という経営者の方も多いのではないでしょうか?今回は中小企業が活用すべき資金調達方法を40個厳選してピックアップしました。メリットデメリットも含めて参考にしてください。
中小企業の資金調達方法の基本
まず資金調達方法には大きく分けて3つの種類があります。
- 「資産」を基にして「資金」を生み出す方法
- 「負債」を基にして「資金」を生み出す方法
- 「資本」を基にして「資金」を生み出す方法
の3つです。
どれも、中小企業の資金調達方法として利用できるものです。
この分類に従って、一つずつ中小企業の資金調達方法を解説していきます。
「資産」を基にして「資金」を生み出す方法
「資産」を基にして「資金」を生み出す方法というのは、要するに「資産(債権、不動産、設備等)」を売却して「資金」に変えることが基本になります。
1.無駄な資産の売却
まず、真っ先に考えるべきことが使っていない不要な資産の売却です。
会社の損益状況が良いときは、中小企業であっても、色々な投資をいているはずです。
- 付き合いで買わされた株式
- 新事業のために購入したソフトウェア
- 利用していない福利厚生のためのサービス
- 使っていないオフィススペース
・・・
資産と言っても、色々なものがありますが、重要なポイントは
「会社の利益に貢献していない無駄な資産で売却できる価値があるもの」
を洗い出して売却して資金化することは非常に重要な中小企業の資金調達方法と言えます。
メリット
- すぐにできる
- 無駄な資産が減ると効率化できる部分も出てくる
デメリット
- それほど高額な資金調達にならない可能性も高い
2.在庫の売却
商品の販売をしている企業の場合は、多かれ少なかれ「在庫」を抱えることがあると思います。
- 売れ残った在庫
- 型の古い在庫
- ブームが去った在庫
・・・
これらの在庫も「できれば仕入れ価格よりは高く売って利益は出したい。」というのが経営者の本音でしょうが、在庫を保持することで倉庫代や人件費などの管理コストなども発生しますし、そもそも資金が不足しているのであれば損をしたとしても「在庫の処分によって、資金を調達できるメリットの方が大きい」と考えれば、損を出したとしても、すぐに売却してしまうことが資金調達方法としては重要な選択肢になるのです。
売れる見込みの低い在庫を売却して、資金調達をしましょう。
メリット
- すぐにできる
- 在庫の量によってはそれなりの資金になる
デメリット
- 価格設定次第では、仕入れよりも安く売る必要があるため、損失が出てしまう
3.有価証券を売る
付き合いや余剰資産の資産運用、事業提携によるシナジーを期待して、株式を保有している企業も少なくありません。
資金的に余裕があるのであれば保有し続けても、問題ありませんが、資金調達という視点で考えるのであれば、経営に役立っていない株式や債券は売却してしまうのが簡単な資金調達方法となります。
とくに株式や債券は流動性が高い資産なので資金化するまでのスピードも早いメリットがあります。未公開株の場合も、他の株主に売却するなどの方法を検討して資金化しましょう。
メリット
- 公開株ならすぐに資金化できる
- 現在の価値に近い価格で売却できる
デメリット
- 当初予定していた利回りなどの資産運用のメリットは放棄する必要がある
- 未公開株の場合は、買い手を見つけるのに時間がかかる
4.不動産を売る
経営状態の良いときに自社ビルを購入したり、本業のリスクヘッジのために不動産投資をする中小企業の経営者も少なくありません。
資金調達方法として、まとまった資金が必要な場合は不動産を売却するという選択肢もあります。
会社経営は賃貸オフィスでも問題なくできるはずですので、会社が保有しておく必要性はないのです。
メリット
- まとまった金額の資金化が可能
- バランスシートがスリムになる
デメリット
- 不動産の売却には多少時間がかかる
5.売掛債権を売却する(ファクタリング)
ファクタリングというのは「売掛債権を売却して資金化する方法」です。
売掛債権は、入金までに1カ月~2カ月のタイムラグが発生してしまいますので、すぐに売却することで資金繰りを改善することが可能になります。
ファクタリングサービスを提供しているファクタリング会社に5%~20%程度のファクタリング手数料を支払う必要がありますが、それでも最短即日資金化できるメリットもあるのです。
