融資の返済条件でもめた、担保の扱いに納得がいかない、窓口の説明が契約書と違う。こうしたとき、銀行が相手なら全国銀行協会の相談室へ持ち込むという道筋がよく知られています。ところが相手が商工中金の場合、その道筋は使えません。金融庁が公表している指定紛争解決機関の一覧に、商工組合中央金庫業務を担当する機関が1つも無いからです。
では、どこへ持ち込めばよいのか。商工中金が自ら公表している持ち込み先は2系統あり、主たる業務については東京の3つの弁護士会が運営するADR機関になります。このページでは、商工中金の公表資料、金融庁の金融ADR制度のページ、株式会社商工組合中央金庫法の条文を突き合わせて、苦情と紛争で窓口がどう分かれるのか、連絡先はどこか、他の業態と何が違うのかを整理します。
先に結論
- 苦情の受け先は営業店と商工中金お客さまサービスセンター。電話は0120-079-366で、受付は9時から17時まで
- 紛争解決の持ち込み先は東京弁護士会・第一東京弁護士会・第二東京弁護士会が設置・運営する紛争解決センターと仲裁センター
- 金融庁の指定紛争解決機関一覧に商工組合中央金庫業務は無い。全国銀行協会が担当するのは銀行業務と農林中央金庫業務
- 投資信託の窓販など登録金融機関業務だけは、証券・金融商品あっせん相談センターも受け付ける
- 根拠は商工中金法第22条の5。指定機関がある場合とない場合で、講じるべき措置が分かれている
苦情と紛争で、持ち込む相手が入れ替わる
商工中金の案内は、相談・照会・意見・苦情を受ける窓口と、紛争の解決を図る窓口を分けて書いています。前者は商工中金の内部にあり、後者は外部の機関です。同じ不満でも、話し合いで解決を試みる段階と、第三者に和解案を出してもらう段階では、持ち込む先が入れ替わります。
| 段階 | 持ち込む相手 | 連絡先 |
|---|---|---|
| 相談・照会・意見・苦情 | 商工中金の営業店、または商工中金お客さまサービスセンター | 0120-079-366 |
| 紛争の解決 | 東京弁護士会紛争解決センター | 03-3581-0031 |
| 紛争の解決 | 第一東京弁護士会仲裁センター | 03-3595-8588 |
| 紛争の解決 | 第二東京弁護士会仲裁センター | 03-3581-2249 |
| 登録金融機関業務に限る苦情と紛争 | 証券・金融商品あっせん相談センター | 0120-64-5005 |
商工中金の苦情対応・紛争解決の概要より。お客さまサービスセンターの受付時間は9時から17時までで、土曜・日曜・祝祭日と12月31日を除く
3つの弁護士会のADR機関は、いずれも所在地が東京都千代田区霞が関1-1-3です。弁護士会館という同じ建物に入っています。全国に営業店を持つ金融機関でありながら、紛争解決の持ち込み先は東京の1か所に集まっているという形です。遠方から申し立てる場合の扱いは、各センターの規則によります。

なぜ全国銀行協会へ持ち込めないのか
金融庁は、紛争解決機関の指定を受けた団体の一覧を公表しています。そこに載っている8団体と、それぞれが担当する業務の種別を見ると、商工中金の業務を担当する団体はありません。
| 団体名 | 業務の種別等 |
|---|---|
| 一般社団法人全国銀行協会 | 銀行業務、農林中央金庫業務 |
| 一般社団法人信託協会 | 手続対象信託業務、特定兼営業務 |
| 日本貸金業協会 | 貸金業務 |
| 特定非営利活動法人証券・金融商品あっせん相談センター | 特定第一種金融商品取引業務 |
| (商工組合中央金庫業務を担当する団体) | 一覧に無い |
金融庁 指定紛争解決機関一覧より。保険関係の4団体は割愛した
注目したいのは全国銀行協会の行です。担当するのは銀行業務と農林中央金庫業務の2つで、農林中央金庫という、商工中金と同じく個別の法律で設立された金融機関の業務が名指しで入っています。それでも商工組合中央金庫業務は入っていません。農林中金は全国銀行協会へ、商工中金は弁護士会へ、という分かれ方になります。

金融庁には、指定機関がない業態についての案内も別に用意されています。そこには「指定紛争解決機関がない業態の金融機関に係る苦情処理・紛争解決の対応については、各金融機関に直接お問い合わせ下さい」と書かれ、続けて、業界団体や自主規制機関に加入している金融機関ならその団体のページでも案内していると説明されています。掲載されている団体は全国信用金庫協会、全国労働金庫協会、全国信用組合中央協会、JAバンク、JFマリンバンクなど15ほどで、ここにも商工中金に対応する団体は出てきません。

他の業態と並べると、商工中金の位置がはっきりする
