商工中金から資金を調達する話になると、融資メニューのほうばかりが話題になります。しかし実際に取引が始まったあと、日々の資金繰りで触れることになるのは「商工中金ビジネスWeb」というインターネットバンキングのほうです。そしてこの画面は、振込をするだけの道具ではありません。保有している電子記録債権(でんさい)の割引と譲渡担保を、窓口へ行かずに申し込める入口にもなっています。
このページでは、商工中金が公開しているビジネスWebのサービス案内、Q&A、ご利用ガイドの3つを読み合わせて、申し込める相手、開始までにかかる営業日、4つのサービス区分の積み上がり方、手数料の3層、時間と限度額、そしてでんさいから資金化を申し込むときの時限を、数字が出ている範囲だけで整理します。公表されていない部分は、公表されていないと書きます。金額と時間はいずれも2026年11月5日時点で公式ページに出ているものです。
先に結論
- 土台はWeb資金移動サービス。データ伝送もでんさいも、これを申し込まないと使えない
- 月間基本料金は1,100円(資金移動と照会)か2,200円(データ伝送)。でんさいは上乗せ0円、ZEDIは上乗せ550円
- 基本手数料は前1か月分の後払いで、最初の引落しはサービス開始の翌々月10日から
- でんさいの画面から割引申込と譲渡担保申込ができる。当日付の記録請求は平日9時から15時まで
- 申込書は本支店の窓口にあり、提出から利用開始までは通常で翌々営業日、数日かかることもある
ビジネスWebの入口は「融資の資格」ではなく「預金口座の有無」
商工中金から借りられるのは、株主である中小企業団体とその構成員に限られます。この制限は法律に書かれたもので、民営化のあとも残りました。ところがビジネスWebの利用条件はそこと切り離されていて、商工中金が示しているのは次の4点です。
- 商工中金に普通預金口座または当座預金口座を持っている法人または個人事業主であること
- インターネットに接続できるパソコンを持っていること
- インターネット経由の電子メールを受信できるメールアドレスを持っていること
- そのほか商工中金所定の条件を満たすこと
つまり、借入の有無ではなく口座の有無が入口です。借入が無くても預金口座があれば申し込めますし、逆に口座が無ければ申し込めません。日本政策金融公庫との決定的な違いが預金業務の有無であることは商工中金と日本政策金融公庫の違いで整理しましたが、ビジネスWebはその違いが日常の操作に出てくる場面でもあります。公庫には決済用の口座がないので、同じ性質のインターネットバンキングも存在しません。
使えない組み合わせも明示されています。携帯電話からは利用できないとされ、Q&Aの回答は「ご利用いただけません」の一文です。また海外からの利用は原則として認められず、商工中金は「原則として、国内からのご利用に限るものとし」と書いています。スマートフォンが登場するのはワンタイムパスワードのアプリと二経路認証の場面だけで、取引の操作そのものはパソコンが前提です。

4つのサービス区分は横並びではなく、資金移動の上に積み上がる
ビジネスWebのサービスは4区分です。案内の見た目は並列ですが、申込みの構造は並列ではありません。照会サービスは資金移動サービスを申し込むと自動で付いてきます。データ伝送サービスとでんさいサービスは、どちらも「資金移動サービスのお申込みが必要」と注記されています。したがって、総合振込だけ使いたい、でんさいだけ使いたい、という申込み方はできません。
申込みの積み上がり方
土台:Web資金移動サービス(月1,100円・照会サービスが自動付帯)
振込・振替、振込状況の照会と取消。これを申し込むと残高照会・入出金明細照会・振込入金明細照会が付いてくる
上に載せる①
Webデータ伝送サービス
総合振込、給与(賞与)振込、口座振替の事前受付。月間基本料金は2,200円
上に載せる②
Webでんさいサービス
電子記録債権の記録請求、融資申込、その他請求。月間基本料金の上乗せは0円
上に載せる③
ZEDI(全銀EDI)
総合振込へXML形式の商流情報を添付し、明細でEDI情報を閲覧する。上乗せ550円
ZEDIには別の制約もあります。商工中金の説明では、ZEDIで扱えるのは総合振込、入出金明細照会、振込入金明細照会の3つで、振込・振替、給与・賞与振込、口座振替には使えません。利用時間も平日8時から19時までで、ビジネスWeb本体の21時までとは異なります。商工中金自身が「当金庫ビジネスWebとZEDIのご利用時間は異なります」と注記しています。