売上が大きい大口の売掛債権を抱えたために資金繰りが悪化している企業などにおすすめできる資金調達方法です。
メリット
- 最短即日の資金化が可能
- 売掛債権の金額によってはまとまった資金調達が可能
デメリット
- ファクタリング会社に手数料として買取額の5%~20%を支払う必要がある
6.手形割引を利用する
手形割引というのは、振り出された手形を売却して早期に資金化する方法です。
手形を最短即日で資金化できる代わりに、手形割引業者に割引料という手数料を支払うことになります。信頼性の高い企業が振り出した手形ほど、安い割引料で資金化が可能です。
メリット
- 最短即日の資金化が可能
- 手形の金額によってはまとまった資金調達が可能
デメリット
- 手形割引業者に割引料という手数料を支払う必要がある
7.債権回収を徹底する
中小企業にありがちなのが債権回収ができな未回収債権が増えてしまい、資金繰りを圧迫しているという状態です。
「債権」というのは、商品やサービスを提供して代金を回収できる権利ですので
という経営者も多いのですが、チリも積もれば山という形で、債権回収ができない貸し倒れが積み重なって資金状態が悪化している可能性も大きいのです。
会社にある未回収債権をリストアップして、片っ端から債権回収に動きましょう。意外と、債権回収を強気に交渉すれば支払ってくれるものです。悪質かつ高額な未回収がある取引先には「内容証明の送付」「民事調停」「少額訴訟」など法的な手段で回収をすすめる必要があります。
メリット
- 未回収債権の金額によってはまとまった資金調達が可能
デメリット
- 債権回収はすぐに支払ってくれる取引先と支払ってくれない取引先がある
- 支払ってくれない取引先へは法的手段も可能だが、手間や時間がかかる
8.売れない資産もセール&リースバックを活用する
という企業も少なくありません。
この場合に有効なのが「セール&リースバック」という方法です。
「セール&リースバック」というのは、直訳すれば「売って借りる」です。
例えば、バス会社がバスを売却してしまったら営業ができなくなります。
そこで
- バスをリース会社に売却して一時的に資金を調達する
- リース会社とそのバスをリース契約で借りる(リース会社にリース料を毎月支払う)
- 結果、バス会社は今まで通りバスを使って営業がでいる
という方法を取ることがあります。
これであれば、経営で必要な設備や資産を使い続けながら、売却して一時的に資金調達することが可能になるのです。
メリット
- 経営に必要な資産でも売却して資金調達が可能
- 経営に必要な資産は、使い続けることができる
- 固定資産税や保有コストが軽減する
- バランスシートがスリムになる
デメリット
- 毎月のコスト負担(リース料)が発生する
9.不動産のセール&リースバックを活用する
「セール&リースバック」というのは、機械設備だけではなく、不動産であっても利用することができます。
- 自社ビルを売却して、その後賃貸オフィスとして、借りる
- 分譲オフィスを売却して、その後賃貸オフィスとして、借りる
- 店舗を売却して、その後賃貸オフィスとして、借りる
- 工場を売却して、その後賃貸オフィスとして、借りる
- 代表者のご自宅を売却して、その後賃貸物件として、借りる(代表者に入った資金を会社に貸し付ける)
メリット
- 経営に必要な不動産でも売却して資金調達が可能
- 経営に必要な不動産は、使い続けることができる
- 固定資産税や保有コストが軽減する
- バランスシートがスリムになる
デメリット
- 毎月のコスト負担(リース料:家賃)が発生する
10.保険を解約する
個人と同じように企業も保険に加入することがあります。
- 節税対策
- 事業保証対策
- 退職金対策
- 相続対策
・・・
など目的は様々ですが、中小企業の経営者であれば、一度は生命保険による節税策を税理士やファイナンシャルプランナー、保険の営業マン、銀行員に提案された経験があるのではないでしょうか。
保険に加入して、保険金を支払っているのであれば解約することで、解約返戻金が戻ってくるので、これも資金調達方法となります。
メリット
- すぐにできる
デメリット
- 本来保険に加入した目的が達成できなくなる
- 保険料の支払期間によっては少額の資金調達しかできない
