不動産担保ローンの審査については、これと言って明確な回答をしている情報がないため、「何を見ているのか?」「どうして落ちたのか?」わからない方も少なくありません。今回は、筆者自身が実際に不動産担保ローンを借りたときの経験を元に不動産担保ローン審査の実態を解説します。
筆者が借りた不動産担保ローンの概要
- 物件:船橋
- 物件の種類:木造投資用戸建て住宅
- 借りた金額:300万円
- 資金使途:別の物件の投資資金
- 借りた金利:年率3.5%
- 利用した金融機関:ノンバンクの不動産担保ローン会社
不動産担保ローンの仮審査
回答
申込フォームでいただいた情報
- 対象不動産所在地
- 不動産の種類
- 土地面積
- 築年数
- 借入希望額
と
お電話で
- 抵当権の設定状況・金額
- 資金使途
- 借入者本人の収入状況
を確認して、
- googleで現地の住所・物件の確認
- 周辺事例の価格の確認
を行って
- 物件が実在していること
- 不動産価格が周辺相場から推測できること
- 不動産価値に対して、抵当権が設定されていない金額「担保余力」がどのくらいあるのか?
- 担保余力に掛け目をかけた金額が、借入希望額よりも大きいか?
という点を考慮して、仮審査結果をお伝えしています。
考察
ノンバンクの不動産担保ローンの場合は
重要なのは
に尽きるということを意味しています。
例えば
- 5,000万円のマイホームを担保にする
- 3,000万円は、マイホーム購入時に組んだ住宅ローンの残債で、○○銀行が抵当権を設定している
という場合は
という計算になります。
この時点で2000万円を融資しても、不動産を売却すれば、2000万円を回収できることになります。
しかし、不動産価格は急に低下する可能性もあるため、念には念を入れて「融資掛け目」を掛けて融資額を決定するのです。
多くの不動産担保ローンの掛け目は70%ですので
という計算になり
この1400万円よりも、借入希望額が低ければ「仮審査OK」ということになるのです。
確かに、この計算であれば、電話口でのヒアリングでも数十分あれば判断することは難しくありません。
不動産担保ローンの面談
電話での仮審査が終わると、次は面談の予定を組むことになります。
面談時に持ってきてほしいといわれた必要書類は
- 印鑑
- 身分証(免許証、健康保険証の両方)
- 確定申告書3期分
です。
回答
面談では
- 電話で確認したことをさらに掘り下げて確認する
- 弊社のサービスの説明をする
- 今後の手続きの流れを説明する
- 申込に必要な書類の説明
- 正式な申込書を書いていただく
- 現地調査の予定を組む
ために行います。
審査のフローというよりは、「お会いして手続きを説明する場」という意味合いが強くなっています。
考察
たしかに面談では
- 身分証(免許証、健康保険証の両方)
- 確定申告書3期分
の確認が終わった後は
- 不動産担保ローン会社の説明
- 今後の手続きの説明
- 申込に必要な書類の説明
- 正式な申込書の記入
- 現地調査の予定を組む
と、説明を受ける時間が長かったです。
- 本人であることを「身分証(免許証、健康保険証の両方)」で確かめる
※「写真の確認のために免許証」「職業の確認のために保険証」が必要なのだと思われます。 - 電話でのヒアリング事項を「確定申告書3期分」で確かめる
- ヒアリング時の不明点をさらに聞かれる
ぐらいで、後は今後の手続きの説明に終始していました。
話されていたように審査フローという位置付けではありません。
不動産担保ローンの現地調査
面談時には、物件の現地調査の日程を組むことになります。
回答
現地調査は
- 役所で法令上の制限を確認します。
(用途地域・道路種別・建築基準法など) - 現地で瑕疵をチェックします。
(10分ぐらいのチェックで周辺の写真を撮るぐらいです。賃貸物件で居住者がいる場合は中には入りません。) - 周辺の不動産会社にヒアリングを行います。
以上です。
お客様には現地に立ち会ってもらうだけですので、10分もかかりません。
考察
この物件は賃貸物件で貸していたので、現地調査では中にも入らず、写真を撮っただけで終わりました。
