まだ発生していない売掛金も譲渡できる|民法466条の6。債務者が決まっていなくても登記できるが、存続期間は10年になる

1998年・2005年・2020年の3点を年表で並べ、将来債権の譲渡が登記できるようになった経緯を示したアイキャッチ

来月以降に入る予定の売上を、いま担保に入れて借りる。これができるのは、民法が将来債権の譲渡をはっきり認めているからです。しかも取引相手がまだ決まっていない売上まで対象にできます。ただし、その代わりに登記の存続期間が短くなり、譲渡制限特約の扱いも変わります。条文と登記の実務の両方から、どこまで押さえられてどこで線が引かれるのかを確認します。

このページの要点

  1. 民法466条の6第1項は、債権の譲渡はその意思表示の時に債権が現に発生していることを要しないと定めている。
  2. 債権が発生したとき、譲受人は当然に取得する(同条2項)。改めて譲渡の手続きをする必要はない。
  3. 対抗要件具備時までに譲渡制限の意思表示がされたときは、譲受人は知っていたものとみなされる(同条3項)。
  4. 民法467条1項も、債権の譲渡には現に発生していない債権の譲渡を含むと明記している。
  5. 債務者が特定していない将来債権の登記ができるようになったのは平成17年10月3日から。
  6. 債務者が全員特定していない場合、登記の存続期間の上限は10年に下がる(特例法8条3項2号)。
  7. 登記は債権の存在や譲渡の有効性を証明しない。虚偽の登記でも公的に真正が証明されるわけではない。

債権は、発生する前でも譲渡できる

売掛金を担保にした融資はABL(動産・債権担保融資)と呼ばれ、将来の売上まで対象にできるかどうかは担保の規模を左右します。民法466条の6第1項は、債権の譲渡は、その意思表示の時に債権が現に発生していることを要しない、と定めています。契約を結ぶ時点で売上が立っていなくても、譲渡の合意そのものは成立するという意味です。

2項が続きます。債権が譲渡された場合において、その意思表示の時に債権が現に発生していないときは、譲受人は発生した債権を当然に取得する、としています。「当然に」という言い方がされているので、債権が発生したタイミングで改めて譲渡の手続きを踏む必要はありません。

対抗要件のほうも同じ前提で書かれています。民法467条1項は、債権の譲渡(現に発生していない債権の譲渡を含む)は、譲渡人が債務者に通知をし、または債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない、としています。かっこ書きで将来債権が含まれることを明示しています。

法務省の債権譲渡登記「第1 債権譲渡登記制度とは?」の公式画面。制度のポイントとして、譲渡に係る債権は指名債権であって金銭の支払を目的とするものに限定されており、債務者が特定していない将来債権も登記することができると書かれている
法務省「債権譲渡登記制度について 第1 債権譲渡登記制度とは?」の公式画面。制度のポイント欄に、債務者が特定していない将来債権も登記できることが明記されています(2026年10月19日確認)。

譲渡制限の意思表示は、あとから付けられても効く

将来債権特有の論点が466条の6第3項です。2項に規定する場合において、譲渡人が467条の規定による通知をし、または債務者が同条の規定による承諾をした時(対抗要件具備時)までに譲渡制限の意思表示がされたときは、譲受人その他の第三者がそのことを知っていたものとみなして、466条3項の規定を適用する、としています。

将来債権を譲り受けた時点では、まだ取引契約が結ばれていないことがあります。その後に結ばれた契約へ譲渡禁止条項が入れば、譲受人は知らないまま悪意扱いになるということです。預貯金債権の場合は466条の5第1項が適用されます。

区切りは対抗要件具備時です。譲渡制限そのものの効果は譲渡制限特約があっても売掛債権は譲渡できるで扱っています。先に対抗要件を備えておけば、それより後に付けられた譲渡制限は、このみなし規定の対象外になります。将来債権を担保に取るときに登記を急ぐ理由のひとつがここにあります。

債務者が決まっていなくても登記できる。ただし2005年から

登記の側も、将来債権を受け入れる形に作られています。法務省は制度のポイントとして、譲渡に係る債権は指名債権であって金銭の支払を目的とするものに限定されているとしたうえで、債務者が特定していない将来債権も登記することができる、と明記しています。

ただし最初からできたわけではありません。法務省の説明によれば、債権譲渡登記制度は平成10年10月1日から実施され、その後、平成17年10月3日に「債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律の一部を改正する法律」(平成16年法律第148号)が施行されたことで、債務者が特定していない将来債権の譲渡についても登記によって第三者に対する対抗要件を備えることが可能になりました。