- 支払った保険料よりも、受け取る解約返戻金の方が少なくなる可能性がある
11.オフィスの保証金を回収する
最近では個人向けの賃貸物件は「敷金・礼金不要」という物件が増えてきましたが、オフィス賃貸では家賃の6カ月~12カ月分の保証金を必要とする物件が少なくありません。
しかし、オフィスの空室化も問題になっている状況ですから、よほど条件の良い物件でない限りは、有利なのは借りている企業側なのです。
不動産オーナーと周辺の適正相場などを交渉することで、保証金の一部を返還してもらって資金調達することが可能です。
無条件での返還ができない場合も
「このままだと倒産してそもそも家賃を支払えなくなってしまう。」
というように条件を設定して交渉すれば問題なく交渉できるはずです。
交渉が上手くいかなかった場合には、オフィスの保証金回収の専門家に間に入ってもらうことによって、わだかまりなく、保証金を回収し、資金調達することが可能です。
メリット
- すぐにできる
- 賃料によってはまとまった資金になる
デメリット
- 不動産オーナーとの交渉が決裂する可能性もある
- オフィスの保証金回収の専門家を利用した場合は、仲介手数料が発生する
12.仮払金を回収する
中小企業の場合は経営者への「仮払金」が多く発生するケースがあります。
- 経営者が会社からお金を借りる
- 経営者が経費で処理できない支払いを「仮払金」にしている
- 経営者が法人カードでプライベートの支払いをしてしまった。
・・・
などです。
「経営者への仮払金」は、仮に支払っているお金ですので、会社としては返してもらう必要があります。
どちらも経営者の判断になってしまいますが、いつかは清算しなければならないのが「仮払金」ですから、資金繰りが困難な状況では、経営者が率先して仮払金を清算して、会社の資金に充てることも必要なのです。
メリット
- すぐにできる
デメリット
- 仮払金の清算も経営者のお金なので、それすらも工面できない可能性がある
13.購入する資産はすべてリースに切りかえる
資金調達というよりは、資金繰りの改善方法ですが、購入する必要のなる資産をすべてリース契約に切り替えるという方法があります。
設備、車、不動産、コピー機・・・など必要な資産を今までであれば購入していたかも知れませんが、今後はリース契約で毎月のリース料の支払いに切りかえることで、キャッシュフローを改善することが可能です。
メリット
- 資金が入るわけではない
デメリット
- リース料の方が全期間で見ると割高になる
14.営業権、知的財産権を売却する
特許権、著作権、商標権などの知的財産や営業権も、売却の対象になります。
それ自体に価値があり、買い手がいることが前提になりますが
- 特許
- 商品の技術
- ブランド力のある商標権
- 独自で開拓した販路
・・・
M&Aという方式になってしまう可能性もありますが、これらの権利を譲渡することで資金調達することも可能です。
メリット
- 価値によってはまとまった資金調達が可能
デメリット
- 価値のある営業権、知的財産権でないと売れない
- 権利を手放すことで経営が悪化する可能性もある
「負債」を基にして「資金」を生み出す方法
負債ですから、借金をして資金調達をする方法です。
15.日本政策金融公庫から借入
日本政策金融公庫は、株式の100%を国が持つ財務省所管の特殊法人です。
国の金融機関ですから、民間の金融機関とは違って、営利目的ではなく、「企業活動を支援することによる日本経済の活性化」を目的としています。
そのため、民間の金融機関よりも「低金利」「審査が甘い」状態で融資をしてくれるのです。
中小企業の借入による資金調達方法としては最優先に検討すべきものです。
メリット
- 審査が甘い
- 低金利
デメリット
- 利用条件が細かく決まっている
16.信用保証協会の保証付融資
銀行が融資する方法としては
- プロパー融資
- 信用保証協会の保証付融資
の2種類があります。
信用保証協会も、公共機関ですから、民間の金融機関とは違う視点で保証してくれるのです。
銀行としても、信用保証協会の保証がつけられれば、貸し倒れリスクはなくなりますから、貸し倒れリスクが高い中小企業へも問題なく融資することができるのです。
メリット
- 審査が甘い
- 低金利
デメリット
