資金繰りが詰まったとき、打ち手は一度に全部並ぶわけではありません。払う時期をずらす、つなぐ、合意で債務を変える、多数決で債務を変える、たたむ。この順に条件が重くなり、戻れなくなります。このページは打ち手を層で整理し、どの条文がその層の境目を決めているかを示します。数字はe-Gov法令検索の条文で確認したものだけを載せています。
層が変わる境目
- 私的整理のうちは中小企業基盤整備機構の債務保証が使えるが、法的整理の申立てがあった時点で対象期間が閉じる(産業競争力強化法51条)。
- 合意で変えるか、多数決で変えるか。特定調停に多数決の定めはなく、民事再生・会社更生・特別清算にはある。
- 多数決の層に入ると、手続開始後の弁済が条文で止まる(民事再生法85条1項、会社更生法47条1項、破産法100条1項)。
- どの層でも、裁判所を使うなら費用の予納が1号に置かれている(民事再生法25条1号、会社更生法41条1項1号、会社法514条1号、破産法30条1項1号)。
- たたむ層に入ると、会社更生と破産では経営の権限が管財人に専属する(会社更生法72条1項、破産法78条1項)。
打ち手を5つの層に分ける
どれが優れているという話ではありません。条件が整わなければ下の層へ進めないという順序があるだけです。
債務をめぐる打ち手の5層
第1層 払う時期をずらす
返済条件の変更、納税の猶予・換価の猶予。債務の額そのものは変わらない。相手は個別の金融機関や徴収の権限を有する者。
第2層 つなぐ
事業の継続に欠くことができない資金を借りる。産業競争力強化法51条・52条・56条の特例が私的整理の期間に用意されている。
第3層 合意で債務を変える
特定調停、事業再生ADR。合意できた相手との間だけで条件が変わる。多数決の定めは条文にない。
第4層 多数決で債務を変える
民事再生、会社更生。反対した債権者も可決・認可された計画に拘束される。開始後の弁済は条文で止まる。
第5層 たたむ
特別清算、破産。向かう先は清算の結了または配当。会社更生と破産では経営の権限が管財人に移る。

第1層:払う時期をずらす
最初に検討するのは、債務の額を変えずに支払いの時期を動かす打ち手です。債権者の同意も裁判所の関与も、層の中ではいちばん軽くなります。
金融機関への返済条件の変更は銀行融資のリスケジュールで扱っています。税については納税の猶予・換価の猶予に条文と要件をまとめています。
この層で足りるかどうかの見極めが、その後の選択肢の幅を決めます。額を変えずに資金繰りが回るなら、下の層へ進む必要はありません。
この層の特徴は、債務の額が動かないことです。利息や延滞税の扱いは別として、元本そのものは残ります。下の層に進むかどうかは、額を据え置いたまま返しきれる見通しが立つかどうかで分かれます。
もう1つの特徴は、相手ごとに個別の交渉になることです。多数決の規定がないため、1社と条件を変えても他社には及びません。債権者の数が多いほど、同じ条件をそろえる手間が増えます。この点は第3層の特定調停と共通しており、裁判所の調停委員会が間に入るかどうかの違いになります。
税の滞納がある場合は、第4層・第5層でも扱いが別になります。会社更生法50条2項は国税滞納処分ができない期間を1年と定め、破産法148条1項3号は一定の租税等の請求権を財団債権としています。税は、どの層でも他の債務と同じようには動きません。
第2層:つなぐための資金
私的整理を進めている間に支払いが止まれば、計画が整う前に事業が壊れます。産業競争力強化法は、この区間の借入れに3方向の後押しを置いています。
| 条文 | 内容 | 数字 |
|---|---|---|
| 51条 | 中小企業基盤整備機構が、事業の継続に欠くことができない資金の借入れに係る債務を保証する | 法的整理の申立てがあった時までが対象期間 |
| 52条2項 | 事業再生円滑化関連保証に係る普通保険のてん補率 | 100分の80(通常は100分の70) |
| 52条3項 | 同じ保証に係る保険料の額 | 保険金額に年100分の2以内の率を乗じた額 |
| 56条1項 | 借入れについて確認を受けられる | 優先的な扱いに債権者全員の同意が要る |
詳しい条文は事業再生ADR中のつなぎ資金で整理しています。
第2層の枠は、第4層・第5層に入った瞬間に閉じる。
産業競争力強化法51条の括弧書きは、破産手続開始、再生手続開始、更生手続開始または特別清算開始の申立てがあったときを対象期間の終わりとしています。つなぎ資金をこの枠で調達するつもりなら、申立てより前に動く必要があります。
