を報告しません。
とされているため、信用調査の情報を汚すこともないのです。
Salt Lending
Salt Lendingは、イーサリアム・ネットワーク上に構築された「仮想通貨担保ローン」のことです。
Unchained Capitalよりも、さらに人気があり
すでに4000万ドル相当(約40億円)を貸し付けた。
と公表されています。
Salt Lendingのプラットフォームは、ソーシャルレンディングに近い性質のものですので、よりP2P(ピア・トゥ・ピア)の仕組みになっています。12ヵ月で会員(貸付ける側)が6万5000人に増えるという実績も挙げています。
さらに、
Coinloan(コインローン) 、Otheram(オーセラム)、Ethlend(イースレンド)、Everex(エバレックス)などのベンチャーが次々と誕生しています。
「仮想通貨担保ローン」を活用するシチュエーションとは?
税金対策・節税効果
仮想通貨の売買で得た利益は「雑所得」であり、「総合課税」で課税されます。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
給与所得などと合算するのですが
所得税で最高45%
住民税で10%
合計:最高55%
の税金が発生してしまいます。
ですから、
仮想通貨を保有している状態であれば、税金は発生しません。
仮想通貨を今売却してしまったら、税金が支払えない。
という方に「仮想通貨担保ローン」は有効な選択肢になります。
仮想通貨購入資金の確保
仮想通貨担保ローンは、海外の会社でも年率12.0%~18.0%と決して低金利設定というわけではありません。
しかしながら
- 仮想通貨の値上がり状況
- 仮想通貨のボラティリティの激しさ
- 億りびとが何人も生まれている状況
を鑑みれば、仮想通貨の投資家の中には
という方も少なくありません。
ローン審査が通らない方の資金調達方法
- クレジットカードのキャッシング
- カードローン
- キャッシング
- フリーローン
などを利用する場合は、必ず「個人信用情報機関へ信用情報の照会」という審査が行われます。
このときに
- 60日以上の滞納をしてしまった。
- 2回以上の返済遅延をしてしまった。
- 半年の間に3社以上に申し込んでしまった。
- 自己破産・債務整理をしてしまった。
となると、ローン審査が全く通らなくなってしまうのです。
と思ってしまいがちですが・・・
実態は、お金や資産を持っている方でも
- うっかりミスで返済期日を忘れてしまった。
- 携帯料金なら大丈夫だろうと甘く見ていた。
という方も、多く、資金的な問題がないのにローンを利用できない方も少なくありません。
手持ちの現金として使う
例えば
という方はほとんどいないかと思います。
貯金1000万円で、仮想通貨1000万円分購入してしまったら、手持ちの現金が0円になってしまい
- 給料が入るまで無休で過ごす
- 病気などの急な支出に対応できない
状況になってしまいます。
貯金1000万円で、仮想通貨1000万円分を購入するのは現実的ではないのです。
このときに「仮想通貨担保ローン」を利用すれば
という方法が取れます。
これであれば、手持ち資金をある程度は確保しながら、仮想通貨を1000万円分購入できる計算になります。
当然、「利息分損をしている」という考え方もありますが、仮想通貨の値上がり幅が、利息を超えていれば問題ないのです。
上記の例の場合
- 仮想通貨:年率10%で上昇
- 仮想通貨担保ローン:年率12%で借り入れ
だとしても、
- 1000万円分の仮想通貨 → 年100万円の利益
- 200万円分の仮想通貨担保ローン → 年24万円の利息支払い
という計算になるので、十分に利益が出ている計算となります。
「仮想通貨担保ローン」のメリット
税金対策
前述した通りで、仮想通貨は売却しな変えれば、税金は課税されません。
しかし、仮想通貨を購入して、資金不足に陥った時に、仮想通貨を売却せずに法定通貨を手に入れることができます。
仮想通貨を売らずに法定通貨を入手できる
今現在、現金が必要。
という方にも「仮想通貨担保ローン」は利用できるメリットがあります。
審査が不要