現地調査では
外から見て問題がなければOK
というレベルのもので
- 物件が実在していること
- 登記情報との違いがないこと
の確認の意味合いが強いものなのです。
また、不動産担保ローン会社にとって重要なのは物件の確認よりも
- 役所での法令上の制限の確認
- 周辺の不動産会社への聞き込み
の2つなのです。
「役所での法令上の制限の確認」をする理由は、違法建築だと売値が変わってしまうからです。想定していた担保価値が得られないことになってしまいます。
※違法建築だとダメというわけではありません。違法建築でも不動産担保ローンは借りられますが、融資掛け目などが小さくなるのです。
「周辺の不動産会社への聞き込み」はさらに重要で、その地域の不動産会社さんが一番情報を持っています。また、万が一返済が滞って物件を売却することになったら、売却のお手伝いをお願いする可能性もあるのです。
不動産会社に聞くことは
- 「あの物件が売りに出されたら、いくらで売れますか?」
- 「このエリアの同じ条件の物件は、どのくらいの相場ですか?」
- 「地域的な不動産売買の現状」
などです。
不動産担保ローン会社よりも、実際にそのエリアで似たような不動産の売買を扱っている不動産会社であれば、より精度の高い担保価値の算定が可能だからです。
不動産鑑定士などに依頼するよりも、こちらの方が費用もかからず、正確ということがあるのだと推察されます。
不動産担保ローンの本審査
本審査は、現地調査が終わって、必要書類の送付が完了したら、自動的に開始されます。
本審査に必要な書類
- 不動産権利証
- 住民票謄本
- 印鑑証明書
- 略歴書(簡単なもの)
- 償還表(法人で借り入れがある場合)
- 確定申告書
- 納税証明書
回答
仮審査と同じことを
- ヒアリング
- 必要書類
- 現地調査の結果
の材料をそろえたうえで、行うものです。
審査の方法などは、大きく変わりません。
考察
不動産担保ローンの本審査も
不動産担保ローンの仮審査も
やることは同じだけれども、本審査は
- ヒアリング
- 必要書類
- 現地調査の結果
をしっかり準備して、慎重に行う
というものなのです。
審査の方法としては
というシンプルな考え方に則っています。
ただし、仮審査よりも
- 物件の担保価値は正確に判断できる
- 謄本から抵当権の状況が判断できる
- 年収や借り入れ状況などから、融資掛け目をどのくらいに設定するのか判断できる
ため、より精度が高くなります。
また、融資金利もここで決まります。
その他の不動産担保ローン審査に関する質問と回答
回答
銀行の不動産担保ローンでは、信用力も重視されますが
ノンバンクの不動産担保ローンでは、信用力よりも不動産の担保余力の有無の方が何倍も重要です。
ただし、全く見ないわけではありません。
- 起業資金に使う
- 無収入
- 赤字決算
・・・
など、担保余力があっても、「返済の確実性が低い」と判断される場合は
「融資掛け目」「融資金利」を下げて調整します。
考察
銀行の不動産担保ローンの場合は、その人の返済能力を審査するため
- 過去に返済遅延がある
- 過去に返済事故がある
- 収入が小さい
- 無収入
- 起業資金に使う
- 赤字決算
・・・
という場合に、不動産の担保余力があっても、不動産担保ローン審査で落ちてしまいます。
しかし、ノンバンクの不動産担保ローンの場合は
と考えるため
- 過去に返済遅延がある
- 過去に返済事故がある
- 収入が小さい
- 無収入
- 起業資金に使う
- 赤字決算
・・・
という方であっても、、不動産の担保余力があれば、不動産担保ローンの審査に通る可能性は高いことになります。
ただし、返済能力によって「融資掛け目」が変わってくるとのことです。
担保余力2,000万円の物件の場合
- 返済能力:高い → 掛け目:80% → 1,600万円まで借りられる
- 返済能力:普通 → 掛け目:70% → 1,400万円まで借りられる
- 返済能力:低い → 掛け目:50% → 1,000万円まで借りられる
となります。
回答
不動産担保ローンの適用金利は
- 融資率(融資額/担保余力)