第3層:合意できた相手とだけ条件を変える
裁判所の調停委員会に入ってもらい、債権者と一件ずつ条件を決めていくのが特定調停です。条文に多数決の規定がないため、反対する相手を拘束する力はありません。その代わり、入口の要件が「おそれ」「困難」の段階で足ります。
| 項目 | 条文 | 内容 |
|---|---|---|
| 対象 | 特定調停法2条1項 | 支払不能に陥るおそれのあるもの、弁済が困難であるもの、債務超過に陥るおそれのある法人 |
| 申立て時の提出物 | 3条3項 | 財産の状況を示すべき明細書その他の資料、関係権利者の一覧表 |
| 執行の停止 | 7条1項 | 申立てと疎明が要る。給与に係る債権に基づくものは対象外 |
| 条項の質 | 15条・17条2項 | 公正かつ妥当で経済的合理性を有する内容でなければならない |
| 成立の効力 | 民事調停法16条 | 調書に記載されれば裁判上の和解と同一の効力 |
条文の詳細は特定調停とはで確認できます。
第4層:反対した相手も拘束する
多数決で権利関係を変えるのが民事再生と会社更生です。代わりに、開始決定の時点で弁済が止まり、許可や同意の関門が立ちます。
| 項目 | 民事再生 | 会社更生 |
|---|---|---|
| 使える者 | 債務者(法人・個人を問わない) | 株式会社のみ(17条1項) |
| 経営の権限 | 再生債務者に残るのが原則(38条1項) | 管財人に専属(72条1項) |
| 株主の扱い | 決議の種類として分けていない | 権利の種類として決議に参加(168条1項5号・6号) |
| 債務の期限 | 10年(155条3項) | 15年、特別の事情があれば20年(168条5項) |
| 計画案の提出 | 裁判所の定める期間(163条1項) | 末日は開始決定の日から1年以内(184条3項) |
それぞれの条文は民事再生とはと会社更生とはにまとめています。
第5層:たたむ
事業を続けることを前提にしない手続きです。条文の向かう先が違います。
| 項目 | 特別清算 | 破産 |
|---|---|---|
| 対象 | 清算株式会社(会社法510条) | 債務者(破産法15条・16条) |
| 入口の原因 | 清算の遂行に著しい支障を来すべき事情、または債務超過の疑い | 支払不能。法人は債務超過も(16条1項) |
| 債権者の同意 | 協定の可決が要る(567条1項) | 要らない。配当は194条の順位による |
| 財産の管理処分権 | 清算株式会社。許可・同意が要る(535条) | 破産管財人に専属(78条1項) |
| 費用が足りないとき | 予納がなければ開始命令なし(514条1号) | 開始決定と同時に廃止(216条1項) |
条文は特別清算とはと破産手続とはで確認できます。5つの手続きを同じ軸で突き合わせたい場合は債務整理・事業再生の5手続きを条文で比較をご覧ください。
第3層と第4層を分けるもの
実務でいちばん重い分岐です。条文の違いを3点に絞ります。
合意型と多数決型の違い
反対する相手を拘束できるか
特定調停法と民事調停法に多数決の規定はありません。民事再生法172条の3、会社更生法196条5項、会社法567条1項には可決の要件が置かれています。
支払いが一律に止まるか
民事再生法85条1項と会社更生法47条1項は、計画によらない弁済を禁じています。特定調停では、民事執行の停止を個別に申し立てます(7条1項)。
経営の自由度が残るか
民事再生法41条1項は、裁判所が必要と認めたときに許可制にできると定めています。特定調停には、財産の管理権や処分権を移す規定がありません。

どの層でも共通して問われること
裁判所を使う手続きには、同じ形の関門が置かれています。
| 手続 | 予納の条文 | 見込みに関する条文 |
|---|---|---|
| 民事再生 | 25条1号 | 25条3号(計画の作成・可決・認可の見込みがないことが明らか) |
| 会社更生 | 41条1項1号 | 41条1項3号(事業の継続を内容とする計画の見込みがないことが明らか) |
| 特別清算 | 会社法514条1号 | 514条2号(清算を結了する見込みがないことが明らか) |
| 破産 | 30条1項1号 | 見込みに関する号はない |
予納はいずれも1号に置かれています。額は法律に書かれておらず、事件の規模と裁判所の運用で決まります。
止まるもの、止まらないもの