審査が全く不要というわけではありませんが・・・
少なくとも
- クレジットカード
- カードローン
などにあるような信用調査は発生しません。
- 審査に通らない方
- 審査がブラック扱いになっている方
でも、「仮想通貨担保ローン」審査通過し、利用できるメリットがあります。
最短翌日融資
前述した海外の事例では「最短翌日融資」が可能になっています。
融資スピードが早いので、急な資金需要にも対応できるのです。
信用情報が汚れない
「仮想通貨担保ローン」の利用履歴は、個人信用情報には記載されません。
今後のローンの借り入れなどにマイナスの影響はないのです。
返済は利息のみ
返済は、利息のみの返済となります。元本返済が不要なので、同じ金利でも、カードローンなどと比較すると毎月の返済額は少なくて済むのです。
「仮想通貨担保ローン」のデメリット・リスク
掛目の設定は低い
掛目というのは
という指標です。
- 現預金:100%
- 有価証券:90%
- 不動産:70%
・・・
というように「換金のしやすさ」「換金の確実さ」に応じて、掛目は変わってきます。
- 仮想通貨:50%
と、値動きの激しい仮想通貨は、掛目が50%と低めに設定されているのです。
仮想通貨の価値が下がると勝手に売却されてしまう
海外の「仮想通貨担保ローン」の場合
- 掛目:50%
- 担保にしている仮想通貨:25%減 → 担保にしている仮想通貨を追証を要求する
- 担保にしている仮想通貨:45%減 → 担保にしている仮想通貨を売却して回収する
というようなサービス設計になっています。
値下がり時の強制売却リスクが発生します。
金利が高金利
海外の事例を見ても、
- 金利は12.0%~18.0%
と、かなり高金利に設定されています。
これは、無担保ローンのカードローンやクレジットカードのキャッシングと同じ金利設定と言えます。
他の有担保ローンであれば
- 住宅ローン:金利1.0%~2.0%
- アパートローン:金利2.0%~5.0%
- 自動車ローン:金利2.0%~5.0%
- 不動産担保ローン:金利5.0%~10.0%
・・・
このぐらいの金利が相場ですから、「仮想通貨担保ローンの金利は割高」と言っていいでしょう。
「利息負担が大きい」デメリットがあります。
日本初の仮想通貨担保ローン
2018年6月1日に株式会社アビックが「仮想通貨担保ローン」を提供しはじめました。
サービス名:ビットコインローン
担保 | 仮想通貨ビットコイン(BTC) |
---|---|
ご契約対象 | 法人・個人 |
ご融資限度額 | 200万~10億円(要審査) |
お利息 | 年利 2.98 ~ 15.0% |
ご返済方式 | 一括・分割・元利均等・自由返済 |
借入期間 | 1ヶ月~5年(期間相談可能) |
返済回数 | 最大60回(回数相談可能) |
必要書類 | ・本人確認書類 (運転免許証・パスポートなど) ・収入を確認できる書類 (決算書、確定申告書源泉徴収票など) |
遅延損害金 | 年利 20.0% |
繰上げ返済手数料 | 0円 |
という商品設計です。
最大10億円まで借りられるというのは、なかなかすごい設定ですが・・・
昭和48年創業の歴史のある不動産担保ローン会社が「仮想通貨担保ローン」を提供するというのは、それなりのインパクトがあります。
海外の「仮想通貨担保ローン」と比較すると
- 収入を確認できる書類(決算書、確定申告書源泉徴収票など)が必要書類として必要になっていたり
- 対応できる通貨がビットコインだけであったり
- 融資スピードや掛目などの開示がされていないなど
まだまだ違いはありますが
徐々に日本の参入企業が増えていけば
- 金利も低金利に
- 融資スピードも即日融資可能に
- ソーシャルレンディングと連動したプラットフォーム
になっていくはずです。
また、アビックの「ビットコインローン」は、個人だけでなく、法人も対応しています。
ICOを検討している企業も、増加の一途をたどっているので、日本の企業の資金調達方法に「仮想通貨担保ローン」という選択肢も、現実的になってくるはずです。
というシチュエーションでは
というのも、当たり前になってくる可能性があります。