- 借りる方の返済能力
によって決まります。
考察
不動産担保ローンの適用金利を決める条件は
- 融資率(融資額/担保余力)
- 借りる方の返済能力
とのことでした。
ですので
例えば
- 3000万円の担保力:1200万円の借り入れ → 融資率40%
- 5000万円の担保力:1200万円の借り入れ → 融資率24%
- 5000万円の担保力:4000万円の借り入れ → 融資率80%
というように計算します。
また、借りる方の返済能力も金利に影響します。
という形になります。
似たような指標に「保全率」というものがあります。
ですので、意味合い的には「融資率」の逆になるのですから
となります。
回答
本審査で決まります。
ただし、面談の際に営業担当者が「どのくらいの金利になりそうか?」ある程度の幅をもってご提示させていただいています。
本審査ではないので確定できるわけではありませんが
「融資金利は、3.0%~4.0%の幅になる可能性が高いです。」
ぐらいはお話しできます。
金利が全く分からないと、ほかの不動産担保ローンも検討していた場合、比較できないことになってしまうので、あまりずれないように営業担当者が提示するのです。
考察
不動産担保ローンの金利は、仮審査の状態でだいたいは目途がついているということです。
- 「融資率(保全率)」
- 「借入者の信用力(返済能力)」
がわかっているので、面談のときに営業担当者が伝えても、「本審査」後の融資金利と大きなずれは起こりません。
回答
ゼロではありませんが、ほとんどのケースで
仮審査がOK → 本審査もOK
となることが多いです。
弊社の場合、経験のある営業担当が仮審査を行うので、実際の融資部の審査と大きなずれがないのです。
ただし、
- 現地調査や周辺の不動産会社の聞き取りで問題がでてしまう
- 法令上の制限に引っかかっていることが判明した
- 税金の未納が判明した
など、仮審査時になかったマイナスの情報がでてきた場合には、本審査で審査落ちしてしまうことも考えられます。
考察
基本的に「本審査」も、「仮審査」も、やっていることは同じですから
というのが基本です。
ただし、「本審査」は情報をすべてテーブルに載せてから行うため
- 現地調査(法令上の制限、周辺の不動産会社への聞き込み、物件の瑕疵)
- 必要書類(不動産権利証、納税証明書、確定申告書、償還表)
で、新しく問題が発生した場合は、「本審査」で審査落ちする可能性もあるので、「仮審査」通過で安心しては行けないということになります。
まとめ
ノンバンクの不動産担保ローン審査で重要視されるのは
- 担保にする不動産に十分な担保余力があるかないか?
です。
- 担保余力があって、掛け目を掛けた上でも、借入希望額よりも高ければ問題なく融資ができる
というのが不動産担保ローン会社の考え方のようです。
「仮審査」では
- 電話でのヒアリング
- googleでの調査
のみで、上記の審査判断をして、仮審査結果を伝えますが
「本審査」では
- 必要書類の提出
- 現地調査
- 面談でのヒアリング
を経て、情報をすべてテーブルの上に載せたうえで、上記の判断を行うのです。
借りる方の「信用力(返済能力)」を全く重視していないのか?といわれるとそうではなく
借りる方の「信用力(返済能力)」は、「融資掛け目」と「融資金利」に影響します。
- 「信用力(返済能力)」が高ければ → 「融資掛け目」が高く、「融資金利」は低金利に
- 「信用力(返済能力)」が低ければ → 「融資掛け目」が低く、「融資金利」は高金利に
なるのです。
ただし、無収入や赤字決算、税金未納、など、「信用力(返済能力)」が壊滅的な状況であっても
とのことです。
ここは、銀行不動産担保ローンと、ノンバンクの不動産担保ローンの考え方の違いと言っていいでしょう。
ノンバンクの不動産担保ローンの方が審査は甘いのです。
銀行融資、銀行不動産担保ローン審査で落ちてしまった方は、ノンバンクの不動産担保ローンに申し込んでみることをおすすめします。
「不動産担保ローンの審査は何が重要になるの?」
「不動産担保ローンの審査に落ちてしまったんだけど・・・」