層が下がるほど止まる範囲が広がりますが、止まらないものも条文で指定されています。
| 権利 | 条文 | 内容 |
|---|---|---|
| 別除権 | 破産法65条1項 | 破産手続によらないで行使することができる |
| 相殺権 | 破産法67条1項 | 破産手続によらないで相殺をすることができる |
| 一般の優先権がある債権に基づく執行 | 会社法515条1項ただし書 | 特別清算の中止の対象から外れる |
| 給与に係る債権に基づく執行 | 特定調停法7条1項ただし書 | 停止の対象にならない |
| 共益債権 | 民事再生法119条 | 再生計画の定めによらず随時弁済される |
経営の権限がどこで外れるか
層そのものではなく、選んだ手続きで決まります。
| 手続 | 条文 | 権限の所在 |
|---|---|---|
| 特定調停 | 定めなし | 当事者のまま |
| 民事再生 | 38条1項 | 再生債務者。64条1項の管理命令があれば別(38条3項) |
| 特別清算 | 会社法535条1項 | 清算株式会社。許可または監督委員の同意が要る |
| 会社更生 | 72条1項 | 裁判所が選任した管財人に専属 |
| 破産 | 78条1項 | 破産管財人に専属 |
開始の前から管理が移ることもあります。会社更生法30条1項の保全管理命令は、開始の申立てにつき決定があるまでの間、保全管理人による管理を命じられるとしています。第5項により、この命令への即時抗告に執行停止の効力はありません。
取引先・従業員・株主がいつ関わるか
条文が意見聴取や通知を求める場面は限られています。
| 相手 | 条文 | 場面 |
|---|---|---|
| 主要な取引先の中小企業者 | 民事再生法85条2項/会社更生法47条2項 | 弁済を受けなければ事業の継続に著しい支障を来すおそれがあるとき、裁判所の許可で弁済できる |
| 労働組合等 | 民事再生法42条3項/会社更生法46条3項 | 事業譲渡の許可にあたって意見を聴かなければならない |
| 労働組合等 | 特定調停法14条2項 | 法人の事件で特定調停をしようとするとき、意見を求めるものとする |
| 株主 | 会社更生法46条4項・7項 | 事業等の譲渡について公告・通知を受け、2週間以内に3分の1超が反対すれば譲渡できない |
| 債権者 | 会社法546条の調査委員の申立て等 | 特別清算で調査命令の申立てができる(会社法522条1項) |
手続どうしは優先関係を持っている
層を下りると戻れないと書きましたが、条文はもう少し具体的です。ある手続きが始まると、別の手続きが止まったり効力を失ったりする関係が個別に定められています。
| 条文 | 起きること |
|---|---|
| 会社更生法50条1項 | 更生手続開始の決定があると、破産・再生・更生・特別清算開始の申立てができなくなり、破産手続と再生手続は中止、特別清算手続は効力を失う |
| 会社法515条1項 | 特別清算開始の命令があると、破産手続開始の申立てができなくなり、開始決定のされていない破産手続は中止する |
| 民事再生法25条2号 | 破産手続または特別清算手続が係属し、そちらによることが債権者の一般の利益に適合するときは、再生手続開始の申立てを棄却しなければならない |
| 会社更生法41条1項2号 | 破産・再生・特別清算手続が係属し、そちらが適合するときは更生手続開始の決定をしない |
| 会社法514条3号 | 特別清算によることが債権者の一般の利益に反することが明らかなときは、開始命令をしない |
| 会社法574条1項 | 協定の見込みがない等のときは、裁判所が職権で破産手続開始の決定をしなければならない |
注目すべきは「債権者の一般の利益」という同じ物差しが、民事再生25条2号、会社更生41条1項2号、会社法514条3号、569条2項4号、574条1項3号に繰り返し現れることです。どの手続きを使うかの判断に、同じ基準が置かれているということです。
この関係は、申立ての順番が結果を決めるとは限らないことを意味します。先に動いた手続きが必ず優先するのではなく、どちらが債権者全体にとって適合するかを裁判所が判断する建て付けになっています。係属中の別の手続きがある場合、そちらで処理すべきと判断されれば、新たな申立ては入口で止まります。
逆向きの関係も条文にあります。会社法574条2項は、協定が否決されたとき、または不認可の決定が確定したときに、破産手続開始の決定をすることができるとしています。1項の「しなければならない」と書き分けられており、否決がただちに破産へ直結するとは書かれていません。