将来債権の譲渡をめぐる制度の変化

平成10年10月1日

債権譲渡登記制度が実施される。法人がする金銭債権の譲渡について、簡便な第三者対抗要件制度として始まった。

平成17年10月3日

平成16年法律第148号が施行され、債務者が特定していない将来債権の譲渡についても、登記で第三者対抗要件を備えられるようになった。同じ日に動産譲渡登記制度の運用も始まっている。

2020年4月1日

改正民法が施行され、466条の6が新設された。将来債権の譲渡性と、対抗要件具備時までに譲渡制限がされた場合の扱いが条文に書かれた。

出典: 法務省「第1 債権譲渡登記制度とは?」、e-Gov法令検索「民法」466条の6(いずれも2026年10月19日確認)。

債務者の代わりに、属性で特定する

債務者が決まっていない債権をどうやって登記簿に載せるのか。法務省の記録例は、債務者の氏名・商号等の代わりに、その債権を特定するために必要な事項を【債権発生原因】欄に記録する、という方法を示しています。

債務者不特定の将来債権で記録する内容

売掛債権を譲渡する場合

【債権の種類】売掛債権
【債権発生原因】○○県内の顧客との○○(具体的な商品名)の販売契約に基づく売掛債権

特定の材料として、具体的な商品名や、債務者の地域属性が挙げられています。

工事請負代金債権を譲渡する場合

【債権の種類】工事請負代金債権
【債権発生原因】東京都内の顧客との建築工事請負契約に基づく報酬債権

請負代金債権や委託料債権では、契約の目的たる業務の内容や契約の主体の属性が材料になります。

不動産賃料債権を譲渡する場合

特定の材料は、当該不動産の所在地・名称・部屋番号等

建物が決まっていれば、入居者が入れ替わっても範囲が定まります。

リース債権を譲渡する場合

特定の材料は、リースの対象物件名およびその製造番号等

物件の側から債権の範囲を画する考え方です。

出典: 法務省「債権を特定する方法の記録例(令和元年7月更新)」(2026年10月19日確認)。

あわせて、債権発生の始期および終期を【債権の発生年月日_始期】【債権の発生年月日_終期】の各欄に記録します。期間の記載を債権発生原因欄に書き込む必要はない、とされています。

担保の対象から外したい相手がいる場合の書き方も用意されています。法務省は、特定の取引先に対する債権を除外する旨を【備考】欄へ記録した例を示しており、ある売掛先への債権だけを範囲外にする設計が登記簿の上で表現できます。

コードの頭文字で、将来債権かどうかが分かる

債権の種別は15種類のコードから選んで記録しますが、将来債権の場合はコードの先頭が変わります。法務省の説明では、コード一覧に載っているのは既発生債権のコードで、混在型債権、債務者特定の将来債権、債務者不特定の将来債権については、各コード冒頭の「0」「1」または「9」を、それぞれ「A」「B」「C」に置き換えて適用するとされています。

つまり、売掛債権のコード0201は、債務者特定の将来債権ならB201、債務者不特定の将来債権ならC201、既発生と将来が混ざる混在型ならA201になります。登記簿を見れば、その債権がどの区分で登記されたかが読み取れるということです。

この区分は、次に見る存続期間の上限と直結しています。コードの頭文字を見れば、その登記が50年と10年のどちらの枠で入ったかが推測できます。

申請データで間違えやすい3点

将来債権を登記するときに、記録の仕方を誤りやすい箇所が公表資料に示されています。補正ができない制度なので、出す前に確かめる価値があります。

ひとつめは【契約年月日】欄です。ここに記録するのは、譲渡の対象となる債権の発生原因たる契約、つまり原債権者と債務者の間で締結する契約の締結年月日で、任意の記録項目とされています。不明なら記録する必要はありません。法務省は、この欄に譲渡人と譲受人の間で締結する債権譲渡契約、すなわち債権売買契約や債権譲渡担保契約の締結年月日を記録しないよう注意を促しています。似た名前の日付が2つあるので取り違えやすい箇所です。

ふたつめは期間の書き方です。「平成○年○月○日から平成○年○月○日までの間に発生する債権」や「譲渡日から債権発生終期までに発生する将来債権」といった債権発生の始期・終期の内容は、【債権の発生年月日_始期】【債権の発生年月日_終期】という別の項目に記録することとされているため、【債権発生原因】欄や【備考】欄に重ねて書く必要はありません。

みっつめは余分な記述です。「原債権者と債務者間の」や「譲渡人が債務者に対して有する」といった契約上当然の内容は、【債権発生原因】欄や【備考】欄に記録する必要はないとされています。

付従・付帯する債権をまとめて譲り受ける場合の書き方も示されています。主たる債権に係る債権の種類を選択し、その主たる債権を債権発生原因欄に記録したうえで、「これに付従(又は付帯)する一切の債権」のように続けて記録してよい、という扱いです。ひとつの契約から複数の異なる債権が発生する場合は、主要な債権を列挙したうえで「その他一切の債権」と続ける記録例が挙げられています。