金融庁は、金融機関とのトラブルに関する相談・苦情窓口の一覧も公表しています。令和7年9月9日時点の内容を預貯金の分野で見ると、業態ごとに業界団体の相談所が置かれ、そこから先の紛争解決を弁護士会へ取り次ぐ形が並んでいます。
| 業態 | 一覧に載っている相談先 | 紛争解決の扱い |
|---|---|---|
| 銀行 | 全国銀行協会「全国銀行協会相談室」 | 指定紛争解決機関として自ら手続を行う |
| 信用金庫 | 全国信用金庫協会「全国しんきん相談所」 | 協会が案内する流れによる |
| 労働金庫 | 全国労働金庫協会「ろうきん相談所」 | 東京三弁護士会に取次 |
| 信用組合 | 全国信用組合中央協会「しんくみ相談所」 | 東京三弁護士会に取次 |
| JAバンク | JAバンク相談所 | 弁護士会の仲裁センター・紛争解決センター等に取次 |
| 商工中金 | 一覧に行が無い | 商工中金が自ら東京三弁護士会のADR機関を案内する |
金融庁 金融機関とのトラブルに関する相談・苦情窓口(金融ADR機関)一覧と商工中金の苦情対応・紛争解決の概要より
弁護士会のADRへ行き着く点では、労働金庫や信用組合と同じです。違うのは、間に業界団体の相談所が挟まらないことです。労金や信組の利用者は、まず全国組織の相談所へ電話して、そこから取り次いでもらえます。商工中金の利用者には取り次ぐ団体がないので、商工中金のお客さまサービスセンターへ直接かけるか、弁護士会のセンターへ自分で申し立てることになります。
商工中金の場合に通る道筋
営業店に言う
商工中金の本・支店に責任者が置かれている。まずここが受け口になる
お客さまサービスセンター
コンプライアンス統括部が一元的に管理する。電話は0120-079-366で、受付は平日の9時から17時まで
弁護士会のADR機関
話し合いで決着しないときは、東京三弁護士会の紛争解決センターまたは仲裁センターへ申し立てる
根拠は商工中金法第22条の5の二段構え
この扱いは、商工中金が決めた運用というより、法律が指定機関の有無で場合分けしている結果です。株式会社商工組合中央金庫法の第22条の5は「指定紛争解決機関との契約締結義務等」という見出しで、次の2つの場合を書き分けています。
法第22条の5第1項の場合分け
第1号
指定紛争解決機関が存在する場合
一の指定紛争解決機関との間で手続実施基本契約を締結する措置を講じなければならない
第2号
指定紛争解決機関が存在しない場合
商工組合中央金庫業務に関する苦情処理措置および紛争解決措置を講じなければならない
第2項は、この2つの措置の中身を定義しています。苦情処理措置は、苦情処理の業務に従事する職員などへの助言・指導を、消費生活に関する専門的な知識経験を有する者として主務省令で定める者に行わせること、またはこれに準ずる措置です。紛争解決措置は「顧客との紛争の解決を認証紛争解決手続により図ること」、またはこれに準ずる措置と書かれています。認証紛争解決手続は、裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律の第2条第3号で定義されたものを指します。
見落とされやすいのが第3項です。手続実施基本契約を締結した場合は、相手方である指定紛争解決機関の商号または名称を公表しなければならないと定められています。商工中金の苦情対応のページには、その名称が掲げられていません。掲げられているのは弁護士会のADR機関と、登録金融機関業務に限った証券・金融商品あっせん相談センターです。
つまり、読者の側から見れば「商工中金の指定紛争解決機関はどこか」という問いには答えが無いのが現状です。探しても見つからないのは、探し方が悪いからではありません。
投資信託の窓販だけは別の系統になる
例外が1つあります。商工中金は登録金融機関として投資信託の窓口販売などを行っており、この部分の苦情と紛争については証券・金融商品あっせん相談センターが受け付けます。商工中金の案内にも「内容が登録金融機関業務(投資信託窓販業務等)に限ります」という注記が2か所に付いています。
この団体は、金融庁の指定紛争解決機関一覧にも載っています。担当する業務の種別は特定第一種金融商品取引業務です。したがって、同じ商工中金との取引でも、融資や預金をめぐる紛争は弁護士会のADRへ、投資信託の販売をめぐる紛争はあっせん相談センターへ、という具合に系統が分かれます。申し立てる前に、どちらの業務についての不満なのかを切り分けておく必要があります。
申し立て先を分ける切り口
融資・預金・為替など
東京三弁護士会のADR機関
紛争解決センターまたは仲裁センター。いずれも東京都千代田区霞が関1-1-3にある
登録金融機関業務
証券・金融商品あっせん相談センター
投資信託の窓販など。苦情の受付も紛争解決もこちらが担当する
当てはまらないもの