債権の呼び名が変わると扱いが変わる
同じ売掛金でも、どの手続きに入るかで呼び名が変わり、弁済の順番が変わります。手続きを検討する前に、自社の債務がどの区分に落ちるかを見ておく必要があります。
| 区分 | 条文 | 扱い |
|---|---|---|
| 再生債権 | 民事再生法85条1項 | 計画の定めによらなければ弁済・受領できない |
| 共益債権 | 民事再生法119条 | 計画の定めによらず随時弁済される |
| 更生債権等 | 会社更生法47条1項 | 計画の定めによらなければ弁済・受領できない |
| 協定債権 | 会社法515条3項 | 債権額の割合に応じて弁済する(537条1項)。一般の優先権がある債権、手続のために生じた債権、費用請求権は除かれる |
| 破産債権 | 破産法100条1項 | 破産手続によらなければ行使できない |
| 財団債権 | 破産法148条 | 配当によらず手続の中から弁済される |
| 別除権 | 破産法65条1項 | 破産手続によらないで行使することができる |
区分を分ける線は「いつ生じた債権か」と「何のために生じた債権か」です。たとえば民事再生法119条1号は、再生債権者の共同の利益のためにする裁判上の費用の請求権を共益債権としています。破産法148条1項2号は、破産財団の管理・換価・配当に関する費用の請求権を財団債権としています。
破産法148条1項3号には時間の線も引かれています。開始前の原因に基づく租税等の請求権のうち、開始当時まだ納期限が到来していないもの、または納期限から1年を経過していないものが財団債権になります。同じ税でも、滞納の古さで枠が変わるということです。

全員が集まらなくても決まる場面
条文には、出席や通知を省ける仕組みも置かれています。規模が大きいほど効いてきます。
| 条文 | 内容 |
|---|---|
| 民事再生法172条の3第1号 | 可決の母数となる議決権者は、債権者集会に出席した者または書面等投票をした者に限られる |
| 会社更生法42条2項 | 知れている更生債権者等が1,000人以上で相当と認めるときは、通知をせず、関係人集会の期日に呼び出さない旨の決定ができる |
| 会社法567条1項1号 | 可決に必要な頭数は「出席した議決権者の過半数」 |
| 特定調停法16条 | 出頭が困難な当事者が書面で受諾し、他の当事者が期日に出頭して受諾すれば、合意が成立したものとみなす |
| 特定調停法9条 | 関係権利者の参加に調停委員会の許可を要しない |
母数が「出席した者」に限られる点は、見込みを立てるうえで重要です。欠席した債権者は反対にも賛成にも数えられません。誰が出てくるかで結果が動く構造になっています。
条文に書かれている数字の早見
このページで扱った数字を1つの表にまとめます。いずれも法律の条文に書かれているもので、運用で変わるものは含めていません。
| 数字 | 条文 | 意味 |
|---|---|---|
| 10分の1 | 会社更生法17条2項1号 | 申立てができる債権者が持つ債権の額(資本金の額に対する割合) |
| 10分の1 | 会社更生法17条2項2号 | 申立てができる株主が持つ総株主の議決権の割合 |
| 10分の1 | 会社法522条1項 | 調査命令を申し立てられる債権者が持つ債権の割合 |
| 100分の3 | 会社法522条1項 | 調査命令を申し立てられる株主の議決権の割合 |
| 3分の1超 | 会社更生法46条7項 | 事業等の譲渡に反対して譲渡を止められる株主の議決権 |
| 5分の1 | 民事再生法42条1項2号イ | 許可が要る子会社等の株式譲渡の帳簿価額(総資産額に対する割合) |
| 1,000人 | 会社更生法42条2項 | 通知省略の決定ができる、知れている更生債権者等の数 |
| 2週間 | 会社更生法46条4項2号 | 株主が反対の意思を書面で通知する期間 |
| 2週間 | 民事調停法18条1項 | 調停に代わる決定への異議申立期間 |
| 30日 | 破産法162条1項2号 | 義務に属しない行為が否認されうる、支払不能になる前の期間 |
| 2か月 | 会社法515条3項 | 協定債権の時効が完成しない、登記の日からの期間 |
| 6か月 | 破産法160条3項 | 無償行為等が否認されうる、支払の停止等の前の期間 |