将来債権として登記される債権の種類

どんな売上が対象になるのか。制度の側と登記の側で、それぞれ具体例が示されています。

将来債権として担保に使われる債権の例
債権 出どころ 特定の材料
売掛金債権 中小企業庁が流動資産担保融資保証の対象として挙げる債権 商品名、債務者の地域属性
割賦販売代金債権 同上 販売契約の内容
運送料債権 同上 契約の目的たる業務の内容
診療報酬債権 同上 支払機関との関係
工事請負代金債権 同上 契約の主体の属性(例: 東京都内の顧客)
不動産賃料債権 法務省の記録例 当該不動産の所在地・名称・部屋番号等
リース債権 法務省の記録例 リースの対象物件名およびその製造番号等

出典: 中小企業庁「在庫や売掛債権を担保とする融資・保証について」、法務省「債権を特定する方法の記録例」(いずれも2026年10月19日確認)。中小企業庁は、これらのうち売掛先が事業者であるものが保証制度の担保として利用可能だとしています。

不動産賃料債権やリース債権が並んでいるのは、将来債権の特定が物件の側からできるためです。建物があれば入居者が入れ替わっても範囲が定まり、リース物件があれば契約期間中の債権がひと続きで捉えられます。売掛債権のように相手の属性で画するより、範囲が明確になります。

債務者が全員特定していなければ、存続期間は10年

将来債権を担保に取るときに、もっとも実務的な制約がここです。存続期間の上限を分けているのは特例法8条3項です。債務者が全員特定しているかどうかで線が引かれ、特定していれば50年、していなければ10年が上限になります。どちらにも、その期間を超えて定めるべき特別の事由があるときは上限を外せるというただし書きが付いています。

債権の区分ごとの登記の違い
区分 債権の種類コード 存続期間の上限 債権の総額の記録
既に発生した債権のみを譲渡 0から始まるコード(例: 0201 売掛債権) 50年 総額を記録する
債務者が特定している将来債権 冒頭を「B」に置き換える(例: B201) 50年 既発生のみではないため対象外
債務者が特定していない将来債権 冒頭を「C」に置き換える(例: C201) 10年 対象外
既発生と将来が混ざる混在型 冒頭を「A」に置き換える(例: A201) 債務者がすべて特定していれば50年、そうでなければ10年 対象外

出典: e-Gov法令検索「動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律」8条2項3号・8条3項、法務省「債権を特定する方法の記録例」(いずれも2026年10月19日確認)。

総額の扱いにも違いがあります。特例法8条2項3号は、記録事項として「譲渡に係る債権(既に発生した債権のみを譲渡する場合に限る。)の総額」を挙げています。かっこ書きのとおり、将来債権を含む譲渡では総額の記録が求められません。まだ発生していない債権の金額は確定していないからです。

e-Gov法令検索で表示した動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律の公式画面。第1条から第7条までの条文が並び、第4条の債権の譲渡の対抗要件の特例等が読める
e-Gov法令検索「動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律」の公式画面。現在施行されているのは令和7年6月6日施行の版です(2026年10月19日確認)。

10年で切れたらどうなるのか

存続期間が満了すると、その登記による対抗要件の効力は維持されません。実務では延長登記で期間を延ばすことになります。延長登記の登録免許税は1件につき3,000円です(債権譲渡登記の費用と手続)。

条文には、延長とは別の形で期間が伸びる場面も用意されています。特例法8条4項は、債権譲渡登記がされた債権について譲受人がさらに譲渡をし、旧登記の存続期間の満了前に新たな債権譲渡登記がされた場合に、新登記の存続期間の満了日が旧登記の満了日より後に到来するときは、旧登記の存続期間は新登記の満了日まで延長されたものとみなすとしています。

同条5項は、譲受人がさらに譲渡をし、存続期間の満了前に民法467条の通知または承諾がされた場合(4条1項によりみなされる場合を除く)には、その債権についての存続期間は無期限とみなすとしています。

売掛先への通知を、いつ打つか

将来債権の譲渡では、対抗要件が二段構えになっていることがそのまま段取りに効きます。登記をすれば債務者以外の第三者には対抗できますが、売掛先そのものに主張するには、特例法4条2項により登記事項証明書を交付した通知か、売掛先の承諾が要ります。

債務者が特定していない将来債権の場合、登記をした時点では通知する相手が存在しません。取引が始まって初めて相手が決まるので、通知はその後になります。登記で順位を押さえておき、必要になった段階で通知する、という順番が条文の構造から導かれます。