手数料は月額・振込・でんさいの3層に分かれる
初期費用は発生しません。商工中金は「契約料等の費用はいただきません」と書いています。ただしパソコン、通信環境、メールアドレスは利用者側で用意するものとされ、インターネットの通信料金とプロバイダー料金も利用者負担です。費用が発生するのは、月間基本料金、振込手数料、でんさい利用手数料の3つの層です。
| サービス区分 | 月間基本料金 | 資金移動サービスの申込み |
|---|---|---|
| Web照会サービス/Web資金移動サービス | 1,100円 | これ自体が土台 |
| Webデータ伝送サービス | 2,200円 | 必要 |
| Webでんさいサービス | 上記に加えて0円 | 必要 |
| ZEDIサービス | 上記に加えて550円 | 対応するEBサービスの契約が必要 |
支払いの時期には独特の決まりがあります。引落し日は毎月10日(銀行休業日の場合は翌営業日)ですが、Q&Aによればこれは前1か月分の後払いです。さらに「基本手数料は、サービス開始日の翌月分から発生する」ため、最初の引落しは翌々月の10日になります。10日の営業開始時点で引き落とすので、前営業日までに入金しておくよう求められています。
| 手数料の種類 | 本支店あて | 他行あて |
|---|---|---|
| Web資金移動サービス/データ伝送サービス(総合振込) | 無料 | 330円 |
| Webデータ伝送サービス(給与振込) | 55円 | |
| でんさい 発生記録手数料 | 220円 | 440円 |
| でんさい 譲渡記録手数料 | 110円 | 220円 |
| でんさい 分割譲渡記録手数料 | 220円 | 440円 |
| でんさい 保証記録手数料 | 220円 | |
| でんさい 入金・変更記録・支払等記録・通常開示 | 無料 | |
商工中金ビジネスWeb サービスのご案内より。譲渡記録手数料と分割譲渡記録手数料には、でんさい割引とでんさい担保1件当たりの手数料が含まれるという注記が付く。支払等記録手数料には、でんさい貸付の期限前・期限後弁済1件当たりの手数料が含まれる

でんさいサービスの月間基本料金が0円であることと、でんさいの1件ごとの手数料が0円であることは別の話です。月額は上乗せされませんが、発生記録を1件起こせば本支店あてで220円、他行あてで440円がかかります。譲渡記録は半額の110円と220円で、ここに割引や担保差入れの手数料が含まれるとされています。無料なのは、入金、変更記録、支払等記録、通常開示の4つです。
資金化の申込みは「融資申込」の2メニューから出す
ビジネスWebを資金調達の文脈で見るときに中心になるのは、Webでんさいサービスの中の「融資申込」という区分です。商工中金のサービス案内では、融資申込の下に割引申込と譲渡担保申込の2つ、そして申込状況を見るための照会が置かれています。
- 割引申込:金融機関に債権の割引を申し込む
- 譲渡担保申込:金融機関に債権の譲渡担保を申し込む
- 照会:融資申込状況を照会する
申し込める形は2つで、どちらも手元のでんさいを原資にします。手形割引と手形担保貸付の電子版にあたる位置づけですが、割引料や担保掛目といった条件は、このページには一切書かれていません。書かれているのは申込みの経路と、記録請求にかかる手数料だけです。利率や掛目を知りたい場合は取引店に当たることになります。商工中金が融資利率を公表していないことは商工中金の一般的な融資で確認したとおりで、でんさいを使う場合も同じです。
注意したいのは、譲渡記録には原則として保証が付くという点です。商工中金は「債権譲渡請求には原則として、保証(保証記録)がつきます」と書いています。でんさいを譲り渡した側は保証人として残るのが原則で、支払われなかったときに遡って請求を受ける余地があります。手形割引で買戻し義務が残るのと似た構図です。
また分割記録は単独で請求できません。商工中金の説明では「分割記録は譲渡記録と一体として取り扱うことができ、分割記録単独での請求は行えません」とされています。額面の一部だけを切り出して資金化したい場合も、譲渡と組み合わせた請求になります。
でんさいそのものの仕組み、手形との違い、導入手順は別の記事で扱っています。ここで押さえておきたいのは、商工中金に口座を持っていて、資金移動サービスとでんさいサービスを申し込んであれば、割引と譲渡担保の申込み自体は画面から出せるということです。融資メニュー全体のなかでの位置づけは商工中金の融資メニュー8種類を比較で確認できます。
時間の制約は「当日付」と「予約」で別の時計が動く