| 1年 | 会社更生法50条2項 | 国税滞納処分ができない、開始決定の日からの期間 |
| 1年 | 会社更生法184条3項 | 更生計画案の提出期間の末日の上限 |
| 1年 | 破産法148条1項3号 | 財団債権となる租税等の請求権の、納期限からの期間 |
| 2年 | 民事再生法189条2項 | 不正の方法による成立を理由とする取消しの申立期限 |
| 3年 | 民事再生法188条2項 | 監督委員がいる場合に終結の決定がされる、認可確定からの期間 |
| 10年 | 民事再生法155条3項 | 再生計画で定める債務の期限の上限 |
| 15年・20年 | 会社更生法168条5項 | 更生計画で定める債務の期限の上限 |
この一覧に金額は1つも入っていません。予納金も、最高裁判所規則で定める額も、法律の条文には書かれていないためです。金額に関わる判断は、管轄の裁判所が公表している案内と専門家への確認が要ります。

先に手を打つと後で覆ることがある
苦しくなってから特定の債権者だけに払う、担保を入れる。こうした行為は、後から否認の対象になります。破産法が期間を条文で定めています。
| 期間 | 条文 | 対象 |
|---|---|---|
| 6か月 | 160条3項 | 支払の停止等があった後、またはその前6か月以内の無償行為等 |
| 30日 | 162条1項2号 | 義務に属しない、または時期が義務に属しない行為で、支払不能になる前30日以内のもの |
| 1年 | 162条3項 | 申立て前1年以内の支払の停止があった後は、支払不能であったものと推定する |
許可を省いた行為にも効果があります。民事再生法41条2項、会社更生法46条9項、会社法535条3項はいずれも無効としたうえで、善意の第三者には対抗できないとしています。民事再生法189条1項3号は、これを再生計画取消しの事由にも挙げています。法的整理で裁判所の許可が要る行為で条文を並べています。
「払えるうちに払っておく」は、後から覆る可能性がある。
破産法162条は、支払不能を知ったうえで受けた弁済や担保の設定を否認の対象にしています。6か月・30日・1年という期間が条文にある以上、取引の時期は記録として残ります。
閉じたあとに残るもの
手続きが終われば終わり、とは条文が書いていません。民事再生法189条は、認可決定の確定後でも計画が取り消される場合を定めており、190条は取り消されたときに再生債権が原状に復するとしています。
会社法571条2項は、特別清算の協定が保証人その他共に債務を負担する者に対して有する権利に影響を及ぼさないと明記しています。時効については515条3項が、特別清算開始の取消しまたは終結の登記の日を起点に2か月の猶予を置いています。法的整理が終わったあとに残るもので条文を整理しています。
相談する前に手元で確かめること
専門家に相談する段階で、条文に当てはめられる材料がそろっていると話が早くなります。いずれも自分で確かめられるものです。
相談前に手元で整理できること
債権者の頭数と、債権額の分布
民事再生法172条の3は頭数と金額の両方を要件にしています。どちらが厳しいかで交渉の順番が変わります。
主要な取引先のうち中小企業者に当たりうる先
民事再生法85条2項・会社更生法47条2項の許可を申し立てる候補になります。
担保権が付いている財産
破産法65条1項により別除権は手続外で行使できます。会社更生では168条1項1号の権利の種類として計画の対象になります。
直近1年の支払いの履歴
破産法162条3項は、申立て前1年以内の支払の停止があった後は支払不能であったものと推定すると定めています。
返済に充てられる額と年数
民事再生法155条3項は原則10年以内、会社更生法168条5項は15年(特別の事情があれば20年)を上限としています。
保証している人と、その範囲
会社法571条2項は、特別清算の協定が保証人等に対する権利に影響しないと定めています。
このページは条文の内容を層で整理したものです。どの層に進むべきかを判断するものではありません。実際の選択は、弁護士、公認会計士、税理士、中小企業診断士、認定経営革新等支援機関などに個別に確認してください。
この記事で扱っていないこと
条文で確認したのは、民事再生法・会社更生法・会社法・破産法・特定調停法・民事調停法・産業競争力強化法の規定です。予納金の額、審理の期間、保証の限度額、52条3項の政令で定める率、経済産業省令で定める基準の中身は、今回は一次情報で確認していないため書いていません。