- 保証協会に保証料を支払う必要がある
17.銀行のプロパー融資
中小企業にとってはハードルの高い資金調達方法が銀行のプロパー融資です。
プロパー融資というのは、銀行が独自で貸し倒れリスクを取る融資方法です。
信用保証協会の保証付融資であれば、融資した企業が倒産しても、信用保証協会が弁済してくれますが、プロパー融資の場合は100%銀行の貸し倒れ損失ということになります。
当然、審査は慎重になり
- 十分な利益が出ている企業
- 取引実績が十分にある企業
- 調達資金額が大きく銀行の利息収入もそれなりの規模が見込める企業
でなければ、審査は通らないのです。
メリット
- 融資額は数億円、数十億円の規模も可能
デメリット
- 審査に通るのは至難の業
18.銀行ビジネスローン
前述した通りで、銀行プロパー融資というのは中小企業にとっては非常に審査が通りにくいものです。
信用保証協会の保証付融資がない時代に、これでは中小企業への融資ができないと考えた銀行は
ビジネスローンはプロパー融資よりも、審査が通りやすいものの金利が高いローンになります。
メリット
- プロパー融資よりも審査が通りやすい
デメリット
- 金利が高い
- 借りられる金額は少ない
19.ノンバンクのビジネスローン
銀行が開発したビジネスローンですが、銀行には「信用保証協会の保証付融資」という方法が登場したので、ビジネスローンの販売は若干積極的ではなくなっています。
その反面、消費者金融やカード会社などのノンバンクが中小企業向けにビジネスローン(事業者ローン・商工ローン)を販売し始めたのです。
ノンバンクのビジネスローンは銀行のビジネスローンよりも金利が高い代わりに審査が通りやすい、即日融資が可能、というメリットがあります。
メリット
- 銀行ビジネスローンよりも審査が通りやすい
- 最短即日の資金化が可能
デメリット
- 金利が銀行ビジネスローンよりも高い
20.不動産担保ローン
不動産担保ローンは不動産を担保にしたローンです。
土地、建物、工場、店舗、駐車場・・・不動産であれば様々なものが担保になります。
不動産担保ローンは、返済できなければ担保である不動産が売却されてしまうというデメリットがあるものの、金融機関側の貸し倒れリスクが軽減されるため、無担保ローンのビジネスローンと比較すると審査が通りやすく、金利も低金利で長期の借入が可能になります。
メリット
- 無担保ローンよりは審査が通りやすい
- 無担保ローンよりは低金利
- 最長35年という長期の借入が可能
- 2番抵当や借地権など条件が悪い不動産も担保にできる
デメリット
- 返済できなくなれば担保が売却されてしまう
21.売掛債権担保ローン
売掛債権担保ローンは売掛債権を担保にしたローンです。
売掛債権を担保にしてローンを受ける資金調達です。無担保ローンよりは審査が通りやすく、担保がある分比較的高額な借り入れも可能です。
メリット
- 無担保ローンよりは審査が通りやすい
- 無担保ローンよりは低金利
- 無担保ローンよりは高額な借入が可能
デメリット
- 返済できなくなれば担保が売却されてしまう
22.ABL(流動資産担保ローン)
ABLは「Asset Based Lending」の略で、流動資産担保ローンのことを意味します。
在庫、原材料、機械設備などの動産担保を担保にした借入が可能になります。
売却できるものであれば、商品だけでなく、農作物なども担保にすることができます。
メリット
- 今までは担保にならなかった動産を担保にできる
- 仕入れから売却、入金までの資金繰りに活用できる
デメリット
- 売却しやすい動産でないと利用できない
- 担保の数量などを報告する義務がある
23.ABL保証
ABL保証というのは、信用保証協会が、流動資産担保にする際に融資額の80%まで保証する保証制度のことです。
信用保証協会の保証付融資の一種です。実際に融資を受けるのは銀行などの金融機関ということになります。
メリット
- 担保がある分審査が通りやすい
デメリット
- 担保の数量などを報告する義務がある
24.商工会議所の融資制度を利用する
商工会議所は地域の企業が参加し、様々な経営サポートを受けることができる組織です。
資金調達も例外ではなく
東京商工会議所を例にとれば
- 東京商工会議所の推薦による「マル経融資」(日本政策金融公庫)