反社会的勢力であることが明らかになった場合
商工中金は「上記の限りではございません」と明記している
商工中金が自ら公表している10項目の方針
商工中金は、苦情等への対応について10項目の方針を掲げています。内部管理態勢を整備し、公平・適切かつ迅速な対応に努めるという前置きのあとに並ぶもので、要点は次のとおりです。
- 本・支店に責任者を置き、コンプライアンス統括部が苦情等を一元的に管理する
- 内容を十分に聞き、事実関係を調査・把握したうえで、関係部署と連携して解決に努める
- 進捗管理を行い、必要に応じて手続の進行に応じた説明を行う
- 他の機関でも受け付けているため、内容や要望に応じて適切な機関を紹介する
- 弁護士会の紛争解決センター・仲裁センター、またはあっせん相談センターを利用でき、その際は規則等を踏まえて適切に協力する
- 苦情等は記録・保存し、対応結果に基づいて態勢のあり方を検討・見直しする
- 反社会的勢力による苦情等を装った圧力には、必要に応じて警察等と連携して断固たる対応をとる
- 内部監査部門が検証する態勢を整備し、研修等により社内へ周知する
- 苦情等は業務改善・再発防止に必要な措置を講じ、今後の業務運営に活かす
同じページには苦情等対応の態勢図も載っていて、お客さまからの苦情が本・支店から業務主管部室へ、そこからコンプライアンス統括部へ上がり、監査部のモニタリングを経てコンプライアンス会議・経営会議へ報告される流れが描かれています。紛争については、弁護士会の紛争解決センター等とあっせん相談センターが外部の枠として別に置かれ、そこで「あっせん・仲裁手続きが進められます」と書かれています。
返済が苦しいという相談は、この窓口の話ではない
間違えやすいのですが、返済が苦しくなったので条件を見直してほしいという申し出は苦情ではありません。これは取引そのものの相談なので、取引店へ持ち込むことになります。商工中金は貸付条件の変更等の実施状況を公表するページも用意していますが、2026年11月5日に開いた時点で掲載されている公表資料は2019年5月15日付の「中小企業の金融円滑化に向けた貸付条件の変更等の実績」で、対象時点は2019年3月末です。直近の実績はここからは読み取れません。
災害や経済危機の局面については、商工中金が災害等特別相談窓口を設置すると案内しています。説明は「地震や台風などによる災害の発生や経済危機が生じた場合、相談窓口を設置し、影響を受けた中小企業の資金繰りを全力で支援しています」というもので、具体的な窓口は局面ごとに案内されます。経営者保証の見直しを申し出たい場合の扱いは商工中金の経営者保証で整理しました。
どの窓口に持ち込む話なのかを決めるには、そもそもどういう建て付けの金融機関なのかを知っておくほうが早いことがあります。利用できる相手が法律で限られていることは商工中金とはに、日々の取引に使うインターネットバンキングの範囲は商工中金ビジネスWebでできることにまとめてあります。
よくある質問
Q. 全国銀行協会の相談室は商工中金の件を受けてくれますか。
A. 金融庁の一覧で全国銀行協会が担当するのは銀行業務と農林中央金庫業務です。商工組合中央金庫業務は含まれていません。受付の可否は窓口の判断になりますが、制度上の担当ではありません。
Q. まず苦情を言わないと紛争解決へ進めませんか。
A. 商工中金のページには苦情前置の明記がありません。金融庁の一覧では銀行・信用組合・JAバンクなどに苦情前置主義の注記が付いていますが、商工中金の行自体が一覧にありません。実際の受付条件は各センターの規則によります。
Q. 弁護士会のADRは有料ですか。
A. 費用の有無と金額は各センターの規則で定められています。商工中金のページには費用の記載がないため、申立先のセンターに直接確認する必要があります。
Q. 地方の支店との間のトラブルでも東京へ申し立てるのですか。
A. 商工中金が案内している紛争解決センター・仲裁センターは3つとも東京都千代田区霞が関にあります。遠方からの申立ての扱いは各センターの規則によります。
Q. お客さまサービスセンターは土日も受け付けますか。
A. 受け付けません。受付時間は9時から17時までで、土曜・日曜・祝祭日と12月31日は除くとされています。
Q. 投資信託を買ったときの説明に納得がいかない場合は。
A. 登録金融機関業務にあたるため、証券・金融商品あっせん相談センターが受け付けます。電話は0120-64-5005です。
Q. 指定紛争解決機関が後からできる可能性はありますか。
A. 法第22条の5は、指定機関がない場合から存在する場合へ変わったときの猶予期間も定めています。将来指定機関ができれば、商工中金は手続実施基本契約を結び、その名称を公表する義務を負います。