また、私的整理ガイドラインや中小企業の事業再生等に関するガイドラインといった、法律以外の枠組みについても扱っていません。個人の債務整理に固有の制度、税務上の取扱いも範囲外です。
よくある質問
どの層から検討すべきですか
条文は順番を定めていません。ただし産業競争力強化法51条の保証は法的整理の申立てで対象期間が終わるため、つなぎ資金をその枠で考えるなら申立てより前に動く必要があります。
合意型と多数決型はどちらが早いですか
所要期間は条文に書かれていません。会社更生法184条3項は計画案提出の末日を開始決定の日から1年以内としていますが、民事再生法163条1項は裁判所の定める期間とするにとどめています。
従業員への支払いは止まりますか
本記事では、給与に係る債権に基づく民事執行が特定調停法7条1項ただし書で停止の対象外とされていることを確認しています。各手続きにおける賃金債権の順位については条文を確認していません。
取引先への支払いを続けられますか
民事再生法85条2項と会社更生法47条2項は、主要な取引先である中小企業者について、裁判所の許可により弁済できる例外を置いています。少額債権にも同様の許可があります(85条5項・47条5項)。
個人保証はどうなりますか
会社法571条2項は、特別清算の協定が保証人その他共に債務を負担する者に対する権利に影響を及ぼさないとしています。民事再生・会社更生・破産における保証人の扱いは、このページでは条文を確認していないため触れていません。
税金の支払いも止まりますか
会社更生法50条2項は、開始決定の日から1年間は国税滞納処分ができないと定めています。破産では148条1項3号が一定の租税等の請求権を財団債権としています。
出典
- e-Gov法令検索「民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)」第25条・第38条・第41条・第42条・第85条・第119条・第155条・第163条・第172条の3・第189条・第190条 — 費用の予納と見込みによる棄却、業務遂行権、許可制にできる行為、事業譲渡の意見聴取、弁済禁止と中小企業者・少額債権の例外、共益債権、10年の期限、計画案の提出時期、可決要件、計画の取消しと原状回復
- e-Gov法令検索「会社更生法(平成十四年法律第百五十四号)」第17条・第30条・第41条・第42条・第46条・第47条・第50条・第72条・第168条・第184条・第196条 — 株式会社に限られること、保全管理命令と即時抗告、費用の予納と見込み、事業等の譲渡と株主の反対権、弁済禁止と例外、国税滞納処分の1年、管財人への専属、権利の種類と15年・20年、計画案提出の1年、可決要件
- e-Gov法令検索「会社法(平成十七年法律第八十六号)」第510条・第514条・第515条・第522条・第535条・第537条・第567条・第571条・第574条 — 特別清算開始の原因、費用の予納と清算結了の見込み、他の手続の中止と一般の優先権の除外・時効、調査命令の申立て、許可または同意を要する行為、協定の可決要件、協定の効力が保証人等に及ばないこと
- e-Gov法令検索「破産法(平成十六年法律第七十五号)」第15条・第16条・第30条・第65条・第67条・第78条・第100条・第148条・第160条・第162条・第194条・第216条 — 支払不能と法人の債務超過、費用の予納、別除権と相殺権、管財人への専属、破産債権の行使、財団債権、否認の対象と6か月・30日・1年、配当の順位、同時廃止
- e-Gov法令検索「特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律(平成十一年法律第百五十八号)」第2条・第3条・第7条・第9条・第14条・第15条・第16条・第17条 — 特定債務者の3類型、申立て時の提出物、民事執行手続の停止と給与債権の除外、法人の事件での労働組合等からの意見聴取、調停条項に求められる経済的合理性
- e-Gov法令検索「産業競争力強化法(平成二十五年法律第九十八号)」第51条・第52条・第56条 — 中小企業基盤整備機構による債務保証と法的整理の申立てによる打ち切り、てん補率100分の80と年100分の2以内の保険料、借入れの確認と債権者全員の同意
- e-Gov法令検索「民事調停法(昭和二十六年法律第二百二十二号)」第16条・第18条 — 成立した調停が裁判上の和解と同一の効力を有すること、調停に代わる決定への2週間の異議申立期間