ビジネスWebの利用時間は、サービスごとにも、当日付か予約かによっても変わります。照会は土日も動きますが、総合振込や給与振込の受付は平日だけです。でんさいの当日付の記録請求に至っては、平日9時から15時までの6時間しかありません。
| 操作 | 平日 | 土・日 |
|---|---|---|
| 残高照会・入出金明細照会・振込入金明細照会 | 8:00〜21:00 | 9:00〜17:00 |
| 振込・振替(当日扱い) | 8:00〜21:00 | 取扱いなし |
| 振込・振替(予約の受付・取消) | 8:00〜21:00 | 9:00〜17:00 |
| 総合振込・給与(賞与)振込・口座振替 | 8:00〜21:00 | 取扱いなし |
| ZEDI | 8:00〜19:00 | 取扱いなし |
| でんさい 当日付の記録請求 | 9:00〜15:00 | 取扱いなし |
| でんさい 予約の請求・申込・照会 | 8:00〜21:00 | 取扱いなし |
商工中金ビジネスWeb サービスのご案内と商工中金ビジネスWeb Q&Aより。でんさいの時間はいずれも銀行休業日を除く
当日付の振込には、表に入りきらない例外が2つあります。ひとつは商工中金の当座預金口座あての当日付振込で、操作時間は8時30分から15時20分までに限られます。月末営業日(12月を除く)だけは8時から16時20分までに広がります。もうひとつは他行あての大口振込で、振込金額が1億円以上の場合は平日15時20分以降は取り扱えません。こちらも月末営業日(12月を除く)は16時20分が境目です。
サービスが止まる日も決まっています。1月1日から3日、5月3日から5日、祝日(祝日が日曜日の場合を除く)、振替休日、そしてサービス追加等によるメンテナンス時は休止です。12月31日は土日の利用可能時間に準じる扱いになります。
時間に関わるそのほかの時限
- 振込・振替の予約は10営業日先まで出せる
- 総合振込は20営業日前から前営業日の15時まで、給与・賞与振込は3営業日前の15時まで、口座振替は2営業日前の15時までに受け付ける
- でんさいの承認は承認期限日の15時まで。15時を過ぎると担当者への差戻ししかできなくなる
- でんさいの画面は30分操作しないとログイン状態が強制的に破棄される
- 発生記録の取消は発生日を含む5銀行営業日以内。ただし支払期日の2営業日前以降は取り消せない
- 支払期日を迎えた保有債権の資金は、支払期日当日に入金され次第使える
限度額は申込書で決めた金額が上限になる
振込限度額は、商工中金が決めた上限と、利用者が申込書で指定した金額の、低いほうが効きます。商工中金側の上限は1回あたり9億9千9百万円以内、1日あたり99億9千9百万円以内です。Q&Aは「かつお客さまが申込書で指定された金額です」と書いており、実際に動かせる金額は申込時の指定で決まります。
| 項目 | 上限 |
|---|---|
| 1回あたりの振込限度額 | 9億9千9百万円以内(かつ申込書で指定した金額) |
| 1日あたりの振込限度額 | 99億9千9百万円以内(かつ申込書で指定した金額) |
| 事前登録方式の入金指定口座 | 最大999先 |
| 総合振込の1回あたり件数 | ブラウザ入力3,000件、ファイル受付3,000件 |
| 総合振込の振込先登録 | 50,000件 |
| 給与・賞与振込の登録 | あわせて50,000件 |
| 口座振替の請求先登録 | 50,000件 |
| 利用者の人数 | マスターユーザを含めて最大20名 |
商工中金ビジネスWeb サービスのご案内と商工中金ビジネスWeb Q&Aより
振込先の範囲にも制限があります。商工中金が振り込めるのは全国銀行データ通信システムに加盟している金融機関だけです。農協や信用組合等へは振り込めますが、海外の銀行等へは振り込めません。海外送金が必要な場合は、同じ商工中金でも外為Webという別のサービスに分かれていて、月間基本手数料と外国為替手数料が別にかかります。なお、ビジネスWebの振込はすべて電信扱いで、文書扱いは選べません。
申込みからサービス開始までは書面が1回挟まる
ビジネスWebの申込みは画面では完結しません。商工中金が示している手順は3段階で、最初に紙の申込書が入ります。申込書は本支店の窓口に置いてあるとされています。
申込みからサービス開始まで
申込書を取引店へ出す
商工中金所定の申込書に記入して取引店に提出する。申込書は商工中金の本支店の窓口にある
確認・登録を待つ