- 「東京都制度融資」(東京信用保証協会)
- 「東京商工会議所メンバーズビジネスローン」(金融機関)
・・・
と様々な資金調達方法を各金融機関と連携して提供しています。東京商工会議所の推薦によって、直接申込むよりも若干審査に通りやすいメリットがあります。
メリット
- 審査がやや通りやすくなる
デメリット
- 入会金が必要
25.支払方法を「前払い」に変える
慢性的な資金繰りの悪化は「支払いが先にあって、後から入金がある」信用取引の構造にあると言っていいでしょう。
支払いが先にあるからこそ、急激に売上が上がればキャッシュフローはさらに悪化し、最悪の場合は黒字倒産に追い込まれてしまうのです。
そこで支払方法を「前払い」に変えてしまうことも経営課題の一つとして検討すべきものです。「前払い」であれば、先に入金があるため、その後に支払いをすることで資金調達がそもそも必要ない状態を創り出せるのです。
ただし、他の競合企業が後払いなのに、自社だけ前払いにするからには「競合他社にない商品・サービスの優位性」が必要になります。競合優位性がないと「前払い導入」で、受注が減ってしまい、売上が減ってしまうリスクがあるのです。
メリット
- キャッシュフローの改善
デメリット
- 競合優位性がないと「前払い導入」で売上が減ってしまうリスクがある
26.借り換え、おまとめ
高い金利の借入をしている金融機関から、低金利の借入ができる金融機関へ借り換えることで金利を下げることができます。
- 1社から1社への借り換え:借り換え
- 複数社から1社への借り換え:おまとめ
と言います。
借り換えによって借入金利を下げることで、毎月の返済額、返済総額を減額することが可能になります。
メリット
- 借入金利の低下
- 毎月の返済額の減額
デメリット
- 借り換えできる低金利の金融機関の審査に通る必要がある
27.リスケジュール
リスケジュールというのは、現在借入中の金融機関と交渉して
- 返済額の減額
- 据え置き期間の導入
を呑んでもらい、資金繰りを改善する方法です。
リスケジュールは金融機関側にはメリットはありませんが
「このままだと倒産してしまって返済できない。事業計画を固く作りなおしたので、この期間の間は返済を減額してほしい。」
と交渉されたら、要求をのまざるを得ない部分もあるのです。
リスケジュールは何度も繰り返せるものではありませんから、確実に作り直した事業計画を実行する必要があります。
メリット
- 返済額の減額
- 据え置き期間の導入
デメリット
- リスケジュール中は新規の借入はできなくなる
- リスケジュールの効果は一時的なもの
28.グループ金融
グループ金融というのは組合員や特定のグループに出資された資金を活用した融資制度のことです。
代表的なものでいえば
- JA:農業協同組合(農協)
です。
JAは農業者(農民又は農業を営む法人)によって組織された協同組合です。組合員が出資した資金で運営されていますが、JAバンク経由で組合員に向けた「JAの農業融資」を行っています。
グループによる助け合いで資金調達を受けることができるのです。地域ごと、目的ごろに、様々なグループ金融の融資制度があります。
メリット
- 審査は通りやすい
デメリット
- 自分の会社が利用できるものを探すのが難しい
- 調達できる資金額は少額
29.少人数私募債
少人数私募債というのは、社債の一種です。
国債をイメージしていただければわかりますが、国債は国が発行する債権です。
社債は会社が発行する債権のことです。
投資家に対して利息を提供する代わりに資金を調達することが可能です。
以前は、社債というのは証券会社経由で大々的に大企業が行う資金調達方法でしたが、少人数私募債は49人以下の投資家と人数を限定することで、比較的簡単に発行することができる仕組みなのです。
法的な裏付けも「取締役会」だけですので発行が簡単で、返済は償還日まですることがないため、有望な中小企業の資金調達方法となっているのです。
メリット
- 返済は償還日
- 簡単に発行できる
- まとまった金額の資金調達が可能
デメリット
- 自分で投資家を集める必要がある
30.社内預金制度
社内預金制度というのは、社員が会社に預金をする代わりに会社が利息を支払う仕組みです。