通知に使う登記事項証明書は、債権1個につき500円(書面請求)です。売掛先が増えるほど通知のコストが積み上がるので、どの相手にいつ打つかは費用の問題にもなります。法務省は、登記事項証明書の交付を請求できるのは当事者、譲渡された個々の債権の債務者その他の利害関係を有する者のみだとしています。

なお、譲渡人について破産手続開始の決定があったときに債務者へ供託させる権利(民法466条の3)は、債権の全額を譲り受けた者であって、その債権の譲渡を債務者その他の第三者に対抗することができるものに限られます。将来債権を担保に取る側から見ると、通知をどこまで済ませてあるかが、いざというときの選択肢を決めます。

登記があっても、債権があるとは限らない

将来債権の登記で誤解しやすいのがここです。法務省は、債権譲渡登記の効果は債務者以外の第三者との関係で確定日付のある証書による通知があったものとみなされるというものであって、この登記により債権の存在や譲渡の有効性を証明するものではない、と明記しています。

そのうえで、登記の真正を担保するために譲渡人および譲受人が共同して申請しなければならないとしつつ、仮に譲渡人および譲受人が通謀して虚偽の登記を申請し、実際に生じていない債権や既に消滅した債権について債権譲渡登記がされたとしても、これによって譲渡の対象となった債権の存在や譲渡の真正が公的に証明されるわけではない、としています。

将来債権はそもそも発生していない債権です。登記簿に載っていることと、その売上が実際に立つことは別の話で、担保としての価値はモニタリングで確かめるしかありません。中小企業庁も、売掛債権は売掛先が倒産するリスクなどがあるため、実際の売掛債権の額面のままの金額で借入れを受けられるわけではない、と説明しています。

債務者が複数の通知を受け取ったときの順番

将来債権を担保に入れたあと、同じ債権について別の譲渡が行われることがあります。法務省は、債務者が弁済をする前に同じ債権について競合する内容の通知を二つ以上受けた場合の処理を説明しています。

競合する通知を受けた債務者の判断

双方が登記事項証明書を交付してされた通知のとき

証明書に記載された登記の日時により、登記の先後関係を確認したうえで、先にされた登記において譲受人とされている者を債権者として取り扱うことになります。

登記事項証明書の交付を伴う通知と、民法467条の確定日付ある証書による通知が競合したとき

証明書に記載された登記の日時と、民法の通知が到達した日時との先後関係により優劣を判断することになります。

弁済をした後に通知が到達したとき

既に債権が消滅しているため、特に対応を要しないとされています。

出典: 法務省「第1 債権譲渡登記制度とは?」2(4) 債務者の留意点(2026年10月19日確認)。債権譲渡登記では登記の年月日に加えて登記の時刻も記録されるため、登記された時が明確になります。

将来債権の譲渡では、対抗要件を備えた時点がそのまま順位を決めます。先に登記を入れておけば、あとから同じ売上を担保に取った相手より前に立てるということです。

よくある質問

まだ契約していない取引先への売掛金も担保にできますか。
できます。債務者が特定していない将来債権も登記できると法務省が明記しています。ただし登記の存続期間の上限は10年になります。

将来債権を譲渡したあとに、取引先との契約へ譲渡禁止条項が入ったらどうなりますか。
対抗要件具備時までに譲渡制限の意思表示がされたときは、譲受人はそのことを知っていたものとみなされます(民法466条の6第3項)。対抗要件を先に備えておけば、それより後に入った条項はこのみなし規定の対象外です。

何年分の将来債権まで譲渡できますか。
条文に期間の上限はありません。制約になるのは登記の存続期間で、債務者がすべて特定していなければ10年です。

将来債権だけを譲渡する場合、債権の総額は登記されますか。
されません。総額の記録は既に発生した債権のみを譲渡する場合に限られています(特例法8条2項3号)。

登記があれば、その売上が立つことの保証になりますか。
なりません。法務省は、登記により債権の存在や譲渡の有効性を証明するものではないと明記しています。

出典

  1. e-Gov法令検索「民法」(466条の5・466条の6・467条、2026年10月19日確認)
  2. e-Gov法令検索「動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律」(8条2項・8条3項・8条4項・8条5項、2026年10月19日確認)
  3. 法務省「債権譲渡登記制度について 第1 債権譲渡登記制度とは?」(制度の実施時期・将来債権の取扱い・登記の効力・債務者の留意点、2026年10月19日確認)
  4. 法務省「債権を特定する方法の記録例(令和元年7月更新)」(債務者不特定の将来債権の記録方法・債権の種類コード、2026年10月19日確認)
  5. 中小企業庁「在庫や売掛債権を担保とする融資・保証について」(借入形態・返済、2026年10月19日確認)