商工中金が申込内容を確認し登録した翌営業日から使える。通常は申込日の翌々営業日だが、数日かかることもある
初期設定をする
手元の申込書(お客様控)とご利用ガイドを見ながら、画面の案内に沿ってログインIDの取得などを行う
申込みの段階で決めておくべき項目もあります。代表口座は、各種の照会に使われるほか、振込手数料、振込・振替資金、総合振込資金、給与(賞与)振込資金を引き落とす口座です。契約者本人名義の普通預金口座または当座預金口座から選びます。複数の口座を使う場合、代表口座以外は出金指定口座と呼ばれ、ここを手数料の引落し口座に指定することもできます。この呼び名は2025年1月4日の新システム移行にあわせて「関連口座」から改称されたものなので、それ以前の資料とは用語が違います。
振込の方式も2つから選びます。事前登録方式は、あらかじめ届け出た入金指定口座にだけ振り込む方式です。都度指定方式は、画面上でその都度振込先を指定する方式で、申込みにあたって本人確認方法を電子証明書方式にする必要があります。さらに都度指定方式で当日扱いの振込・振替を行えるのは、申込書で申し込んだ利用者に限られます。あとから方式を変えると手続きが増えるので、ここは申込みの時点で決めておく項目です。

セキュリティ対策として掲げられている13項目
商工中金はビジネスWebのセキュリティとして13の対策を挙げています。内容の細部はページ上で折りたたまれていますが、項目名そのものは公表されています。
- ワンタイムパスワード
- パソコンとスマートフォンによる二経路認証
- 128ビットSSL暗号化通信方式の採用
- ソフトウェアキーボード入力機能
- 電子証明書の発行
- 厳重な本人確認
- ご利用履歴の表示
- 自動ログアウト
- パスワード変更通知
- ご確認電子メールの送信
- 電子署名付き電子メール
- システム監視体制
- 不正送金・フィッシング対策ソフトPhishWallプレミアムの提供
運用側で決められることもあります。利用者はマスターユーザを含めて最大20名まで登録でき、マスターユーザまたは管理者ユーザが、一般ユーザごとに使えるサービスと権限を設定します。でんさいでは権限設定によって同一ユーザが仮登録から承認まで通せますが、担当者権限と承認者権限を同じ人に与えるかどうかは利用者側の判断です。承認パスワードを連続して誤入力するとロックされ、マスターユーザが1人しかいない場合は書面での手続きが必要になります。
電子証明書は有効期限がある点にも注意が必要です。商工中金はパソコンの買い換え時の手続き、有効期限切れの更新、失効の手続きをそれぞれ別の案内として用意しており、PC入替時の手続きは2023年1月版、電子証明書発行アプリの操作手順書は2022年4月版が公開されています。
よくある質問
Q. 融資を受けていなくてもビジネスWebを申し込めますか。
A. 申し込めます。条件は商工中金に普通預金口座または当座預金口座があることで、借入の有無は条件に含まれていません。
Q. でんさいサービスだけを申し込めますか。
A. できません。商工中金は「でんさいサービスをご利用の場合は、資金移動サービスのお申込みが必要となります」としています。月額1,100円の資金移動サービスが前提になります。
Q. でんさいサービスの月間基本料金が0円なら、でんさいの利用は無料ですか。
A. 月間基本料金の上乗せが0円というだけです。発生記録は本支店あて220円・他行あて440円、譲渡記録は110円・220円といった1件ごとの手数料がかかります。
Q. 割引の料率はどこに出ていますか。
A. ビジネスWebのページには出ていません。画面から割引申込と譲渡担保申込ができることは書かれていますが、料率や掛目は公表されていないため、取引店に確認する必要があります。
Q. 基本手数料はいつから引き落とされますか。
A. 前1か月分の後払いで、サービス開始日の翌月分から発生します。このため最初の引落しは翌々月の10日になります。
Q. スマートフォンだけで使えますか。
A. 使えません。携帯電話からの利用はできないとされており、スマートフォンが関わるのはワンタイムパスワードのアプリと二経路認証です。
Q. 海外の取引先に振り込めますか。
A. ビジネスWebでは振り込めません。振込先は全国銀行データ通信システムの加盟金融機関に限られ、海外送金は外為Webという別のサービスになります。
Q. 申し込んだ日から使えますか。
A. 使えません。商工中金が申込内容を確認・登録した翌営業日からの利用で、通常は申込日の翌々営業日、数日かかることもあるとされています。