預金の安全性で言えば、銀行に預金する方が良いに決まっていますが、銀行の預金ではほとんど利息がつかないため、銀行よりも高い金利を設定することで会社に預金をする社員のメリットがでてきます。
社員に預金してもらうことで、資金調達をすることが可能になります。
メリット
- 社員のモチベーション増加につながる
デメリット
- 会社が倒産してしまえば社員(預金者)に迷惑がかかる
31.補助金・助成金
補助金・助成金というのは、国や地方公共団体などが公共の利益になると考える事業や企業に対して、給付する返済不要の資金ことです。
融資やローン、出資との大きな違いは
- 返済する必要がない
- 株式を渡す必要がない
シンプルに「もらえるお金」ですから、中小企業の経営者にも人気の資金調達方法となっています。
ただし、補助金・助成金には、給付するだけの目的があるため
- 補助金・助成金の目的に沿わない企業
には給付されません。
また、予算も決まっているため、審査の通過率が非常に低いのです。
メリット
- 返済不要
- 出資と違い経営権への影響がない
デメリット
- 予算枠があり倍率が高い
- 募集の目的と異なる企業は利用できない
「資本」を基にして「資金」を生み出す方法
資本は会社の株を意味します。株式会社では株の持ち株比率に応じて経営に参画する権利が発生します。資本は経営権との兼ね合いを検討しなければならない資金調達方法です。
32.増資する
資本金を増資することで資金調達をすることが可能です。
- 既存株主の増資を「株主割当増資」
- 第三者の増資を「第三者割当増資」
と言います。
増資をするからには、増資をすることで株主にメリットがあることを理解してもらう必要があります。
- 個人投資家が株主であれば、上場やM&Aでのエグジット
- 企業が株主であれば、業務提携やシナジーなどのメリット
を理解してもらうことで増資してもらえる可能性が出てくるのです。
一方で、第三者の資本を入れるということは経営者の経営権が薄まるということを意味しています。資本による資金調達では、ここは十分に考えておかなければならないデメリットです。
メリット
- 返済義務のない資金が調達できる
- まとまった金額の資金調達が可能
デメリット
- 経営者の経営権が薄まる
33.ベンチャーキャピタルに出資してもらう
ベンチャーキャピタルは上場する可能性があるベンチャー企業に投資をして、上場やM&Aで売り抜けることで利益を上げる、投資専門会社です。
ベンチャーキャピタルは将来上場できるポテンシャルがある企業に対して、出資を行います。
出資を受けるためには
- どうやって上場するのか?
- 競合優位性は何があるのか?
- 市場の成長性はあるのか?
という点が重要になります。
メリット
- 数億円単位の資金調達が可能
- 会社の成長スピードが加速する
デメリット
- 経営者の経営権が薄まる
- ベンチャーキャピタルが経営方針に口出しする可能性も高い
- 上場を急かされる
34.公的ベンチャーキャピタル
民間のベンチャーキャピタルとは別に公的なベンチャーキャピタルも存在します。
- 中小企業投資育成株式会社
がこれに当たります。
公的機関ですので民間のベンチャーキャピタルと比較すると出資までのハードルが低くなります。
メリット
- 出資のハードルが低い
デメリット
- 民間ベンチャーキャピタルと比較すると経営へのアドバイスなどが弱い
35.エンジェル
エンジェルというのはベンチャー企業に投資する個人投資家のことを言います。
個人の投資家に出資をしてもらうため、ベンチャーキャピタルよりも上場に対するプレッシャーは少なく、経営方針に口を出される可能性も少ないのです。
一方で個人投資家を見つけることが難しく、人脈やインターネットを駆使する必要があります。
メリット
- 1人を説得すれば良い
- まとまった金額の資金調達が可能
- 経営に口出しされない可能性が高い
デメリット
- 見つけるのが難しい
- 気にいってもらうのが難しい
36.クラウドファンディング
エンジェルは1人で高額な資金を持つ富裕層が気に行った企業へ投資をするものですが、クラウドファンディングは、小口の個人投資家が気に行ったプロジェクトに対して出資をする新しい形に資金調達方法です。
参画してくれた個人投資家にはなんらかの特典を用意する必要がありますが、夢のあるプロジェクトほど数千万円、数億円の資金調達も可能になります。
メリット
- プロジェクト単位で資金調達が可能
- プロジェクトの内容によってはまとまった資金調達が可能
デメリット
- プロジェクトが共感を得られないものだと資金が集まらない
37.ソーシャルレンディング
ソーシャルレンディングは小口の個人投資家の資金を集めたファンドです。
不動産開発の事業に投資をしてくれると1口10万円で年率5.0%の利回り
というように事業単位での資金調達が可能で、個人投資家にとっても、銀行預金の金利がゼロに近い現在では高い利回りが期待できる投資先に少額から投資が可能というメリットがあるのです。
メリット
- プロジェクト単位で資金調達が可能
- プロジェクトの内容によってはまとまった資金調達が可能
デメリット
- 投資家に還元する利回りが低いと資金が集まらない
38.新株予約権(ストックオプション)
新株予約権というのは「将来株価が上昇したときでも、あらかじめ決めた価格で株を買える権利」のことです。
株価が100円から1000円に上昇した企業でも、100円のときに新株予約権(ストックオプション)を取得していれば、900円の利益が出ること前提で株を購入することができるのです。
社員のモチベーション強化で利用されることの多い新株予約権(ストックオプション)ですが、金融機関からの借入条件を良くする材料としても有効です。社債の募集材料にもなります。
メリット
- 新株予約権は権利行使の条件を細かく設定できる
- 金融機関からの借入条件を有利にできる
- 社債の募集モチベーションになる
デメリット
- 譲渡制限がないと会社が管理できなくなる
39.従業員持ち株会
従業員持ち株会というのは、定期的に給料の天引きなどで従業員に資金を拠出してもらい、従業員持ち株会が株主として会社に出資する仕組みの制度です。
間接的とはいえ、社員が株主になるので働くモチベーションは上昇します。また、ベンチャーキャピタルなどと違って、経営方針に口出しする株主ではない上に、買収などの防衛策にもなるため、資本政策上はかなり有利になります。
メリット
- 社員から定期的に出資が集まる
- 社員のモチベーションが上がる
- 買収などの防衛策になる
デメリット
会社の将来性が乏しいと給料天引きが逆に社員のモチベーションを下げる
40.M&A
M&Aというのは事業譲渡を意味します。
- 事業譲渡
- 株式譲渡
- 一部の事業譲渡
- 業務提携
・・・
など形式はいろいろありますが、会社を売却することで資金調達を可能にします。
利益が十分に出ている事業であれば、それなりの規模の資金調達が可能になります。
メリット
- まとまった資金調達が可能
- 今後のシナジーが見込める売却先であれば経営面にもメリットがある
- 事業を部分的に売却することも可能
デメリット
- まとめるのには時間がかかる
41.中小企業ファンド
中小企業ファンドというのは、ベンチャーキャピタルが作る投資事業有限責任組合のことです。
ファンドは、ある目的のための資金を投資家から集めて、その事業で得た収益の中から投資家に還元する仕組みになっています。
中小企業ファンドは、ベンチャー企業へ投資することを目的に組成されたファンドです。中小企業ファンドは有望な中小ベンチャー企業へ投資家から預かった資金を投資することがミッションですから、この中小企業ファンドから出資を受けられる可能性があるのです。
メリット
- まとまった資金調達が可能
デメリット
- 投資してもらうためには審査を通る必要がある
42.株式公開「IPO」
株式公開「IPO」は、証券取引所に上場することを意味します。
上場するということは、不特定多数の個人投資家がその会社の株を自由に売買することができることを意味します。
一般的に上場することで、巨額な出資が見込めるのです。
メリット
- 巨額の資金調達が可能
- 社会的な信頼性も上昇する
デメリット
- 上場や決算に相応のコストがかかる
まとめ
中小企業の資金調達方法は。政府系金融機関と銀行融資だけと考えている経営者も少なくありませんが、実際に利用可能な資金調達方法はかなりの数があるものです。できるものできないものがありますが、経営方針や会社の状況に応じて、色々な資金調達方法を検討することをおすすめします。
「経理に聞いても、有効な資金調達の選択肢がわからない。」